タイトル:シエラ・イエーダー キャラクター名:“獣束の魔女”シエラ・イエーダー 種族:ナイトメア [特徴:異貌、弱点[水氷、銀+2]] 生まれ:魔術師 ■パーソナルデータ・経歴■ 年齢:16 性別:女性 髪の色:紅  / 瞳の色:蒼  / 肌の色:白 身長:148cm 体重:45kg 経歴1:・監禁されたことがある 経歴2:・負けず嫌いと評されたことがある 経歴3:・空腹のあまり失神したことがある 穢れ度:1 ■能力値■      技     体     心 基礎    5     13     12    器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神 A~F  12   6   5   5   9   9 成長   2   2   3      7  11 →計:25 修正 =合計= 19  13  21  18  28  32 ボーナス  3   2   3   3   4   5    生命 精神    抵抗 抵抗  HP  MP 基本  13  15  48  62 特技         0   0 修正 =合計= 13  15  50  64 ■レベル・技能■ 冒険者レベル:10 Lv ソーサラー   10 Lv  / レンジャー 1 Lv セージ     6 Lv  /  ライダー  8 Lv ウォーリーダー 1 Lv  /        Lv ■戦闘特技・値■ [参照] 特技名      : 効果                             : 前提 [p2120]鋭い目       : 戦利品のロールに+1                      : セージLv.5 [pIB32]魔法誘導      : 射撃魔法で誤射しない、完全に隠れ切れてない対象に射撃魔法可能 : [pIB30]鷹の目       : 乱戦エリアや遮蔽物越しに射撃・魔法攻撃可能          : [pIB39]魔法収束      : 対象を範囲から1体・1つに変更                 : [pIB39]魔法拡大/数    : 対象を拡大するごとにMP倍増、達成値は個別           : [pIB31]武器習熟A/スタッフ : ダメージ+1、Aランク装備可能                 :    魔物       全力    知識 先制 移動 移動 基本  10   3  13  39 修正   1 特技        0 =合計= 11   3  13m  39m ■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■ [参照] 特技名   : 効果                        : 前提 [pⅢ103]遠隔指示   : 騎獣が30mの範囲内で自由に行動可能          : [pⅢ103]騎獣強化   : 命中回避+1                     : [pⅢ105]HP強化    : HP+10点                       : [pⅢ104]探索司令   : 探索・危険感知・足跡追跡判定を行える        : [p]  特殊能力解放 : 一部能力を解放する                 : [p]  HP超強化   : HP+10点                       : [p]  MP譲渡    : 騎獣のコア部位からMPを借り受ける。1日に技能LV点まで : [p]  堅陣の構え  : 制限移動+2m                     : ■装備■ ・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力        Lv 命中 追ダメ 回避 ファイター : グラップラー: フェンサー : シューター : ・武器 価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照) 4500  1h   1   1   1   6  12   1 [スタッフA] *スパイラルホワイトロッド / 魔法攻撃のダメージ+2 名誉点30 4500G (LLp) 105            0         1 [スタッフB] *スパイラルロッド / 名誉点20 (p) =価格合計= 4605 G ・防具    必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考 鎧 : 21  -2   7  1200 プレートアーマー / 盾 : 17      2   600 タワーシールド / 修正: = 合計 =   -2   9  1800 G (回避技能:) ・装飾品    価格 名称           / 効果 頭 :3000 とんがり帽子       / 魔物知識判定+1 耳 :                / 顔 :                / 首 :740  ポーションインジェクター / 補助動作でセットしたアイテムを使用 魔香水1/1 背中:                / 右手:100  軍師徽章         / 鼓咆宣言に必要 左手:50  イェーダーの指輪     / 炎の槌のレリーフが彫り込まれた銀製の指輪。家紋 腰 :1400 血晶石の腹帯       / 受けたダメージ1/10(切り上げ)をMPとして貯蔵する。次手番終了時にこのMPは失われる 足 :                / 他 :0   マナリング        / 10000ガメル 与える魔法ダメージ+1 発動体 =合計=5290 G ■所持品■ 名称              単価  個数 価格  備考 1.遺失・購入金額        5340  1   5340 2.総売却・収入額        -780  1   -780  売ったものの総額:                 0   1   0 貸金                     0 借金              0   1   0                     1   0 騎獣専有書(願いの魔剣)         1   0   ウィズ(ウィズダム・キャバルリィ) 魔動バイク収納スフィア     10000 1   10000 MP1 補助動作で魔動機の騎獣を呼び出せる。 騎獣契約書(ワイバーン)     4000  1   4000  ワイバーン 騎獣専有書(ボーア)       0   1   0   ボーア 騎獣契約書(ケルピー)      1000  1   1000  ケルピー 騎獣契約書(キャリッジ)     300  1   300  追加部位のレンタル ボーアに装備 スパイクチェーン            1   0   打撃+3 回避-1 HP-5 (ウィズ脚にのみ装備) フリッカーハンマー       3000  1   3000  命中+1(計算済み) ウィンドコート         4000  1   4000  回避+1 防護点+2(計算済み) ヘビィシールド         3000  1   3000  回避-1 防護点+2 HP+10(ウィズ胴にのみ装備) 紫紺の護符           0   1   0   騎獣の生命/精神抵抗+1                        0 騎獣縮小の札Ⅱ          500  3   1500  残数(2/4)最低LV7以下の騎獣を補助動作で出し入れできるようになる。使い捨て 騎獣縮小の札Ⅰ          100  2   200  残数(1/2)最低LV3以下の騎獣を補助動作で出し入れできるようになる。使い捨て リペアテープⅡ             1   0   残数(1/2)威力40+ライダー+知力回復(騎獣)                     1   0 冒険者セット          100  1   100  袋、水袋、毛布、松明6、火口箱、ロープ10m、ナイフ 保存食             50   1   50   (8/14)一週間分 保存食(騎獣)          150  1   150  (15/15)一週間分 テント             250  1   250  4人用 良く切れるナイフ        120  1   120  発動体 使いやすい調理道具       50   1   50   名誉点5 調理による判定+1 頑丈なランタン         40   1   40   名誉点10 3mの高さから落としても壊れない 迅速の火縄壺          100  1   100  名誉点20 30秒で着火できる。すごくはやい。                     1   0 月光の魔符               1   0   精神抵抗判定+1 判定後使用可能 陽光の魔符               1   0   生命抵抗判定+1 判定後使用可能 救命草             30   7   210  残数(7/7) 威力10でHP回復 魔香水             0   3   0   残数(2/6) レンジャー技能+知力点MP回復                     1   0                     1   0 ヒーリングポーション          1   0   残数(0/0) 威力20点回復 ヒーリングポーション+1     300  1   300  残数(2/3) 威力20点+1HP回復 アウェイクポーション          2   0   残数(0/0) 気絶・睡眠回復 インドミタブルポーション    160  1   160  残数(2/3) 気絶・睡眠回復 不屈を6R付与                        0 マナチャージクリスタル5点分   2500  1   2500 魔晶石5点            500  2   1000  残数(0/3)                     1   0 悩ましサイン              1   0   4880G ルミレガ P.87 射撃・10m。人間以上の知能を持つ相手に知力判定に―修正を与える                     1   0 ジャックの豆          100  2   200  残数(1/2) 幅10cm、長さ20mの蔦を生やせる。MP1。24時間持続 油               20   3   60   残数(3/3) 12時間持続。ランタン用。 酒の種             100  1   100  残数(10/10) 1粒でジョッキ一杯分の酒を造れる。                     1   0 粋な乗馬服           100  1   100  騎乗判定+1 軽い羽ペン           50   1   50   執筆速度+10% インクと羽ペン         5   1   5   インクと羽ペンだよ、おう、当然だろ 羊皮紙             50   1   50   50束 虫眼鏡             100  1   100  虫眼鏡倍率(?) ソフトレザー          150  1   150                     1   0 砂時計             120  1   120  3分計れる 着替えセット          10   1   10   一週間分 普段着                 1   0   140ガメル相当。動きやすい服。カモミールお手製。達成値17 エプロンドレス             1   0   55ガメル相当。カモミールお手製。赤基調のエプロン・フリルが白 食器セット           12   4   48   食器セットだと思います。 ルシェロイネ魔導教本          1   0   秘伝用の教本。                     1   0 スプリントアーマー           1   0   バンクシェリアの横流し 快眠寝具                1   0   7200G 回復速度2倍 木彫り(ナイトメアの角)のお守り     1   0   一度だけ物理ダメージ-2 首装備                     1   0 =所持品合計=   37583 G =装備合計=    11695 G = 価格総計 =   49278 G 所持金   13122G 預金・借金    G ■魔力■ 知力ボーナス: 4 特技強化ボーナス: 0 武器ボーナス: 0  名前  Lv 追加修正 魔力 真語魔法 10      14 ■言語■       話 読            話 読 共通交易語 ○ ○ / 巨人語       - - エルフ語  ○ ○ / ドラゴン語     ○ - ドワーフ語 - - / ドレイク語     - - 神紀文明語 - - / 汎用蛮族語     - - 魔動機文明語- - / 魔神語       - - 魔法文明語 ○ ○ / 妖魔語       - - 妖精語   ○ - / グラスランナー語  - - シャドウ語 ○ - / ミアキス語     - - バルカン語 - - / ライカンスロープ語 - - ソレイユ語 - - ・地方語、各種族語     話 読 名称 [種族] ○ - 海獣語 [種族] ○ - ハルピュイア語 [種族] ○ - ヴァルグ語 初期習得言語:交易交通語、親の種族の言語 技能習得言語:魔法文明語、6個の会話or読文 ■名誉アイテム■ 点数 名称   5 料理道具  10 頑丈なランタン   5 良く切れるナイフ  50 イエーダーの指輪  20 迅速の火縄壺 100 朝の太陽の印章  50 とんがり帽子  50 ルシェロイネ魔導術  20 ルシェロイネ魔導収束    ルシェロイネ魔導稠密  20 スパイラルロッド  10 粋な乗馬服  10 軽い羽ペン 150 夕の太陽の印象 100 第六騎士団員章  20 獣束の魔女(シシヅカノマジョ) 所持名誉点: 407 点 合計名誉点:1027 点 ■その他■ 経験点:1905点 (使用経験点:49000点、獲得経験点:47905点) セッション回数:25回 成長履歴: 成長能力  獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ 1- 器用度   1230点(1000 / 180 / 1回) 2- 敏捷度   1320点(1000 / 270 / 1回) 3- 精神力   1940点(1000 / 940 / 回) 4- 器用度   1450点(1000 / 400 / 1回) 5- 精神力   1660点(1000 / 460 / 4回) 6- 敏捷度   2510点(1000 /1460 / 1回) 7- 知力    1670点(1000 / 520 / 3回) 8- 精神力   1890点(1000 / 840 / 1回)  借金報酬2700+1500 9- 精神力   5385点(   /5385 / 回)  精神 10- 精神力   650点(   / 650 / 回)  精神 敏捷 経験点・模擬戦 11- 精神力    0点(   /   / 回)  精神 器用 12- 知力     0点(   /   / 回)  筋力 知力 13- 筋力     0点(   /   / 回)  筋力 敏捷 14- 精神力    0点(   /   / 回)  精神 生命 追加成長点 15- 精神力   100点(   /   / 2回)  精神 筋力 16- 筋力    2110点(1000 /1010 / 2回)  11話 17- 精神力   2510点(1000 /1460 / 1回)  12話 18- 知力    3750点(3550 /   / 4回)  知力 精神力 19- 精神力   4720点(4620 /   / 2回)  知力 精神力 20- 筋力    4820点(4670 /   / 3回) 21- 知力    4190点(4040 /   / 3回)  知力 器用度 22- 知力    6000点(6000 /   / 回)  最終開始時点 23- 知力     0点(   /   / 回) 24- 知力     0点(   /   / 回) 25- 精神力    0点(   /   / 回) メモ: 一般技能 コック LV5 ドラッグメイカー Lv5 ナース LV2 なんだか思ったより大変なところに来ちゃったぞ まぁ、なるようにしかならない! ケ・セラ・セラね 「家を出てから? それはもうスッゴイ楽しいこと続き!」 「ご飯食べて、ちゃんと薬飲めばだいじょーぶ! わたしがそうだったし!」 明るい性格の直球ナイトメア。ライダーは裏表がない人が多いらしいんでそんな感じで。 家元はイエーダー家とかいう名家だった気がするんだけど そこを逃げ出して冒険者として連絡もせんとふらふらしている少女。 ナイトメアだったこともあり、名家の世間体から家の中に幽閉状態にされていた。 女性であり、世継ぎという考えではないというのもあり、それでも問題なかったのだが 母親が教えた魔術と外の世界に興味を持ちそのまま抜け出してきてしまった(当時11歳)。 は、よかったものの、数日食わずに街道を冒険していたら、森の中で空腹のあまり気絶。 その時冒険者に拾われ、連れて行かれた宿の下働きとしてしばらく働くことになる。 以後、のんべんだらりと暮らしていたが、いいところにいい御触れが出ていい具合に参加できそうなので 勢いだけで参加しに来ている パーソナリティ 班員 バンクシェリア  :☑P:誠意   N:困惑 (戦争は嫌いだけど戦いは好きの博愛主義者。自分のことも配慮してあげたほうがいいと思うんだけど) カモミール    :☑P:協調   N:隔意 (少しは関係改善されたみたい。行動力はあるんだけどいまいち内向的な感じが見えてきたわね) アデュラリウス  :☑P:慈愛   N:隔意 (皆を守るために変身、その後安心感で泣いちゃったのかな。がんばったね。でも、あのカモミールへの態度じゃ誰とも分かり合えないと思うよ) 同僚・上司 ラングシュア子爵 :☑P:感服   N:反感 (思ってたよりも外道じゃなかったのね。頭も剣も凄い人だけど‥‥こういう人を狸っていうのかしら?) クラベス隊長   :☑P:尊敬   N:心配 (あったまいーぃー。子爵の護衛も兼ねてそうってことは実は凄腕?) ヴィリディアヌス・エスメラルダ(ビリー):   P:親近感  ☑️N:不安 (そういう生き方のが楽よ。自然体が一番! 戦闘に巻き込まれないことを祈るわ) 蛮族 レイラ      :☑P:尊敬   N:嫉妬 (何かを守るために闘い、そうして今まで生き抜いてきた人。その強さを、心の強さを私も持ってたら違ったかな?) クルードニス   :☑P:敬意   N:隔意 (抜き身の刃のような武人。それだけに信念があるわ。話してみると結構この人のことわかる気がする。……誰かに似てる? 気のせい?) ≪備忘録≫(以下エルフ語による記載) はじめに。 宿のみんな、ありがとう。行ってきます。もし帰って来れそうなら帰るね。 その時、有名になってたらみんなに自慢するんだから。 ●異聞バルトゥーの屋敷「晴天の下に」 遺跡発掘。とにかく成功。 ゴブリンを一撃でのす私の活躍は他所でも遺憾無く発揮できるでしょうねー。 バンクシェリアとカモミールはデキてる。キスしてた。間違いない。 でも当のバンクシェリアは高笑いして消えちゃった。蛮族だなんてショック。 さすが腕のたつ剣士様。愛剣持ってるけど魔剣のこととはね。もう会わないことを祈ろう。 アリアちゃんとはよくわかんないけど一緒に野営する。 腕に自信ない的なこと言ってたけど、普通に強いと思うけどなぁ。屈強だし。 さすが長旅を超えてきただけはあるわ。一緒に寝ることになったし、仲良くなれると良いわ。 さて、そろそろ寝よう。マイエルから報酬をもらったら次なる地へいざゆかーん! (登場エネミィ:ゴブリン、ボガード、オーク、ガーゴイル) (知識:ゴブリン) ●第一話 曇天に集う「初任務は波乱の香り」 無事にたどり着いて試験も通過。いざ冒険の地へ〜ってみんなもうパーティ組んでるし。 って何? 騒ぎ? え、殺人? え、え、え、どういう事!? ……道中で知り合ったカモミール、まさか殺人の疑惑だなんて……。 あの人がそんなことするわけない……ってなんかドレイクと女の子まで……。 どういう組み合わせなんだか。まぁいいわ。とにもかくにも第一任務ね! きっちりこなして疑いを晴らしてあげなきゃね。旅は道連れ世は情けってね。 グレンダールの大かまどにかけて、助けてあげなきゃ。 被害者は得物でブッスリ。遺体はそこそこにキツかったけど、結構みんな慣れてるのかな。 カモミールとバンクシェリアが足跡を見つけてくれた。とにかく追わないと。 しかしみんな体力あるし足も速い。いやはや、魔法使いとは違うのね。 平原で分かれ道。二手に逃げるなんて有能。 どっちを追うかで迷ったけどカモミールがコボルドを一人で追ってくれたわ。 逆にこっちはピンチ。思っていたよりも敵が強かったわ。 でも驚きなのはアリアちゃんもバンクシェリアも降伏したこと。 特にバンクシェリア。 ドレイクなのに魔剣投げるなんて、イカれてるのか、プライドがないのかなんなのかしら。 お爺ちゃんとは全然違うのね。騎士とか貴族っていうのも、人と蛮族じゃやっぱり違うのね。 彼の場合後ろからバッサリってのもやりそうだわ。 アリアちゃんも途中人が変わったようになって蛮族とよくわかんない言葉で喋ってた。 後で調べて見て、彼女も蛮族だってことを知ったわ。 蛮族って平気で降伏するものなのかしら? でも、彼ら蛮族が私達人族に与するのはなんで?裏切り?復讐?それともスパイ? わけわかんないわ。蛮族。 知らなかったとはいえ、バジリスク叩いちゃったのか〜。大胆なことをしちゃったわ。 でも、石化させたり殺されたりされてないってことは恨まれてないって事なのかな? 今度あったら謝らないと……って謝る必要ないわね。 自傷行為なんて文句こそ言われ褒められるものじゃないんだし。 あーあ! 思い出したらなーんか腹たってきちゃった。 何はともあれ、無事に成功した! それが重要なことよ。 払いもいい、物資もある、仕事にも困らない。ここはいいところよ、本当。 さぁて次の依頼までポーション作りの練習でもしよう。 次はマトモなパーティで、マトモな冒険ができるハズ! グレンダールの大槌に誓って。今日も健やかに過ごせました。 (新規登場エネミィ:コボルドシューター・レッサーオーガ・ディープグレムリン) (知識:全員) ●第二話 森に惑う「森の夜長」前半 皆すっかり寝静まって‥‥のんびり片付けと準備に勤しめるわね。 そういえば、こっそりバンクシェリアがカモミールを運んでたけど、きっと後で文句言われるんでしょうねぇ。 でも、女性一人軽々と。やっぱり両手剣使ってる奴は違うわね。 それはさておき。こっちを書かなきゃ。 兵士さんに案内されて通った先のテントでハウル・バルクマンと、件の蛮族二人。ドギモ抜かれたわ。 話を聞くと、私達、メンバー見たい。あとから来たカモミールが散々文句言ってたけど。 五十七班、だったかしら? まぁ、いいわ。ともかく班長はクラベス・ライトっていう人らしい。 優しそうな人で良かった良かった。 結成式を開いたんだけど、みんなしてノリが悪いこと悪いこと。 とはいっても、カモミールはキャラじゃないかもしれないし、アリアちゃんは言葉の不自由もあるか。 うーん。常にお祭りみたいな頭をしてるドレイクは……あれは親睦というよりも演説‥‥なのかな? もうちょい肩の力抜いて気楽に、って思ったんだけど、あんましいい感じじゃなかったかな。 まぁ、皆の好きなことやここに来た目的なんてのがわかっただけ効果ありって感じかな。 これから仲間としてやるんだし、仲良くやりたいじゃんね。 そんでいざ任務。未開拓の森の中で行方不明になった先遣隊の捜索。急ぐ必要はアリ。 いざ森の中に入ってみんなして足取りをおってたんだけど‥‥。薬草探したり、地図探したり、天気予報してみたり。 なにしてんの? って気分だったけど。まぁ、収穫があるならいいんだけど‥‥なんか意味があるのかな? アリアちゃんがうさぎをプレゼントしてくれたけど‥‥。あたし精肉関係はちょっとね。 まぁ、できないことはないけど‥‥明日‥‥先遣隊の人が見つかればその時に食べようかしら。 防腐処理程度にしておこう。 そうこうして進んでたら、毒沼に嵌るわ、蜂の巣は降るわ、蜘蛛の巣まみれになるわ。 着替えもってて正解ね。酷い目にあったわ。まぁ、冒険らしくて大変いい感じね。 こういうのを待ってたのよ。まぁ、その、気分がいいかと言われたら少し微妙なこともあるけど。 巨大花に出会ったり、キプロクスの巣を見たりも珍しいもんだったわ。 さて、そんなこんなで野営中。明日の分の準備もしたし、そろそろ、私も寝る準備を―― 寝る前にアリアちゃんとお話しできた。 結局、聞くのはまだまだ先でいいけど、旅の目的、聞ければいいな。 わかったことは、まだまだ会話に齟齬があって、心情を伝えられない苦しさがあるってことくらい。 言葉が通じないって不便よね。 そういえば、みんなのちゃんとした目的ってあるのかな。 バンクシェリアは‥‥夢物語を語ってたなぁ。きっとそうなんだろう。 実現できるとは到底思えないけど―― カモミールは話してた通り、裁縫士になりたいんだよね。世界一の。アルテマイトって名前に恥じない人になりたいんだ。 アリアちゃんはそのうちきっと話してくれる。そう言ってくれたし。本当のかのじょがみれるひがくるといいわねー―― あたし――は、どうなんだろ。 家を飛び出して、お世話になったやどをおく――りだされ――て 冒険したい以外の事はおもい――つか――な―― (新規登場エネミィ:ジャイアントバルーンシード・ニードルシューター・キプクロス・エントレット) (知識:ニードルシューター・キプクロス・エントレット) ●第二話 森に惑う「森の夜長」後編 結局昨日はまとめて書いたから、今日のはしっかり道中でも書いておかないと。 朝起きて、みんなで出立。その前にお天気予報する二人。 なーんか話し合ってるけど‥‥ちょっとよくわかんない。アデュラリアは首かしげてるけど。雨はやっぱり降るみたい。 その前に遭難者見つけないとね。 アリアちゃんが封筒見つけてた。とりあえず開こうとしたけど、特に意味なし。 マジックアイテムで封をするなんて、よっぽど貴重なものなのかしら。あとでクラベス隊長に届けるにしましょ。 蛮族の機密書類‥‥でもないけど参考物かも知れないし。 そういえば、何だかんだあたしが地図作成を任されることになっちゃった。いいんだけど、なんだかなぁ。 これ、何の意味あんの? 出発から少しして、先遣隊の一人発見。なんか吹っ飛ばされたらしい。でも、そうすると他の人も襲われてるわけで。 まぁ、とりあえず他の人の足取りを追いましょう。 ‥‥って、いったそばから薬草漁ってるよこの人ら。もう慣れたからいいけど。 物資確保は大事だけど、なんていうか‥‥。まぁ、今日はそれなりにいそいでるからいいか。 とか思ってたら寒気がするところに。怖いなー、怖いなー、って思ってたらね、鼻にツンと何か臭ったのよ。 何の臭いだろうと思ったら、最初は刺激的な臭いで思わず鼻を押さえそうになったら今度は吐き気が来たの。 その時初めて悟ったわ。その臭いは腐敗臭だってことにね。‥‥屍人よ。 まぁ、さして強くなかったからちゃちゃっと倒しておしまい。 こんな森に放置されれば、そりゃアンデッド化もするわよね。 グレンダールの大盾に誓って、あなた達の魂の安息を祈ってるわ。ちゃんと神の元にかえるのよー。 とか祈ってたら先遣隊を発見。と、同時にキプクロスもついでに発見。 あの巣の主みたいねー。困るわ。なにせ、先遣隊三人が倒れてるところのすぐ近くを徘徊してるの。 三人は気絶してるみたいだし、助けないと食われるわよね、絶対。 そんで作戦会議。 鏑矢使うとか、いろいろ出たけど、最終的にアリアちゃんの捕った兎を使って餌にすることになったわ。 カモミールが単身挑むことになったけど、大丈夫かしら。 シャキシャキあぁいうのに挑めるあたり、やっぱ英雄の血筋(‥‥この場合は気概、かな?)を受け継いでるのね。 見た目に寄らず、ストイックなのよね、彼女。 作戦そのものは成功して、先遣隊は皆保護できたんだけど‥‥ 困ったことにキプクロスと相対する形でゴルゴルまで現れたの。しっちゃかめっちゃかね。 このままじゃカモミールも危ないし、応援に入って、どうにか片づけたわ。 やっぱバンクシェリアの剣やばいわねー。使い手もそうだけど、剣自体もトンデモないわ。 キプクロスに簡単に膝を着かせるなんて、ね。それに、空を飛ぶアドバンテージはやっぱ大きいのねー。 でも、あの高笑いは少し‥‥狂気を感じるわ。や、まぁ、その、嫌ではないんだけど、蛮族らしい部分、なのかな? 無事先遣隊と合流してあとは帰宅。おつかれさま。 テントにもどって、クラベス隊長に報告。報酬もいただきまして、これにて一件落着。 今日の依頼もしっかりこなせて、そろそろ冒険者ってのが板についてきたかしらね。 んで、地図造りはなんか作戦的に今後も使える行動だったみたい。へー、ああいうのも役に立つのね。 それで言うと、天候予測とかもかなりいい線いってると思う。 急ぐべきか、のんびりすべきかって結構違うと思うのよね。 あとは振り返ってみれば、アリアちゃんの狩猟も良かったんだなぁ。 あたしには無駄にしか見えなかったけど、いい方向に転ぶものね。 あぁして生き残ってきたのかな? みんな。だとすると、あたしもやったほうがいいんだろうな。 次からはやってみようかな。何ができるかわからないけど。 さて、今日も無事に帰ってこれましたし、皆少し仲良くなれました。 あぁ! 昨日はグレンダール神への感謝の言葉を書き忘れてるじゃない!‥‥って、そんなこと、もう誰も怒らないのにね。 ‥‥。グレンダールの炎剣に誓って、神の導きに感謝いたしますっと。 (新規登場エネミィ:ゾンビ・グール・ゴルゴル) (知識:全部) ●第二話 外伝「きっかけ」 ココのテント群もすっかり見慣れたけど、なかなか多いわよね。 まだ街の近くってことで武器防具商だけじゃなくて、職人なんかも結構な数来てるみたい。 商機ってことみたいであちこちの商人とか広告屋があっちこっち走ってる。 まぁ、物珍しいんで、ちょいとカタログを見てたら面白いもの発見。展開式の小型のボウガン、だって。 少しの動作で撃てる武器だけに、魔法使いながらでも十分使えそう。‥‥あたしには無理だけど。 ん‥‥? あたしには無理でも、アリアちゃんになら‥‥? ふふっ、リーダーに聞いてみようかな。 話をしてみて、バンクシェリアはすっかり快諾してくれたのはいいんだけど‥‥。 カモミール、その過ごし方は明らかに称号に見合わないぐうたらよ‥‥。‥‥まぁ、いいけどさぁ。 材料はこの間の任務で手に入ったものと、象牙で作れる、みたい。カモミール曰く。 そういうことなら、後はアリアちゃんを引っ張って、材料揃えて、職人に頼むだけね。 ということで、象牙の買い出しに行ったんだけど‥‥ 重い! 重い! 重い! 重い! 重い! 重い!!!!! 10キロですって! これ! 10でこれ!? ばっかじゃないの!? あのドレイクどうやってあんな大剣振り回して戦ってんの!? やっぱ蛮族普通じゃない!! どうにか運び込んで(最終的にアリアちゃんが持ってくれたけど)職人さんもやってくれるみたい。 なんだかアリアちゃんの方は嬉しいような、恥ずかしいようなって感じで、そわそわしてた。 何か言おうとしてた気がしたけど、聞きそびれちゃったな。 カモミールの付添いの元、アリアちゃんが職人さんの元へ。採寸とかですぐ終わると思うけど。 カモミールの用事が終わってから一緒に帰ってくるだろうし、しばらくかかるかな? まぁ、結果的にギクシャクしてたあの二人を一緒にさせることができたのはラッキーってとこかな。 あの二人は結成式の時も、その前の依頼の時も、いまいちな関係性だったし。これで少しは改善するといいんだけど。 ついでに、よくわかんないこのドレイクと話をしたけど、やっぱよくわかんない。 実現不可能‥‥だと、あたしは思うけど、コイツは平然と自分の夢を言ってのけてる。 信じてもいいものかどうか。いや、ウソ言ってるようには見えないんだけどね。このヒト基本的に直球だし。 まだ、彼が本当に言ってることを成したいのかはわからない。 これは、信じたくないってところが大きいのかな? どっちでもかわらないからどうでもいいのかな? でも、彼の事を知るきっかけにはなったかな。ちょっとだけ、色眼鏡を外して‥‥ ‥‥彼を蛮族としてみないのはいいけど、彼を人族としても見れないじゃん。だってあの言動、人の考えじゃないし。 えー、と、そのばあいは‥‥うーん‥‥。種族:バンクシェリアっていう知的生命体として、みるか‥‥な? ナニソレ。 ●第三話 「其等と出会う」 カモミールに工面してもらって薬を作ったわ。 昔は普通の薬程度で十分だったけど、現場に出る以上は実践的な物を作らなきゃいけないし、結構大変。 まぁ、治療魔法の使い手がいるにしても、咄嗟の時は自分の手が頼りだしね。 ふー‥‥ん‥‥。香りも上々。色もオッケーね。ばっちり。 下された司令は敵拠点近辺の遺跡探索。まぁ、威力偵察ってやつよ。 先導としてビリーとかいう人らしい。ビリリアス・エスメラルダ バジリスクのウィークリングってことで、とーっても珍しい感じ。 ……って言っても、本物が身近にいる手前、驚きは少ないけど。 ビリーさんの見解としても、アリアちゃんとバンクシェリアの会話は 大変仲の悪いものらしい。まぁ、みてればわかるけど……やっぱそうなのね。 人族とは無理でも、蛮族とは仲良くできないもんなのかしら。お互い。 アリアちゃんはどうかわからないけど、バンクシェリアは引かないだろうし、難しいかなぁ。 いざ到着。山の麓に広がる森林地帯を抜けた、小高い崖の上にお目当ての場所。 ビリーさんと別れて中に潜入。あーっ、いいものね遺跡って。どの様式の建物かしら。 みた感じはアル・メナス様式。石造りの回廊に機能性と幾何学的文様が配置された大広間。 アリアちゃんの出番ね。魔動機語は他の人じゃわからないしね。 中は照明機構が死んでるのか暗いわ。まぁ、ランタンでもつけてと。 強烈な爆発音とともに入り口が崩れ落ちたわ。 何がおきたのかわからなかったけど、どうやら爆破されたかトラップが作動したかってことらしい。 虎穴になんとやら。しょうがないし進みましょ。背水の陣ともいうかも。 最初の部屋の中には台座。その上にくぼみが二つ。何かの仕掛けみたい。 扉は他に三つ。開かずの扉が一つ。まぁセオリー通りならって感じね。 すると他二つを開ければいいってことね。基本基本。 1つ目の部屋には絵画。図廟絵のパロディっぽい感じ。この部屋は明るいのね。 アリアちゃんはすっごい関心持ってたけど、読み解くのは難しそうね。 歴史物は苦手。……一応セージだけどさ。 絵の近くに窪みみたいのがあるってことだけど、とりあえずは無視。 ここにも開かずの扉もあったけどとりあえず戻って2つ目の部屋に。 結局明るかったのはこの部屋だけね。 行こうとしたら通路に宝箱。完全に狙ってるんだ。無視無視ってことで 予定通り部屋に。はたまたアンデッド。スケルトンにグール。 まぁさした相手でもないけど……。周囲はアンデッド化はしてないけど死体の山。 ……何かしらね。嫌な感じ。死体置き場だなんて趣味が悪いわ。 蛮族たちが置いておくとも思えないし。廃棄された?だとしたらもっとアンデッドがいる方が自然。 うんー……?ん?地図…………外から比べて………治りきってないような? 思案してたら奥にさらに部屋。 マッピングしてると奥に装置があるみたい。アリアちゃんの出番よー。 どうやら謎かけがあっただけ。ヒントがあるかもしれないから、他所に行くのが吉。 そんなわけで一時後退。 で、なんかみんなして宝箱まで一気に戻ってったみたい。元気ねー。 うわっ。なんか、みんなひどい匂いで戻ってきたっ。 宝箱のぉ……毒……。はぁ……なるほど? バンクシェリアが二人を叱りつけてる。二人とも素直に聞いてるって感じじゃないけど。 まぁ、罠とわかっていながら迂闊な行動は慎めってね。 バンクシェリアの言いたいことはわかるんだよねぇ。 でも、ここでやる説教じゃあないわね。敵地……なんだし。帰ってからにしましょうね。 アリアちゃんが何か言ってるけど、多分喧嘩腰なんだろうなぁ。 それはさておき絵画の部屋に戻りまして。 窪みから鍵を引っ張り出してた。アリアちゃん器用ねぇ。 それで、ここの奥の部屋へ。なかに鎖で繋がれた3mもの異形の巨漢。 うえー、こわい。でも動けなさそうなら問題ないかな。 さてまた宝箱。今度こそいいところ見せてよねっカモミー……あぁ……モンスター…… 宝箱に擬態した魔物。と言っても一匹じゃ……。あー。あー。やっぱり出る幕もなかったわ。 無事になんかよくわからない物質でできたオブジェ。 台座にはめられそうだけどもう一個必要ね。 バンクシェリアが巨漢に近づいていったら。巨漢が消えた。幻影だったらしい。 なんなの。どういう意図……? 外見と合わない内側の空間……正体不明の化け物の幻影。異質に放棄されたアンデッド。 侵入者を逃さない崩れた入り口。見たこともないオブジェ。アル・メナス様式。……。 蛮族がいないし、その領分でもないと考えれば、ここは魔剣の迷宮? あ、とみんな戻って謎かけの部屋に。 謎かけはバレット系魔法の分類によるものみたい。 レーザーの説明をしようとするアリアちゃんはなかなか大変そう。 我ながら糸と縫い針で例えたのは好例だったわ。 でもレーザー撃たれて痛いことのたとえとしてボウガン向けるのはこわいから勘弁してね。 無事コード入力が終わって手に入ったのは不思議な形をしたオブジェ。 両方見比べてみると糸巻きと針?とにかく配置よ配置。 魔剣の迷宮なんだとしたらこの先に、試練が待ってるはず……。 最初の部屋の台座にオブジェをはめ込むと開かずの間が開き螺旋階段が深淵へ続いてる。 行くっきゃないわねー。 ギーッタン、トントン。ギーッタン、トントン。ギーッタン、トントン。 あまり聞かない音。何かしらねって思ったら機織りが自動で布を織り続けてる。 果てなく続くかのような一つ繋ぎの反物の山。 頭上は先が消えてるけど、どこかからか降ってくる無限の糸。 永遠を暗示するかのような部屋。 幻想的。魔剣の迷宮じゃなければうっとりしそうなもんだけど、残念ね。 「チカラヲミセヨ」ってんなら魔剣をぶっ壊しちゃうくらい見せてやるわよー! 戦う意思を見せると突如布が激流のようにうねって形を成して行く。ゴーレム! 激戦になりそうだったけどわりと危なげなく勝利。 ちょっとバンクシェリアが食らってたけどやっぱ頑丈ね。馬並み。いや、それ以上。 いやー私らも成長したもんだ。 で出てきたのは第七世代魔剣。魔動機文明にこの製法が残ってたなんてね。 布の魔剣で形状は変幻自在。布にも盾にも槍にも鎧にもなる不思議なもの。 でも、技術的に形状を固着してやることはもう無理だろうからなぁ。 魔剣の意思と持ち主次第ってところね。布の扱いなんてカモミールしかできないだろうしパスパス。 やーっと終わったーぁ! 3日かかるかと思われたけど、1日で済んで助かったわ。 さー、帰ろう帰ろうって、風景を眺めると蛮都ハーゼらしい場所が遠目に見える。 ウッソ、近道になってんじゃん。今回の潜入作戦そのものは大収穫ってところね。 さて帰ろう帰ろう。ってしてたら今度はカモミールとバンクシェリアが全然来ないの。 お話長いって。帰ったらお説教に体を洗うのに忙しいんだから。 ……私以外が。 ハテ、入り口は結局閉じたままだったけど魔剣と関係ないってことなんだ……。 ん?じゃあなんで崩れたんだろう?まぁいいわね、事故事故。 はー、今日も配給の食事の時間がきたわ。これよこれこれ グレンダールの金床に誓って。いただ(以下は何かをこぼした跡で読めない) (新規登場エネミィ:スケルトンアーチャー・チェストトラップビースト・ダグウィ・レンザバン) (知識:全部) ●第四話「出立に謀る」 ◆1日目 今日は護衛任務。どうやら貴族様方を暗殺するやつらが来てるらしいわ。 そのため、わたし達ががんばって子爵様を守らなきゃーって話。ま、楽じゃないわね。 でも、子爵様は交友会にも出なきゃいけないし、視察もする。つまり、人と交流する場がある。 だけど私兵の人たちは動かすと政治問題になっちゃう。こまーっちゃうから私たちの出番ってことね! そんな中で、一応心配してバンクシェリアに、貴族たちの中に行くと侮辱されたりして困るかもって聞いたら 笑い飛ばされちゃった……まではよかったんだけど…… その後、戦争を、私達の、人族の死を蔑に、下らないものみたいに言われた。そんなの、許せない。 で、怒って出てっちゃった。あとでアリアちゃんに呼び止められた。 アリアちゃんはわたしを止めに来たと思ったけど、不安に思ってたみたい。 すっかり。いつもと逆の事されちゃった。そして初めて、マズかったって思った。 仲良く円満に……とまではいかないにしても、仲間として一緒に居られないと、辛いもん。私。 教えられた。人族が攻撃すれば、蛮族が死ぬ。アリアちゃんの友達の兄弟もそれで死んだって。 こうして人族も、蛮族も、憎しみの連鎖で繋がってる。それは、神代の時代からの因習。 今から変えることもできないし、私達の根底にある価値観もぶち壊そうとするバンクシェリアの言い分は全然理解できない。 でも、その因習を取っ払えるんなら、それはある種の理想なんだと思う。 追いかけてきたバンクシェリアは謝ってくれた。何で怒ってるのか、わかったみたい。 (でもわかってなかった、ってアリアちゃんが言ってた。もうよくわかんないね。 悪いものでも食べたのかと思ったけど、カモミールが教えてくれたっぽいなぁって感じ。 後から聞いても正しそう) まぁ、気分を切り替えて任務任務。任務前にもバンクシェリアが謝ってきた。 今度はアリアちゃんにコッテリ絞られたみたいで、なんだかむしろ可哀想に……ってかんじ。 わたしも何だかんだ悪かったし、許すけど……。なんか、今まで感じてた違和感が随分出てきたなぁ。 ついに噴出しました!って感じ。 そんな光景を見てた子爵は笑いながらも視察をするぞと言われてお仕事はじめ。 (ところで、謝ってくるのを「悪いもの食べた?」って聞いたのを 食べたらなおさら悪化するってなんで知ってるのこの子爵?) 30……何班だっけ。の一人が声をかけてきて腕前勝負をしかけてきた。 バンクシェリアが応じて、興に乗った子爵様まで教練始めちゃった。 でも、子爵のはとんでもない。私達なんかより全然力量差がある。 やれやれ。守る必要ないんじゃないって思うくらいじゃない。 しかし、バンクシェリアは褒めてたけど、さっきからの口ぶりからしてお二人とも仲がよろしい。 旧知の仲で友好関係なのねー。ほんっと変人。強いくせに享楽的スギ。おかしい。 蛮族とお友達になるなんて、貴族として隙だらけなんじゃないの? いいけど。 結局バンクシェリアは弟子入りするってことになっちゃって……いやはや、ほーんと仲良いんだ。 終わってみんなと合流。 あれこれ話して狙われている貴族が子爵の他に一人いるらしい。 暗殺されそうだけど、何処に刺客がいるかわからない。 はぁー、こんなのってアリ?って感じ。 ハト派に嗅ぎつけられないようにはもう一個の貴族さんも守る必要がありそう。つまり、倒せってこと。 まぁ相談もひと段落して私がバンクシェリアが二度も謝ってきたのは二人のおかげってわかってるし それにお礼をしたらカモミールは大したことじゃあないって返答。 素直に喜んでいいのに。 でも、アリアちゃんは無神経だといって、バンクシェリアは気に障ることをしまくってるらしい。 いっくら指摘しても、治らないって。アイツ何を理解してないの?指摘されてることを理解してないのか その中に込められた思いを理解してないのか……相手の事を思ってない、なのかな。きっと。 カモミールがバンクシェリアに私達はバンクシェリアにとってどういう存在なのかを聞いてた。 身内……家族みたいなものらしい。 わたし達でも同じこと。失えば悲しいって、そう言ってた。 話しててバンクシェリアと私たち……人族? いや、私と? は随分大きい意識の違いがあるのはわかった。 彼の中での神様は「不当に暴力を与える存在」であって、敬うべきものではないらしい。 自分たちを作ってくれた神様たちで、癒しの術も授けてくれるのにね。おかしいと思う。 でも、まぁ、私たちの神殿への敬意は怪我を治してくれるとかもあるし、その辺は蛮族にないかもなぁ。 私たちの世界での神様はもっと身近で、もっと優しくて、もっと当たり前な存在なのに。 彼の夢は神様ができなかったこと。彼のいう不当な強要さえしてくる存在ができなかったこと。 そんなことできっこない。そう言ったらアリアちゃんも賛同してきてくれて、また不思議な言葉で喋りはじめた。 そしたら二人の間で口論が始まった。なんでも「怒らせた事の理解」ができてない、らしい。よく分かるよね、こういうの。 またバンクシェリアが頭を下げ神の信徒に対して酷いことを言ったと、謝ったら急にアリアちゃんが怒りだして 天幕を出て行っちゃった。 天幕から駆け出していく彼女を追おうとしたけど、カモミールが行ってくれた。感謝。 リーダーとして私たちの命は大事に思っているというバンクシェリア。 でも彼はその小さなチームの仲間達さえまとめられない。 そう指摘したけど彼は何も気にならない、って。自分の周囲の仲間も味方につけられない 仲間を気にかけない、そんな人に、誰もついてきやしない。 そして、こんな小隊、だなんて卑下したのも彼。 密約を帯びて釈放された恩義も、私達も、自分自身も「卑下していいもの」な訳がない。 ってことをやーっと理解してくれたみたい。 やっとこさ少しマシになった顔で大空へ飛んで行った。仲直りできるといいんだけど。 かくしてクラベス隊長のテーブルを借りて書き終えたのだ。 横で見てたけどクラベス隊長ってめちゃくちゃ字がうまいんだよねぇ。すごいの。 知識もあって大人の男性って感じ。 書き終わって帰ろうとしたら、まだ誰も戻ってきてないからどうしたもんかと迷っていたら 子爵の方から「帰っていいよ」ってお達しが。まぁ、夜の間だけど この天幕の中なら問題ないでしょうし、隊長もいるし、すぐみんな戻ってくるでしょ。 さーてと、夜のうちに帰還組の怪しい方に出向くとしましょーか! 脳筋共の部屋でセンス・エネミィには誰も引っかからずの、情報もなし。 しょうがないからお食事ついでに配膳チームに話を聞いてもこれも外れ。 たまたまいた31班の脳筋ズ(昼にバンクシェリアに絡んできた人たち)にも検査して問題なし。 しょーがない。お食事の手配を手伝っておーしまい。あっ、報告しなきゃ……。 (ケチャップらしいものの跡に潰されている)告に戻ったあともう一回(マヨネーズ) 報告したら、アリアちゃんだけが残ってた。不思議に思ったけど、外には子爵とバンクシェリアが。稽古っぽい。仲いいね。 ◆2日目 朝起きて、カモミールと合流。 食糧班のところにいって、配膳係の娘を見つける。話してみても普通の子。カワイイ以外は変な感じはない。敵意もなし。 しょうがないし、天幕設置中の場所へ。準備も終わってるみたいで、地図と潜入の予想図をば。 果たしてこれが使い物になるか……。話を聞いても、貴族は外部からもそこそこくるみたい。大変そう。 戻ってみたらお昼頃。カモミールが居なくなって、バンクシェリアが来る前に子爵とお話し。 バンクシェリアと合流前にお話。ようは子爵は戦後の事を考えてたみたい。 バンクシェリアを植民地の支配者として、人族の属国を監視する者としたいみたい。 そして、反乱が起きにくいようにするってことみたい。 ラングシュア子爵、アリアちゃん、カモミール、そして……多分クラベス隊長も。 みんなバンクシェリアの事を考えてる。いつそれをバンクシェリアが気付くかはわからない。 気付くといいなぁ。 それはさておき今日もお仕事……て……、なんだか鬼気迫った何かが来る。パニクッてすぐは分からなかったけど ゴブリンが二匹。バンクシェリアが叩き伏せておしまい。 陽動っぽいとのことでバンクシェリアが見回りに出て、こっちが護衛。 バンクシェリアはどこか落ち着きがあって冷静な顔をしていた。 子爵に聞いても、はぐらかされておしまい。あの教練の間になにかしたかと思ったけど、そうでもないらしい。 アリアちゃんに謝って、その後いい感じに話が終わったのかな。いい関係になるといいんだけど。 昼の警備が終わって、ついに夜。本番! ここが天王山になるかしら。仕掛けてくるとしたら今日。 アリアちゃんが会食に行かないって言い出したけど、励ましてみる。この子は妙に自信がないところがある。 励ましたのが功を奏したのか、会食に行ってくれるって言ってくれた。 本番。わたしとカモミールが外回り。アリアちゃんとバンクシェリアが中で警備。 会食の事態は急変。何でもナプキンに毒が仕込まれてたとか。聞きつけて馬を駆け、食糧班の元に向かう。 ナプキンを配置した人間にも、給仕のカワイイ子にもそんなことはないという。 変な人は出入りしてない、既に付けられてた毒。これが表わすのは一体? 会食の人たち全員を狙った物。周到な用意。あんまりにも手間がかかってる。そこまで時間をかけた暗殺計画。 やっぱ敵としても、妨害したいってことなんでしょうねェ。 ゴブリン突撃隊も、この毒も、暗殺という面では正しい。 でも、妙に引っかかる。麻痺しても、その場で動けなくなるだけで、大きな被害にはならないハズ。 妙な胸騒ぎだけが、私達を走らせる。天幕を回ってみても、変な人がいたようには見えない。 クラベス隊長は「指揮系統を乱すこと」が狙いだっていう。みんなが疑心暗鬼になると不味いんだって。 護衛が終わって夜解散。ファミリアを返してもらおうと視界を集中すると、子爵の天幕にいるみたい。 馬に指示を出してそっちに移動してもらいつつ、状況を見てると バンクシェリアとアリアは仲いいような悪いようなって会話をしている。 すこしヒートアップした時もあったけど、問題なさそう。最後は柔らかい表情してたし。 そしたら慌てたように駆け出していく。目が回る~~~~。 馬を彫像にして、天幕に入る。バンクシェリアから話を聞いて、追っかけてく。 ファミリア~~。アリアちゃんを止めてぇ~。寝る前にそんなに走らせないで~~。ぅえ~。視界が回る~。 フードの中から出てくれ~。 はぁ。グレンダールの豪炎にかけて。今日という日が無事に済ませてくれてありがとうございます。 あっ、寝る前にファミリアを新しいの作らないと。 ◆3日目 んぁ~!! 朝起きたけど、今日もいい天気♪ ってこともないわね。 昨日の件でバンクシェリアとアリアちゃんの仲はいい感じによくなったと思う。 さぁて、ご飯食べたら合流して、気合入れていかないとね。 カモミールと合流。 今日はとりあえず貴族さんらの乗り物の確認。その後は外周の確認作業らしい。 ここにきて外の見張りをしに行くっていうのも、なかなか度胸座ってるわ。 ということで、探索開始。あ、ファミリアは子爵の天幕に入れて、っと。 まず、貴族の皆さんのところ。とりあえずいい手際で進んでいく。仕掛けはなし。 よーし、よしよし。これでもう心配はあんまりないわ。 はいどー!っと馬で駆け、草原を抜けて河川域でボートを発見。乗り込んできたみたい。 ……、これはー、うーん。もっと早く見つけておけばまた違っただろうに。困る。 とりあえず、追っかけなきゃ。ファミリアがいれば、陣の中は見れるし……うん!? 見れたけどなにこれ!……天幕の枠木に……ボ、ボルト? あ、あえ……? バンクシェリアとアリアちゃんが取っ組み合ってる! こ、これ、これ、これは……これは……。あっあっあっ、あー……。 バンクシェリアが完全に組み敷いてる。んで、踏んづけて……弓蹴っ飛ばして……あーぁ…… なにかお互い喚き散らして……あっ、分かれてっちゃ……アリアちゃんでてちゃった……。 バンクシェリアは!? クラベス隊長は……!? 追わない……。もうっ!! 何してんのあの人たち!! カモミールに言われてた物を書き終えて、赤青の目に文章を映して、情報は渡した。 一応全部写し終えた。子爵なら、クラベス隊長なら何かわかるかな。暗殺の件がこれでよく運べばいいけど……。 ただ、私にとってもっと大事なのは、アリアちゃんと、バンクシェリアの方。 ファミリアにアリアちゃんを尾行させてどこにいるのかはわかってる。 カモミールに話したら追っかけるって話になったんだけど…… 今までの事をカモミールが全部教えてくれた。 バンクシェリアとアリアの関係、子爵との約束、罵詈雑言の嵐。 半分くらい何を言ってるのかわからなかった。言ってる意味がわからなかった。 なんでそんなことを言い爭ってんのあの馬鹿たち! 余りの事に異貌して、馬を駆ける。最初はカモミールを本陣におろしてから向かおうと思ったけど、こっちに向かってるみたい。 これならすぐにアリアちゃんに会って、説得して、帰れる。バンクシェリアが陣の中にいれば、問題ない。 それだけの時間で、連れ帰んなきゃ。 帰ろうとする先にアリアちゃんがいた。この際ちょうどいい。先に陣へ戻るつもりだったけど すぐさま会えるんならこっちのがいい。あの時殺されてないんだったら、皆許してくれるハズ。 だとしたら、アリアちゃんが居なくなってへんなことになる前に収めないと! 会えた。アリアちゃんは少しファミリアを嫌そうに見る。 バンクシェリアは危機感が足りない、と。それを何度伝えても全然変わらなかった……んだって。 分かんない。見えない。アリアちゃんはこうしてちゃんと喋ってくれてる。心配してるって。 なのになんでバンクシェリアとはああなっちゃうの? 危なっかしすぎてついていけない。部下になりたくない。だったら一人になりたい。 たった一人でどこへ行こうというの? 何をしようというの? バンクシェリアだって、一人じゃ何もできない。 アリアちゃんならなおさらの事。孤独にどっかへ行こうとする。賢いバジリスクならそれがどこまで無謀なことかわからないの アリアちゃんはだれをも駒だって言った。誰よりも場を冷静に見て、分析して、だれも信用できない。 それが、アリアちゃんの、いや、バジリスクの「王様」なんだとおもう。 あらゆるものを冷静に判断して、有効活用し、切り捨てる。 享楽的に世界を楽しみ、自分の想いを出すのなんかは、趣味の時だけだっていう。 二人とも、ずっと、攻撃的な言葉を言い合ってる。見て取れる。 こんなの、会話じゃあない。会話じゃあないよ。思いやりのある会話に聞こえない。 ミストキャッスル……。白熱する会話の中でそれが聞き取れた。そこに行くんだって、言ったんだと思う。 そこからさらにヒートアップしたから。行く宛て、それが蛮族の都。私達の攻める先。 理想を遂げる者の下につきたいと思った、強い人も弱い人も同じ顔をした世界が欲しいとも、アリアちゃんは言った。 ミストキャッスルに……そんなところは、無い。そして、行った未来は、殺し合い。 その未来が、今ここで起きかねない。二人とも殺し合いさえ起こしかねない。 そんなの嫌、絶対に嫌。仲間割れして殺し合いなんて、まっぴらごめんよ! 正気を失ってる、カモミールを叩く。おかしくなったアリアちゃんを殴りつける。 親しい人に語りかける言葉じゃない。 二人の、皆の会話はどう考えても異常。 理想を築く、そのために成長を破棄する。そんなことは許されない、 誰がリーダーに向いてるかわからない。 使えない存在は、要らない存在は消えるしかない。 だとしたら、私はどうなるの。家の中で居場所なんてどこにもなかった。 お母さんと話をしてるだけの生活。飽きてたわけじゃあない。その時は冒険がしたかった。 満たされていた。 でも、今ならわかる。色々知った今なら。その生活は体のいい……、牢獄だったって。 生かされ続けている。それは、人族世界の中でナイトメアは忌避されている。 かといって蛮族の中に入っていくことなんてできない。 じゃあ、私の居場所は、どこにも、ないの? それは違うと、アリアちゃんはいう。でも、そうじゃないの。力が全てじゃないの。 今の私は確かに力がある。蛮族の世界ではそれが正しい、のかもしれない。 でも、人族の社会において、それは必ずしも必要じゃあないの。本当に必要なのは、社会の一員としていること。 そのために、ナイトメアは足枷でしかなかった。ナイトメアであるというだけで、社会の一員から除外されてしまう。 私は人族の社会の中で、生きていきたい。 5年でミストキャッスルの王様になるとアリアちゃんはいう。ミストキャッスルにはいけない。 そうなればカモミールの言うとおり、敵対することになると思う。そして、それは、私達を切り捨てようとしているコト。 私達、こうして一緒に居たのに、誰も、誰の事を、理解してないし、信じれなかったの? みんな、みんな勝手すぎる。蛮族の言葉で語る二人はやっぱり、わかりあってない風に見える。 どこまで話しても、理解しあえてない。 同じ社会を作ろうとするバンクシェリアとアリアちゃんなのに、全然分かり合えてない。 その間にいる私達もまた、この二人とわかり合えてない。 独りじゃ何もできない。理想を遂げる事なんて到底出来やしない。それはアリアちゃんだってわかってる。 だから私達を誘ってミストキャッスルに行こうとしている。 そうだってわかってるなら、何で、バンクシェリアと手を取り合えないの!? 監視していたカモミールも、私達を上で見ていたクラベス隊長も、【宿題】を渡した子爵も 未熟な私達を殺そうとしたりしなかった。だったら、私達の成長を待ってくれている。 そういう私へ殺すと投げかけてくるアリアちゃん。 だとすれば、私はこの子をために、命を掛けなきゃいけない。 殺されたくなんかない。けど、この子のためには私も命を賭して訴えなきゃいけない。 アリアちゃんの腕を喉元に当てる。弩は、私に向いている。引けば、私は間違いなく死ぬ。 一緒にいたい。これを伝えるのにはこれしか考えつかなかった カモミールも一緒にいるって、殺させはしないって言ってくれた。 私だってそう。でも、わかってる。彼女は絶対に、帰っても殺されやしない。 だって、子爵もクラベス隊長も、今は、待ってくれているんだから。 やっとこさ折れてくれたみたい。アリアちゃんの力が抜けた右腕を喉元から放すとその手はカモミールの手と繋がれる。 あぁ、良かった。やっぱり、冷酷な、蛮族じゃあないんだ。 アリアちゃんは私の知ってる、不器用だけど人思いの恥ずかしがり屋の女の子なんだ。 帰ろうと歩き出したところでバンクシェリアは降りてきた。 「これまでの争い、戦争被害者を無駄死にはさせない。その理想を遂げるため、そのために協力してほしい」 そういうバンクシェリア。アリアちゃんはそれを真っ向から「ありえない」と叫ぶ。 理想を、誇りを、否定されても怒らないような奴は認められない、と叫ぶ。 怒っていると返すも、誰にもそれは伝わってない。自分に届いてない。だからアリアちゃんは怒ってる。 わかる。分かるよ、アリアちゃん。アリアちゃんが怒る理由。 そして、バンクシェリアは全然それを理解してない。本当に、理解してない。 でも、バンクシェリアの俺た角を掴むアリアちゃん。殺気を放つバンクシェリア。 ちがう! 何もわかってない! バンクシェリアも、アリアちゃんも! 特に、アリアちゃんは、さっきいったことなにもわかってない! そういうことは、そういう言葉は、仲間にするコトじゃない! ふざけろ! このアホ共! (って、ライトニング使ったのに関しては私も頭に血が上りすぎたなぁ……) 本当は帰ってからにしたかったのに! もっと冷静になってからにしたかったのに! 蛮族同士のいがみ合いの仕方なんか知らない! もっとお互いの事を理解しようっていう意思を出しなさいよ! お互いの事を理解してないのに言い合いすぎなのよ! バンクシェリアの部下になると死ぬってのは流石に言い過ぎよ、アリアちゃん。 それに、どっちの道につくかは私の自由。私の道は私が決めなきゃ! 未熟な二人が成長していった結果、どっちに行くかは私が決めるわ。 (しかし、この時アリアちゃん僕って言ってたわね……。意味間違えて覚えてるんじゃないかなぁ……。 女の子でも僕……いうか……。言うなぁ……) 精一杯の想いを込めて、バンクシェリアの顔を殴りつける。 これで、アリアちゃんと、バンクシェリアにちゃんと一発入れ終えた。 これでイーブン。ここからが本当のスタート地点。 がんばってね二人とも。まだ、あなた達の理想は理解できない。 もっとずっとあなた達が成長した時に、私もきっと成長している。その時私は、どちらを選ぶのかしら。 貴方達の選んだ道と、その時の私の道は、一緒になれるのかしら。 結局また言い合いしてる。カモミールには断りを入れて、この話は聞かないことにした。 あーぁ。本当にわかってんのコイツら。ホースちゃん、ブラッシングしてあげる。 本当に、バカばっかり。 ……、きっと違う君主像を描いているんだと思う。 ダメだぁ。止まんないわね。止めに入ろう。 バンクシェリアは死を悼んでいた。これは蛮族たちに相手のコトかな。 理想を語っているのに、その理想を遂げる最中に死に行く仲間へ何もしなかったことを怒ってるんだと思う。 でも違うの。バンクシェリアはちゃんと、死にゆく蛮族へとちゃんと想ってた。 それはちゃんとバンクシェリアの中にあるの。伝わってこないかもしれないけど。 自分のものになって欲しいとアリアちゃんはいう。 だけど今の二人のどっちにもついてはいけない。無理無理。無茶苦茶だし、理想に共感できないし。 いつかちゃんとどの道に行くか選ぶから、待ってね。 アリアちゃんは切り捨てられたゴブリンの様に、私達も見殺しにされることを恐れてるんだと思う。 きっと、私達のことを好きだから。そうなるとは思えない。 あぁっ! 子爵! そうだ子爵! どうなってんの!? え、一人!? ウッソ! ばかじゃないの!? に、ににににに、任務放棄よ任務放棄! あぁぁぁあああぁぁぁあああ~~~~~ 初めての任務失敗になるぅぅううう~~~~~!!!!!?!!!! 子爵様のお叱り会。 どうなるかびくびくしてたし、私が口開くとアリアちゃんがどうなるか分かんなかったからだまってたけど……。 おとがめなし! 労役で任務一回の刑! やったー! ラッキー! 実質罪状無しってことじゃない! セーフ、セーフよ。 今回の御給金も出る! ギリギリ冒険者の体を保つことができたわ。 子爵命令で発見した穴を捜索しに出かけることに。はぁ~~~ほんとによかった。 カモミールも緊張感はあったみたい。 アデュラリアを引きとめてくれとバンクシェリアは言ってきた。どうにも固すぎ。 肩に力入りすぎって。 カモミールは言う。「王を意識しすぎ」って。お友達ってそんなに難しいのかなぁ。 はー。困るなぁ。 ま、とりあえず今日を無事に終わることを祈っとかないとな。 グレンダールの炎髪にかけて。あの二人を仲良くしてくれますように。 ……ゴメン。やっぱライフォス様、サカロス様。どうかよろしくお願いします。 酒……酒のパゥワならどうにかなるかしら。サカロス様~~~。 さて、現場に行ってみて捜索すると、大穴。なんか箱っぽいものを引っ張ってきて、掘削中みたい? 結構陣の方向に近い方に掘ってるみたい。マズイ。 さっさと行こう。 躍り出た大広間には箱がドーン! ドリルがドーン! 蛮族がドドドドーン! えぇ……。騎獣とかじゃなくて、人力で回してるって……ローテクっていうか、こう やっぱ蛮族って脳筋だわ。筋肉は全てを解決するわけじゃないのよ。 でも戦闘は過酷。バンクシェリアも、カモミールも傷つき死にかけてた。スッゴイ危なかった。 私も、アリアちゃんも必死に戦って、二人とも死なずに済んだわ。 アリアちゃんは何度も喧嘩はしてたけど、結局気にしまくってたみたい。 バンクシェリアが倒れた時の慌て様はやっぱり仲間として頼りにしているんだと思う。 やーれやれ。本当に、たいへんだなぁこれ。みんながちゃんと深いところで繋がってんのに それを表に出さないで、喋らないから喧嘩するんだと思うんだけどー。 結局生き残ってるのはバルカンだけ。連れ帰ってどうなるか分かんないけど。 色々持って帰ろう。おっ、コイツいいもの持ってんじゃーん! あ、こいつも! すごいすごい。 今度の任務は御給金でないかもしんないから、この稼ぎは大事ね。 さて、帰ろうっておもったら、バンクシェリアが蛮族たちを供養してた。 うん。やっぱり、蛮族の死自体は悼んでる。 茨の道だと思うけど、早く道を見極めてね。その道は余りにも苦しい道よ。 アリアちゃん。リーダーになるというんなら、バンクシェリアにもちゃんと声を掛けなきゃだめよ。 同じ道を歩むもの同士なんだから。 (新規登場エネミィ:タロス・ソルジャー、レッドキャップ・ボマー、バルカン) (知識:全部) 今回の日記は余りにもわかりにくい。絶対にそうだ。一週間後には分かりにくくなってること間違いない。 ●第四話 外伝1「かみさま」 バンクシェリアは神様が私達を戦わせたいのか、私達をどうしたいのかを聞いてきた。 私にはやっぱり、魂はどんなものだとしても祝福して現世に誕生しているからなぁ。 神様たちは私達を祝福してるんだと思う。 大事に思ってるんだと思う。神様たちの思い思いの方法で導くにしても、その果てが戦いだとしても。 でも、その祝福でもたらされた力をどう使うのかは私たち次第。 そこだけは私達に許されたこと。 大丈夫、私達が善く生きるのであれば、神様たちが怒ったりしないわ。 ●第四話 外伝2「ちから」 この駐屯地ももうお役御免。別の場所への移動が始まってる。 あちこちのお店も閉店続きで残ってる冒険者の数も減って来たわ。 そんな中、ストラスを作ってくれた工房も最終受注日の刻限が迫ってきてるみたい。 チラシを貰って、少し考える。魔剣持ち二人はともかく、アリアちゃんには関係あるもの。 思い返せばストラスを作ってから随分経つ。 何だかんだ修羅場は抜けてきた私達。結構実力もついてきたと思う。 そんじょそこらの連中には負ける気はしないわね。 お母さんの教えてくれた秘術、そろそろ使える気がするわ。 そう思いながらふと練習場をみるとアリアちゃんがストラスから快音を響かせている。 練習用の太矢を持っていってあげましょ。 あの娘も最初はおっかなびっくりだったけど、もう立派な冒険者って感じ。 まだ戦闘中は一番せわしないんだけどね。 話しかけてみると、今の武器に対する不満点を出してた。それがわかるくらい、上達しているんだ。 見立ては正しかったみたい。褒める褒める。 アリアちゃんもかつて幽閉状態だったみたい。それで、婚約を言い渡されて抜け出したって。 まだ結婚はしてないっていうけど‥‥まぁ、すごいお嬢様だったのかな? バンクシェリアがリーダー向きじゃあないってこと言ってたし、帝王学学んでるのかな……。 バジリスクだし、当然と言えば当然なのかな。 私にゃよくわかんないや。でも、お母さんとお父さんもお見合いだったっけ。そういうものなんだろうなぁ。 話を終えたときのアリアちゃんは大人びた顔をしていた。 鉄も人も熱いうちに叩け。苦難が人を成長させる。グレンダールの教え。 でも、あれは、私達のしってるアリアちゃんなのかな。私達と苦難を超えたアリアちゃんのつける顔じゃなかった気がする。 背伸びのし過ぎ、かな? それはともかく、本懐を忘れるところだった。 武器改造の話を持ちかけると少し断りを入れてそうになってた。 でも、不思議なことも一つ言ってた「返してもいいのか」、と。 妙なことを聞くんだなぁ。あれ? もしかして誰かからもらったものを返したことがない? それとも、今までただ与えられるだけだった? まぁ、借りた恩義は返すのが常。お金なら尚更。返してもらおうとは思う。 返してもいいよ、と答えると少しうれしそうな雰囲気だった気がする。不思議。ただより高いものはない……って奴かしら? 返すことができない状態が嫌、なのかも? だって私達、一方的に与え、与えられる関係じゃないもの。立場の同じ者同士だもんね。 そこまでいうと、アリアちゃんは快諾してくれた。私の手を取ってぶんぶん振りながら感謝と期待を顔をいっぱいに散りばめてた。 ここまで喜んでくれると、お金を渡した甲斐があったってものよねぇ。 これからのアリアちゃんの活躍に期待、っと。自信、もっと持てるといいね。 ●第四話 外伝3 「みらい」 バンクシェリアに薬の受け渡し。 次はインドミタブルポーション作成。 彼は褒めてくれるけども、勝手に身についたものなのよねぇ。 料理も薬品作成も生きてく上で身につけちゃったもので、芸術って意識がなかったのよね。 冒険者の宿での下働き時代は、うーん、ある程度必死でねぇ 解雇されないように料理とかのスキルを手に入れただけで 途中からは生活の一部で娯楽とか楽しみじゃあなかったのよね ま、褒められたのは嬉しいけど、トーゼンよね。 前回はそれもあってみんな助かったわけだし。 あぁいうときは心のそこからホッとするわ。 それとこういうこと覚えておいてよかったってね。 家族との繋がりも聞かれたわねー。 お母さんとはよくあったけど、お父さんとは少し。 お爺ちゃんお婆ちゃんとは殆ど会わず。 ……兄さんズは名前だけ。 なんというか悲しいよね、家族何に会えないって。 でもあの状態は悲しかったわけじゃないわ。 っていうと今となっては嘘になっちゃうけど、その時は苦じゃなかった。 お母さんが居てくれたから。 お母さんから思い出もいっぱいもらったし、魔法も教えてもらったし、苦労はしなかったわ。 いっぱい愛された。そう思ってる。 そう言えば、子爵の狙いを知ったからバンクシェリアには抜けるようには言った。 抜けて欲しいわけじゃないけど、でも彼の理想を本当に為すためであればそれは必要なこと。 と、思ったけど彼子爵の狙いを知ってて参加してるみたい。 はーぁ。こいつらのことほんとわかんない。 似た目的の敵同士、みたいなもんよー。ややこしいわよね。 でも裏を返せばある程度までは協力できる仲、なのかしらね。 子爵は利用すればいい。 人族と蛮族に間を取り持とうとするバンクシェリアは 子爵側からすれば交渉できる相手ではある。 必ずしも敵になる必要はない。 でもバンクシェリアからしたらそれは少し違うでしょうね。 …………子爵側からすればどう転んでも損にはならない。 バンクシェリアの国は人族には被害を及ぼさないでしょうし。 あー、もう、やっぱあの男気に食わない! なんでも計算づくって感じ! それでもこいつの考えは変わらないんでしょうね。 博愛主義ってやつなのかしら。少し、違うかな。 いつか彼はこの軍を抜ける。いや、アリアちゃんもそこを最終的に目指すのかも。 その時私はどうするんだろう。 人族の側を離れられるほど私は強くなってるかな。 それはきっと……。 グレンダールの炎髭にかけて、きっと私は裏切れない。 それはそれとして、バンクシェリアとアリアちゃんは曲を通じてわかりあってるらしい。 でも、あの大喧嘩した後で歌を歌ったりなんだりってできるのはある種の才能……なのかしらね。 バンクシェリアには受け入れ態勢があって、アリアちゃんにはそれがないってことなのかしら。 難しいわね。 そういえば、アリアちゃんと私が仲良い恋仲のように見えるって言ってた。 女の子同士よ、ないない。 あんまり関係ないけどバンクシェリアは性に関して寛容らしい。 それって歪んでると思うんだけど……。 うん……うーん……。やっぱり子爵とできてても、うーん。否定されたけど。 禁断の愛……になるのかしら……? この旅の先、私が何をするのかってのをバンクシェリアが聞いてきた。 私がなすべきこと……今までであれば、旅を続けること。 冒険がしたい、その一心で出たあの時と私の心は変わらない。 でもそれは今の私。未来何をしたいか、となるとわからない。 バンクシェリアとアリアちゃんの二人か、どちらにもついていかないか それを選ぶ。それは避けられない未来。 彼らのトンチンカンな夢に、ついていけるか、な、ぁ? 最終的な夢は冒険かもしれないけど その途中で蛮族と人族が共存する都作りをする? うーん、それとも誰かに娶られる? わかんないわねー。未来のことなんて。 リーダーたる、みんなの象徴たる人には みんなを引っ張る力が必要。それを持たなきゃダメなのよ。 バンクシェリアも、アリアちゃんも。 ●第四話 外伝4 「おもい」 ポーション作りも終わって、天幕を出る。 外に出るとむくれっつらのアリアちゃん。また誰かと喧嘩したのかな。 私と話をするときは穏やかな表情を浮かべてくれる。 いっぱい感謝の言葉を投げかけてくれる。 これが他の人にも向けられてるといいんだけどなぁ。 アリアちゃんにも助けられてるというと、あの子は納得してる感がなかった。 私は、アリアちゃんにも助けられてると思ってる。 蛮族たちとの会話。傷を癒やすことや、敵を射抜くこと。 それに、こうして会話をしてくれてる。 彼女と話をすることで、皆に影響が広がっていってる。 バンクシェリアが変わったのも、アリアちゃんとの喧嘩から。 それに、あんまりアリアちゃんには言えないけど 蛮族が比較的怖くなくなったのも、アリアちゃんのお蔭ってところはあるのよね。 本質的には違うのかもしれないけど、アリアちゃんは弱々しく、儚げだった。 そういう「蛮族は敵」っていう先入観を薄めてくれたのはアリアちゃんのお蔭。 ……、今もないかと言われれば、それも違うんだけどね。 まぁ、それはさておき、そういうところで助かってる。 それと、アリアちゃんはどうにも、バンクシェリアに自信を持ってほしいって感じみたい。 そしてその自信を表に出して欲しいみたい。 これ、きっと蛮族の言葉で喋ってる時って、そういうことを伝えてるんだろうなぁ。 …………。伝わって……ないでしょうねぇ……。 アリアちゃんは本当はライバルになんてなりたいわけじゃなかったのかもしれない。 あの子の独白はそんな風に映った。 意地を張ったように「バンクシェリアの事なんか見てない」といった彼女。 でも、彼女の言った言葉はバンクシェリアの事をつぶさに観察して そこから導き出された不満のそれだった。 アリアちゃん曰く、バンクシェリアは知識を手に入れても応用ができないみたい。 政治とか、戦略とか、指導者として、彼はまーったく適してないって考えてるみたい……なのかな? そして、彼についていくと死んじゃう、らしい。 どういう意味なんだろう。無謀な志って意味じゃないんだと思う。 指導者として適してない人間の元についていくなって意味なのかな? 自分にもついてくるなっていうってことは、 アリアちゃんも、自分はまだまだ未熟って思ってるってことなのかな? 生きていてと言われたけど、安定の結婚は反対されたっぽい。 魅力的、焦らない、と言われたけど、これは何を意味してたんだろう。 ……。あの時のアリアちゃんの顔は真剣そのものだったと思う。 本当はなんていいたかったんだろう。 本当のアリアちゃんはどのアリアちゃんなんだろう。 指導者の立場を争うアリアちゃん? バンクシェリアを人族の王に合わせようとしたアリアちゃん? 上位蛮族であることを誇示したアリアちゃん? それとも……私に生きていてと言ったアリアちゃん? ぼんやり浮かぶお月様が輝いてたから今日はグレンダール様はお休みで。 シーン様このシエラは今、夜の闇よりも深い暗黒の中に居るような思いです。 もしよければリルズ様と共にお導き下さい。 ……博愛のシーン様と、教徒がいるリルズ様なら、二人の間をよくしてくれる……よね? ●第四話 外伝5 「せけんばなし」 そろそろこの天幕ともお別れ。 旅支度をまとめつつ、次の駐屯地への準備をする。 ……でもあのバルカンどうすんのかな。前のゴブリンは全滅したらしいし……。 その前のコボルドやレッサーオーガはどうなったんだっけね。 そんなこと考えてたらカモミールがやってきた。 未来、呉服屋(?)を開くときに近くに居てくれないかって言われた。 でも私は私の未来なんかわかんない。イメージがなーい! だから、わかんない。ごめんねカモミール。期待に添えられるかさっぱりなの。 でもその時の申し出をするカモミールったら 「離れ離れになるのが寂しいから一緒にいない?」 っていうのを恥ずかしがってた。 ふふふ、不思議よね。そんなの普通なことなのに。 恥ずかしがり屋だーってからかっちゃった。 気を張ってるところばっかりだったから、そういう一面って少ないのよね。 あぁ言うところは可愛らしい一面だと思うんだけどね。英雄っぽくないけど。 あ、でもあの寝坊助癖は治すべきだわー。 そういえば彼女が作ってくれた服、まだ着てなかったんだよね。 うーん、もったいなくて、その、ね。冒険者だし、綺麗な服だし。 汚すわけにもいかないし……。公的な場に出ることになったら着よう。うん。 でもこれからどんどん人里離れて行くのに着る機会……あるかな……。 ある! 絶対!! あるはず。 …………多分。 そういえば戦い方が不思議になるって言うので笑わないでって言われた。 うーん、なんのことだかわかんなかったけどとりあえず笑っておいたわ。 いっぱい笑っておいたけど、どんな戦い方なんだろう。 楽しみ。……でも、笑わずに入られるかしらね? ●第五話 「守護を信ずる」 新しい駐屯地に来て荷ほどきしてって思ったけど割とすぐ次の目的地に向かうみたい。 息つく暇もないってのはこのことなんでしょうね〜。 ……、それだけ戦争が近づいてるってことなんだと思う。 思い返しても見れば、間違いなく敵はこっちを脅威と認識してきてる。 子爵暗殺の件だってそういうことなんだと思う。 このままじゃ力不足、よね。子爵に魔術の道具を頼もう。 お母さん、昔はできなかったけど今ならできると思う。 ルシェロイネの秘術、習得して見せるわ。私の冒険のために。 グレンダール様、私に戦いに勝ち残る力をお与えください。 それはそれとしてバルカンの説得。うまくいくのかしらね。 バンクシェリアが言うには魔術で拘束できるように構えておく必要はないとのこと。 ここを超えるべき壁。バンクシェリアも、アリアちゃんも。 少し不安もあったけど、どうにか和解は成立。イグニスの炎ってのはわかんないけど 力は貸してくれるみたい。 途中アリアちゃんが牢の中に入って言った時は不安があったけど 無事に事が進んだみたいで何より。二人の力で彼を説得できたのかしらね。 決め手はバンクシェリアだったみたいだし、バンクシェリアが一歩リードってところなのかな。 でも、二人とも堂々と話をしていたと思う。よかったんじゃないかしらね。 果たして、私にとって喜ぶべき結果なのかはわからないけれど……。 それはそれとして子爵は魔術道具の手配をしてくれるみたい。 やっぱり話せる人、ではあるのよねぇ……。 ただ、アリアちゃんを喪わせるの意味はバンクシェリアから引き剥がすこと。 また、仮に引き剥がしたり、現状の問題行動を起こしたアリアちゃんに何か重大な罰を与えないのは 「使えるから」、に収束するみたい。自分とともに歩まぬものが必ずしも敵ではないって。 彼の言い分はもっともだわ。……わからなくはないってのが悔しいところよ。 あの狂人!って言いたいけどそこまで踏まえてこその子爵という立場、なのかしらね……。 それはさておきいざ出発。 トラップまみれの森で出会ったのはクロスボウを二挺持つライカンスロープのレイラさん。 なんでもはみ出しコボルドの集落の守り手をしてるとか。 作戦として陣を貼るべき場所のすぐ近くにコボルドとライカンの集団。 そして彼らもまた蛮族に狙われているものたち。保護……ないし協力できれば と思っていた矢先、アードラーが飛び去っていった。間違いない、バレたんだ。 その場にいる全員が戦闘態勢に切り替わっていく。 私達はもちろん、レイラさん、コボルドたちまで。相手がどれほどいるのかもわからない。 既にここは本陣でなく、戦場なんだって、感じ。 バンクシェリアとアリアちゃんはコボルド相手に演説をはじめちゃってる。熱心、熱心。 ‥‥。聞いた話だと、おじいちゃんとかも騎士団出立の前にはああいった話をしてたみたい。 多分、内容は全然違うんだろうけど。‥‥。あれが、普通なんだよね、きっと。 アリアちゃんは軍師で、戦闘の攻勢を固める役目。多分この戦闘の基軸になる。 気負いすぎないようにはしてほしいけど、こういう集団戦は初めてなのかな? あぁいった演説する辺り、初めてじゃない、かな。 とにかく、力を入れ過ぎないでやってほしい。櫓の上から全体を見れるのはあの娘しかいないもの。 とと、私もそろそろ斥候にいったバンクシェリアとカモミールの話から敵を割り出していかないと。 はーっ! 戦場だと、あんまり書いてる余裕がないわね! 慌ただしく動く戦場ってのもそうだけど、長距離移動の繰り返し、繰り返し。 第一陣はさして脅威になる連中じゃなかったけど‥‥。次のは‥‥。数で勝負系か‥‥。 も~~~! あ~~~、休んでる暇がない~~~! (水を零したような跡と滲んだインク) ‥‥あぁ~。 ホースちゃん頑張って。アンタ一匹しか連れてこなかったのは間違いだったかもね。 連戦に次ぐ連戦ってなりそう。次のも‥‥か。鹵獲してきたボーアの治療はまたあとでになるわね‥‥。 コボルドちゃんたちにお願いするとして‥‥。飯食う暇もないわね‥‥。ホント‥‥。 うぅー、汗でぐっしょり。 それもそうよね、気温が高い地域で、森の中とは言え連戦。休む間もなくってなると‥‥。 それに、流石に銃で狙われた時はひやっとしたわ。でも、まぁ、見よう見まねでレイピアを振るったらどうにかなるもんなのね。 これも騎士の血ってやつなのかしら。 ‥‥なんて、冗談よ、冗談。ただのまぐれ。 ‥‥‥‥。あれで、何体だったのかしら。私達を明確に殺そうとして来た数は、私達が殺した数は。 飛行部隊。爆薬。明確な拠点攻撃作戦。 今までも、大分蛮族を殺してきたけど、この短い間にこんなにも多くの相手から殺意を向けられたのは初めて。 ヤなもんね。戦争って。バンクシェリアが無くしたがるのも、まぁ、うなずけるわ。 戦地に立って初めて―― これで終わりじゃないのね‥‥。ぐ、ぅっ。見る限り、今度は大将かしら? 私も知らないけど、今までで一番強い集団。これで最後を祈るしかないわね。 行くわよ、ホースちゃん。踏ん張ってよね。ココが天王山よ! おわったぁ~~~~‥‥ 喜びよりも安心感、安心感よりも疲労感。 最後の最後までヤツらは戦いを止めず、逃げもせず、屈しなかった。 カモミールには少しみっともない所みせちゃったけど‥‥ま、いいわ。 戦勝の祝辞までやっちゃってる。もう、ホントに。あれじゃ傭兵団の団長か、将軍ってところね。 ‥‥。ま、そういうもんか。 戦闘慣れしきった、蛮族、か。私達とは住んでる世界がそもそも違う‥‥ってところなのかな。 闘争に行き、闘争に死ぬ。あの殺意剥き出しの連中みたいに。 ‥‥私は違うと本当に言い切れるのかな? 私だって、襲ってきた奴らを倒した。明確に殺意を持って。 あれだけの数相手に、自分の持てる力を全力でぶつけた。 おかげで魔力なんてすっからかんだけど。 生き残れないから殺した。間違いじゃない。でも、殺したいから、戦いたいから殺した。 そうじゃない、と言い切れるかしら。‥‥。自信なんか、かけらもないわ。必死だった。 そうね、必死だったわ。相手を殺すことに。夢中だったといえるほどに、そう錯覚するほどに。 結局、疑問に思って聞いたけど、レイラさんは、そういう世界が嫌でライカンスロープの里を抜けたらしい。 んでもって、コボルドたちを守るために闘ってるって。同じ戦場のはずなのに、彼女は今に満足してるみたい。 守るべき者の存在がその意識を変えた、のかな。 私も、今いる世界がいやなら、レイラさんみたいに抜けてもいいのかな。でも、それは。‥‥。うーん。 バンクシェリアは結局、殺しはするけど、本願ではないってのは変わらず。 彼の願いも変わらず。ただ、違うことと言えば、戦うこと自体は好きみたい。殺しは好きじゃないけど、戦いは好き。 戦争を、争いを放棄すると打ち出しているのに、闘争を望んでいる。 高めた武術の生かせる場を殺した先、そのエネルギーは何処へ向かうのかしら。 娯楽にでもするのかしらね? 今の私には、矛盾にしか見えないけど。 そんなことは重要じゃない。彼もまた、嫌なら抜けていいという。 今であればまだ平気、と。 本当に? 夜の風を浴びながら、筆を走らせる。何だかんだ、これが落ち着くのよね。 戦勝の火酒も私に火をつけない。ただ、この涼しげな音色だけが癒してくれる。‥‥なぁんちゃって。 宴もたけなわ。とはいえ月がもうこんな高さに来てる。そろそろ片付けに行きましょうか。 私の居るべき場所は。ありたい私の姿は。どれだろう。 もう少し夜風に当たろう。一人になって。この夜の中、何か変わるだろうか。 戦争という大河。その中に喜び勇んで入った私は、今ただ流されている。 みんなみたいに舟があればこの中も進んでいけるんだろうか。 私の夜空に、北極星は無い。 (新規登場エネミィ:アンドロスコーピオン、アードラー、ボガードソーズマン、ボーア、ケンタウロス、 トロール、オーガ、ロームパペット、ドゥーム) (知識:オーガ以外全部) ●第五話 外伝1「ゆるさん」 あんの、クソドレイク! ふざけるな、ばーか! おふざけで結婚なんて言ってくるんじゃないっての! 人が、戦争で悩んで! 自分の居場所を探してる時に! そんなこと言って! ウッソで~~~す! って言われんのが! どんなに! ‥‥くぅ! ‥‥書いてて、は、恥ずかしい! ホ、本気にしたのが、馬鹿みたいじゃない。 はー。カモミールにも、アリアちゃんにも恥ずかしいところを見せたような気がするわ。 ホント。ホント。くっそう。 いつか見てなさいよね‥‥。あの時ライトニング当てとくべきだったわ‥‥。 軽々しく結婚! って言えちゃうくらい一夫多妻制が進んでるってことなのかしらね。 そう言えば、アリアちゃんとどうのっていってたけど、アリアちゃんは女の子だし、私も女だし‥‥。 また冗談でだまくらかそうって話なのかしら。でも、うーん。そういうつもりは。うーん。うーん。気になる。 ●第六話「戦に赴く」 ◆攻勢の一手 クラベス隊長がコボルドの里で代理進駐することに。私達は本陣に戻って、穢れの剣破壊作戦にでるとのこと。 敵の本陣への潜入作戦。殺意の目は前回の度を越えてるでしょうねェ‥‥。 まぁ、成功すればちゃっちゃと返してくれるみたいだし、サッといってサッと帰れば‥‥ってできればいいんだけど。 移動した荒野では「落とし穴」生成装置なるヘンテコなものが置いてあった。 もしかしたら使い物になるかもってことで、バンクシェリアが持っていってた。あんなの、いつ使うんだろ‥‥。 他にも、風化した魔方陣があったり、鰐たちの‥‥いや動物たちのオアシス。いいわねー。 できることなら、あぁいうところでのんびりしたいわよねー。 ‥‥そういえば、この悪戯装置、いつか使ってやろ。誰に使おっかなー。んー。暇な時に自分に使おっかなー。 って思ってたら敵の砦が見えてきた。さらば私の冒険心。 カモミールが偵察に出てる合間に地図の書き上げと、工程のチェック。 見えてる情報だけでも記載しておかないとね。 結局、裏口からの侵入。見張りは1、屋上にもいるみたい。 だいぶ遠くの安全地帯から、アリアちゃんとカモミールだけで進行。心配だけど、無事に終わるといいな。 いざとなれば、借りてきたこのホースでバンクシェリアと突っ込むしか‥‥。 って、心配してたけど、無事どうにかなったみたい。ふー。恐かった。 さてさて、進入して、すぐに見取り図みたいのがあったわ。(この時すでに地下について考えておくべきだったのよね) 家屋内潜入ってことで蜘蛛のファミリアを連れてきておいてよかったわ。カモミールと、ファミリアでホイホイと偵察できるわね。 1階をさっさと通り抜けて2階へ。楽ちん楽ちん。 2階は寝所と台所。寝てる連中を素通りして、台所に。コボルドが一匹。さしたる問題もなく、カモミールがひっ捕まえて終わり。 の、ハズだったんだけど、バンクシェリアとアリアちゃん見たらぶったまげて倒れちゃった。 あーぁ。ちょっと前の事もあって、可哀そうなことしちゃったっていう罪悪感ね。 それはそれとして、うーん。さすがにコボルドの料理室ね。分からないものもあるけど、質素だけど最低限の料理に必要なものがある。 代用品と思しきものもあるけど‥‥あっ、油? ‥‥。足止め程度にはなるかも‥‥。少し拝借しておきましょ。って思ったらアリアちゃんぶちまけてるわ。 コボルドを下り階段に戻しに行った辺り、彼には死んでほしくはないんでしょうけど‥‥。 まぁ、油を引きながらも次の部屋に。医務室と、執務室かしら? わからないけど。 しかし不安定な薬品の置き方するわね~。ぶちまけたら後が大変だと思うんだけど。 こちらも少々拝借。いざ登り階段。カモミールも意気揚々と登っていくわ。順調そう。 って、そんなことはなかったわ。普通に取り囲まれちゃった。そんな感じで3階は大乱戦。 アリアちゃんに寄らせないために私も体で止めに行ったけど、結構きついわね~。遠距離から一方的に撃ってるのとはわけが違うわ。 いたた。前回の銃撃は結局貰わなかったからなんてことにはならなかったんだけど‥‥こう、何度も目の前で武器を振るわれるとね。 ちゃんとした革鎧と盾があって助かったってとこよね‥‥。 途中、敵の術者による炎の壁でカモミールとバンクシェリアの様子が見えなくなったときは焦ったわ。 しかも激しい金属音から、バンクシェリアが倒れたことも分かってた。 その時、アリアちゃんが変身を決意。私に一言くれた。残った魔力的にも、あと1回くらいしかまともに撃てない。 だったら、こんな壁は私が壊して道を作ってあげなきゃ。 魔力を叩きつけて、相手の魔術をかき消して、炎の壁は見事消失。同タイミングで変身したアリアちゃんが突っ込んでいく。 戦場に突っ込んだアリアちゃんは器用に体をうねらせて闘ってる。‥‥怒られちゃうかもしれないけど、ドラゴンインファントの戦闘ってあんなかな。 アリアちゃんの突撃で形勢逆転。何はともあれ、無事に終わったわ。あとは、目的のものを探すけど、屋上にもないみたい。 今までの造りから言って、外壁と内部に微妙な差異があることがバンクシェリアから言われて気づいたのよね。 ということで、使うかどうかも分からなかった落とし穴生成装置で一か所をくりぬいていく。 しっかりと、知らない下り階段が眼下に広がってるわ。BINGO、ってね。 でも、アリアちゃんはここを降りられない。一人にしておくことはできない、よね。 カモミールとバンクシェリアに先に行くように促すと、私が煙玉の火付け役を言い渡される。いいわ。ちょうど火をつけようと思ったし。 階段に適当に油をまいて、ランタンから小さな火を取り出す。 さ、これで時間稼ぎはできるはず。ココは蒸し風呂になるわね、きっと。二人とも、早く帰ってきてね。 アリアちゃん、あなたを一人にはしないわ。残り魔力はエネルギーボルト一発分程度しかないけど、守ったげるね。 (新規登場エネミィ:レッドキャップ、ボガードトルーパー、リザードマン、レイヴン、リザードマンテイマー) (知識:全部) ◆閑話休題 無事戻った私達は歓待は受けたような受けなかったようなって感じらしい。 バルクマン将軍が変身したアリアちゃんを見てどよめく兵を一括して指揮を高め、前線に突入しに行って 私はよくわかんないけど、アリアちゃんと一緒にいたら寝ちゃってた。起きたらアリアちゃんの顔が近くにあったからびっくりしちゃったわよね。 膝枕‥‥まではいいんだけど‥‥。ホントに女の子でも、アリなタイプなのかなぁ。 アリアちゃんに変身のお礼を言おうとしたら、極度に怯えてるみたいだった。やっぱり嫌いなんだなぁ。 あんまりそのことには言及しないようにしつつ、感謝を伝えたら、カモミールに言ってほしいって言われちゃった。 アリアちゃんは「みんな無事でよかった」って、言ってたってことは、「助けることができてよかった」ってことなんだよね。 怖がってると思うから、伝えて、って。 まぁ、良いけど‥‥自分でも言ってね? ということでカモミールに伝えようと思ったら、カモミールを発見。 (外伝参照) その後、いったん別れて またアリアちゃんと合流してカモミールに会いに行こうとしたら、カモミールの方からやってきた。 そしたら、アリアちゃんは打って変って出て行こうとして、カモミールも長居はしたくないって感じで。 あ~、カモミールの方は時間が解決してくれるとか言ってたけど、これはこの場で少しは改善を‥‥。 って思ったけど、アリアちゃんの側に話す余裕がなかったみたい。恐いと思われてると思ってるからとはいえ‥‥。 ちょっと口調が乱雑すぎないかなぁ‥‥。わざわざ怖がられたがってるようにしか見えないって。 まぁ、結局、アリアちゃんはいなくなって、カモミールと二人。溜息交じりに話し始める。 アリアちゃんは怖がられてるとは思うけど、助けられてよかったって。そう思ってるって。 カモミールの側も、怖いのは分かるけど、怖いまんまで放置しようとしてるのはいただけない。 だって、二人とも話し合ってお互いを理解したいとは思ってるんだもの。 私と騎獣は心を通い合わせられる。まさしく一心同体に動くことだってできる。 バンクシェリアとも、アリアちゃんとも、カモミールとも、信じ合い、助け合えてると思う。 それは、きっと、私だけの感覚じゃないと思うから。二人でもできると思う。 悩みながらも、カモミールも話に行くって言ってくれた。きっと二人なら平気だと思う。 行ってらっしゃいカモミール。帰ってきたとき、二人には笑顔でいてほしいから。 (って思ってたんだけど、全然ダメだったみたいね、この二人。) それはそれとしてクルードニスとのお話ししてみる。あの時と同じく、囚われてようが鍛錬してるわ。 一種の症状みたいなもんかしらね。 私の悩みを打ち明けると、全く理解できないって返しをされるたけど自分の闘う理由は語ってくれた。 何処までも鍛錬を積み重ね、自己を極限まで練り上げる。それを生涯続けるって。 戦いの場に赴き、戦い、友を守り、そしてそれを行うことで自分がより戦士として純度の高い魂を獲れるって感じなんだと思う。 そもそも生きることそのものが戦いの連続であり、自身を強靭な戦士になることそれそのものが自身の戦いなんだっと。 書いてて呆れるくらい馬鹿な価値観って思うけど、それだけに純粋に生きてるのってホント、凄いわよね。 「個別の小さな戦い」には一向に目もくれず、「自己の闘争人生」しか見てないって感じ。実質そう言ってたし。 なんか、私の悩みなんかちっぽけなもんって言われたみたいな気もする。 でも悩んでるもんは悩んでるんだから、しょうがないじゃんね。 あなたみたいな、戦いに生きる修羅には私は成れないわ。 「心の炎に自己の声を聞け」、少しだけ、わかるわ。いいたいこと。自分の声を聞いてみる。 帰ってきてみたらみんなおそろいで、いざ出陣の構え。 そんな時子爵がみやげものを携えつつやってきた。この人は、もう‥‥。 とはいえ、こんだけ警戒されてる列車ってのがだいぶヤバいものってのも、これでもう頷くしかないわよね。 バンクシェリアも新しく革鎧を渡されてた。つまるところ、アリアちゃんみたいに変身許可が下りたってことなんでしょうねぇ。 バンクシェリアもそのつもりがあるようで、着替えてた。余った鎧は私に。異貌すれば関係ないしね。 いざ、戦意高揚、戦争の趨勢この一戦にあり! って思ってたんだけど‥‥。 アリアちゃんとカモミールが喧嘩をおっぱじめてるし‥‥、バンクシェリアも止めないし‥‥。 いいの? って聞いたけど、これでいいって‥‥。 ホントかいな‥‥。ってかんじ。まぁ、良いわ。カモミールからの干し林檎の餞別も、アリアちゃんの「嫌わないでくれてありがとう」の返事も 帰ってきてから返事してあげるわ! ●第六話 外伝 「げんじつ」 カモミールを探すついでにいろいろ準備をしてたらカモミールが見張りをしてた。 ちょっと確認をしつつ、振り返り。結構ヤバかったからね~。 カモミールはだいぶ悔いてるみたいだけど、そういうもんなのかなぁ。 仕事を必ず完遂しなきゃいけないっていう強迫観念が少し見えた気がする。 大分意欲的なようでなによりなんだけど‥‥。私にはない強さ、なのかしらね。 カモミールは「冒険者だから」この場に居るって言ってた。「仕事/依頼を受けたから」だそうで。 義務感が強いようなんだけど、少し違和感。 でも蛮族が怖いのになんで一緒にいるのかしら。まぁ、そう思って聞くわけじゃない。そうすると三点あるそうで 「監視をしろといわれたから」ってのが一点。わかる 「シエラの事が心配だから」ってのももう一点。これは分からない。 「怖いけど信頼できる」ってのが最後。なんだそうで。能力を信じて背中を預けられる、と。 自分が居やすいから、能力は信じられるから、ここにいるんじゃないかーって。心は打ち明けられないけど‥‥って。 とかなんとか言ってるから少しつついたら、蛮族だから本心が言えないって言い始めてた。 カモミールは時間が解決してくれる~なんて悠長なこと言ってたけど‥‥。 本心が言えないってことは、きっと信じてるんだと思う。彼らの心を、だと思う。 だとしたら、意外とすぐだよ。きっとすぐ、心の底から打ち解けられると思うよ。 ◆第六話 外伝2 「おもみ」 一人での着替え。初めての金属鎧。と、いっても革鎧の革部分が鉄板になった程度の 粗末な作りの鉄鎧。鉄の前掛けって言ってもいいくらいな気がしないでもないわね。 とは言ってもサイズが全然違うから付けれる場所とつけれない場所と……。 籠手はブカブカ過ぎ。袖は仕方ないし落とすしかないわね。 丈は上半身分のつもりが、膝くらいまでのワンピースみたいに。 端折るにしても鉄製だし、そうとも言えないか……。 少し外してなおこの重さ。この傷跡。伊達に今まで前線にいたわけじゃないってことか。 ……。これが今まで私達の前に立ち続けた証なんだね。 ごめんね。鎧としては、前線に出たいかもだけど、今度は後方の守り。 今度は前線が崩れる前に私が敵を崩しきってみせるわ。 …………。それまで、バンクシェリアを守ったのと同じように、私も守ってね。 ◆魔列車 よくはわからないけれど、列車が地下から通ってくるとのことで 地下迷宮を進んで行くことに。流石に魔導機文明時代ね。つくりがしっかりしてる。 それと同時に、この広さと頑丈さからここを通る列車がどれほど重たく また重要であったかが伺えるわね。武装列車の名に恥じないんだろうなぁ。 そんなこと考えてたら会敵。 相手もこっちも百人規模の戦闘。本格的な戦の始まり……っ! バンクシェリアが居るからか、私たちの班が警戒されてるのか知らないけど こっちに敵がある程度集まってくる。それならむしろ好都合みたい。 異貌をこんな長いことするなんて初めてだけど……やるわよ! ある程度戦線を押し上げて行くと、マナの伝達が少し狂い始める。 バンクシェリアの魔剣も感じてるらしく、何かの装置? マナを集積するための装置があるのかしら。 まるまる手に入ると、便利かも……って思うけど、そんな悠長なことも言ってらんないわ。 数で劣ってたけど、私たちの陽動と、それに乗じた勢いで数的有利は覆ったわ。 ただ、途中から敵の動きに統率が取れてたらしいってことで、将級が戻ってきた? 上の戦いはどうなってるのかな。バルクマン将軍がいれば問題ないと思うけど……。 こんな戦い、早く終わらせないとね。 マナの流れが妙な方向に進んで行くとドレイクとその護衛が。 こちらに向き直ったそいつとバンクシェリアが知り合いだった……のかな? それでも刃を構えたってことで勧誘は失敗……なのかな? 少し話をしてた。画面に映し出された文字を読んだアリアちゃんは 「列車がこっちにくる」って言ってた。 魔導機を運用するのは私たちにはできないから、そこは先輩方に譲って 「カデンツァ・ダンケル」とかいうドレイクとその護衛を装置から引き剥がす。 ここが天王山よっ! ボガードもこのレベルなら問題にならなくなってきたわね。 適当にあしらって、ゴーレムへ狙いをシフト。 でも大将は流石ドレイク、その魔力は凄まじいわね……。 体捌きも普通にできる。文武両道ってあぁいうのを指すのね。 形勢が傾いてきて、こっちが有利に。でもその時に話しかけたのはアリアちゃん。 何を話してるのかは知らないけど、ちょうどいいわ。魔力を貯める時間ができるわ。 話し終えたのと同時に渾身のリープスラッシュが奴を切り裂いたわ! あんなにうまくいくなんて! やっぱ異貌しててもちゃんと正式詠唱するのって大事なのね。 普段はそんなことしてる余裕ないんだけどさ。 倒れたカデンツァは異様にチューンナップされたヴィークルに連れてかれた。 どこかの掘り出し物か、改造したのか。どちらにしろまだ得体の知れない敵が背後にいるのね。 ともかく、列車も止まって、後方の部隊は撤退を開始してるらしいし、私たちも引き上げ。 分断されるわけにもいかないしね。 ………ドレイクの将を助けにきた不審な魔導ヴィークル。 ハーゼ攻略を阻止しようとするには全戦力を地上の制圧戦に傾けないのは妙ね。 それに、カデンツァを助けたのにも妙に引っかかる……。 彼を見殺しにしたくなかっただけ?(そんな感情が蛮族に……あるか。あの二人を見れば…) それとも、他の作戦……いや、狙いがあるということ? これこそが陽動? むしろ「守りきれなかった」という大義名分が欲しいの? バンクシェリアと話してから、蛮族たちにもそこそこ政治屋がいるってのを知って はー、頭が痛くなるわね。……考えるだけ無駄かな。答えは出ないわ。私はあっちじゃないし。 さて、駅攻略作戦はひとまず勝利。 上の戦況次第だけど、間違いなく自体は好転してるはず。 一旦帰ってゆっくりしたいわ〜。久しぶりに湯浴みの一つもしたいわよねー。 ◆一区切り 帰って色々ゴタゴタしたけど、叙勲されちゃった。 勲章なんて、お父さんとお爺ちゃんがつけてたのを見たくらいで まさか自分でつける日が来ようとはね〜。誇っていいことなんだよね、きっと。 少しある罪悪感はアイツに感化されすぎちゃったのかな。 屍の上に成り立つ名誉ね。人族にも、蛮族にも同じこと、かぁ。 教本と杖は作戦が終わってから届いた。子爵はこれからの戦いのためにも必要って。 子爵はぜーんぜん私がいなくなると思ってないって感じ。 ……、ずーっと変わんないわね。こういう、奴の思い通りな感じ。 気にくわないけど、うむむ。 どこか腹立つわ。 色々もらったものを処理して、バンクシェリアからもらった鎧を眺める。 うーん、悩んでも悩んでも、抜けたい理由はあっても、どうしてもじゃないし。 かと言ってここに居たいっていう明確な理由もないのよねぇ。 んーでも、うーん。なんで悩んでるのかしらね。きっと。抜けたくない理由があるんだと思う。 アリアちゃんが来て諸々お話をしてくれた。 一番びっくりしたのは男だってこと。書ききれないけれど、あれやこれや色々と……。 気付かなかった私も私だけど、彼が野獣じゃなくてよかったわ。 もしそうだったとしたら、対処した……のかな? 武力行使してくるタイプじゃないかな。 それはそれとして、アリアちゃんと私には家を飛び出しとか、友達が少ないとか 結構共通点が多かったみたい。意外……かしらね。 特にアリアちゃんが友達に結構こだわってたのは特に印象的。 そういえば私も友達は少なかったし、理解者ってのも少なかった気もする。 みんなはそんな中、友達同士って感じがする……? そうあってほしいって私の願望かな。 今でもアリアちゃんは家族のいた世界に囚われているのかもしれない。 娘として、リルズの信徒として、種として、運命……ちがうなぁ。誰かに強制された世界に留まり続けてる。 でも今はその世界に彼はいない。ここでアリアちゃんは何を願ってるんだろう。 バンクシェリアの夢を応援してるのも、カモミールと仲直りしたいって言ったのも、私の幸せを願ってるのも どれもきっと本当だと思う。 バンクシェリアにも話をしにいく。挨拶、なんて言ったけどまるでどうするかなんて決めてない。 少し話すとバンクシェリアのお誘いのもと、空へ旅経つ。 落ちたら死ぬ高さまでほいほいと……。飛べる奴は慣れてるでしょうけど、コワイって。 でも高いところから見る広がった世界は私が見るよりはるかに多くを語ってた。 空を飛ぶのはバンクシェリアはそれがこの北方征伐に近いって言ってた。 領域を広げていく。新しい世界が現れてくる。でも、一度掬われれば地に落ちる危険を孕んでる。 彼の視点は高いところにある。自分への配慮は少なく理想へと目を向ける。 かと言ってそれが地に足がついているかというとわかんない。 他者を気遣い、自分を律する。だけどそんな彼を支えるのは誰だろうか。 誰にでも選択の自由があり、行動の自由がある。そう言う彼に少々の意地悪を込めて聞いてみた。 「ならば私が抜けてもお構いなしか」と。それを認めつつも、バンクシェリアは「でも抜けてほしくない」そう言ってた。 カモミールは心配ないけど、あの蛮族二人はなんとも……。どうしても気になっちゃうのよね。 心に、内なる炎に従うわ。私を守り支えてくれる人のために戦うのも、納得感あるわね。 何処か知らない空の下で誰とも知らない人たちと世界を巡るよりも、私を今必要としている人達に、場所に、尽力するのは、いいことよね? 守ってくれる人のために心を奮わせるのは、それがない時よりもずっと恐怖を拭ってくれる。そうよね? クラベスさんに報告をして、と。振り返りもおしまい。居残りを決めた以上は、私もしばらくはここで何かをしなくちゃあね。 あー。残る以上は何してようかなぁ。あ、今のうちにできることをしておかないとなぁ。 以後2ページにわたり、ミミズが這ったような跡と、数々の魔法公式・紋様講座、クラベスの解説が記載される。 ◆第六話外伝 3「つばさ」 今日も今日とて任務で防衛。未だに抵抗勢力はそれなりに多いみたいで骨も折れるわ。 報告に戻ると子爵からクルードニスの翼を斬る話が浮上した。 バンクシェリアはあらかじめ聞いてたみたいだけど、私含めみんな驚いてた。 アリアちゃんは斬るのに反対らしいけど、ちゃんと理由があるんだろうし斬ればいいんじゃないかなぁ。 彼の心の炎に従ったこと、私は大事にしてあげたいと思うんだけど、まぁ、うーん。 そういうこともあってクルードニスの翼を斬ることを話すと今度は本当にみんなが驚いてた。 みんなしてねぇ私のことバカにしてんの? 少しは考えてますよーっと。 バルカンの翼を斬る。つまり咎を背負わせる行為。こちら側に、人族側につかせること。 それをするのはきっと私の役目なんだと思う。 確かにバンクシェリアの戦列に参加することとはいえ、彼は従属者じゃないわ。 タロスを操り戦闘を挑んできた彼と魔法戦をし、打ち勝ったのは私。 カモミールの魔刃でも、バンクシェリアの豪剣でも、アリアちゃんの弩でもない。 ついてきてくれたのも、より多くの戦場に立ち、より多くの鍛錬をし、より強き魂を得るため。 だとしたら、あの時、あの一瞬、僅かでも優っていた私こそが彼の翼を落とすべきじゃない? それこそが彼の戦士としての信条を最も尊重した答えな気がする。 私がクルードニスだったら、知りもしない、誰とも知らない奴にやられるよりも 「この人にならば」と思える人にこそ、やってほしい。 お父さんも、お爺ちゃんもきっとそういうと思う。 みんなの了承も取れて、一応立候補。 あとでクルードニスに聞いてみると、あっさり了承してくれた。 私のことも少し理解してくれたみたいだし、なんかだいぶ仲良くなった気がする。 まぁご飯も一緒に食べれたし、たぶんこれで友達になれたよね! ……なれた……よね? うーん? 「これはそういう文化なのか?」とかいってたから……。 理解してないかも……。 保留らしい。クラベス隊長に色々聞こう。 ◆第六話 外伝4 「ちえぶくろ」 かくしてクルードニスの翼を斬るときに色々口上を述べたりしなきゃかもだし。 こういうときに頼るべきは……クラベス隊長よね。 どうせみんなが報告するだろうし、私はクラベス隊長の方にまっすぐ行けばいいわね。 ということで聞きにきたんだけど、クラベスさんもバルカンのそういう風習に関してはわからないみたい。 まぁ、私もわからないんだけど。仕方ないから人族向けの口上の定型例をいただいたわ。 やっぱこういうの聞くんならクラベスさんね。いろんな国や団体のものが手に入ったわ。 っていっても、これ結構違うのね〜。統一しちゃえば簡単なのに。 そういえば流れで聞いたけど、子爵はやっぱりバンクシェリアを自分の手で牢から出したみたい。 あの人マジでおかしいんじゃない? ……いまさらか。クラベス隊長も一緒についてたみたい。 ……そういえばこの人ぉ(しばらく棒線が這う)ーニコニコされるだけだわ。実は強いのよね? うーん。 (この後数ページに渡り儀礼用の定例句などが記載される) ◆第七話「願いを迷う」 結局3ヶ月の間に色々ありました。 私は薬を作ったり、医療班の手伝いしたりでちょっとした看護師感でてきたわ。 他にはクルードニスの翼は斬られなかったし バンクシェリアとアリアちゃんの演説会もあったわねー。 まぁ本格的に進軍を始めるにあたって、いい機会だったんじゃない。 彼らなりの手応えがあったらいいんだけど、変身後は2人で仲良くお話でもしてたらいいんだけど……。 それはさておき今回の任務は魔剣の迷宮調査。 いやー、2度目2度目。今回ももらっていいってことだし、頂いちゃいましょう。 で、意気揚々と頂戴しに行ったら道に聳え立つ門。 中に入ると、ガイドさんの声と石造りの通路の真ん中に出たわ。目の前には扉。 つまるところ今回は扉を通って最奥目指せってことみたい。 そんで最初の扉の先はカモミールの故郷の風景。 1番の驚きはカモミールの父親っていうのが、本当にグラスランナーで、本当によくわからない次元の英雄ってことね。 話に聞いてはいたけど、「アルテマイト」の名を冠する〜って言うのがどれほどの高みにつくのかはよくわかった気がする。 紛い物……カモミールのイメージが作り上げた幻影だとしても、その高みがどんな世界か少しだけね。 あとは、ガッコウに行けた人達がどんなふうに勉強してたのかも少しだけ見れたわ。 お母さんから聞いてた内容と照らしても、だいたい合ってると思う。 ……わたしには学校は合わないと思ったわね。 窮屈っていえばいいのかな。 好きなように本を広げて、好きなように学ぶ。 そういう風に勉強はしたいかな。 なーんて見てたら色々終わってたみたい。 カモミールもすっきりした感じ。 適当なタイミングで私も家に顔出したりしなきゃかなー。……もう探してないとは思うけど、死んだと思われてお母さんが悲しんでたらちょっとヤよね。 他の部屋は誰かの心象風景って感じじゃなかったわ。 一つは巨大図に2方向から地図を作っていくパズルみたいなの。 これはすごく面白かったし、2チームがぴったり同じタイミングで終わるなんて私たち息ぴったりよね。 宝箱からはイイカンジの枕。 ふかふかのふわふわよ。 他には会話できずに戦闘しなきゃいけない部屋。 これはちょっと困ったけど、まぁなんとかなんとか。 普段は声かけとかで意思の疎通を行ってるんだなっていうのを再認識。 いやぁ、騎獣とは目線やちょっとの仕草で伝わるけど、他の人とは難しいわねー。 騎獣にするのよりはるかに情報量が多い戦略を考えてるし、伝えてるんだなー。 あとは未来図が描き出される部屋。 私とカモミールは自分の名前を書いたけど、他2人は自分の名前を書きたくない様子。 そんなに未来って見たくないものなのかしら。 それこそ「自分の死に方」みたいな暗いものじゃなければお遊びでいいでしょうに。 ──魔剣の迷宮に対してこの考え方は楽観的すぎるのかしら。 結局またバンクシェリアとアリアちゃんはまた口論。 うーん。出立前の宣言式でも何かしら言い合いしてたという話もあったし、まだ打ち解けてないのかしら。 アリアちゃんはクラベス隊長や子爵とは仲良くしてるんだし、年上相手は平気そうなものなのに。 なんか合わないのかしら? でもアリアちゃんはバンクシェリアの力になりたいって言ってたような? これが世に言うツンデレさんなのかな? 閑話休題。 魔剣の最奥にはフロウライトのメレーさんと、彼の使役するゴーレム・アンデッド。 いやー、激戦も激戦。 メレーさん自身ハイレベルのウィザードって事で、作ったゴーレムも、魔法も、手強かったわ〜。 私とは違う「魔法使いの使役者」としての系統を見た気がするわね。 勝負は辛くも勝利ってところ? 魔術師としての格の違いは見せつけられたわ。 「願いの魔剣」マギウス・ウィズダムは私の手に収まり、ウィズダム・キャバルリィとして姿を変えた。 私の願い……っていうか希望に合わせて、4足の機械獣感ある姿になってくれたわ。 いやー魔剣って本当に言うこと聞いてくれるのね。 バンクシェリアのアンビシオンは生来のもの。その刃は変幻自在にして超威力。 カモミールのルクスは手にしたもの。ただの布だけど、織り方でその特性を様々に変える万能道具。 わたしのウィズはどうなるんだろう。気のいい相棒……になってくれるといいな。 ……アリアちゃんは魔眼が喋ったりするんだろうか。 ◆第八話「森を拓く」 来ました! 来ました! 未開の地! 切り開く大地! そうそうこういうのよ、待ってました冒険の地! とか思ってたら開墾部隊とかいうのを連れていくことに。 いや〜私たちの指揮下に部隊があるってのは初よね。他の部隊の進行のために〜ってのはあったけどさ。 偉くなったものよね〜。強くなったわ。うんうん。 思い返せばわたしもルシェロイネ流の魔法術を会得し、みんなも一流の冒険者に相応しいパワーを得たのよね。 最初はあんだけ問題児集団扱いされてたっていうのに立派になったものだわ。 道中もハプニングこそあったものの、大きな問題はなく進行。 (強いて言えば野獣を追い払う時に食料をつままれたりしたってくらいかな?) ただ、途中にあった川で船か何かの通った跡を見つけたところから少し雰囲気が変わった。 追っかけてくと川の源流がある洞窟の中で蛮族たちの死体を見つけたわ。 私たちが着く前に殺されたそいつらにはご丁寧に罠まで仕掛けられてた。 入り口に戻ってみると待機させてたきこりたちが巨人に襲われたとか。 バンクシェリアが「隊を預かる身として、犠牲は出させない」ってな感じで追跡するのを言い切ってたのは頼もしかったわね〜。 宣言式の通り、人族の味方であることをしっかり仲間に伝えられたんじゃないかしら。 襲撃者を追っていくと、ゼノマーディスに仕えていたというダークトロール「グレベン」とその配下の成れの果てが居たわ。 少なくともグレベンの体はソードオブワンなる連中によって、禁忌にした方がいい邪悪なものが入っていたわ。 ……邪悪なものっていうのは私の直感でしかないけど、冒涜的な魂の不浄を感じたわ。 ヒトは穢れを忌避しなければならない。 魔術は「マナ」という大きな力を制御する大きな術。 これをちゃんと使えるのは精神力という代償を払い、制御できる結果を出せるから。 魔法王や神話の時代はいざ知らず、現代では穢れを……魂を制御できる方法なんてなく、その代償をまともに払えるようになんてなってない。 そんな、実用に耐えない代物を自分勝手に他の人に突っ込もうなんて、正気の沙汰じゃない。 無事彼らを止めることはできたけど、何かを伝えたがってたグレベンはスカイバイクに乗ってたやつに殺された。 運良く手紙は残ってたけど、彼のゼノマーディス家への無念を思うと少し胸が痛いわね。 死んだグレベンの体から這い出たくろいもやが何処かへ飛び去ったのも気味が悪い。 グレベンの手紙によると、バンクシェリアの妹さんは生きていて、どこかを放浪しているとか。 彼女は保護すべきなのか、討つべきなのか。 何はともあれあの組織のことを知ってるなら、彼らに見つかる前に妹さんを見つけないと。 ソードオブワン。 どんな組織か知ったこっちゃないけどね、 わたしは、あなた達の実験を絶対に軽蔑するわ。 子爵がいうのと実際にあったことを考えると 10年前滅んだ集団の生き残り この戦争を裏から引き起こさせた組織 超高レベル技能を複数人が持ってる集団 一般的倫理が通用しないキチガイ グレンダールの金床に誓って。 彼らが平和的手段の組織でなくなっているのだとしたら、それはどんな理想を掲げてようと敵だわ。 ◆第八話「森を拓く」 外伝1 「つばさ そのあと」 グレベンの一件があって、蛮族にも忠義っていうのがしっかりあるってのがわかった。 正直なところ、たいがい蛮族っていうのはあんまりそういうの薄いと思ってたんだけど グレベンの命を賭して忠義を果たす姿は間違いなく騎士だったのよね。 そういう意味で、クルードニスも仕える存在ってのは一緒だから話を聞いてみようかなと思ったのよ。 行ってみたけど最初は居留守というか、無視というか。 嫌われてるというよりは、作業の邪魔をされたくなかったみたい。 とはいえ、話はちゃーんとしてもらえた。 なんでも恩義や賞与のためだけでなく、仕える者であれば、仕えた相手に何かをするものなんだとか。 (第二の剣イグニスにわざわざ「第二」なんてつけない。剣や神に優先順位やらをつけないみたいな感じのことも言われたけど今は置いといて) 少なくとも、クルードニス‥‥バルカンはイグニスから修練を命じられたわけじゃなくて 自主的にイグニスからもらった生命の炎をより強靭にしてる、と。 私の‥‥特におじいちゃんやお父さんとかもそうだった。 誰かに命じられて騎士をやってるのではなく、自分で選んで国家に忠を尽くしてる。たぶん。 たぶん私や、他の人も、友達や仲間に持つ感覚に近いんだと思う。 忠臣や信仰の持つ想いよりはずっと弱いものかもしれないけれど 友人がAを欲しがってる人に、Aをあげるとか、 好物がBだから、Bを作ってあげるとか "そういう"ことなんだろうなぁ。 仕える者とはそういう想いを国家や集団、象徴に捧げ、自己を捨てたり、自分を律することができるんだろうね。 それはそれとして、そんな仕えることの話をしてると、彼は自分の翼を見てた。 人族の中で生きてることを悔いてたりするのかもとか思ったけどそんなこともなかった。 悔いてるかと聞いたら、悔いてたら剣をもらったらその時自害してるって言ってた。 (そういう意味では、おじいちゃんとかは自害してそう) ‥‥彼曰く、「強さに翼のあるなしは関係ない」だそうで。ストイックよね。 多分彼の魂を高めることに関係はないってことなんだろうねー。 でも、飛べるかどうかでの戦術的な差は大きいよね。 ということで、今度模擬戦の一つでもやることにしたわ。 彼は新調した篭手と飛行状態の有無、私は"願いの魔剣"。 ふふん、今度も勝つわよ。飛んでようがいまいが魔法には関係ないんだから。 ‥‥あれ? それってクルードニスの訓練としていいのかな? ま、まーいいか。 ◆外伝2 「せいべつ」 アリアちゃんが性転換魔法を覚えたとのことで、変身後の姿を確認することに。 まぁ正直、あんまり思い出したくないのだけれど。 子爵、クラベス隊長、あとはイツメンでの確認。 全体的に変更後の姿で大きい変化があった人となかった人で結構差があったわね。 まず、アリアちゃんはそこまで変化なし。 これは、もともと女の子として育てられてたのが原因なのかしらね? 女の子っぽい姿になっても、そこまで印象の変化がなかったわ。 気持ち背が低かったりした程度かしら。 カモミールは作戦で性転換を行う可能性も考慮して、 姿が変わった後のことも気にして口調とかも気にしてたみたい。 姿の変化は確かにそこそこあったけれど、 それ以上に立ち振る舞いの変化のほうが大きかったから やーっぱりスカウトの変装ってそういうところもおおきいのねぇって思うわよね。 バンクシェリアは……もともと背が高いのが影響してか、 背丈が大きかったわ。…………ほかのところも大きかったけど。 でも、気が大きくなってた……というより、開放感があったのか、 結構はしゃいでた感じ。珍しいことよね。 意外と堅物じゃないのよね。 ……なんというか、カモミールも私もそこまで大きい方じゃないし、 アリアちゃんの変化後もそう大きくなかったのに 何故あいつだけ……。 私たちは持たざる者……そうだというのかしら……。 クラベス隊長はおとなしめ。というよりも、大人の女性という雰囲気だったわね。 変化前も知的な人物だけど、変化後もそう変わらない印象だったわ。 流石、知性は体に現れるっていうことかしらね? ……いや、この考えは絶対に違うわね。 子爵が子爵だっただけに、お母さん感が大きかった気がするわ。 子爵は……子供みたいな見た目になったわね。 ふつーにちっちゃい子。みんなが頭撫でようとしてたけど全部拒否ってたわね。 いいじゃんねー。減るもんじゃないしー。減るのかな? とはいえ、体のサイズが大きく変化したのは、子爵とアタシくらいだったなぁ。 個人差が大きい魔法なんでしょうね。 私は子爵と対照的に全体的に大きくなって、声もだいぶ男性寄りになったわ。 あんまりいい思い出じゃないので、もう変身する機会が来ない方がいいわね。 は~あ~。 せっかくなら、美男子になったらよかったのにねーぇ。 ◆第九話「戦場を駆ける」前半 ついに駅攻略戦線の開始ということで。 私たちの班の仕事は2つ。 ・敵陣営に直下をかけての撹乱 ・制圧した駅の防衛線 んで、今回のところはまず撹乱をして来いと。 平原に大きく陣取ったヴォルラス・ダンケル率いる ダンケルハイト軍との一戦ってわけね。 大規模な戦だわ。 これまでの作戦で1番大規模な戦場になりそう。 ともすれば作戦が大事ということで…… 小規模な散兵戦術で展開した敵の一団に対して 隠密しながらエンゲージ。 カモミールが機先を制し 私が情報分析、作戦配置指示 バンクシェリアが敵班の長を叩いて アリアちゃんが残党を撃つ。 小規模な電撃戦を連続することになったわ。 私達の班に随伴することになったのが クルードニスと、カンテラタックのコボルド達。 ジャン、ジュン、ジェン、ジョンの4兄弟ね。 クエードニスはともかく、4人衆は勇敢よねぇ。 本来のコボルド達は戦闘には向いてないし 気風もそういう人たちじゃないんだけど 彼らは自分の意思で戦場にいたいと決めたのよね。 ん〜、私よりよっぽど大人な気がしてくるわ。 クルードニスも新しい籠手を装備してるのよね。 この班にきたんだし、嫌というほど戦場は用意されるってことを知ってもらわないとね! みんな気合い十分。 ウィズちゃん、張り切っていくわよ! 作戦は今の所うまくいってるわ。 少し取りこぼしてもカバーできる範囲。 うん、行けるわ。 疲れか、陣営深くまで入ってるからか 作戦が決まらないことも増えてきたわ ま、でも策のひとつが失敗したとして 大きい問題にはならないわ あーやばい。損傷度が上がってきたわねー。 全体の被弾率もだけど、集中狙いもねぇ……。 バンクシェリア大丈夫かしら。 明らかにみんな疲れてるわ。 作戦がうまく機能してない……。 私がなんとか支えなきゃ……! 電撃戦……つら…… 休めない…… 無理…… 残り魔力も幾ばくかってところよ…… やば……やば……次の一戦超えられるかしら…… 帰ってきました。 ボロボロです。 治療を受けてから、治療班のお手伝いに行きます。 快眠寝具、メレーさんありがとう。 おやすみなさい。 ◆第九話「戦場を駆ける」後半 いたたたた。 まだ体の節々が痛いような気がするわ。 平原を走り回るのって、やっぱ魔法使い向きじゃないわ。 ともかく、少し休んでから起床。 充分寝れたわ。 駅攻略戦線は第二フェーズ、防衛線に無事移行。 拠点を奪い返さんと来る軍勢を迎え撃つ形ね。 ダンケルハイト軍は幹部が何人出てきたかは不明。 防衛側の人族は3門に分かれての防衛で 南門は私たち、人蛮混成組が主体、 北門は同冒険者主体、 東門はバルクマン将軍率いる正規軍主体の守り。 敵も包囲するように展開して、 正規軍が受け持つ東側が1番敵を集める想定。 南門の最終防衛ラインは私たちの班。 すっかり戦場のキーパーソンという扱いになったわねー。 武功を重ねてる感あるわ。 今回は戦場が広いから、後衛の目が重要よね。 頑張るわよ〜。 あと、今回は戦闘中の移動も大きくなるから ウィズから追加部位も外さなきゃね。 機動力大事よ。 いざ始まったら、もーずっと敵がくるくる。 倒しても倒してもキリがない。 これ私たち最終ラインだったけど、 前線はどんなもんになっちゃってたのかしら。 みんなの頑張りのおかげで 私たちは消耗少なく、強敵を迎え撃つことができたわ。 とは言っても、強敵との連戦はキツいのよね。 私は騎獣を操ったりもあるけど、 やっぱ魔法を使うたびに精神が磨耗しちゃって。 まぁいいのよ。戦場できになる点が あの敵幹部のアルジェンダ。 グレベンさんに投与されてたあの黒い薬(?) と、同種のもの。 この世のものではないほどに穢れたそれは まるで強心剤のように瀕死の彼女を強く刺激し たちまち魔物化をやって見せたわ。 確かにもっと上位の蛮族には 自分の意識さえなくなってからでも変身できる 物語に出てきそうな化物もいるらしい。 でもそれは、決して多くないし、 そこまでの力を持つとしたら、それこそ王とかになってる連中よね、きっと。 それに匹敵する力を、魂の穢れを代償に得る。 擬似的にその凶悪な力を得られる薬品。 どういう代物なの……。 そして、どういう技術なの……? 未知だわ。全くの未知。 まるでもっと昔の、強大な力が当たり前だった頃のような。 恐ろしい相手ね。 っとか思ってたら 事件が起きたのは正規軍守る東門。 敵将ヴォルラスとバルクマン将軍の激突の時、 ソードオブワンの首魁、3本角のドレイクと ヴォルラスの弟、双魔剣のカデンツァが割り込んだらしいわ。 ヴォルラスは弟カデンツァの手で惨殺。 バルクマンは魂を剣の形状にして引き抜かれる。 その後、ソードオブワンのこの二人は異質な転移魔法で逃走。 ヴォルラスの魔剣も盗まれてたわ。 なんでも、敵幹部のアンドロスコーピオンのマギスフィアが異質だったって話もある。 結局この戦場は人族と蛮族は痛み分け。 ソードオブワンだけがオイシイ思いをしたわけね。 カモミールの話だと 3本角のドレイクが使ったのはグリモワール技術。 「本」を使用する魔術形態の一つということ。 そしてそれは、魔法文明時代の魔術体系だとか。 寿命不明のドレイクが魔法文明時代から長じたか それとも遺失したはずの文化を紐解いたのか。 何にせよ、現代の魔術……いや、技術全般。 それは古代文明達からしたら“ちゃち”なものだったとどこでも言われてる。 今でいう超技術が相手ってことよね。 なるほど、黒い薬なんてのが作れるわけなのね。 次の作戦は、バルクマンの魂でできた剣の奪還。 虎穴に入らずば虎子を得ず。 今1番機動力があって、それができそうなのは 私たちだけ。 ……と、普段なら「この班」と言いたいところだけど なーんと私たち、今までの武功が認められて ダーレスブルク公国第六騎士団、通称 【触の騎士団】-オーダー・オブ・イクリプス- になっちゃいましたー! 団長はバンクシェリア。 団員は、今までの班員と一部の志願者だから 私、カモミール、アリアちゃん、クルードニス コボ4人衆…… まぁいっぱいいるわね。 戦時特例での発足ということで 子爵の意見が公王とルキスラ皇帝に認められて通ったらしいの。 はー、なんだかんだ、いろいろやってくれたのね。 これでもう、バンクシェリアとアリアちゃんは大手を振って通りを歩けるわね。 このバッジ、かっこいいからここに絵を描いときましょう。 (騎士団員章のイラスト) これでよし。 でもバンクシェリアの夢と、騎士団長という立場はどうなんだろう。 私も騎士団に入ろうなんて思って無かったし。 他のみんなは? 名誉なことってのはわかるし、 私達の行動が評価された結果。嬉しいことだよ。 でも、これで本当に、良かったのかな。 うーん。 少なくとも、この場所にいる間は騎士団。 でも、この戦いが終わったその時 私はまだ騎士でいたいかなぁ……。 家の騎士でなく、ルキスラの騎士でなく、 人族の騎士でない。 そういう騎士は……どうなんだろう。 ◆外伝1「プライド」 アルジェンダとの戦いの後、分けれての行動に。 バンクシェリアとカモミールは本陣での確認と東門の補助。 私とアリアちゃんは南門に残って救助活動。 やっぱり前線は死者・負傷者は多かったわねー。 よっぽど看護師や薬剤師の真似事やってて良かったわよねー。 ただちょーっと気に食わなかったのがアリアちゃんの言動。 「魔物化した自分が行ったらみんなを混乱させちゃうからここで救助する」 なーんて言い方。 何でバンクシェリアみたいに堂々とできないかな。 嫌っていたとしても、変身した姿をみんなの前で見せたわけで。 その時、みんなに認知させたれたのに。 今のアリアちゃんがその時の自分と、みんなを信じられないのはちょっとわかんない。 もっとこの戦場にいる仲間を信じていいのに。 でも、負傷してる人を魔法で立て直させて、 前線の支援に向かいたいって前向きな意思は大事よね。 そういうことを思ってるのは大事なことよね。 そんでちゃんと自分のできることをわかって行動するのってなかなかできないと思うんだけどなぁ。 こーゆーこと言っても彼の中では 「当然だ」「評価に値しない」 になっちゃうのかなぁ? だとしたら、自分の変身した姿をみんなに見せても動揺されないことも 「当然」 に、何でならないんだろなぁ。 バンクシェリアとはまた違う方向でプライドが高いのね。 第十話 「」 バルクマン将軍の“魂の剣”は離島に存在している可能性高しとして、ここに突貫する作戦に。 その船は魔導船で、その操舵はなんと私が! いやー、ライダーやっててよかったわよね。 普段あんまり操舵や操縦はしないんだけど、得意分野よ! えっへん。……まぁ、この騎士団において他にできる人がいないっていうのもあるんだけど。 と、意気揚々出たものの海流は激しいわ、狙撃はされるわ、障害物は散乱してるわ散々よね。 島に辿り着くには辿り着いたけど。 帰りもやるのかぁ〜〜〜。 もっと楽になっててくれないかなぁ。 そもそも燃料も往復ピッタリくらいしかないし。 もうちょーっとだけ余裕欲しかったなぁ。 船はクルードニスとコボルドたちに任せて私たちは捜索開始。海、森、山、平原! うーん、これでソードオブワンの拠点さえなければ完璧なんだけれども。 っとかなんとか言いつつ、日も暮れないうちに見つけられたわ。 入り口からは1匹のオーガ。 話を聞くにム・ノウの親族であるテイ・ノウらしい。ただ、あんまし家族仲がいいってことはないみたいね。うーん。バンクシェリアのところも複雑だし、アリアちゃんも複雑だし。 蛮族の家族関係ってギスギスというか空中分解するのがデフォだったりするのかしら。 ……いや、フォルミカとかはそうじゃないし、たまたまよ。たまたま。 なんだかんだ情報もくれたし、簀巻きにしてほっとくことに。 彼の話からすれば、ソードオブワンも一枚岩ではないどころかいくつかの勢力をまとめてしまってるせいでちょっと厄介みたいね。 (まぁ、私たち触の騎士……いえ北方征伐軍が言えた話じゃないけど) 勝手に内部分裂して欲しいけど、よくわからない魔法を使う連中もいるらしいし……。カリスマであるドレイクの存在もあるし。 そういうのはないでしょうね。 拝借したカードキーで地下に降りてく。駅の延長らしいって話もあったし、それっぽい雰囲気はあるわね。 地上の駅とは少し雰囲気違うけどね。でも似たような記号や魔導機板がその辺にあるわあるわ。 地下一階は下級蛮族たちの棲家。 まぁ大したことはなく、チョチョイのちょいよね。でも、そん中の一匹が配管から逃げようとしたわね。 ここもザルツの地下みたいに入り組んでたりするのかしら。 地上からここにくるルートもいくつかあるって話も聞いたし……。 挟撃されたら終わりって事で速度重視の電撃進行。さっさと2階層へ降りることになったわ。 そういえばとなってクルードニスに一度状況報告。向こうも問題なしって事で、そのまま進行。 うまく隠れてくれてるといいんだけど。 さてやってきたのは地下2階。 ここは列車が止まる用の場所らしく、左右に大きい溝があったわ。昔は歩行列車がいっぱい走ってたのかしら。それとも、魔導バイクみたいな車輪付きかしら?その両方? ともかく今はそれを知る術はないし、奥にいかなきゃ。 下り階段には見張り。左右の溝にオーガが1体ずつ。ちょっと危ないところはあったけど、これもチョチョイでおーわり。 さすがにカモミールとバンクシェリアの攻撃をモロに食らった連中はほぼ立ってらんなかったわね。 いやー、あの二人に迫られる不幸を呪うしかないわね。くわばらくわばら。 基本的に出番のない私は楽だったけど、アリアちゃんは少しヤキモキしてたみたい。 他の部屋もまぁほとんど私の出番はなし。 お陰で温存できて助かるわ。 多分、私が一番頑張らなきゃいけないのはバルクマンの剣の近くでしょうね。 古代魔法に現代魔術でどこまで食い下がれるかしら……。 とか思ってたらフェイスレスの部屋からなんかの書類をゲット。 「魂に関するレポート」とでもいえばいいかしらね。「魂魄」の魄。今の言葉にはあまり伝わってはいないのだけど。 魂が肉体とどう接しているのか。 魂と精神はどう繋がっているのか 魂と記憶、輪廻、運命、五感…… その研究テーマは多岐にわたるけど、誰も魂の解明をできてはいない。 こいつ……又はコイツらもまたそのテーマで研究してたってことかしら。 それは言ってみれば、神への挑戦……。 いえ違うわね。 始まりの剣への挑戦かしら。 ……あれ? 魂から作られた剣? 魂の解明……。 魂を作った始まりの剣。 魂から作られた魔剣。 繋がりそうで、繋がらない。 でもあのグレベンって人も死んだ後魂から抜け出してた。 あれは人工の穢れ? そう、始まりの剣イグニスが行った魂を歪めての生命体強化。 それに倣ってる……? 彼らは神に等しい力が欲しいのかしら。 それとも、始まりの剣でも作ろうというのかしら。 第一段階:本来の種族と異なる特徴を持ち始める"イレギュラー" 第二段階:得た特徴を強みに変え、使い活かせるようになった"アドバンスド" 第三段階:この特徴が主流になり、淘汰に勝ち残った者、最終形態"レヴォリューション" 主犯の連盟:ベルゾラ      :プラスマ(女性名)(血清)      :サングィス(血)      :バスタード 魔剣の粉末と異種族の血を掛け合わせて混ぜ込むと薬が作れる 地下3階は何かの迷宮。 魔剣の迷宮なんだけど、そうではないような。 遺跡と融合した魔剣の迷宮、とでも言えばいいかしらね。 セキュリティカードもあるし、ここを拠点に活動していたであろう蛮族もいる。 問題としては、うろついてる魔神かしら。やたらめったら強いのなんので……ってのなんだけどちょっと違和感。本当にあのレベルのやつなのかしら。 あのレベルの存在を使役できる魔神使いならもう少し有名でもいい気がするのだけれど、そういうのがいるって話は聞いてない気がするのよね。 そうは言っても、古代魔法の使い手もいるんだったら、関係ないか。 見つかったらやばいので静かに進行。 ひっそり隠れて、ババっと移動して じゃーっと探して、ささっと帰るわ。