タイトル:ルーク・ベルセント キャラクター名:ルーク・ベルセント 年齢:24→25 性別:男 髪の色:灰色(秘石装着時→白) / 瞳の色:紫(秘石装着時→紅) / 肌の色:肌色 身長:173 体重:52 キャラクターレベル:30 Lv メインクラス :ドレッドノート サポートクラス:ガンスリンガー (1レベル時:ガンスリンガー) 称号クラス: 種族:ヴァーナ ■ライフパス■ 出自:不明/※ハンドアウト的にシナリオにかかわりそうな出自だったので不明としてます 境遇:師匠/ 目的:運命/勝利(運命表) ■能力値■ HP:285 MP:215 フェイト:6     筋力 器用 敏捷 知力 感知 精神 幸運 種族    8   7  12   6  10   6   8 作成時   0   5   0   0   0   0   0 →合計 5点/5点 特徴    3   3   6      3      3 成長等   4  29  29     25       →合計 87点/LvUp分87点 =基本値= 15  44  47   6  38   6  11 ボーナス   5  14  15   2  12   2   3 メインクラス   3   5   2   0   0   0   0 サポートクラス  0   1   0   0   1   1   0 他修正 =合計=   8  20  17   2  13   3   3 ■戦闘■ [キャラシート版]      能力 装備右/左 スキル  他  合計右/左(ダイス数) 命中判定  20   0/  0  2   1  23/  (2D) 攻撃力  --  85/ 85  41   5  131/  (2D) 回避判定  17    7         24   (2D) 物理防御 --   30         30 魔法防御   3    7    2     12 行動値   30   25         55 移動力   13    0      20  33m ■戦闘■ [全項目版]    物理 魔法     命中 攻撃 回避 防御 防御 行動 移動 射程 種別  Lv  冊子 右手    0  85   0   0   0   0   0  30m 魔導銃   1 左手 腕 頭部          5   6     10 胴部            11   4          防具   2 補助          1  13   3          防具   3 装身          1        15       装身具   1 =小計=右  0  85   7  30   7  25   0    左 能力値  20 --  17 --   3  30  13 スキル   2  41         2        ウェポンルーラー+レジェンド+人器一体+グローヴィスフレイム その他   1   5                  サセクション+ロングバレル+武器強化サービス+古代竜の心+騎龍+ライディングクロップ =合計=右 23  131  24  30  12  55  33    左 ダイス  2D  2D  2D ■装備■    価格 重量 名称 [クラス制限] 備考 右手 0   15  霊樹細工琴型弓 [] セットアップ時にセットアップスキルとは別に武器攻撃を行える/この武器による武器攻撃は二回行える。対象は同じでも別でもよい/この武器による武器攻撃のダメージは【光】or【風】属性の魔法ダメージになる/この武器を装備している時、自身が与える魔法ダメージに+80する/この武器による武器攻撃でクリティカルした場合、対象に【衰弱5】を与える。既に【衰弱】状態の場合は深度を5加算する。 左手        [] 腕         [] =合計=0  15 / 重量上限15 頭部 10500  4  影のベール[1/6/4] [] 胴部 21000  8  緋色の長衣[1/11/8] []       胴装備/魔法ダメージ+10/防御属性:火/【衰弱】半減 補助 320000 12 †サポートバックラー[24/13/12] [] 自身の判定直前に使用。MP10点消費して達成値に+4。1シナリオに3回使用可能。この防具は種別:盾と同時に装備できない。 装身 5000  1  タレーリア[1/0/1] []       【威圧】【スタン】【縛鎖】【放心】【睡眠】無効 =合計=356500 25 /重量上限25 ■所持品■ 名称                価格 重量  備考 異次元バッグ               2000  最大重量+10。このアイテムは一つまでしか持てない。 ベルトポーチ            0   15   最大重量+2。このアイテムは一つまでしか持てない。 ポーションホルダー         0   150   分類:ポーションの重量を5つ分0にする。このアイテムは一つまでしか持てない。 クイックケース           0   58000  武器1つを[重量:0]として所持でき、その武器はフリーアクションで装備可能になる。このアイテムは一つまでしか持てない。 冒険者セット            5   10   野営道具、ロープ、ランタン、火打石 戦王の武器飾り           1   17800  ウォーロード専用/行動値+2、武器ダメージ+2。 グレートMPポーション(ホルダー)   0   15000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 グレートMPポーション(ホルダー)   0   15000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 グレートMPポーション(ホルダー)   0   15000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 グレートMPポーション(ホルダー)   0   15000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 グレートMPポーション(ホルダー)   0   15000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 EXMPポーション*5          5   20000  マイナー/消耗品/MPを6D回復 グレートMPポーション        5   75000  マイナー/消耗品/MPを20D回復 万能薬               3       バステ回復 熟練の証×2            0       リビルド権 称号の印×0            0       転職時のデメリット無効化 スライムポーション         1       マイナーアクションで使用。距離(筋力+5)m以内の任意の場所に衝撃を吸収するスライムを発生させこのスライムは意思を持たず、発生から数時間で自動的に消滅する。 矢筒                0   100   種別:矢弾のアイテムを5つまで重量:0にする。このアイテムは一つまでしか持てない。 キャリバーブースター        0   3000  消耗品(リサイクル可)/魔導銃による攻撃の対象を決定する際に使用し、そのダメージに+7。 隠密弾(サイレントバレット)    0   2000  消耗品(リサイクル可)/武器攻撃のダメージ-15。隠密状態の時のみ使用できる。武器攻撃と同時に使用し、そのメジャーアクションでは隠密は解除されない。 戦術弾:無限深淵(ブラックアウト) 0   8000  消耗品(リサイクル可)/射程:40m/シナ1/この弾を使用した武器攻撃は対象:場面(選択)の闇属性魔法ダメージとなる。ダメージに+60し、シーン終了まで対象のアクションとリアクションの判定に-1Dする。 封魔弾:ディバインコロナ      0   10000  消耗品(リサイクル可)/シナ1/この弾を使用した武器ダメージ+30し光属性魔法攻撃になる。対象が闇属性の場合、更にダメージ+10。 封魔弾:ヴァニティワールド     0   10000  消耗品(リサイクル可)/シナ1/武器攻撃のダメージは、[対象:範囲]の無属性魔法ダメージとなり、魔法防御力を-150し、ダメージに+260 スレイヤーバレット:アンデット×2  2   4000  消耗品(リサイクル可)/対象がアンデットなら武器攻撃ダメージ+20。 真銀の弾(ミスリルバレット)×2  2   7000  消耗品(リサイクル可)/武器攻撃のダメージに+18する。 強化水晶弾×8           0       消耗品(リサイクル可)/この弾を使用した攻撃のダメージ+100 ライディングクロップ        1   50   パッシブ/騎乗状態時行動値+1 騎龍                1   160000 最大重量+15/同乗1人/騎乗者の移動力+20、同乗者と共に飛行状態 錬金馬               1   60000  最大重量+25/同乗1人/騎乗者の移動力+15、物防+3 古代竜の心             1   25000  ドラグーン専用/エンハンスブレスの効果中に命中判定+1、ダメージ+3 妖精の薬×4            4       消耗品/MP全回復/状態異常回復/シーン終了まで魔法ダメージ二倍/受ける魔法ダメージ半分(切捨て) 小人の薬×3            3       消耗品/HP全回復/状態異常回復/ラウンド終了まで行動値二倍/ラウンド終了まで物理攻撃の命中判定に+2D 竜の薬×14             14      消耗品/自身以外の対象を行動済で戦闘不能回復/HP・MP全回復/状態異常回復/ラウンド終了まで物理・魔法防御力+30し、無属性以外の魔法ダメージ-20、自身が与える魔法ダメージ二倍(切捨て) =所持品合計=   537125 G (重量 49/上限52) =装備合計=    356500 G = 価格総計 =   893625 G 所持金   823,960G 預金・借金    G ■特殊な判定■     能力値  スキル  他  合計 (ダイス数) 罠探知   13        13 (2D) 罠解除   20        20 (2D) 危険感知  13        13 (2D) 敵識別    2         2 (2D) 物品鑑定   2         2 (2D) 魔術               (D) 呪歌               (D) 錬金術              (D) ■スキル■ 《スキル名》             SL/タイミング       /判定  /対象      /射程/コスト/制限            /効果など 《アクロバット》          ★ /パッシヴ        /-    /自身      /-  /-   /              /猫族、作成時に敏捷基本値に+3 《ボルテクスアタック》       0 /攻撃と同時宣言     /自動成功/単体※     /-  /-   /1シナリオ1回        /武器攻撃の対象を単体に変更し、ダメージに+[CL×10]する 《ワンコインショット》       5 /DR直前         /自動成功/自身      /-  /4   /魔導銃使用時        /対象の【物理防御】【魔法防御】に-(SL×3)してダメージを与える 《ウェポンルーラー》        1 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /武器攻撃の命中に+[SL+1] 《アームズマスタリー:魔導銃》   ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /魔導銃の命中に+1D 《ファイトバック》         1 /リアクション      /命中判定/単体      /武器/5   /シーンSL回         /対象の射撃か魔法攻撃に対するリアクションを武器の命中判定で行い、勝利した場合対象に[CL×5]のHPロスを与える。命中しようがしまいが対象の攻撃は自身に自動命中する。 《バレットマーク》         ★ /ワンコインショットと同時/自動成功/自身      /-  /-   /魔導銃使用時        /対象に1点でも与えれば【物理防御】【魔法防御】にシーン終了まで-15する 《インターセプト》         3 /リアクション      /命中判定/単体      /視界/3   /シナリオSL回/魔導銃装備時 /対象の魔法・射撃攻撃に対するリアクションを命中判定を行い成功すればその攻撃を失敗させる 《氷の棺》             ★ /メジャー        /命中判定/単体      /20m/12  /1シーン1回         /6D+[CL×5]の水属性魔法ダメージ。1点でもダメージを与えた場合【スタン】【スリップ】【ノックバック1】を与える。この攻撃は射撃攻撃である。 《おぞましき鉄串》         ★ /メジャー        /命中判定/場面選択    /10m/40  /1ラウンド1回        /対象に武器攻撃を行う。このダメージは貫通ダメージになり、対象に【スリップ】を与える。 《カウンターショット》       ★ /判定直後        /命中判定/単体      /武器/-   /1シナリオ1回        /対象が行う攻撃の命中達成値を難易度にして命中判定を行い、成功した場合対象の攻撃は失敗する 《ラストアクション》        ★ /戦闘不能時       /自動成功/自身      /-  /10  /シナリオ1回        /行動済か否かに関わらずメインプロセスを1回行う。そのメインプロセスで回復するスキルやアイテムは使用できない。 《ラーニング》           ★ /効果参照        /-    /自身      /-  /-   /              /「タイミング:メイキング」以外の種族スキルを一つ取得する 《ハイドアウェイ》         ★ /セットアップ      /自動成功/自身      /-  /4   /              /隠密状態になる。敵とエンゲージしていても隠密状態となれる効果を得ていない場合、敵とエンゲージしていると使用できない。 《バイオロジー:人間》       4 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /取得した際にエネミー分類を一つ選び、そのキャラクターに対するダメージに+[SL×4] 《インプロージョン》        ★ /効果参照        /自動成功/自身      /-  /8   /              /魔法攻撃がクリティカルした場合、魔法防御を0と見なしてダメージを与える。 《コンシールアタック》       1 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /隠密時           /命中に+1D、ダメージに+SLD 《ホーミングヒット》        ★ /判定直前        /自動成功/自身      /-  /-   /1シナリオ1回        /命中判定直前に使用し、その攻撃に対するリアクションは必ず失敗する。「タイミング:リアクション」のスキル・アイテムも使用できない。 《マーダースキル》         1 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /命中判定クリティカル時にクリティカルダメージ増加に加えて更に+[(SL)+1]D 《エングレイブド》         5 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /SL×3+1点のEPを得る。 《バッドフォーチュン》       ★ /効果参照        /自動成功/単体      /20m/-   /              /EP2点消費。対象がクリティカルした際に使用し、そのクリティカルを打ち消す。 《スラッシュブロウ》        1 /DR直前         /自動成功/自身      /-  /3   /シーン1回         /武器攻撃に+[SL×2]D 《爆炎の投射》           ★ /メジャー        /命中判定/範囲(選択)  /20m/10  /              /5D+CL*5の火属性魔法ダメージ。この攻撃は射撃攻撃である。 《治癒の力場》           ★ /メジャー        /魔術判定/範囲(選択)※  /10m/15  /1シーン1回         /魔術/対象のHPを、使用者のCL*4点回復する。 《デスペラード》          5 /セットアップ      /自動成功/自身      /-  /6   /              /武器攻撃に+[SL×5]、物防-50(最低0)する 《ハイボルテージ》         5 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /武器攻撃に+SL×4 《アームズロジック:魔導銃》    ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /魔導銃の命中に+1D 《ヨロイ割り》           ★ /マイナー        /筋力判定/自身      /-  /15  /重量10以上の武器を装備   /武器攻撃に+【このスキルの判定の達成値】する。その武器攻撃で対象に1点でもダメージを与えた場合、物理防御力を-10する。このスキルの効果は同一の対象には重複しない。 《調合》              ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /調合の判定に+1Dする。その判定でクリティカルした場合、成果物を一つ多く獲得できる。 《復活の秘儀》           ★ /メジャー        /魔術判定/場面(選択)   /30m /60  /シナリオ1回        /魔術/戦闘不能の味方のみ対象にできる。対象の戦闘不能を回復し、HPをCL*5点回復する。対象は行動済みになる。その後、対象が受けているバッドステータスを任意に解除してよい。 《ミアズマウェポン》        9 /メジャー        /自動成功/効果参照    /-  /-   /1シナリオ1回        /EP1点消費。武器1つを選択し[攻撃力]に+[SL×2] 《ファストセット》         ★ /ムーブ         /自動成功/自身      /-  /6   /              /自身のマイナースキルをムーブで使用可。 そのメインプロセスのマイナータイミングで同じスキルは使えない。 《バイオレントヒット》       ★ /クリンナップ      /自動成功/自身      /-  /-   /シナリオ1回        /<ボルテクスアタック>の使用回数を1回復 《ストームアタック》        1 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /<スラッシュブロウ>の効果に+[SL+3]D 《レジェンド》           15 /アイテム        /-    /効果参照    /-  /-   /              /プリプレイ時武器を一つ選択し、その「攻撃力」に+SL×3する。その武器はあなたのみ使用できる。 《エンハンスブレス:闇》      ★ /マイナー        /自動成功/自身      /-  /6   /              /取得時に属性を一つ選ぶ。シーン終了まで武器攻撃を選択した属性の魔法攻撃に変更する。 《アーティラリィマジック》     ★ /マイナー        /自動成功/自身      /-  /8   /エンハンスブレス効果中   /魔法攻撃のダメージに+[装備している武器の攻撃力]する。対象は武器の射程内にいなければならない。 《エンシェントレジェンド》     ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /レジェンドのSL上限を10にする。 《エレメンタルパワー》       5 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /エンハンスブレスで指定した属性ダメ-ジに+SL×4 《地霊の守護》           ★ /セットアップ      /魔術判定/範囲      /至近/12  /              /魔術/対象が受ける地属性魔法ダメージを-30する。この効果はラウンド終了まで持続する。 《熱除けの鏡》           ★ /セットアップ      /魔術判定/範囲      /至近/12  /              /魔術/対象が受ける火属性魔法ダメージを-30する。この効果はラウンド終了まで持続する。 《竜牙砕き》            ★ /マイナー        /自動成功/自身      /-  /10  /              /このスキルを使用したメインプロセスの攻撃は、ダメージ+【装備している武器の重量*2】される。対象が種族【竜】の場合、貫通ダメージになる。そのダメージを与えた場合、対象が攻撃で与える物理ダメージは-10される。 《迷宮結界》            ★ /メジャー        /精神判定/場面(選択)   /30m/20  /              /このスキルの精神判定達成値を目標値として対象は【知力】で対抗を行う。対象が失敗した場合【放心】【恐怖】を与える。 《人器一体》            3 /アイテム        /-    /効果参照    /-  /-   /              /武器を一つ選び、命中修正に+SL、攻撃力に+(SL×5)。 《金色の王剣》           ★ /メジャー        /命中判定/単体※     /20m/30  /              /対象に魔法攻撃を行う。対象に【(CL*2)D+武器攻撃力】の光属性魔法ダメージ 《百人斬》             ★ /メジャー        /命中判定/場面(選択)   /場面/20  /              /対象に武器攻撃を行う。 《致命の技》            ★ /DR直後         /自動成功/自身      /-  /10  /1ラウンド1回        /DR後に任意のダメージロールダイスを振り直す。 《残像の刃》            1 /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /スラッシュブロウに[(SL×2D)+器用基本値]し、このダメージはスキルやアイテムによって0や軽減されない 《凍土領域》            ★ /メジャー        /魔術判定/場面選択    /シーン /42  /1ラウンド1回        /魔術/対象に【(CL)D】点の水属性魔法ダメージを与える。HPが1点でも与えたらダメージの合計値の半分のHPロスを受け、【衰弱(4)】を与える。 《詠唱》              ★ /メジャー        /魔術判定/自身      /-  /24  /              /魔術/自身が行う次の魔術攻撃のダメージロールに、【+(魔術判定の達成値)D】 《心臓刺し》            ★ /メジャー        /命中判定/単体      /至近/38  /1ラウンド1回        /対象に武器攻撃を行う。この命中判定でクリティカルした場合、対象は戦闘不能になる。対象が戦闘不能にならない場合、この攻撃のダメージは貫通ダメージになる。この攻撃のクリティカルによるダメージロール増加は4倍になる。 《竜巻の呪文》           ★ /メジャー        /魔術判定/場面(選択)   /40m/30  /              /魔術/対象に魔法攻撃を行う。この判定に+(CL)Dし、対象に(CL+5)Dの風属性魔法ダメージを与える。 《異才:ウェポンエキスパート:魔導銃》★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /魔導銃による武器攻撃+2D 《戦士の挑戦》           3 /イニシアチブ      /自動成功/自身      /視界/3   /1シーン1回         /射程内のキャラクター1体を選択し、そのキャラクターのみを対象とした武器攻撃のダメージ+[SL×10]。この効果はシーン終了まで持続。 《一騎当千》            ★ /メジャー        /命中判定/単体/場面(選択)/視界/45  /              /対象選択時に①か②を選ぶ。③はいずれを選んでも発動する。 ①対象:単体に武器攻撃を行う。 対象と同じエンゲージに転送してもよい。この移動は封鎖や地形の影響を受けない。  この武器攻撃で対象にダメージを与えた場合、与えたダメージと同数のHPロスを追加で与え、さらに追加のメインプロセスを一回得る。 ②選択した対象に武器攻撃を行う。  場面内の任意の場所に転送してもよい。この移動は封鎖や地形の影響を受けない。  この武器攻撃で対象にダメージを与えた場合、対象に追加で選択した対象の数*5のHPロスを与える。 ③このスキルを使用したメインプロセスの終了時、このスキルの対象になったキャラクターはバッドステータス【恐怖】【威圧】になる。 《パワー:英雄戦技》        ★ /セットアップ      /自動成功/自身      /-  /60  /              /回避以外の全てのダイスロール+5D。この効果は使用した次のラウンドのクリンナッププロセスまで継続する。 《パワー:虚空斬》         ★ /イニシアチブ      /効果参照/単体      /20m/86  /              /20m以内の最も近いエネミー単体(複数の場合ランダム)に、武器攻撃を行う。 このダメージは防御を無視し、ダメージロールに【+対象の防御力の合計(物理+魔法)D】する。 《真吸血鬼の術》          ★ /メジャー        /魔術判定/単体      /至近/16  /              /魔術/対象に白兵攻撃を行う。この攻撃は闇属性の魔法ダメージとなる。この攻撃により与えたダメージの二倍だけHPを回復する。 《城門落とし》           ★ /メジャー        /命中判定/単体      /武器/32  /打撃武器装備        /対象に武器攻撃を行い、ダメージロールに+([使用する武器の重量]D)し、対象の防御を0として計算する。 HPに1点でも与えた場合、対象の【物理防御】【魔法防御】は0となり、0になる前の値の合計値との差分と同数のHPダメージを追加で与える。【物理防御】【魔法防御】を0とする効果は、シーン終了まで継続する。 《バトルコンプリート》       1 /DR直後         /自動成功/自身      /-  /7   /1シーンSL回        /命中判定直後、その判定を振りなおす。その際ダイスの数は変更されない。 《破魔の理力》           ★ /メジャー        /魔術判定/場面      /場面/24  /              /魔術/対象を光属性に変更し、対象が行う攻撃は【光属性の魔法ダメージ】になる。 この効果は、属性が競合した場合最も優先され、シーン終了か、他の魔術などによって属性を上書きされるまで継続する。 その後、下記の二つから一つを選んで処理する。 ①対象のキャラクターから一人を選択し、場面に登場している、光属性のキャラクター×10のHPロスを与える。 ②対象のキャラクターから一人を選択し、場面に登場している、光属性のキャラクター×10のHPを回復する。 《深淵の吐息》           ★ /マイナー        /-    /場面(選択)   /視界/62  /1ラウンド1回        /特殊攻撃を行う。 判定は【精神】+6Dで行う。 対象に100点の貫通ダメージを与える。 ダメージを受けた対象が闇属性以外の場合、対象のHPを半分(切り捨て)にする。 この効果は対象が戦闘不能になるダメージを受けていても優先して解決される。 《異才:ライディング》       ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /騎乗状態          /あらゆる命中判定と回避判定に+1D 《武の神髄》            ★ /効果参照        /自動成功/自身      /-  /-   /              /武器攻撃によるダメージロールにフェイトを使用してダイス増加する場合、フェイト1点につきダメージロールを+5Dする。 《獣の気》             ★ /ムーブ         /自動成功/自身      /-  /-   /1シーン1回         /自身の武器攻撃の対象はメインプロセス終了まで6の目の数にかかわらずクリティカルしない。また、スキル、アイテムの効果によってもクリティカルしない。 《パワー:大暴れ》         ★ /メジャー        /命中判定/範囲      /武器/42  /1ラウンド1回        /武器攻撃を1d10+2回行う。攻撃の対象は射程内のキャラクターからランダムで決定される。 《聖絶の剣》            ★ /メジャー        /命中判定/単体※     /30m/80  /              /対象に魔法攻撃を行う。[(武器攻撃力+任意の能力基本値)D]の光属性魔法ダメージを与える。このスキルは自身以外のスキル、アイテムの効果を受けない。 《異才:ホースバトラー》      ★ /効果参照        /効果参照/単体      /至近/10  /騎乗状態、メインプロセス1回/自身のメジャーアクション終了時に使用し、さらにメジャーアクションとして特殊攻撃を行う。その攻撃の命中判定は器用判定となり、その判定に+1Dする。ダメージは[(SL)D+CL×3]の貫通ダメージとなる。クリティカル時ダイスロール増加。 《スタイル:クラフト》       5 /メジャー        /自動成功/単体      /至近/7   /1シナリオ1回        /対象が装備している武器1つを選び、シナリオ終了までその武器の[攻撃力]に+(SL×2)する。スタイルは他のスタイルと同時取得できない。 《異才:インバルネラブル》     ★ /DR直後         /自動成功/自身      /-  /-   /1シナリオ1回        /自身が受けるダメージロール直後に使用し、そのダメージを0にする。 《パワー:無音詠唱》        ★ /パッシブ        /自動成功/自身      /-  /-   /              /【魔術】を使用した時、その効果に【+知力基本値*2】する。この効果はスキル【詠唱】には適用されない。 《聖戦》              ★ /メジャー        /自動成功/場面(選択)   /10m/100  /              /対象の次の攻撃は【光属性の魔法ダメージ】になり、ダメージロールの合計値を二倍にする。 《風の十二方位》          ★ /メジャー        /魔術判定/場面(選択)   /視界/71  /              /魔術/対象に武器攻撃を行う。ダメージロールに+【任意の能力基本値D】する。このダメージを減少、または0にするスキル、アイテム、パワーの効果を受けない。この攻撃は風属性の魔法ダメージとなる。 《方舟の記憶》           ★ /メジャー        /魔術判定/場面(選択)   /視界/67  /              /魔術/任意の属性を二つ選び、魔法攻撃を行う。対象に【任意能力基本値二つの合計値D】の任意の二属性魔法ダメージを与える。その後、対象に【威圧】【スタン】【放心】に与える。 《星落とし》            ★ /メジャー        /魔術判定/場面※     /40m/80  /              /魔術/魔法攻撃を行う。対象に(CL*10)Dの無属性魔法ダメージを与える。 《ミアズマバインド》        ★ /判定直前        /自動成功/自身      /-  /-   /              /自身の攻撃の命中判定直前にEP3点を消費し使用する。その攻撃に対するリアクション判定は必ず失敗となり、[タイミング:リアクション]のスキル、アイテムも使用できない。 《魂砕き》             ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /自身が行う攻撃で1点でもダメージを与えた場合、その対象に3点のMPロスを与える。 《イモータルブラッド》       ★ /戦闘不能時       /自動成功/自身      /-  /-   /1シナリオ1回        /戦闘不能となった時、フェイトを1点消費し自身のHPを[1D]点にして、行動済状態で戦闘不能を解除する。 《ピアシングミアズマ》       ★ /マイナー        /自動成功/自身      /-  /-   /              /EP2点消費。メインプロセス終了時まで自身の武器攻撃のダメージを全て貫通ダメージに変更する。 《バッドフォーチュン》       ★ /効果参照        /自動成功/単体      /20m /-   /              /対象がクリティカルをした直後にEP2点を消費して使用できる。そのクリティカルを打ち消す。 《アーツ:クラフト》        ★ /パッシブ        /-    /自身      /-  /-   /              /武器の命中判定に+2。攻撃のダメージに+1Dする 《スペルバレット》         ★ /判定直前        /自動成功/自身      /-  /3   /魔導銃装備時        /魔術判定の直前に使用し、その判定を命中判定で代用する。 《一般スキル》        SL/タイミング /判定  /対象/射程/コスト/制限             /効果など 《アスレチック》      ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /登攀・跳躍の判定に+1D 《サーチリスク》      ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /危険感知+1D 《ハンティングアイ》    ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /射撃ダメージに+3 《シュータースタンスⅠ》   ★ /戦闘前   /自動成功/自身/-  /-   /               /フェイト1点消費。シーン終了時までダメージに+1D 《シュータースタンスⅡ》   ★ /戦闘前   /自動成功/自身/-  /-   /シュータースタンスⅠと同時使用/フェイト1点消費。シーン終了時まで命中に+1D、ダメージに+1D 《ゴッデスブレス:武器攻撃》★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /武器攻撃にダメージ+2 《シュータースタンスⅢ》   ★ /戦闘前   /自動成功/自身/-  /-   /シナリオ1回         /射撃攻撃でクリティカルした時に使用可能、フェイトを1点消費することでその攻撃のダメージロールは対象の【物理防御】【魔法防御】を0として算出する。 《リサーチ》        ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /情報収集する感知判定に+1D 《レガシーサイン》     ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /レガシースキルを取得できる 《イクイップリミット》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /装備重量+5 《サクセション:武器》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /プリプレイに武器を一つ選んでそれの攻撃に+1する 《トレーニング:敏捷》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /敏捷基本値+3 《キャッチアウト》     3 /効果参照  /自動成功/単体/視界/3   /シナリオSL回         /対象がメジャーアクションで攻撃スキルを使用したメインプロセス終了後に使用し、以後そのスキルに対するリアクションを+2Dする 《フックダウン》      ★ /クリンナップ/自動成功/自身/-  /3   /シーン1回          /種別:ポーションを1つ使用する 《トレーニング:感知》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /感知基本値+3 《フェイス:グランアイン》 ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /攻撃のダメージ+2 。他のフェイスと併用取得不可。 《ゴッデスブレス:魔法攻撃》★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /魔法攻撃にダメージ+2 《トレーニング:筋力》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /筋力基本値+3 《グローヴィスフレイム》  ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /魔法防御+2。火属性 《トレーニング:器用》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /器用基本値+3 《トレーニング:幸運》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /幸運基本値+3 《インテンション》     ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /自身の最大MP値に+CLする。一般スキル[バイタリティ]と同時取得は出来ない。 《インサイト》       ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /嘘やはったりを見抜く判定に+1D 《フライトマニューバー》  ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /飛行状態時          /回避判定+1 《ホースマンシップ》    ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /騎乗状態時          /回避判定+1 《ダンジョンマスター》   ★ /パッシブ  /-    /自身/-  /-   /               /ミドルフェイズのダンジョンシーンであり、戦闘シーン以外のあらゆる行為判定の達成値に+1 ■コネクション■ 名前        / 関係 神薙 刀祢      / 同士 三島 志摩      / 貸し ルディ・シャーロット/ 保護者 フィル       / 取引 ジョン・ドゥ    / 後援者 イリーナ・テルミン / 秘密 リン・アカバネ   / 友人 ノイシュ・ジンガ  / 忘却 ポポ・アラモード  / 同行者 ■その他■ 使用成長点:4480点 (レベル:4350点、一般スキル:130点、ゲッシュ:0点) レベルアップ記録:サポートクラス / 上昇した能力基本値 / 取得スキル Lv1→2: / 筋力、器用、敏捷 / ワンコインショット3、ワンコインショット4、ファイトバック1 Lv2→3: / 器用、敏捷、感知 / ワンコインショット5、バレットマーク、インターセプト1 Lv3→4: / 器用、敏捷、感知 / インターセプト2、カウンターショット、ラストアクション Lv4→5:セージ(印使用) / 筋力、器用、敏捷 / ラーニング、バイオロジー、バイオロジー2 Lv5→6:ニンジャ(印使用) / 器用、敏捷、感知 / バイオロジー3、バイオロジー4、インプロージョン Lv6→7: / 器用、敏捷、感知 / コンシールアタック1、ホーミングヒット、マーダースキル1 Lv7→8:ルイネーター(印使用) / 器用、敏捷、感知 / エングレイブド1、エングレイブド2、バッドフォーチュン Lv8→9: / 筋力、器用、敏捷 / エングレイブド3、エングレイブド4、スラッシュブロウ1 Lv9→10:ウォーロード(印使用) / 筋力、器用、敏捷 / デスペラード、デスペラード2、ハイボルテージ Lv10→11: / 器用、敏捷、感知 / デスペラード3、デスペラード4、ハイボルテージ2 Lv11→12: / 器用、敏捷、感知 / デスペラード5、アームズロジック、ハイボルテージ3 Lv12→13: / 器用、敏捷、感知 / ミアズマウェポン1、ファストセット、ハイボルテージ4 Lv13→14: / 器用、敏捷、感知 / ストームアタック、バイオレントヒット、ハイボルテージ5 Lv14→15:ドラグーン(印使用) / 器用、敏捷、感知 / レジェンド、レジェンド2、エンハンスブレス Lv15→16: / 器用、敏捷、感知 / レジェンド3、レジェンド4、アーティラリィマジック Lv16→17: / 器用、敏捷、感知 / レジェンド5、エンシェントレジェンド、レジェンド6 Lv17→18: / 器用、敏捷、感知 / レジェンド7、レジェンド8、エレメンタルパワー Lv18→19: / 器用、敏捷、感知 / レジェンド9、レジェンド10、エレメンタルパワー2 Lv19→20:ドレッドノート(印使用) / 器用、敏捷、感知 / 人器一体、ミアズマウェポン2、人器一体2 Lv20→21: / 器用、敏捷、感知 / 致命の技、人器一体3、残像の刃 Lv21→22: / 器用、敏捷、感知 / 異才:ウェポンエキスパート、戦士の挑戦1、戦士の挑戦2 Lv22→23: / 器用、敏捷、感知 / 戦士の挑戦3、バトルコンプリート、ミアズマウェポン3 Lv23→24: / 器用、敏捷、感知 / 獣の気、武の神髄、異才:ライディング Lv24→25: / 器用、敏捷、感知 / 異才:ホースバトラー、異才:インバルネラブル、スタイル:クラフト1 Lv25→26: / 器用、敏捷、感知 / スタイル:クラフト2、スタイル:クラフト3、エレメンタルパワー3 Lv26→27: / 器用、敏捷、感知 / スタイル:クラフト4、スタイル:クラフト5、エレメンタルパワー4 Lv27→28: / 器用、敏捷、感知 / エングレイブド5、ミアズマバインド、エレメンタルパワー5 Lv28→29: / 器用、敏捷、感知 / イモータルブラッド、ピアシングミアズマ、バッドフォーチュン Lv29→30:ガンスリンガー / 器用、敏捷、感知 / アーツ:クラフト、転職、スペルバレット メモ: 人物像: 恐らく両親に捨てられたのであろうルークはその事実を必要以上に受け止めていた。 捨てられたのであれば一人で生きていかなければならないはずだ。 なのに幼いルークは賢者に拾われた。そのことが納得できなかった。良し悪しではなく、ただ納得がいかなかった。 もちろん衣食住を与え、生きる術を教えてくれた師には口では言わないが感謝している。 だから恩返しとして大人になった今でも独立せず年老いた賢者の手伝いをしていた。 しかしそれとこれとは話が別だ。 一人で生きていかなければならない宿命を背負っていたはずなのに、そうなっていない事実はルークにとっては違和感があった。 それ故、無意識に必要以上に人と親しくなるのを避ける傾向がある。 もう他人に頼らなくても生きていける年齢だ。ならわざわざ他人と関わることもないだろう。 それは嫌悪でも拒絶でもなく、自分の人生には必要ないという無関心さだった。 そのため他人に配慮も遠慮もしない。 関心のない雑草を踏むことに躊躇いなどないように、他人に同調することなく自分の言いたいことを言いたいように言う。 もしかすると村人たちからもあまり良くは思われてないかもしれないが、他人からの評価など気にはしなかった。 ただ、ルークにも道徳心はあるので法を犯すようなことはしないし粗暴なわけでもない。 幸か不幸か、人とぶつかってでも貫き通したい信念など何も持っていなかったし、自分のしたいことの前に他人が立ちふさがるなら「じゃ別にいいや」とあっさり諦めるほどには物事に執着しなかった。 そうしたことから、多少口は悪いが無闇に手を出すことはないので大きな問題を起こしたことは少なくとも今までにはなかった。 そんなルークだが、幼少の頃より自身の出自には興味があった。 別に今更自分が何者であっても関係はないが、一応知るだけは知っておきたい。 だが恩を返し切れていない賢者を置いて旅に出るのも気が引けた。それに宛てもない。 以前ルークの心情を察していた賢者から自分のことは気にせずに行けばいいと言われたが「受けた恩は返すのが道理だ、黙ってろジジイ」と一蹴した。 自身のルーツは知りたい、しかし何も焦ることはない。いずれ知れれば良いのだから。 性格: 物事にあまり頓着しないが、やろうと思ったらとりあえずやる行動派。 しかし大きな障害などがあるとあっさり諦めるめんどくさがりでもある。 必要迫られない限りは必死に何かをすることはほとんどない。 師匠であるハロルドのことは家族というより恩人という思いが強い。 なので家族という繋がりや大切さをわかっていない。 師匠のことはジジイ呼ばわりするし悪態もつきまくるが真面目な話をしてたり咄嗟に呼びかける時はきちんと「師匠」と呼ぶ。 長年村に住んでるので他の住人のことはもちろん知っているが深い付き合いはない。 挨拶をされたら挨拶を返すし話しかけてきたら話すし薬を卸す時に交渉したりもする。 だが積極的に話しかけにいくことはほとんどない。あくまで事務的なことのみ。 しいて言えばこの愛想のない物言いに動じず積極的に話しかけてくる村の商人の娘、イリーナとその友人リンとは少し話す程度の仲ではある。 薬草を探しに森に入ったり薬の材料となる魔物の素材を取ったりするので10歳頃から最低限の戦う術は身に着けていた。 家の掃除をしている時に見つけた魔導銃は、昔ハロルドが旅の道中に見つけた物だが銃を扱う技術もないので無用の長物として長年放置されていたもの。 戦術の基本などは師であるハロルドから習ったが銃術は独学で、最初は「遠くから攻撃すれば楽だから」と魔導銃を手にしたのだが、近所の森ではそこまで強い魔物もいなかったため、今では「攻撃喰らう前に殺せばいい」というスタンスで近距離戦も厭わなくなっている。 例え自身が傷つくとしても、最後に立っている者が勝者である。勝者になる為の代償が傷なのだとしたらそれは必要経費、という考え。 また、今までずっと一人で戦ってきたのでサポート系スキルのありがたみをあまりよくわかっておらず、そんなことしてる暇があるなら殴ればいいのにと思っている。 関係: 街の教会に居候しているアルディオン大陸からの流れ者フィルと、この街の領主の一人息子ジョン・ドゥ(本名セイシ・チェルノブイリ)が、街のとある変わり者から受け継いだ街唯一の冒険者ギルドをやっていたことは知っていたが興味も関心もなかったので事件が起きるまではスルーしていた。 街唯一の雑貨店の娘であるイリーナ・テルミンや同じく街唯一の宿屋の息子であるノイシュ・ジンガとは取引先として何度か話す機会はあった。 ルークからは事務的な内容しか話さなかったが両名とも積極的に無駄話を仕掛けてくるのでその受け答えをすることはあった。 地球という異世界から転移してきたリン・アカバネは身寄りがなく街に流れ着いて来た際にイリーナと共に少し世話をしたことがある。 とはいえそれはルークから能動的に行ったものではなく、ハロルドに「頼る者がなく流れ着いたのは赤子のおぬしと同じじゃろうて」とクドクド説教され、助けてやりなさいと言われた故であった。 ギルド「サイコカンパニー」の一行が発見されたばかりの洞窟探索中に、ファージアースという異世界から転移してきたという神薙刀祢、三島志摩、ルディ・シャーロットに対しては特に何も思うことはなかったが、共に事件に巻き込まれていく事となった。 遊牧民であり冒険者でもあるポポ・アラモードにはたまに少しイラつくことがあった。 仲間を目の前で無残に殺された経験があるとはいえ、臆病でいつも誰かに付いて回り庇護下に入ろうとする弱さが、一人でも生きていかねばならないというルークの信念に反するからである。幾度か助言したがその都度怖がられ逆効果だったので、それ以降は何も言わず見守っている事が多い。 早く独り立ちした方が良いとは思っているが、それを押し付ける気はない。 セッション記録: -第一話- 師匠ハロルドの指示で街の住人達や異世界から飛ばされてきたアーシアン達と一緒に最近発見された未調査の洞窟を探索することになり、最初は「まぁそれくらいなら別にいいか」と思っていたが、個性の殴り合いのような濃い面子を見て即やる気がゼロになった。 そして半ば強引にギルドに加入させられ洞窟まで引きずられていった時点で諦めへと変わった。 顔馴染みであり他の連中より比較的まともであるリンやイリーナもいるのでまぁなんとかなるだろうと思っていたのに最近その二人もどんどんキャラ崩壊していくので「あぁ…染まってきたな…」と憐みの目を向けている。同時に自分もいずれああなるかもしれないのかとルークは恐怖に近い感情を覚えた。 親しいと言える人がリンやイリーナを除くと師匠くらいしかいないので、その洞窟から溢れ出してきた見た事もない異形の怪物に街が襲われ、多大な被害を受けた時も精神的なダメージはほとんどなかった。 家族という存在もろくに知らず親しい人も極端に少ないルークにとって街の住人達の犠牲はどこか他人事のようだった。 犠牲となった孤児や石になったように動かなくなってしまったメリトに対してリンやイリーナが悲しみや怒りを抱いてるのを見て「親しい人が亡くなるとああなるんだな」とぼんやりと理解した。 -第二話- 一か月後、チェルノブイリには例の洞窟の探索と異形の怪物討伐目的で多くの冒険者が訪れるようになった。 薄紫の結晶で出来たオベリスクの中で封印されたような状態で見つかったアンジェというフェイ(フェアリー)らしき人物もジョンの妹セーナと仲良くなり、すっかり馴染んでいる。この一ヵ月は被害を受けた街の復興や多数の冒険者の来訪で必要になった仮住まいの設営など慌ただしい毎日であった。 そんな状況もひと段落し、チェルノブイリ唯一の冒険者ギルドであるサイコカンパニーもまた洞窟の調査に乗り出すことになる。 洞窟の奥に進むと他の冒険者から追剥に遭い仲間を殺されたポポという冒険者に出会う。酒場に宿泊しておりノイシュとは仲が良いらしい。 ポポと出会い、仲間の死に心を痛める姿を見て、もしこのギルドの誰かが死ぬことになったら自分もああなるのだろうかとルークは考える。 人はいずれ死ぬ。それが早いか遅いかの差でしかない。死を良しとするわけではないがそこまで過度に悲観的になる必要もないような気がしていた。 そしてそれは例え自分が死ぬことになったとしても、結果的にそうなってしまったのなら仕方がないと思った。 ルークは捨てられた時、その場で死んでいてもおかしくはなかった。実際師匠に拾われなければそうなっていただろう。 なら今の自分はある意味、死んでいたはずの人生を生きているに過ぎない。 幸運に恵まれて少し先に延びた死がこの身に訪れたというのなら甘んじてそれを受けることだろう。 その時、自分の周りの者たちは何を言うだろうか。 世迷言を、と嗤うだろうか。そら見たことか、と呆れるだろうか。それとも、あのように胸を痛めるのだろうか。 わからない。わかったところで、自分ではどうすることもできない。今こうして縋るようにノイシュについて回るポポに何もしてやれないように。 せめてもの忠告をとポポに話しかけたが逆に警戒されてしまう。それは別に構わないが人の心とはなんとも気難しいものだ、と思った。 この話をジジイにしたらまた「お前はもっと人の心を知るべきだ」などと説教をし始めることだろう。 流石に人を辞めたつもりはないし、ルーク自身だって人であるはずだ。であれば自分の心とて"人の心"であるはずだろうと。 自分は相手ではないし相手も自分ではない。ならば何を基準に"人の心"と定義しようというのか。自分が持っている心は誰が理解するというのか。 理解できないなら無理にすることもない。相互理解ができないのであればそれはそういうものなんだとあるがまま受け入れればいい。 …しかしそれは子供には難しいのかもしれない。そう思ったところでルークはその思考を止めた。 自分は相手ではない。わからないのならば無理にわかろうとすることもない、か。 それよりも今はここから出る道を模索するとしよう。その方が建設的だ。 街に帰還した後、ギルド:サイコカンパニーがポポを引き取ることになった。(余計な)世話焼きが多いのでこうなるだろうとは思っていた。 その夜、いつか見た夢の光景が現実のものとなる。 吐き気のする重たい空気、酷い死臭、動かない身体、そして人ならざる者の気配。 その者は自身の名を当てるよう告げた。知るはずもない。遺跡の奥に潜むというその何者かはいつの間にか消えていた。 その者の手掛かりを探さなければならないらしい。正直地下遺跡になど興味はなかったが自分にもとうとうあの遺跡に用が出来てしまったようだ。 しかし現状あの遺跡が何なのか全くわかっていない。そういえばあの遺跡の奥に行こうと固執していたアーシアンが…おかしな種族がいたはずだ。 翌朝、ルークは例のアーシアンを呼び止め問い質す。 神薙はこいつをエルダナーンだと誤魔化していたが、それにしては種族スキルが違――イリーナとは違う雰囲気がする。 ただ種族が違うだけなら隠す必要もないはずだ。異世界の種族などどうせ知らないのだから。 それにこいつは出会った初日、自らを不死だと言っていた。おかしな妄言だと思っていたがもしそれが本当なら…あの者と同類かも知れない。 こいつはルディ・シャーロットと言うらしい。他の者がルディと呼んでいたが仮名(けみょう)ではなかったようだ。 ルディは「何も知らない」を突き通す。つまらない脅しをかけてみるも眉一つ動かさない。 元より感情が希薄な奴だとは思っていたが、この情調はとても年端もいかぬ少女のものとは思えない。これには覚えがある。うちのジジイのようだ。 精彩に欠ける虚ろな瞳を見詰め返す。自らを「キュウケツキ」と名乗り、敵ではないと語る少女。それを信じる材料も疑う材料も手元にはない。 「敵ではない」「遺跡の調査に来た」出会った当初神薙が言っていた言葉を思い出す。ここまで深い付き合いになる以前から言っていたことだ。 その言葉がわざわざ俺たちを騙すためだけに用意されたものとも考え難い。それにその言葉は今の自分と全く同じ状況を指し示す。 ただ…それを信じるにしてもこの"ルディ"は信じて良いものだろうか。他のアーシアンでさえルディの素性を完全に把握しているとは言い難かった。 むしろ言語にせよ夢の話にせよ遺跡への執着にせよ、本人でさえ何故なのかわからないという話が多すぎる。 "よくわからないもの"は常に危険を孕んでいる。それを何の根拠も無しに手放しで信じて良いのか。 「周りの者を疑いすぎるな。彼らは敵などではない。人は互いに支え合い、信じ合って生きるものだ」といつかのジジイの説教が頭をよぎる。 曰く「一人で生きようとし過ぎだ」と。今までは一人で乗り越えられない壁などなかった。一人で何も問題はない、と。 ……確かに、例の人ならざる者をどうにかするのは一人では成しえないことかもしれない。 人を信じる、成程それはとても難しくとても簡単なことだ。信じると言うのはとても容易で、反面疑いだすとキリがない。 "アレ"のせいで少し感情的になり過ぎたかもしれない。いつものように利害的に考えれば共通の目的を持つ戦力だ、協力を惜しむこともない。 たまには人を信じてみるのもいいかもしれない。横目でルディを見ると不思議そうに見返してきた。 よりによってジジイの言葉に副って信じてみた相手がこんな不安材料の塊だとはね…。 ルークは小さく息を吐き、ルディを引き連れ仲間の下へ向かった。 洞窟の地下には巨大な遺跡のような空間が延々と広がっており、街を襲った異形の怪物があちらこちらにいた。 遠方からやってきた冒険者も歴の長いベテラン冒険者も、口を揃えてあんな怪物は見たことないと話していたらしい。 今まで未発見だった事が不思議なくらい大規模な遺跡と見た事もない異形の怪物、地上では見た事ない技術で作られている武具や辞書にも載っていない文字。 どうやらこの遺跡はただのダンジョンというわけではなさそうだ。 誰にも読めない文字はルディだけ読むことが出来た。本人も何故読めるのかわからないらしい。わからないことがまた一つ、だ。 街に集った多くの冒険者がここを探索しているはずだが、広さ故か不思議と誰ともすれ違わなかった。 ノイシュの話では宿泊していた冒険者の半分ほどは遺跡の奥へ調査に行ったきり帰ってこないらしく、街の衛兵長でもあるノイシュの父が現在様子を見に行っているらしい。異形の怪物共は数が多く厄介だが一体一体は然程驚異的ではないはずだ。この奥に何か強い力を持つ者が潜んでいるのだろうか。 遺跡の奥底、地底湖のような場所で待ち構えていたのは、道中で見つけた書籍に記されていた伝承に登場した不死の魔将ポールだった。 「人の手で殺されることはない」という性質を持つポールはギルドの面々や街の衛兵の攻撃をものともしない。 ただ唯一、ルディだけが有効打を与えることができた。これは「キュウケツキ」が「人ならざる者」であるという決定的な証拠だった。 そんな予感はしていたので今更驚くこともない。見たことない怪物、人ならざる者、紅い月。既にエリンの常識では語れないことだ。 ポールが引き連れていた取り巻きの怪物達を倒しながらルディとポールの攻防を観る。 不死の魔将。だがこいつは例の夢に出てきた"アレ"ではない。こんな奴らがまだ他にもいるというのか。 ポールを倒した直後、一緒に戦っていた衛兵隊長であるノイシュの父が膝をつく。無事なようだが随分と無茶をしていたらしい。 その様子にノイシュは滅多に見せない表情で父を諫めた。家族…親しい者…。それは失い難い存在。 ここひと月の間に多くを失った街の住人たちを見てきた。それでも自分にはまだそれが遠い世界のことのように思えた。 自分自身、生への執着がないのか……。いっそ不死であれば割り切れた感情なのかもしれない。横目でルディを見てそんなことを思った。 -第三話- ルディが最近ルークの家に来るようになった。聞くところによると本を読みに来たらしい。確かにルークの家はこの街で最も書籍がある場所だった。 最近はフィルも熱心に賢者(セージ)に教えを請いに来ている。そのせいか雰囲気が変わってきたように思える。 家にまで押しかけて来るなと前々から言っていたが、よもや入り浸るようになるとは思わなかった。 だがまぁギルドの中でもまだそこまで騒がしくはない者達だ、仕事の邪魔にならないなら別に構わない、とルークは淡々と仕事をこなしていた。 リンとイリーナに連れられ墓参りに来た。神殿の裏手にはひと月前のチェルノブイリ襲撃で犠牲になった孤児たちの墓がある。 久々にイリーナが服を着ているところを見た気がする。服を脱がなければならない理由は聞いたがいまいちピンとこなかった。 仲が良かった孤児たちが亡くなり、リンは当時かなりショックを受けていたが最近は立ち直ってきているように見えた。 だがあの遺跡に入るようになってから何故かリンは独り言はが多くなった。もしかすると内心ではまだショックから立ち直れてないのかもしれない。 久しぶりに古馴染み2人と話せた気がした。あの落雷の日から既にひと月以上、街の皆の生活はルークを含め大きく変わってしまったようだ。 神薙に呼び出され行ってみると、そこにはギルドのメンバーと街の要人が集まっていた。 ラインの公子アデルまでいる。どうやらジョンの古馴染みらしい。そういえばジョンは普段はアレだが身分だけは良かったなと思い出す。 その場で神薙は自身とルディ、三島志摩のこれまでの経緯とこちらの世界へ来た目的を明かした。 彼らの会話の端々からなんとなくは分かっていたが、改めて我々全員に伝えたという事は我々が全面的に信用されたということなのだろうか。 そして神薙はルディの正体も明かした。吸血鬼というのはあちらの世界でもやや特殊な種族のようだが、現状知っている以上の秘密は特にないようだ。 ルディ自身は神薙と三島志摩の手伝いをするのが目的だそうだ。本人の個人的な意思というわけではなさそうだったが一族の指示は遵守したいらしい。 個体数が少ないせいだろうか、随分と協調性の高い種族のようだ。もっとも今では自らの意思で遺跡調査に乗り出しているようだが。 3人はウィザードというこちらの世界でいう冒険者のような存在らしい。時折見せる見慣れないスキルは彼らの世界の魔術だという。 そんなウィザード組の目的は浸魔(エミュレーター)という魔物のような存在を倒すことで、そのために能動的にこちらの世界へ来たそうだ。 その浸魔は例の遺跡に関係しているらしく、現在ギルドとして依頼されている遺跡調査を続けていれば彼らの目的も達成されるかもしれないらしい。 「夜魔」と呼ばれるあのエリンに存在する者とは思えない異形の魔物もどきが彼らのいう侵魔なのだろうか。ウィザード組も見覚えは無いらしいが。 とりあえず、やることは現状とそこまで変わりはない。いつも通り遺跡に潜り調査を行うだけだ。 しかし彼らの世界と我々の世界、二つの世界から注目されているとはあの遺跡、やはりただのダンジョンというわけではなさそうだ。 前回魔人ポールを倒した奥の通路には更に迷宮が広がっていた。今までの遺跡とは造りが違い、遺跡に後付けされたような形になっていた。 厳密に言うと迷宮の方が古い時代のものなので、我々が今までいた遺跡の方が後付けされたものなのかもしれない。 この迷宮の造りや内装は古代宮殿のようになっていた。どことなく感じる死者の気配。"あれ"やポール達はここから這い出てきたのだろうか。 道中見かけた夜魔達は龍の卵とやらを探していたようで、その卵らしきものは隠し部屋で発見したが凄まじい力が渦巻いており触れることもままならなかった。 とりあえずその卵と手招きしてる渡し守は無視して更に奥に進むが、不思議な音楽によって身体を操られ先に進めそうにない。 道中の戦闘で消耗していたこともあり、一旦戻ろうという話になるもそこには赤竜ナイズと自称するドラゴネットが待ち構えていた。 魔人ポールを倒した猛者と戦いたいらしく襲い掛かってきた。それをなんとか撃退し街へ帰ることになった。 容赦なく叩きのめしたはずだが、異常な生命力を持つナイズは負けを認めると、その後親し気に話しかけてきた。ただの戦闘狂であり悪意はないらしい。 ナイズはリンを大層気に入ったようだがイリーナがリンを渡すまいとしていた。相変わらず仲がいい。 明朝、ルディがポポと何か話し込んでいた。最近色んな人にルディはよく呼び出されている。 他のメンバーには話さないと言うことはプライベートな事なのだろうか。言う気がないのなら聞く気もないのでスルーした。 リンとイリーナが皆にセーナの落とし物を知らないか聞いていた。セーナがロケットペンダントを落としたらしい。母親の形見だそうだ。 ジョンがそれならさっきアデル公子が持っていたと言う。それをセーナに伝えようとしたがどこに探しに行ったのか見当たらなかった。 次に会ったときに伝えればいいだろうということで、今日も遺跡調査に向かうことに。 昨日は無視したがポールと戦った地底湖にいた手招きしてる渡し守の船に乗った。 彼は丸一日ずっとここで待っていたのだろうか、人間には見えないが律儀な奴だ 船はいくつかの島をスルーして大きな岩の前で止まった。よく見るとそれは巨大な龍の頭蓋骨だった。 この骨の意思なのかどこかから声が聞こえる。人間の皇帝の手で封じられ守護者とされた、新たな私には名がない、名が無ければ何もできない、と。 何のことかわからないがそれ以降声は聞こえなくなった。 その場を調べてみるとその骨に何か宝石のような物が埋め込まれていた。リンたちが取ろうとしても取れなかったがルークが触ると容易に取れた。 首飾りになっているようでそれを取り付けてみると、ルークの見た目が変わった。 髪が白くなり瞳は紅くなり犬歯は少し鋭くなった。まるでルディのようだ。 ルディはその見た目に何か違和感を覚えたようだが、他に特に変わったこともない。むしろ調子が良くなったくらいだった。 この宝石のせいだろうが呪いがかけられているようで外せない。しかし疲労を感じにくくなるなどメリットもあったのでそのままにしておく事に。 渡し守はそれを見届けると船を元の岸辺へと戻した後、霞のように消えていった。 龍と言えば、ということで昨日見つけた龍の卵の元へ行ってみる。 相変わらず凄まじい力が渦巻いていたが、リンが近づき、名を与えると卵が孵った。 両掌に乗るほどの小さな仔龍が生まれた。とりあえず餌付けしようとリンは食べ物を与えるが反応しない。 色々与えてみると、こともあろうに"リンが作ったシチュー"を食べ始めた。リンはとても嬉しそうだった。 リンの料理を完食できたのはルークが知る限り昨日のナイズとこの仔龍だけだ。彼女の料理は龍向けなのかもしれない。道理で人間では食べれないはずだ。 リンは気に入ったのかこの龍を飼うと言い出した。イリーナは相変わらず何か拗らせていて、この仔龍はリンの子供なんだと言っていた。 これはもう止められない。そうして「ニーズヘッグ」と名付けられた仔龍が仲間に加わった。このギルド、変な奴しかいない。今更ではあるが。 その後ベトベトライジングサンダー島でベトベトを大量採取したり、眠っている青い鱗の巨龍を無視したりして探索する。 迷宮の奥、例の古代宮殿へ再び向かうと、やはり奥へ進むのを拒むように音楽が聞こえてくるが、騒がしいノイシュのおかげで何とかなった。 騒がしさが役立つことがあるなんて世の中何が起こるかわからないものだ。奥に進んでみると、とても広い宮殿であることがわかった。 こちらは迷宮の雰囲気ではなく、王族が住まうような正に宮殿と呼ぶに相応しい間取りで、部屋数も多く、埃っぽくはあるが内装も絢爛であった。 動く骸骨や襲い来る死体を薙ぎ倒しながら探索する。亡霊となった騎士や太った猟奇的な殺人料理長の動く死体なども倒した。 肉の塊から手や足が出鱈目に生えたような女の怪物もいた。人外だらけだ。もっともこの地でまともな人間など見たことないが。 探索しているとルディに似た少女と出会う。少女はここは自分の父が見ている夢の中なのだと語る。 曰くここでは全ての者が狂ってしまい、ここで死んだ者はこの夢に囚われてしまう、と。 少女はかつて近衛兵と身分違いの恋をして、結果的に彼を死なせてしまったらしい。傍らにはその者らしい生首があった。 サイコカンパニー一行を自らの末裔だと語る少女は、どうか父を倒しこの悪夢を終わらせてくれと懇願する。 やがて目の前の光景が一変し、いつの間にか部屋は荒れ果て、少女と生首は随分前に朽ち果てた骨へと変わった。ここでは何度か経験のある幻想だ。 近くの書斎で話に出た少女の父、かつてあった帝国の皇帝の手記を手に入れた。 相変わらずルディにしか読めなかったので翻訳をしてもらう。 要するにこの皇帝は始祖帝という存在に力を与えられ、次第に操られ、狂っていったようだ。狂っていたのは始祖帝のせいらしい。 彼女のいう事を信じるのであれば、我々はその始祖帝の末裔ということになる。余りに突拍子もない話だ。 アルディオン大陸出身のフィルはまだしも、異世界から来たリンやウィザード組が末裔であるはずもない。 人違いか法螺か、あるいはこの中の誰かが本当に末裔なのか。今はそれを考えていても仕方がないし知る術もなさそうだ。 宮殿の外へ出てみるとその庭園の広間には九つの磔台があった。そこにはいくつか死体が磔られていた。 「不浄なる料理を作りたる罪」と書かれた太った料理長、「役目を果たさざる罪」の亡霊騎士、「不忠を働きたる大罪人」の首の無い腐乱死体、「呪い堕ちた堕落の罪」の手足が出鱈目に生えた女の四つの死体だ。先程倒した者たちがいつの間にかここに磔られている。 空いている磔台は残り5つ。罪人と呼ばれるこれらを全て倒して磔台を埋めれば何か起きるのだろうか。 周囲を見渡すと宮殿の全貌がわかる。大きな城門、高い二つの塔、巨大な宮殿。とてもここが地下だとは思えないスケールだ。 ここは宮殿の前庭のようだ、がここが地下であることは間違いないらしくドーム状の天井は岩肌で、巨大な空間に古い宮殿が丸々沈んだような形となっていた。 再び宮殿内に戻り探索していくと夜魔に関する資料があった。夜魔はかつて邪神の瘴気によって呪われた人間を元に作られた存在らしい。 かつてあった古代帝国はこの夜魔を兵として利用していたようだ。実験を繰り返し、より強力な夜魔を生み出そうとしていたらしい。 資料の古さから見て地の時代末期か火の時代最初期辺りだろうか。専門家ではないがその辺りは謎が多く世界的に文献も少ないことは知っていた。 宮殿の広さから本日中に全域探索するのは不可能だろうということで一旦引き上げることとなった。 翌日、ルークは賢者に頼まれラインまで薬を届けに行くことになった。今までも何度もあった慣れた旅路だ。 ギルドの方は今日も宮殿調査に乗り出している。後日調査内容を共有してもらうことに。 ラインにてクライアントに薬を渡すと見た目が変わっていることに驚かれた。 そういえば今自分はルディみたいな特徴を持った姿に変質しているんだったな、とルークは今更ながら認識した。 街の住人やジジイからは特に何も突っ込まれなかったので忘れていた。あのジジイもしかして気付いてないんじゃないだろうか。 ※第三章中断 -第四章- ラインから帰還し、例の宮殿の探索に戻ると他のメンバーが宮殿の奥に霧深い森が広がっているのを発見していた。 今更ながら、地下に広大な森が広がっていて天には青空まである、と聞いても驚かなくなった辺り染まってきている気がする。 宮殿の探索はまだ終えていないがその森で出会ったエルダナーン、ティアをこの森のどこかにあるらしい街まで送り届ける依頼を受けたらしく、 そちらを優先することとなった。相変わらずお人好しな奴らだ。己の力量を測れないまま自ら森に入り迷ったのだから自業自得だろうに。 それよりもこの地下空間に生きた人間が住まう街があるというのは驚きだ。何か有用な情報が得られるかもしれない。 なにせ我々はこの地下空間が何なのかもよくわかっていないのだから原住民の話は貴重だろう。 この森は空間と空間が捻じ曲がって繋がっているらしく、正しい道順を辿らねば街へは辿り着けないらしい。 森に住まう妖精に道を尋ね、正しい道順を割り出して先へ進んでいく。 道中生きた野菜を大量に収穫した。死体が動き不死の存在が襲ってくるような場所なのだから野菜が動き出してもおかしくはないだろう。 歩みを進めながらティアの話を聞くと、彼女はこの森に棲息すると語り継がれている伝説の巨大な白鹿を探しに森へ入ったらしい。 本当に存在するのかも怪しい存在のようだが、彼女の友人が森でそれを見たらしく、その真偽を証明する為に探していたそうだ。 だがそれ以外の情報、街やそこの掟、街の住人やこの森のこと、そして自分自身のこと、そういった事は「知らない」もしくは「言えない」を繰り返すばかりで何も語ろうとはしない。 この地下において初めてまともに話が通じそうな人間に会ったというのに結局ほぼ何も情報を引き出せていない。ジジイの如き使えなさだ。 そのくせ街の住人以外の者を初めて見たとのことで、こちらのことはあれこれと聞いてくる。 冒険者にとって情報は等価交換が原則だというのにイリーナやノイシュはべらべらとこちらのことを語る。なんと不利益な。 もはや何を言っても無駄な気がしたので口をつむぐ。他の原住民とのパイプ役として友好的な関係を結ぶと考えれば悪くないと自分を納得させた。 今のところ、この森とルーク自身の目的とはあまり関係がなさそうだ。ならば特に行動を起こすこともない、と事の成り行きを傍観することにした。 街に着けばまともな話が出来る者もいるだろうし、この地に関する資料が残されている可能性もある。 泉の精霊にちくわを貰ったり気持ち悪い人魚にタイツを貰ったりした時はさすがに少し動揺したが、それ以外は特に何もなく森を進む。 やがて大きな吊り橋まで辿り着いた。この先に街があるらしいが木々に隠れて姿を見せない謎の集団が矢を放ってこちらを牽制する。 「ここから先は妖精王の土地、余所者は立ち去れ」その言葉からこの土地の自警団のようなものだと推測できるが随分と不躾な歓迎だ。 彼らの仲間であろうティアにもどうにもできないらしく立往生してしまったので、とりあえず今日はここで探索を終えることにした。 今朝家を出る時にジジイがなんだかんだ言っていたのでルークはチェルノブイリに帰還したが他のメンバーは橋の前で野営するらしい。 なんとも好戦的な布陣だ。まるで城攻めでもしているかのようだ。 ジジイ言いけり。「最近この辺りの冒険者が例の遺跡でやられてしまい魔物による被害が増えてきておる」 ルーク、「俺には関係のないことだ」と返すもジジイ聞く耳持たず。 「自警団も被害は大きい。衛兵長ライナーの傷もまだ完治しておらん。更に街唯一のギルドは地下にこもりきり」 「ちょっと待て、それはお偉いさん方の指示だろ」「要するに周辺の魔物を軽く間引いてきてくれんかの」 「相変わらず会話が成り立たないなジジイ。話は分かったが何故俺なんだ。別に他の連中でも――」 「一番抜けても問題ないからじゃ。元より一人で戦っていたお前さんが他人の援護をするとは思えん。そして敵を倒すことしか出来んじゃろ」 「余計なお世話だ。敵を倒すのが戦いの目的なんだからそれでいいだろ」 「悪いとは言わん。ただ戦いとは時にそれだけではないということも覚えておいた方がいいじゃろう」 「ああ、そうだな。戦いとは生き抜くことだ。そこで死にたくはないから死を齎す者を殺し自分が生き抜く。それだけだろ」 「…まぁ、じきに分かる時が来るじゃろうて」「何が間違っている?」 「いいや何も間違っておらんよ、今はな。では、儂もまだ死ぬには早そうなのでお前さんに街の周囲に棲息しておる死を齎す者を間引いて来て貰うとするかの」 「さっさとくたばれジジイ」「まだまだ現役じゃよ」「だったら今度はもっとマシな結界張るんだな」 ルーク、釈然とせぬものの野山にまじりて魔物を狩りにけり。 ルークは街周辺の魔物をあらかた片付けた後、地下の森から帰還したギルドメンバー達と合流した。 探索していた面々の話をまとめると、例の大白鹿を発見しそれが実在している証拠を得たらしい。 どれだけ毟ったんだってくらい白い毛を持ち帰っていたが、あれが伝説の白鹿のものだという証拠になり得るのだろうか…? 実物を見た事がなければただの白い獣の毛でしかないと思うのだが。 その後、森を彷徨っているといつの間にか橋の向こう側へ辿り着いていたらしく、あの弓で牽制していたエルダナーン達と戦闘になったようだ。 無力化するとティアが冷静になった彼らを諫めてその場を収めたそうだ。ティアは彼らの国の姫君だったらしい。それくらいの情報は先に出せと。 その後知ってる道に出たらしくティアの案内で彼女の住む街へ向かうと、そこは森が一望できるほど高い位置にある巨大な大木の上に作られた街だった。 前時代的な古い街でヴィアンシエールという名らしい。閉鎖的な街らしいがティアの計らいで街中は自由に行き来できるよう計らってくれるそうだ。 だがその前に探索が中途半端だった宮殿の方を先に探索し終えてしまおうという話になった。 森に向かうには道中あの宮殿を通ることになる。通り道がまだ未探索では不意にどんな脅威に襲われるかわからないからな。 -第三章続き- 各自探索準備を終えて再度酒場に集合すると、ポポとノイシュの妹プリシラが七色に輝くスープを作っていた。 錬金術関連の調合術であのような産物は生まれないはずなのできっと魔術の一種なんだろう。リンが作る料理もきっと実験的魔術の産物に違いない。 前回収穫した生きた野菜も調理すれば普通の野菜と変わりないようだった。宿屋の厨房で食材として利用されるらしい。 地下探索目的で集まってきた冒険者や彼らを相手にする商人などが集い、チェルノブイリの人口がここ最近飛躍的に増加している。 その影響で住民の管理や公共施設の管理、治安の維持など、領主は激務に追われているらしくジョンはしばらくその手伝いをするようで今回は欠席となった。 神薙も街唯一の宿屋であるが故に忙しそうなこの酒場の手伝いをするそうだ。 ノイシュの母であり宿屋の女将であるソフィアも神薙達と同じ世界からやってきたアーシアンだったようで同郷のよしみで無料で部屋を提供されていた。 今回手伝いを買って出たのはその恩義に報いる為という側面が強いようだ。 冒険者ギルドとして地下調査がメインではあるが、サイコカンパニーの面々は全員本職が冒険者というわけではない。 思えばそんなギルドが地下探索の第一人者として公的に依頼を受けているのはどうなんだろうか。 宮殿に入るとすぐに大きな何かが歩くような金属音が近づいてきた。 皆の話によるとルークが居ない際の探索で開けた扉の奥に安置されていた軍事用人造人間を意図せず解放してしまったらしい。 それ以降ずっとこの宮殿内を徘徊しているそうだ。今まで何度も出入りしていたがよく出会わなかったものである。 曰く、その人造人間は不死であり、倒さないと延々と追ってくるし倒してもしばらくすると復活してまた徘徊し始めるそうだ。面倒過ぎる。 厄介な存在だと思ったが、いざ戦ってみると然程の戦力はなく、容易に倒すことが出来た。 もっとも不死な上に強いのなら、わざわざ夜魔なんて戦力を創り出さなくてもいいし、創り出した者も制御が難しいようだったから安置されていたんだろう。 倒してバラバラになった肉片や金属片から筋線維のようなものが伸びて徐々にくっつき始めていた。 完全に欠損した部分や消失した部分は再生されていくようで、ここで延々と壊し続ければ遅延できるだろうがそんなことをしてる暇があるならさっさと探索を終えた方がよさそうだ。また会ったら会ったで倒せばいい。 建物の構造から見て未探索の場所は後三か所、そして庭を出た先にある閉ざされた城門の先だ。 城門の大きな扉は固く閉ざされていて開きそうにないのでまずは残り二か所の内の一つへ。 奥にはいくつかの武具や宝石の入った宝箱があったが、その帰り道に簡単な石弓トラップが仕掛けられていた。 初歩的なトラップだが壁に刺さった毒矢を引き抜くのに必死なイリーナが何故か二回も引っ掛かっていた。 拾った毒矢を何とかして使おうとするも、やはり何にも成らなかったのは時間の無駄以外の何物でもなかったように思える。 結局こちらはそれだけで大したものはなかったのでもう一箇所、最後の未探索部屋へ。 中に入ると大広間のようになっていてその奥に扉が二つあった。 広間にはまるで生きているかのような石像が数体立っており、何かから逃げるような姿と苦悶の表情を浮かべる石像は非常に生々しい。 石像を調べるも本当にただの石像のようだ。今更石像が動き出しても驚きはしないが特に魔力も感じられず、どうもゴーレムの類ではないらしい。 奥の部屋の内の一つを開けると、中は乱雑に本棚が倒れており床には古い書籍や粘土板などが散らかっていた。 その中からかつて古代帝国に仕えていたらしいとある魔術師の手記を見つける。 魔術師は皇帝から生命を維持したまま永遠に人を眠らせる方法を確立するよう命じられ、そのための手段の一つとして人を石化する研究をしていたようだ。 だが石化自体には成功するも石化した人物を元に戻す方法は結局確立できず、石化した人間も徐々に本当の石となってしまうことから研究は失敗とされていたようだ。要するに広間にあった石像はその実験の産物ということなのだろう。これを見る限り今はただの石像と化しているようである。 もう一つの扉は鋼鉄製の頑丈な扉で鍵が掛かっていた。 探索時に手に入れていた鍵を使い扉を開くと、中には壁から伸びる幾重もの鎖で雁字搦めにされた女がいた。それもどうやらまだ生きている。 どう考えても人間ではない。咄嗟に魔導銃を構えるが「まだ敵と決まった訳じゃない」とノイシュ達に止められてしまう。 この宮殿の古さや見つかっている資料から見て少なくとも1000年以上経っている。頑丈そうな鎖がかなり風化している点などから見ても今日昨日捕まったような奴でないことは明白だ。そしてここには夜魔、不死、亡霊、アンデッド、人造人間と敵対的な人外が文字通り腐るほど居た。敵である可能性の方が多かろうに。 フィルに促されノイシュが恐る恐る女に近づき声をかけるが反応は無い。ノイシュが死角になっていた女の顔を覗き込むと目が合い、その後動かなくなる。 カシャン、とランタンを落として動かなくなったノイシュを救出するため結局戦闘となった。案の定の展開だが、これがこのギルドだとルークは諦めていた。 囚われている女は敵意こそ見せるものの鎖に縛られその場からは動けないようで、目を合わせた相手を石化させる能力を有しているようなので魔法に長けるフィル、イリーナ、ルディと射撃に長ける志摩とルークが遠距離から容赦なくなぶり殺しにして無事にノイシュを回収した。 石のように硬くなってはいたが、まだ初期状態だったからかフィルの神聖魔法で石化は解かれた。 明かり一つなかった部屋を改めて見渡すと、先程の行った隣の部屋で見つけた手記を書いた者と思われる魔導師の石像があった。 恐らく石化してから千年以上経っているだろう。自身が研究の末に生み出した怪物に自らの命を奪われるとは因果応報と言うより他ない。 宮殿の外、城門までの間にある広い庭園に存在する例の九つの磔台まで来ると、新たに「勅命を果たさざる罪」と書かれた磔台に先程見た石化した魔導師が磔られていた。勅命とは手記に書かれていた「生命を維持したまま永遠に人を眠らせる方法を確立せよ」というものだろう。 そして以前の探索で磔にされていた料理長、騎士、首無し、化物女の他に、「怪しき物を作りたる罪」と書かれた男、「若者を惑わせた罪」と書かれた老人、「皇子を殺したる大罪人」と書かれた赤い手形にまみれた死体が磔られていた。これらはルークが探索に参加していなかった際に皆が遭遇して倒した者達だ。 八つの死体が掲げられている。だが宮殿は閉ざされた部屋を除き全て探索した。最後の一つ、空白の磔台を皆が見上げる。 おもむろにリンがその磔台の前に立つと手にした自身の剣を突き立てた。「やはりそういうことでございましたか」リンの剣からそう声がすると同時に九つの磔台は激しく燃え始める。炎の勢いは凄まじく、見る見るうちに磔台は死体諸共灰と化していく。 「私はこういう役割だったのでしょう。主様、貴方と出会えて楽しゅうございました」「そう。私はまぁ、楽しかったかな」 刀身が溶けていく剣と会話するリン。皆がリンは最近独り言が多いと思っていたのはリンにだけあの剣に宿っていた意思の声が聞こえていたからだった。 後に聞くと、あの剣に宿っていたのは身分違いの恋をして駆け落ちしようとした帝国皇帝の娘らしい。探索の最中自身の剣に突然その娘の意思が宿ったそうだ。 間もなくして剣は他の磔台と共に業火に包まれ、灰となって燃え尽きた。それに呼応するように宮殿内から大きな音が響く。 宮殿に戻るとずっと閉ざされていた中央の扉が開いており、中から禍々しく異様な霧のようなものが溢れ出ていた。 この幽界とも魔界とも違った忌まわしい気配は例の夢に出てきた"アレ"と同じだ。いよいよ対峙する時が来たのだろうか。 扉の奥、奇体な怪物達の石像が並ぶ回廊を慎重に進むと、そこにあった部屋はさながら王に拝謁する為の謁見の間の様であった。 数段高い位置にある王座に座る干からびた屍は、眼球のない目をこちらに向けると、自らを「この大陸を統べる帝国の皇帝である」と名乗った。 そしてこちらに敵意を向ける。「余の帝位は誰にも…神々にも始祖帝にも奪わせはせぬ」と。 以前宮殿内で幻視した皇帝の娘を名乗る者が言っていた事を信じるなら、今いるここは皇帝が作り上げた夢の中の世界。つまりこいつが元凶という事になる。 始祖帝とやらに憑りつかれて発狂し、自身の帝位を永遠のものにするため魔導師達に永遠に夢を見続けさせるような術を研究させ、どういう理屈かはわからないが結果としてこの世界を作り出して千年以上もの間、ここで存在し続けていたということになる。なんとも突飛な話だ。今更ながら。 しかし、この皇帝を名乗る者も例の"アレ"ではない。魔将でもなく皇帝でもない。では夢に出てきた"アレ"は一体誰なのか。 室内に紅い月が昇る中、剣を失ったリンは探索中に拾った斧を手に皇帝に立ち向かう。使い慣れた武器ではないだろうが無いよりマシかもしれない。 王座が宙に浮かび、存外素早い動きで攪乱してくるものの、冷静に対処し皇帝とやらを打ち倒した。ここに来るまでの過程でこのギルドも強くなっていた。 「愚か者め……汝も余と同じ…悪夢の外に出たとしても、より大きな夢があるだけ…誰も逃れることはできぬ…」最後にそう言って皇帝は玉座と共に見る見る間に風化していき塵芥となって頭上の紅い月と共に消えていった。そして今度は宮殿の外から大きな音が響いた。 皇帝が消えたからだろうか、宮殿内にあった禍々しい気配は消え失せ、そこら中にいた動く死体や怪物や人造人間などはその痕跡もなく消えていた。 宮殿の外に出るとあの大きな音は閉ざされていた巨大な城門が開いた音のようだった。奥は洞窟のようになっていて薄暗く何も見えない。 夢を作り出していた皇帝が消えても同時に消えたのは宮殿内にいた彼の配下だったであろうアンデッド達とその痕跡だけ。 宮殿もティア達がいる森も消えていないし城門の奥には更に別の何かが潜んでいそうだ。これら全ては「より大きな夢」を作り出している者がいるという証拠なのだろうか。その存在というのがあるいは"アレ"なのか……現状では何もわからない。 とりあえず宮殿内の脅威はなくなった。今日はこの辺りでということで街に戻ることとなる。 現時点で確認されている最深部であった宮殿の踏破とその主と思わしき皇帝の撃破の報は瞬く間にチェルノブイリの街に広まり、以前の街に溢れ出てきた怪物達を掃討した件と、多くの冒険者が犠牲となった不死の魔将ポールを撃破した件を加えてギルド:サイコカンパニーは一躍有名ギルドとなった。 見た目と行動が派手な領主の息子ジョン、街中で奇怪なポージングを披露するフィル、半裸に近い衣装のイリーナ、騒がしさに定評のあるノイシュ、普段から堂々と街中を箒で飛び回り領主の館で寝泊まりしてる三島志摩、酒場の用心棒兼見慣れぬ異世界料理を振舞うアーシアンの神薙、と目立つに事欠かない面子が噂の伝播に拍車をかけているような気がして、面倒事に巻き込まれない為に出来るだけ目立たぬように過ごしていたルークだったが流石に諦めた。 皇帝とやらは倒したが、衛兵達の話では開いた城門からまた怪物達が溢れ出てきているらしい。よくもまぁ際限なく湧いて出てくるものである。 ポール戦で怪我を負っていたノイシュの父で衛兵長のライナーが復帰し、地上まで湧いて出ないように警戒しているそうだ。 だがそれだけではない。ついにチェルノブイリ周辺の街もあの地下の怪物達と同種のものに襲われたという報も入ってきた。 あの地下空間は夢の世界とやらで物理的におかしな空間となっている。ここ以外に地上に出てくる場所があってもおかしくはないだろう。 夢と言えば、最初に街が襲われた時に外傷もないのに倒れ、石のように身体が硬直したまま目を覚まさない子供が沢山いた。 もうひと月以上経つが彼らは未だ目を覚まさず、その多くがスラムの孤児だったため元から顔見知りだったリンやセーナが今も世話をしている。 イリーナの弟であるメリトも彼らと同じ状態だ。石のように固くなり、眠り続けて夢を見ている。 まさかこうやって犠牲者を増やしてあの世界を維持しているというのだろうか…? それを確認する術もなければ、彼らを目覚めさせる手段もわからない。 要するにこれからもあの夢の世界を探索して手がかりを見つけるより他ない。前に進んでいるようで結局何も進展していないように感じる。 地下に広がる夢の世界とやらも、眠り続ける子供達も、"アレ"の正体も、わからないことだらけだった。 遺跡調査の責任者としてジョンの屋敷に泊まっていたアデル公子は拾ったペンダントを興味深げに眺めていた。 志摩はそのペンダントの持ち主はセーナだと伝えると意味深に笑い、後で返しておこうと言う。様々な思惑が交錯していた。 -第七話- 翌日、アデル公子はジョンを呼び出し、セーナのペンダントを見せた。曰くこれにはどこかの王族の家紋が記されており、王族である証なのだと言う。 セーナは孤児であり、幼少期にジョンの父でありこの街チェルノブイリの領主であるニクラスが引き取った子であるため出自は不明だった。 そしてアデルはゆくゆくは現在のパリス同盟を一つの王国が支配する巨大国家に仕立て上げるという野望を語り、そのためにセーナと婚姻を結ぶという。 アデルは現在のライン国王の息子であるが、養子であるため箔が無い。その点、孤児から成り上がった亡国の姫セーナという存在があればその地位を盤石にできる。アデルはジョンの幼馴染であり、当然セーナとも面識はある。アデルもセーナを単なる政治の道具として扱う訳ではなく、何不自由なく幸せに生活できるよう計らうつもりだと語った。実際、片田舎のチェルノブイリの領主の娘として過ごすより良い生活が送れるだろうことは想像に難くない。 それにチェルノブイリとしても王女を輩出した家となれば地位も向上する。悪い話ではないだろう、と。 ジョンはセーナの意思を尊重することにし、アデルも彼女に無理強いはしないと誓った。 アデルは話を変え、最近アデルが率いている私兵だけでは周辺の街の防衛が限界に来ていることを伝える。 どこからともなく例の異形の怪物達が地下から湧き出て周辺の街に被害を出しているという。最近では特にヒルべニアに異形の大群が現れたそうだが、冒険者が多く集う街であるため被害は食い止めることが出来たらしい。今後こういったことが増えると防衛にも限界がある、と。 宮殿の皇帝が撃破されてチェルノブイリ探索が一段落したとして、アデルは自ら兵を率いて周辺の街へ遠征に行くこととなった。 冒険者や行商人などが数多く訪れ人口が急増したチェルノブイリは、衛兵が地下遺跡につききりということもあり、治安が著しく悪化していた。 だが神薙が成り行きで悪漢を退治した事でそういった問題事の解決を依頼されるようになり、それをこなしていた事でいつの間にか街の有名人になっていた。 そうしてチェルノブイリの治安を見る見る内に回復させた神薙も、最近はチェルノブイリの街の外での被害について依頼されることが多くなったそうだ。 いつも通り酒場に集まったサイコカンパニーの面々は、遺跡調査は一旦置いて周辺の街へ遠征して異形退治に行こうという話になった。 被害の防止も勿論だが、遺跡探索の過程で得られる収入より遥かに支出が多いので普通の冒険者として依頼をこなして稼ぐ、出稼ぎをしようということだ。 ジョンの話によればヒルべニアという街がつい最近例の怪物の大群に襲われたらしい。残党もまだいるかもしれないし、大規模な戦闘があったなら難民もいるだろうからティアと出会った森で大量に収穫した動き回る野菜をそいつらに売り捌けるかもしれない、と野菜売りの行商人気分でジョンは話す。 怪物達は散発的に出現しているので他に宛てもない、ということでサイコカンパニーはヒルべニアに向かうことになった。 街を出てしばらく進むと、異形の怪物に襲われているキャラバンを発見した。 地下宮殿で何度も倒した雑魚だった為、難なく倒してキャラバンを助けると、彼らは縋るように「助けてくれ!」と必死に訴えかけてきた。 彼らの話によれば、彼らはヒルべニアを拠点とする商人で、たまたま街の外に出ていたところヒルべニアが地下から湧き出た怪物に襲われたという一報を聞き、戻ってみると街全体に結界の様なものが張ってあり入れなくなってしまっていたらしい。彼らの家族は中にいるはずだが、中の様子は結界の外からは分からない。 そこで、地下遺跡と古代宮殿を攻略し、異形の怪物達の親玉的な存在を倒したという怪物討伐者として名高いギルド「サイコカンパニー」にヒルべニアを救って欲しいという依頼するためにチェルノブイリへと向かっていたそうだ。地上では思ったより我々の名が広まっているようだった。ヒルべニア神殿への紹介状とヒルべニアの地図を手渡しながら、どうか助けてくれ、と嘆願され、元々ヒルべニアに向かっていたこともありその依頼を受けることに。 ヒルべニアが襲われたのが昨日、ここからヒルべニアまでは1日以上かかる、ということで彼らのキャラバンを引いていた馬車を借り入れて、彼らは徒歩でチェルノブイリへと避難していった。 道中休息を挟みながら次の日、ヒルべニアに到着すると、街全体に結界が展開されているのが見て取れた。 だがウィザード組の「カグヤ」という魔術を使えば結界に干渉して中に入れるようだ。街に侵入すると無人の街が広がっており、辺りは静寂に包まれていた。 ウィザード組の話ではこの結界はかなり大規模だが術者が結界内にいないと発動しないものらしく、例の紅い月の結界と同種のものらしい。 街の地図を確認するとヒルべニアは地上より地下街が広いようだ。神殿もそこにあるようなのでとりあえず神殿へ向かう事になった。 地下へ向かうと街の至る所で戦闘痕が見受けられ、半壊している建物もあった。住人は何処かに避難しているのか一人も見かけない。 神殿に入ると受付嬢がいたので街の外に出ていたヒルべニア民からの依頼で来た旨を伝え紹介状を手渡した。 彼女の話によれば、この街の地下には元々大規模なダンジョンが広がっており、それ目当てに集まった冒険者や学者が数多く在籍するこの街では戦力がすぐに確保出来たことで昨日の襲撃はなんとか撃退することが出来たそうだ。調査してみると異形の怪物達は地下ダンジョンの一角に空いた横穴から現れたようで、その横穴は何処か別の場所からこの地下ダンジョンまで掘り進めてきたものらしい。その横穴は戦闘の際の衝撃で完全に崩れ去っているようだ。 そして襲撃してきた怪物達の生き残りは同じく地下ダンジョンにある巨大な縦穴へ逃げ込んだそうで、現在街の衛兵や冒険者達がその穴を見張っているらしい。 神殿にいたアーブ・サラヒという考古学者の話ではその縦穴はかなり深く底がどうなっているかはまだ未調査だが、恐らくは古代エルダの遺跡に繋がっているのではないかと見られているそうだ。最近発見された縦穴で調査をしようと計画されていた所なので、怪物達を倒すならついでに中がどうなっていたか調査をして欲しいという。異形の怪物討伐と未知の遺跡調査の二つの依頼の同時遂行ということで多額の報酬を提示され、元より出稼ぎに来ていたのでそれを受諾した。 元々縦穴を調査する計画があった為、100m程もある長大なロープがいくつも用意されているそうなのでそれを伝って降りることになる。 帰りはこの神殿が登録されている転送石を使って帰還する事になりそうだ。 現地へ赴くと冒険者や衛兵が穴の周囲を固めていた。怪物討伐のスペシャリスト「サイコカンパニー」がやってきた、と歓喜される。 縦穴は直径30m程あり、深さは暗くて底が見えないが100mはあると思われる。守衛の話によれば底の方で怪物達が蠢く気配があると言う。 底が100m以上あった場合ロープでは足りないのでは?と言うとアーブは最悪これを使って欲しいとスライムポーションという瞬間的にゼリー状の緩衝材を展開するポーションを人数分手渡してきた。とりあえず各自ロープを頑丈な杭に巻き、縦穴を降りていくことになった。 底が見える辺りまで降りて来ると怪物達の遠距離攻撃が飛んでき始めたが、それらを捌きながら怪物達を倒し、無事に底まで辿り着いた。 底の空間には巨大な古代遺跡があった。上の階層のものより目に見えて異質であり、アーブの言うエルダの遺跡のようであった。 いくつもの建造物があったようだが、そのほとんどは倒壊し見る影もなく、4つだけ崩壊せずに残っていた巨大遺跡には最近つけられたような傷跡などが見て取れた。残念ながら本来あった装飾などは怪物達に破壊し尽くされているようだった。 一番近くにあった遺跡では十数メートルの2対の巨像に襲われ、2つ目の遺跡では怪物達が何のものかも分からない肉や内臓や骨を石臼で磨り潰しており、3つ目の遺跡では磨り潰された血肉が巨大な穴に溜められておりその血肉の泥の中で今まで何度も見てきた異形の怪物達の胎児が蠢いていたので、全て倒して回った。 怪物達は瘴気と血肉と邪神の呪いを材料にここで怪物達を量産しようとしていたらしい。数が揃えばまた上層の街を襲う気だったのだろう。 4つ目の遺跡は鍵が掛かっていたがそれを壊して中に入ると、薄暗い中で黒いローブを着た何者かが蹲っていた。 その何者かは自ら語りだす。異形の怪物「夜魔」を創り続けて世に蔓延らせ、それらを刈り取る者が王の道を歩む者であり、その者を探し出すのが目的であると。 それが自身に与えられた役目であり、それが果たされるとエリュシオンが蘇る、と語り終えると襲い掛かって来た。 返り討ちにしてルークがトドメを刺した、その一瞬、深く被っていたフードが衝撃で捲れ上がるとその顔立ちはルディや首飾りの影響で変化しているルークと同じような雰囲気を持っている印象だった。しかし驚く間もなく息絶えたその何者かは炎に包まれ灰となってしまった。その顔を見たのはルークだけだったようだ。 黒いローブの何者かを倒すと重々しい重圧が消えるのを感じる。ウィザード組によれば結界が消えているらしい。 その時、頭の中に何者かの声が響いた。「強き者よ、我らの在処を守ってくれた事に礼を言う。我は汝らがエルダと呼ぶ者」 声の主はこの遺跡に宿る意思のようなものらしく、遺跡の更に奥深くには邪神の眷族たる邪竜が封じられているそうで、夜魔達があのまま瘴気を溜め込み続けると邪竜の封印に干渉されるところだったそうだ。礼として本来なら試練を乗り越えた者にのみ与えられるという古代の力を授けてくれた。 といってもジョンくらいしか活用できそうにないものではあったが。ともかく、任務達成という訳で転送石を使って神殿へと帰還する事になった。 神殿に遺跡での出来事を話すと、早速残党狩りの為に他の冒険者を派遣するという。遺跡の空間はあの縦穴以外に出入口は無かったので、直に殲滅されるだろう。 エルダの遺跡は破壊し尽くされていると聞いて考古学者のアーブは残念そうだったが、調査は果たしたので約束通り報酬を受け取った。 ついでに持ってきていた野菜も売り捌き、出稼ぎという本来の目的は達成したので、後始末は彼らに任せてチェルノブイリに帰還する事になった。 行きと同じように馬車に揺られて帰路についていると、道中に騎士団を率いて夜魔を狩るアデルと鉢合わせた。 彼らは彼らで夜魔が湧き出ていた拠点を潰し、その残党狩りをしていたところらしい。 その夜魔達が襲っていた街の神殿に気になる伝承が綴られた古書があったのだ、とアデルは一冊の本を差し出してくる。 「川の娘」と題された伝承で、神の子と思われる川の娘と人間の英雄アイネウスが恋に落ち、川の娘は愛の証として強大な力を持つ星の宝珠をアイネウスに授けるが、アイネウスはその力で王に君臨し黄金の都を創り、この世の全てを手に入れる。ある国の王女がアイネウスに近づき魔法の薬を飲ませたことでアイネウスは川の娘の事をすっかり忘れてその王女を娶ることになったが、それを知った川の娘は怒り、川を氾濫させ大洪水で黄金の都を流し去った。川の娘を鎮める為、王の子供達は王と共に何処かへ消えてしまった星の宝珠をいつか必ず川の娘に返すと約束した。という昔話調の伝承だった。 今までチェルノブイリの地下遺跡やその先の古代宮殿などから得た情報を元に解釈すると、黄金の都というのがかつて絶大な力を持っていたが一夜にして消え去ったとされるエリュシオン帝国であり、アイネウスというのがその初代皇帝、ということになる。 では星の宝珠とは……ルークが持っているこの首飾りのことだろうか? それよりも我々は古代文字が読めるルディの通訳で毎回情報を得ているが、アデルがこの文字を読めたというのはおかしな話だ。 エリュシオンの文字はエリンディルの考古学でも未解明とされているし、実際ルディ以外に読める者は今までいなかった。 怪しさを覚えアデルに情報共有はしなかったが、彼は特に気にするでもなく騎士を連れて他の夜魔の拠点を潰すべく去っていった。 一日かけてチェルノブイリに帰還すると、ヒルべニアから逃げてきたキャラバンの連中は領主の館で保護されていた。 彼らはヒルべニア解放の報を聞き、喜んで帰っていった。彼らに返却した輓馬はずっと歩き通しで大変そうだ。 いつの間にかヒルべニアの商会との取引契約を交わしていたらしく、今後は両街で商品が流通することになるようだ。最近イリーナの店の羽振りが良い。 ともあれ遠征は無事目的を達して終わった。薬の材料調達や配達等で一人で他の街やダンジョンなどに赴くことは多々あったが、集団でのこうしたギルドらしい旅は初めてだった。チェルノブイリの地下遺跡探索も冒険者ギルドの仕事ではあるが、場所も敵も痕跡も未知なものばかりだし巨大な空間とは言えずっと地下にいるので一般的なギルドの探索とは大きく異なるものになっている。そういえばずっと地下にいたので気付かなかったが、夜魔達が色んな所に出現したりサイコカンパニーが気付かぬ間にか高い知名度を得ていたりと地上も少しずつ情勢が変わっていた。単なる古代遺跡調査の範疇はとっくに超えていたようだった。 -第五章- 半ば忘れていたが地下の古代宮殿の西側に広がっている森の中にある妖精の街「ヴィアンシエール」の探索をしていなかったことを思い出した。 街までの順路は既に把握しているし、ヴィアンシエールの姫であるティアにより自由に出入りできるようになっている。 更にはティアの指示により本来は閉鎖的らしい街の住人も我々の調査に全面協力してくれる事になっているそうだ。つまりは危険のない探索になる。 ということで、サイコカンパニーの面々は各々の事情で忙しい面子を除き暇がある者だけが集まりヴィアンシエールに赴くことになった。 チェルノブイリの急激な人口増加の影響で激増した役所仕事から逃げてきたジョン、久々にティアに会いたいと実家の手伝いを放り出してきたノイシュ、ウィザード組で唯一何も働いておらず傍からは暇そうに見えるルディ、探索好きのイリーナ、特に他に仕事はないからとハロルドに探索へ行くよう促されたルーク。 このサイコカンパニーの半数のメンバーで早速現地へと向かった。 エリュシオン帝国時代に妖精の一種として見られていたらしいエルダナーン、そんな彼らが住む街ヴィアンシエールは雲にも届きそうな巨大な樹の上にあった。 樹の上、というより樹の下層から中層までが丸々街になっているような形となっており、街の規模だけ見ればチェルノブイリより大きい。 天を突くような大きさの巨木だが、この空間が歪んだ森では近くまで来なければこの巨木は見えないようになっているらしく、道標にはならないそうだ。 根本に穴が開いており、中に入ると樹の中が階段状になっていた。巨木故にこの人間が通る程度の穴をくり抜いても平気なようだ。 ある程度の高さまで上ると樹の外に出た。ここからは樹の周りに作られた階段を上るようになっているらしい。この樹ほどの巨木は他にないので見晴らしが良く、遠くまでよく見える。地平線まで続く広大な森、そして広がる青空、それ以外は一切何も見えない。空間が捻じれているからだろうが、とても地下とは思えない。 延々と続くかのような階段を上りヴィアンシエールへと辿り着くと、早速一行は各々散開して聞き込みを開始した。 この街にはエルダナーンしかおらず閉鎖的で森の外は誰一人行ったこともなく外の世界に興味があるのはティアだけであること、ティアは変わり者だが心優しく民からは親しまれていること、ティアの父である国王は「大昔から続く呪い」とやらで既になくなっており現在はティアの母である女王がこの街を治めていること、この街の住人はこの森が地下にあることを誰も認知しておらず、数千年前まではこの森の外からやって来る者もいたようだが近年では我々が初めてであること。 合流して情報共有もする我々の探索に有意義な情報は得られなかった。この街を治める女王陛下であればもっと詳しい話を知っているかもしれない。 そんな折、街中でティアに出会い「母も是非会いたいと言っていた」と聞く。既に我々にはいつでも謁見の許可が出ているらしい。都合が良い話だが渡りに船だ。 女王はこの巨木の上層にある木製の城にいるそうだ。その城へ向かう専用の道を守る衛兵も既に我々の事を把握しているようで顔パスだった。 道中この樹に住まう悪戯好きの風の精霊を倒しながらも女王の待つ城まで辿り着いた。 衛兵に連れられ謁見の間で女王「セルティル」に会うと、女王は衛兵達を下がらせて一行を歓迎した。そして「聞きたい事があるのでしょう」と見透かした様に聞いてくる。女王の話によるとこの森は監獄だと言う。エリュシオン帝国を守護する役割を無理矢理持たされた4つの種族、妖精、龍、巨人、小人。これらの種族は一定の空間に閉じ込められ出る事ができず、役目を終えるまで決して自由になれない。森の空間が捻じれてしまったのもその際の影響だという。 「役目とはなんだ?」という質問を投げると、一息置いて「その前に貴方がたの話も聞かせてください」と言ってきた。生まれてから一度も外の世界に出たことがないから、と。娘のティアが外の世界に興味を持っているのは親譲りらしい。お喋りなイリーナやノイシュが語りだすと女王は楽しそうに言葉を交わす。 この女王は何か情報を持っている、こんなくだらない事を話している場合か、とルークは苛立つも「その前に」と言ったからには後で情報は渡してくれるのだろうと黙って成り行きを見守る。話の流れでこの街の書庫を自由に閲覧できる許可証を得ることも出来た。 しばし談笑した後、女王セルティルは約束通り話始めた。 エルダナーンがこの世に誕生したばかりの火の時代創成期、一人のヒューリンの少年が魔術を学ぶためエルダナーンの里を訪れた。彼は非凡な才能を持っていたが妖精に近いエルダナーンという種族の壁を超えることは出来ず絶望して去っていった。それから数十年後、大人になった少年は軍隊を率いて再来し、未知の魔術を用いて里を滅ぼした。生き残ったエルダナーンは捕縛され、河岸にある黄金の都へと連れて来られた。そこには同じように彼によって滅ぼされた古き種族である竜族、巨人族、小人族の生き残りも囚われていた。彼は黄金の都を異質な結界で覆うと、力ある4つの秘石をそれぞれの種族の長に与えた。そして4つの種族を都を囲うように配置してそれぞれの種族を結界で閉じ込めた。結界は秘石が揃わなければ消えることない、そして4つの秘跡はそれぞれ別の結界内にあるため揃える事も出来ない。彼は古き4種族を守護者として黄金の都を永遠のものにした。だが彼は神の怒りに触れ、彼の帝国は滅びた。しかし彼の都だけは神ですら結界を破ることが出来なかったため、精霊王に命じて大洪水と地割れにより都ごと地中奥深くへと沈められた。いつか結界の力が弱まる時まで封じられたのだった。 「彼の魂は黄金の都と共にあります。4つの秘石が揃わない限り、彼の魂は何千年何万年と不滅でしょう。そしてこれが私の手元にあるということはまだ秘石による結界がなくなっていない証拠です」と言って女王は自身の頭から王冠のようなサークレットに触れる。そこには大粒の深緑の宝石が埋め込まれていた。 そして自分こそが守護者の役目を与えられ結界に閉じ込められた妖精族の長の末裔だと語る。 守護者の役目を捨てればその守護者のいる結界は中にいる同胞達を巻き添えに消滅してしまうので、民を守る為にも役目を全うするしかない、と。 彼女らはこの結界から出る事が出来ない囚人であり、数が増えすぎると結界に込められた呪いによって病に侵され死んでしまう。そうして千年以上管理され続けている。しかし今語ったことはこの街の長である家系にのみ伝えられてきた事なのでこの街の住人やティアでさえ知らないと言う。 「そしてここからが本題です。どうしてもあなた方に会いたかった理由でもあります」と言いながら王女は一行から距離を置く。 曰く、この結界の中に入ることが出来るのは、皇帝を倒すことが出来る資格を持った者だけであり、この結界を創り出した皇帝を倒すにはその魂が眠る墓所への入口を開かなければならない。その為には4種族が守る秘石が必要となる。秘石には強力な呪いがかけられており、持ち主が死ななければ奪われてもいつの間にか持ち主の元へ戻ってしまう。守護者はその役目を放棄すれば結界内の中にいる者達ごと消滅してしまう。つまり、今ここで自分と戦い、殺して秘石を持って行け、と。 「皇帝を倒せば全ての結界は解放され囚われている民は自由になります。勿論私もそれを望んでいます。しかし、その為に守護者は秘石を求める者に殺されなければなりません。いつか殺される為に生きる。そんな千年以上続く呪いを娘に受け継ぎたくは無いのです」 「それでも…女王様はそれで良いんですか?」とイリーナが問うと少し躊躇いながら「それを語ると貴方がたの判断を鈍らせてしまうことになりかねません」と言った。それに対しルークが「それを聞いた所で俺の意志は変わらない」と答えると「貴方はとても強い意志をお持ちなのですね」と優しい笑みを浮かべた。 時折ルークの意識に干渉し語り掛けてくる皇帝アイネウスの魂は、既に滅すると決めている。ルークがこの地下遺跡を探索する最大の理由でもある。 その道がこの王女によって立ち塞がれているというのであれば、邪魔だと払い除けるまでだ。今まで屠ってきた数多くの夜魔や魔将のように。 「俺はその皇帝とやらを殺しに来た。その為にお前を殺さなければならないというならそうするまでだ」ルークがそう言うと、女王セルティルはどこか懐かしそうな表情を浮かべた後、「でしたら私は、皇帝に仇なす者を護る守護者として振舞いましょう」と答えた。 以前ルークが巨大な竜の骨から取り出した青い宝玉が埋められている[青金石の首飾り]は竜族の守護者が護っていた秘石の一つ、それを持つ資格があると言う事は、皇帝を倒す資格がある者だ、と女王は続けた。どうやら竜族は閉じ込められた結界の中で息絶え、ニーズヘッグを残して滅んでしまっていたようだ。 ニーズヘッグに秘石を受け継ぐ前に竜族の長が亡くなり秘石の持ち主ではなくなり、ルークが秘石を得てから守護者の資格のあるニーズヘッグが生まれたので結界を維持したままニーズヘッグは自由を得たという事になる。奇跡的偶然の結果だったようだ。 戦う事にノイシュは躊躇いを見せるも、選べる手段は他にない。ここまでの探索で全ての根源は初代エリュシオン皇帝の魂であり、その者を倒さなければ夜魔達は無尽蔵に製造されて地上への攻撃が止むことはない事は分かっていた。現状手掛かりはないが、きっとこのままではイリーナの弟メリトを始め結晶化してしまったチェルノブイリの子供達を元に戻す事も出来ない。全ての元凶がその皇帝であることはもう分かっている。そいつを倒す為にはこの女王を倒さなければならない。 それでも「この街の皆は女王様が死んじゃったらどうするの?」と食い下がるノイシュに、女王は今語った守護者の役目と自身が望んで討たれること、セルティルが死んだ後はティアを女王とすることなどを記した遺書が既にあると言ってのけた。一行がここに来る前から女王の決意は固まっていた。 「そういうことならば」とルディも戦う事に同意し、イリーナも「すみませんが弟のためなので」と戦う意思を見せる。 長話が苦手で半分寝ていたジョンも二つ返事で同意し、他のメンバー全員戦いの意思を見せてから釈然としない苦悶の表情を浮かべながらノイシュも同意した。 戦う予定が無かったためギルドメンバーが半分しかいなかったこともあり、女王との戦いはギルド史上最も過酷な死闘となった。 秘石が持つ守護者の加護とやらで人間離れした力を持つ女王に対し、接近戦に持ち込み女王の鋭い攻撃を紙一重で避けながらカウンターでダメージを与える。 「これを躱しますか。やりますね」「これくらいやれなきゃ皇帝とやらは倒せないんだろ?」そう答えたルークに女王はどこか嬉しそうな表情を浮かべた。 「では私も、皇帝へ挑む者への試練としてその役目を果たしましょう」と言うと、更なる力を解放し襲い掛かって来た。 その力にイリーナ、ジョン、ルークが倒れる中、ノイシュは呪歌[ラストソング]によりルークを蘇生させた。ラストソングは相手のダメージを自身が肩代わりする呪歌。「女王は例え俺達が負けても命までは取らないと言っていた。その上で、俺にその呪歌をかけたという事は、ノイシュ、戦いの最中ですら悩んでいたお前の答えは決まった、ということだな?」ルークがそう言って立ち上がると、ノイシュは静かに頷いた後、肩代わりしたダメージによりどさりと倒れた。 「分かった。なら後は任せておけ」振り返ることなくノイシュにそう言うと、ルークは女王に向かって銃口を向ける。 「全てのダメージが消えた訳ではないでしょう?残念ですがこれで終わりです」「お前がな!!」 女王が放った衝撃波とルークが放った弾丸が、同時に互いの胸部に着弾し二人は弾け飛んだ。 二人は着地してよろめきながら起き上がるも、女王はバタリとその場に倒れた。 それを見届けたルークは「俺の…勝ちだな」とニヤリと笑うと、同様にその場に倒れた。 かろうじて生き残っていたルディの応急処置を受けたメンバー達は、胸から血を流し息も絶え絶えの女王の元へと歩み寄った。 女王は虚ろな目でルークを見上げると、震える手で自身の頭からサークレットを取るとルークに差し出した。 「どうか心してください……秘石の力に溺れてしまうと魔将へと堕ちてしまいます…ですが皇帝を倒す為にはこの力が必要となります……貴方がその道を踏み外さぬよう祈っています…」と言う女王に対し「安心しろ、俺はアレより強い」と答えてルークはサークレットを受け取った。 ルークの解答に満足そうに笑みを受けべると女王は「ありがとうございます…安心してあの人に、夫に会いに行けます…ティアに呪いを受け継がせずに済んで本当に良かった……さあ、お願いします。全てを終わらせて下さい…」と目を閉じる。 受け取ったサークレットから秘石を取り外すと、ルークはその秘石の無いサークレットを倒れている女王の頭に乗せた。 「女王として民を護る為にあんたは立派に戦った。守護者としてではなくこの街の女王として逝くがいい」と言いながら立ち上がると、ルークは銃口を頭に向けて躊躇うことなく引き金をひいた。ダンッ、と音を立てて女王はその役目を終えたのだった。 謁見の間から出ると、近衛兵達が集まっていた。女王の命で中で何があっても入ってはならないと言われていたらしく、扉の前で待機していた。 傷だらけの一行とその背後に女王の亡骸を見ると、近衛兵長を名乗る男は銀の箱から遺書を取り出した。事前に戦いになる可能性、そして自分が死んでしまった場合は決してその相手を恨まず攻撃せず遺書の内容に従う事が女王から言い渡されていたそうだ。 近衛兵長は遺書を朗読すると近衛兵達はざわつくも、すぐに冷静を取り戻し、「女王陛下を呪いから解放して頂き、ありがとうございます」と頭を下げた。 よく訓練されている。こういう状況を予測し、前々から女王が指導していたのだろう。 近衛兵長は兵達に指示し兵達は女王の亡骸を丁寧に運び出す。兵達が居なくなるとそこにはティアが一人立っていた。兵に隠れて見えなかったが最初から居たらしい。「私からもお礼を言わせて下さい。ありがとうございました。きっと母も全ての責務から解放され父と再会することができて喜んでいると思います」 言葉とは裏腹の寂しそうな表情を見たイリーナがティアを抱きしめると、ティアの声が震え出し、次第に嗚咽混じりに泣き始めた。 女王自身が望んだ結果であり、守護者としていつかはそうなる運命だった。頭では分かっていても唯一の家族を亡くしたティアの涙が止まることは無かった。 大切な者を亡くした人達を数多く見てきたルークだが、やはりまだ他人事のようであった。 実感がない。それは実感を得るだけの大切な存在が無いということなのかもしれない。 ティアの泣き声を背に一人城の外に出たルークは手早く事後処理に駆け回る衛兵の一人に声を掛けた。 「俺達を責めないのか?理屈と感情は別なのだろう?」城の外にまで響くティアの鳴き声を聞きながらそう問うと「敬愛する女王陛下のお望みであればこそ、我らはそれに従います」と答えた。「ではその女王が居なくなったこの国は今後どうなる?あの泣き虫がここを治めれるのか?」と続けて問うも衛兵は「ティア王女もまた皆に慕われております。今後どうなるかは誰にもわかりませんが、我らは王女をお支えするまでです」と言ってのけた。 ルークは巨木の下層に広がる街に目をやると「良い国だな」と声にしてその場を去った。その背に向け衛兵は静かに敬礼した。 1時間程かけてヴィアンシエール市街地に戻ると何故か先にイリーナが居た。 前回ヒルべニアで貰って結局使わなかったスライムポーションを利用して階段を使わずに上層の城から街まで落ちてきたらしい。 ジョンは今回居なかったメンバー達への情報共有のため城から一気に地面まで落ちて行きチェルノブイリへ戻ったそうだ。 地上数千mはありそうだがそこからフリーフォールしても無事ならスライムポーションはもしかすると存外優れものなのかもしれない。 「一度やってみたかったんです!楽しかったです!」と目を輝かせるイリーナに呆れながらも、イリーナからティアのその後を聞く。 母の為にも民の為にも立派な次期女王になる、と決意を固め立ち直ったそうだ。そして変わらず我々一行の自由な往来は認めてくれるらしい。 結果的にティアの命の恩人でもあり、女王セルティルの願いを叶えた形となったギルド:サイコカンパニーは、女王を殺して恨まれるどころか街の英雄として語られるようになりそうだと言う。予想外の結果ではあるが、無益な殺生が起きないならそれに越したことはない。 そんな話をしているとノイシュとルディは普通に階段から降りてきた。地上数千mから落ちてみようと思ったのはジョンとイリーナだけらしい。 傷を癒して休憩を取っていると、数時間後にジョンがチェルノブイリに残っていた他のメンバー達と共に帰って来た。 合流後改めて情報共有する。実際女王から得られた情報は大きい。 この謎の巨大地下遺跡がかつて神の怒りに触れ地盤深くに沈められた古代帝国エリュシオンの王都そのものであること、エリュシオン帝国の初代皇帝である始皇帝アイネウスは肉体は滅んでも魂は不滅であり秘石を集めてその魂を討たないと一連の異変は解決しないこと、秘石とはアデルが手渡してきた[川の娘]の伝承に登場する[星の宝珠]であること、4つに砕かれた宝珠は4つの古き種族が守護者として護っていること、秘石は呪われており持ち主として認識されているルークの手元からは離れることがないこと……元々は単なる遺跡調査だったが本格的にやるべきことが決まりつつあった。 そうこう話していると日も暮れだしたので街の者達の厚意に甘えて空き家で一泊することになった。聞けばティアから民へ向けて女王の死と遺書についての布告があったそうだが、民衆達はパニックに陥る事もなく営みを続けている。時期女王となるティアが普段から民達と親しくしているお蔭もあったかもしれない。 女王セルティルの葬儀を行い、一定期間喪に服した後にティアは即位することになるらしい。秘石は既にルークの手中にある。守護者としてではなく、真に民を導く者としての女王が誕生することになる。そう言えば一度チェルノブイリまで戻って再度帰って来たジョンの話では、秘石を失った事でこの地の結界は消滅しかけており、森の空間の歪みも無くなっていたらしい。つまり直にこの街の民は自由の身となる。この地にも新しい時代がやって来そうだ。 結局街での聞き込みと女王への謁見(戦闘)しかしていなかったので、翌日になって改めて街を各々見て回ることになった。 ルディ、ノイシュ、ポポは昨日女王から貰っていた街の書庫の閲覧許可証を使い、書庫で調べものをすることになった。 この巨木の天辺には深緑の龍が住んでいるという伝承を見つけた。その他、エリュシオン帝国にまつわる古い伝承などの情報をいくつか入手したが、女王から直接聞いた話以上の得るものはなかったようだ。その代わり前に探索した古代宮殿にもあったような未知の魔術が込められたスクロールをいくつか見つけた。 イリーナとフィルは最近この巨木の何処かに巨大怪鳥ルクが住み着き、街に被害が出ているという話を衛兵から聞いてきた。 我々が代わりに倒せば報酬もくれるという。結構良い額が貰えるとの事なので、この巨木の探索ついでに探しても良さそうだ。 リン、神薙、志摩はこの巨木の枝が非常に良質な木材になると聞き伐採をしてきた。巨木の枝なので普通の丸太ほどのサイズがある。その木材を利用して街の加工屋で新たな武具を作成していた。ルークは街の者に声を掛けられ、女王の恩人として感謝される。話を聞くとこの街には、呪いを振りまく邪な支配者を外界から訪れた英雄が打ち倒してヴィアンシエールを救う、という昔話があるらしい。一行がその英雄ではないか、と街では噂になっているそうだ。 ジョンは巨木の近くにある泉で釣りをしていると、泉に住む妖精仙女ルギルダを釣り上げ、交渉の末に契約金を支払って用心棒として雇っていた。 合流して共有するもこの地で得れる情報はこれ以上無さそうだったので最後に街の外、この巨木の探索を行うことになった。 巨木なだけあって街の外も地上と変わらないくらい広大で、枝葉にいつの時代かに誰かが落としたアイテムなどが引っかかっていたり、普通のダンジョン探索とほとんど変わらなかった。そんな中、巨大怪鳥ルクが現れて上空から急降下すると一瞬でジョンを掴み去って行ってしまった。 ルクを追いかけて行くと、そこには巨大なルクの巣があり、中には6羽の雛が居た。雛と言っても既に2mはありそうな巨体だ。 全身を啄まれながら必死に抵抗していたジョンと合流する。幸い親鳥は次の餌を探しに行っているようなのでギルドの総力を以て雛を殲滅した。 丁度雛を倒して捌いている所に帰って来た巨鳥ルクも激戦の末に倒した。騒ぎを聞きつけて衛兵達がやってきたのでその場で交渉し、雛討伐分を上乗せした報酬を受け取り、後始末を任せてサイコカンパニーは一旦チェルノブイリへと帰還することにした。ちなみにルギルダは元の泉へと帰っていった。 アルディオン大陸からの流れ者であるフィルはチェルノブイリの教会に住む老修道女マリアンナの厚意により教会に住んでいたのだが、ヴィアンシエールから帰還したフィルはマリアンナから故郷の村の部族長が亡くなり、後継者争いになっているという話を聞いた。その部族長の一人息子であったフィルは部族長を継ぐのを嫌がりこのエリンディル大陸へとやって来たのだが、その話を聞き故郷に帰ることを決断する。ギルド:サイコカンパニーはかつてチェルノブイリにいた前ギルドマスターが創設し、その彼が旅に出る際にフィルとジョンに譲ったギルドであり、それ以来フィルは名義上とはいえギルドマスターとして登録されていた。 フィルは故郷に帰るに際し、ジョンにギルドマスターの座を譲ってギルドから脱退した。そうしてフィルはアルディオン大陸へと帰っていったのだった。 -第六章- 翌日、この日は志摩は領主ニクラスにお使いを頼まれており、神薙は相変わらずチェルノブイリの用心棒として多忙だったので残りのメンバーで宮殿までやってきた。宮殿には未だ夜魔の残党がちらほら残ってはいるが、疾くに脅威になるような敵はいない。 最近ではチェルノブイリに集まった冒険者ギルドのいくつかが、ようやくこの宮殿まで辿り着いたと聞いた。随分と遅いなとは思ったが、考えてみればエリュシオン帝国の未知の技術で造られた武具やスクロールなどは既に我々が全て回収しているし、それらを用いて探索を進めているサイコカンパニーは先行探索の恩恵を一身に受けている、ということだろう。金目の物は勿論のこと、帝国に関する資料まで根こそぎ回収された後を探索する他のギルドは未だここがどういった場所なのかも把握していないかもしれない。不憫な気もするが彼らが居なくなると夜魔を間引く者が減り、被害が増えてしまいかねないので辞めておけと言う気はない。 サイコカンパニーが今まで探索したのは、夜魔達が造ったチェルノブイリに繋がる横穴、その地下に広がっていたかつて守護者の竜族が囚われていた遺跡、遺跡の西側にあるエリュシオン帝国の王城だったと思われる古代宮殿、更に西側にヴィアンシエールを擁する妖精(エルダナーン)の森。 未だ探索していないのは宮殿の正面、南側に位置する宮殿の正門の奥だけだ。正門はこの宮殿にいた皇帝を名乗る者を倒した時から開かれたまま。 そういえば以前倒したこの宮殿にいた皇帝は何代目の皇帝だったのだろうか。 今まで集めた資料によればエリュシオン帝国は数百年に渡り繁栄したが、二代目以降の皇帝は例外なく全て始皇帝アイネウスの魂に干渉され、最後には気が狂ってしまい廃人のようになってしまったという。その頃から、いや、帝国が滅び千年以上経った現在でもアイネウスは現世へ干渉し続けている。迷惑な話だ。 宮殿の前庭を抜けて正門を通り奥へと進むと、そこは今まで見てきたどの地下空間よりも広大な空間が広がっていた。 そこは廃都だった。廃都と言っていいのかも分からないほど、ほとんどの建物は瓦礫の山となっており、注意深く観察してようやく人工物である痕跡を見つけることが出来るような有様だ。宮殿と同じくドーム状にくり抜かれたような岩盤の天井は所々崩落しており、それに潰された建造物の残骸も含めてまともに人が歩けそうな道は何処にもなかった。かろうじて進めそうな場所を探りながら瓦礫の山を歩いていくと、瓦礫の隙間から遠くの方で光る薄紫の光を発見する。 その光に向かい遠回りしながらも進んでいくと、その光源はいつかアンジェが封じられていた薄紫色の結晶で出来たオベリスクだった。 アンジェの時と同じように結晶の中には10歳くらいの少年が眠るように封じられている。 アンジェの時のオベリスクは竜族の守護者が囚われていた空間を封じるように配置されていた。考えようによればアンジェの封印を解いたからこそ我々がこのエリュシオンに入ることが出来たとも考えられる。だがアンジェは何故封じられていたか覚えていないと言っていたしこのオベリスクが何なのかはわからない。 意識不明のまま現在も徐々に結晶化が進んでいるメリトや他の子供達と何か関係があるのだろうか? アンジェのオベリスクは触れると何かに呼応したかのように結晶が割れ、彼女の封印を解くことが出来た。もしこの少年の封印も解けるのであれば何か情報が引き出せるかもしれない。そう思いオベリスクに触れると、その手は何の感触もないままオベリスクに吸い込まれ、そのまま体ごと引き込まれてしまった。 光一つもない暗闇で落下しているような感覚が身体を襲う。そして次の瞬間、視界がパっと明るくなった。眩しさに慣れて周囲を見渡すと、そこは見た事もないような街だった。前時代的な古い石造りの建物がいくつも立ち並び、古代風の衣服を纏った多くの人々が道を行きかっている。 行きかう人々に奇異の目で見られながらも周囲を見渡す。活気のある都市部であり、遠くには何処かで見た形の宮殿や大きな聖堂が見え、すぐ真後ろには先ほど触れたものと同じ形のオベリスクがある。だがこのオベリスクは真っ黒で透けておらず、発光もしていない 突然の出来事に戸惑うメンバーをよそに、ルディは「ここ、知っているわ」と呟く。 ルディの話ではここ最近、毎夜のように同じ夢を見ているらしい。夢の中でルディは自分に似た誰かになっており、その者はいつも聖堂の上層階からこの街並みを見下ろしていたそうだ。曰く今まで理由はわからないまま「奥に進まなければならない」と感じエリュシオン遺跡探索に執着していたのはその夢が原因なのだと。 しかし夢はいつも核心に触れる前に醒めてしまい、それが何を暗示しているのかはルディにもわからないという。 とりあえず目下危険はなさそうなので街を探索してみる事にした。 悪目立ちを避けるため現地の人々が来ているような古代風の服を購入しようとすると、我々の持つ通貨は使えないことが分かる。 人々が使用しているのはこれまでの探索で何度か発見してきた古代の貨幣だった。だが我々が得てきた古代の貨幣は研究資料として既に売却済であった。 同じく探索で発見していたいくつかの安価な宝石を売ると、この街の貨幣へと換金することが出来た。その金で現地の服を購入し、危険の薄い地での調査は人海戦術が基本ということで班分けして街を探索することになった。ちなみにイリーナとジョンは服は別に要らないというので二人だけは元の姿のままであり、奇異の目で見られ続けたがよく考えれば、探索で得た虎頭のマスクを被り魔将が身に着けていた全身を覆う真っ黒の外套を纏うジョンと瘴気を操る為に衣服が邪魔だと言ってほとんど水着のような姿になっているイリーナは元の世界でも奇異の目で見られている二人なのであまり変わらなかった。 ルークは確かめたい事があるというルディについて行き、街の中心部にある大きな聖堂へとやってきた。急勾配な四角錘状の聖堂は南側に1本階段があるだけで他に出入口はなさそうだ。大階段を登ろうとすると、聖堂の警備をしていた騎士達が止めてくる。許可の無い者は入れないらしい。騎士達はルディの顔を見ると動揺し、騎士の一人が階段を駆け上がって何かを確認しに行くと、しばらくして戻ってきて「やはり入れることは出来ない」と門前払いされた。 交渉するも、聖堂には神聖なお方がいらっしゃるので素性の分からぬ者を入れる訳にはいかないと聞く耳を持たないので、仕方なく諦めて聖堂を離れルディに何を確認したかったのか聞くと、夢の中の自分に似た誰かは何かの儀式の生贄にされかけており、彼女がまだこの世界で無事かどうかを確認して可能なら助けたいと言う。とはいえ聖堂への侵入は容易ではなさそうだ。何かしらの手掛かりを得るべく、その後は聞き込みをすることになった。街を見て回ると、ここを訪れる切っ掛けとなったオベリスクは街の数か所ある広場にそれぞれ配置されているようで、その中の一つでは丁度皇帝直属の魔導士が何やら儀式を行っていた。民衆の話によるとオベリスクは都を護る大魔術に利用される為に最近設置された物で、オベリスクには人柱が埋め込まれるという。人柱には何かしらの条件があるようだが、いずれも子供である事が共通しており、人柱に選ばれると無理矢理拉致されて埋め込められるらしい。今まで人柱に選ばれた者が裕福な家庭ではない子供が多かったからか「都を護る為なら仕方ない」と受け入れられているようだった。 イリーナ班は街の南部を流れる巨大な河川を訪れていた。まるで港町のように船の停泊所があり、積み荷を降ろしている様子が見て取れる。積み荷の中には魔獣や夜魔などが入れられた檻や、鎖で繋がれ奴隷の烙印を身体に刻まれた様々な種族の人間達もいた。攻め入った土地から連れ去ってきた奴隷らしい。 川の対岸には何やら整備が行われている小高い丘と建造中と思われる巨大な塔が見える。どうやら対岸への渡し船があるようだが、本日は遠方へ派遣される軍の船団が通るため全便欠航しているという。聞き込みをすると、対岸では皇帝の命で奴隷を動員して都を護る大魔術に利用する建造物を作っているという話を聞けた。イリーナ達が聞き込みをしている間、ジョンは河で釣った魚を売り捌いて換金する事で現地貨幣を獲得していた。外貨を獲得しなければ物資調達どころか今日泊まる所も確保できない、という訳でジョンとリンはそこで釣りをする事になり、イリーナは一人街の方へ戻り聞き込みを継続することになった。 ノイシュとポポはたまたま騎士が市民の女性を拘束する場面に出くわし、事情もよくわからないままその女性を逃がして代わりに騎士に追われる身となった。 スラム街のような場所に住んでいた少年に助けられ騎士を撒くことに成功するも、礼を言う前に少年は何処かへ行ってしまっていた。その少年の顔は、ここに来る前に触れたオベリスクの中に封じられていた少年と同じものであったため、少年の事を探す事にする。その最中イリーナと合流して、少年を発見する。少年はミゲルという名で倒壊しかけている廃墟に住み着いていた。女性を助けたせいでお尋ね者になってしまったノイシュのためにその廃墟の空き部屋を使っていいと言われたので、イリーナは動物と会話が出来るスキル[アニマルエンパシー]を使って友達になった野生の鳥を伝書鳩代わりにしてそのことを港のジョン達に伝えた。 ミゲルから話を聞くと、数年前にここの皇帝は突然発狂したかと思うと別人になったかのように性格が変わったそうで、都を護る大魔術を唱える準備と称して生贄にするために何かしらの適正がある子供を探して拉致しているらしい。ミゲルも適正者として捕まりかけたが、ミゲルの両親が命と引き換えにミゲルを逃がしてくれたそうで、それ以来この廃墟に住んでいるという。それ以外にこの街がエリュシオン帝国の王都エリュシオンということや、つい最近やってきた珍しい種族の男が反皇帝を掲げるレジスタンスを作り活躍している話を聞く。ミゲルもその男に助けられたことがあり慕っているらしい。詳しく聞くとどうもその男はかつて戦った戦闘狂のドラゴネットであるナイズだということがわかる。レジスタンスはとある酒場を拠点としているらしく案内してくれるという。ミゲルに他にも仲間がいると言い、イリーナは他のメンバーを呼びに行くことになった。 ルディとルークは国営の闘技場を見つけ、情報収集の為に入ってみるも特に有益な情報は得られなかった。その後近場で両替所を発見、見たことない貨幣だということでかなり割安になったが、現代の通貨を現地の貨幣に交換することが出来た。近くには公衆浴場などもあり、繁栄した都であることを体感する。その後、都の北側にある宮殿に向かうも皇帝陛下の住まいだという事で警備が厳重で当然入ることは出来なかった。城壁越しにも見える高い磔台にはもはや原形も留めていない死体が張り付けられていた。道行く人々に聞き込みをすると皇帝に逆らった者の死体が晒されているそうだ。宮殿の西側には森が広がっており、東側には巨大な塔のような建造物があったが、いずれも宮殿同様厳重な警備であり、話によるとどちらも皇帝の直轄管理区だそうだ。塔の形状から以前探索した竜族の守護者が囚われた遺跡であることや、森が妖精族の守護者が囚われてた森であること、現皇帝はアイネウス16世であり以前宮殿で戦った皇帝であることがわかった。 港で変わらず釣りをしていたリンとジョンの元にイリーナがやってきた。伝書鳩を飛ばして情報を伝えたはずだったが、その鳥はジョンに捌かれ調理されてしまっていた。大量の釣果で得た魚を売り捌き、イリーナとリンは廃墟へと戻り、存外良い稼ぎになることが分かったジョンはこのまま釣りを続けることになった。 道中偶然出会ったルークとルディと共に廃墟へ戻り情報共有した後、ミゲルの道案内でレジスタンスの拠点へと向かった。 酒場は大衆食堂のようになっており盛況な様子だった。ミゲルが店主に何か伝えると店の奥へと通された。そこにはガラの悪そうな男達と共に飲食をしていた大柄の赤いドラゴネット、ナイズが居た。ナイズは開きっぱなしになっていた地下宮殿の正門を奥へ進み、我々同様にオベリスクに触れてここまでやってきたらしい。 ナイズはここが何処なのかも分かっていなかったようで、民衆を抑えつけて子供を拉致する騎士が気に入らず戦って子供達を逃がしていたところ、反皇帝を掲げる地元のチンピラ達に担ぎ上げられ、「赤竜団」というレジスタンス集団にまで膨れ上がったのだそうだ。話を聞いている途中で見張りの者が警備隊の騎士達が店の表に集まってきていると警告しにきたので、一度解散することになり一旦ミゲルの住み家に逃げ戻ることになった。 一方チェルノブイリでは、もう5日になるのに一向に帰ってくる気配のないメンバー達を探す為に神薙と志摩は探索へ向かった。 宮殿の正門の奥を探索するという話を聞いていたので二人はそこへ向かうと広い空間と瓦礫の山を目の当たりにする。 宮殿を探索してた際に志摩が探索のお供として飼い始めていた大型犬[セラピー]は仲間達の匂いを嗅ぎつけたのか走り出し、淡く光る一本のオベリスクの前に辿り着いた。中には少年が眠るように封じられているのが見える。セラピーがそのオベリスクに触れるとその姿がオベリスクの中へと吸い込まれていった。その様子を見て一つ溜息をついた後、二人はオベリスクに触れ同様に吸い込まれていった。 夕暮れの古代都市で目が覚めた二人は見慣れない都市に困惑していると、ウィザード組のいた元の世界であるファージアースでは上司のような存在であったアンゼロットと、ウィザード達と協力関係にある古代神ベール=ゼファーによく似た人物を発見した。もしかしてこの二人もこちらの世界へやってきたのかと思い声を掛けるも、二人は神薙達のことは知らない様子だった。神薙はアンゼロットに瓜二つであるアンジェという存在が既に居たので「あぁまたそっくりさんか」と納得する。ベール=ゼファ―によく似た少女はバアル・ベルブと名乗りベルと呼んで欲しいと言う。そしてアンゼロットによく似た少女はアンジェと名乗る。同じ見た目に同じ名前だったが神薙達のことは知らないという。勝気なベルは「これから王宮に殴り込みに行く所だったんだけど、アンタ達も来る?」と誘う。 アンジェは事象を話し出す。アンジェは神界から遣わされてきた天使であり、ベルは天空神ダグデモアの娘である神そのものであるといい、このエリュシオン帝国は瘴気や邪神の呪いなどを利用して強大な力を持ちすぎたので調査をして必要なら粛正する気だと言う。その為に仮の姿で物質界に現界したと。 なんでも女神アエマの娘であるアルティアという神がこの帝国の皇帝に裏切られたらしく、今にも暴走して物質界を必要以上に攻撃しようとしているらしい。その前に帝国に少し灸を据えてアルティアの留飲を下げさせる目的もあるという。というわけで協力しないか?と改めて問われる。 「皇帝ってのはそんなに酷い奴なのか?」と話を誤魔化しつつ情報を引き出そうとする。話によれば皇帝はかなりの圧政を敷いており、軽い犯罪を者から皇帝の言う事に少しでも不満を言った者などは全て晒し首にし、ちょっとでも反抗的な態度を取る他国は即座に滅ぼされるのだという。 話を聞いているとベルが神としての力を物質界で使うと、この地は丸ごと吹き飛び数十年は人の住めない地になってしまう事がわかる。ベルに仕えているアンジェはそれを止めたいようだったがベルは強情で聞かないようだった。曰くアルティアが人間の姿で現界して近々この国にやってきそうな気配があるので時間がないと。神薙はベルをおだてて「俺達がアルティアを説得するからちょっと待ってくれないか」と交渉しアンジェが賛成したことでベルも渋々その意見を飲む。 アンジェからどんな姿になっていても神が近くに居れば発熱するという石を貰いアルティアを探すことになった。 神薙は自分の武器を賭けてコイントスのギャンブルで銀貨を稼ぎ、志摩がセラピーを連れて他のメンバーを探していると偶然買い出しに来ていたポポとイリーナを発見した。神薙と志摩は拠点代わりとなっている廃墟に案内され無事合流を果たす。情報共有を行うと、先にこの街に来ていたメンバーはまだここで1日も過ごしていないが、外の世界では5日経っていることがわかった。ここが栄華を誇る過去のエリュシオン帝国の王都であること、少年ミゲルがあのオベリスクに封じられていた少年と同一のものだろうこと、この世界にいるアンジェは元の世界にいたアンジェの過去の姿であることが推測された。 晩飯の後、日も沈んできたのでリンとイリーナがジョンを呼びに行った。ジョンは地元の人達に魚を分け与えたことですっかり仲良くなっており、近くの空き倉庫を利用していいと言われたのでそこで寝泊まりする気だった。リン達は情報共有を行い、明日赤竜団と合流することにしてそのまま倉庫で一泊した。 ミゲルの家で寝ていたメンバーは翌朝、瓦礫の山の上で目を覚ました。周囲を見渡すと、ここが元の世界の廃都であることがわかった。 散開して探索すると、瓦礫の中に見覚えのある街並みの痕跡を見つけ、この廃都が先程までいた過去の王都エリュシオンと同一の場所であることがわかる。 ルディが夢で見た者がいると言っていた聖堂も既に崩落していた。もちろんこの世界にはミゲルや他の住人はおらず、代わりに夜魔達が蠢いていた。 夜魔を撃退した後、倉庫で寝ていたジョン達三人を探すことになった。ジョン達を探す道中、唯一形を保っていた神殿のような場所でバアル・ベルブと名乗る少女と出会う。「ベルと呼んで頂戴」と半日前と同じ自己紹介を受けた神薙と志摩が自分達と会ったことがあるかと聞くも初めてだと言われる。 ベルの話ではこの地下空間はかつてのエリュシオン帝国の末路であり、夜魔や皇帝達の魂を封じる為にベルの力を使いアンジェが身を挺して人柱の結晶となってこの地下空間全てを封じてるはずで、その間自分は眠っていたはずだが、目を覚ますと封印が解けていたという。アンジェが記憶と力を失って現在地上のチェルノブイリにいることを伝えると、膨大な神の力もこの千年でほとんど使い果たしてしまった結果封印が弱まり夜魔達に中から突破され、外の世界に出て行ったしまったと推測し、ベル自身も力はほとんど残っておらず存在を維持する為にこの神殿から出る事ができないと言う。 ベルはかつてエリュシオン帝国にいて皇帝を吹っ飛ばそうとしていた所、アルティアが起こした大洪水に直面した。だがエリュシオンは初代皇帝が精神を操った16代皇帝によって敷かれた大結界で難を逃れ、大洪水による粛正を耐え抜いたエリュシオンを見て危機感を抱いた神々が地中深くへ沈めるも、そのままでは初代皇帝の魂は地上へ干渉できると読んだベルとアンジェは身を挺して内側からこのエリュシオンを封印していた、ということだそうだ。 ベルとアンジェの力は初代皇帝の力によって摩耗しているので初代皇帝の魂を完全に消滅させれば力を取り戻せるそうで、4つの秘宝を集めてこの地下空間の何処かにいる初代皇帝を倒すよう言われる。元よりそのつもりだったので協力を約束し、オベリスクに触れた時に飛んだあの場所はなんだったのか聞くと、あの地は大洪水が起きる少し前の過去のエリュシオンだとベルは話す。夢の世界でありずっと一定の過去の同じ景色を何度も繰り返している世界だと言い、本当の過去ではなく過去を再現しているに過ぎないのであの世界で何をしてもエリュシオンの未来は変わらないが、現代で皇帝を倒すヒントは得れるかもしれないという。 そして神薙にあの世界は過去を再現しているだけなのであの世界で仮にアルティアを見つけても未来は変わらない、なのでアルティア探しなんて放っておいて過去の自分達を逆に上手く利用しろ、と言われる。その他に、この地下空間に封じられていた竜族の守護者が死んだ際に、強大なその力が5つに分かれて青竜、緑竜、赤竜、白竜、黒竜の姿となりこの地下空間に散らばっており、その竜を倒せば竜の力が利用できるかもしれないとアドバイスされる。 とりあえずこの神殿は夜魔達も近寄らず安全らしいので、瓦礫を探索して疲れていた一行はここで一休みすることになった。 一方ジョン達は瓦礫で目を覚ました後、周囲を探索してここが元の廃都だと言う事を理解し見晴らしの良いだろうと河があった場所に行ってみた。 河はドス黒い水が流れていたのでジョンは釣りをしてみると、触手の生えた異形の魚が釣れた。異形の魚は襲い掛かってくるため泳いで対岸には行けそうにない、ということで古い船を応急処置で修理して対岸へと渡った。渡った先で釣りを何度か試すも様々な異形の魚が釣れただけだったので、捌いて燻製にして何とか食べれるように加工し、黒い水を即席の濾過器で水を濾して飲み水を確保した。焦っても仕方ないということでその場でキャンプをすることになった。 ルークはいつか見た夢と同じ景色を見ていた。寝ている自分の前に死臭を纏いやって来たのは豪勢な装飾を身に着けた骸骨。「我が名を応えよ。さもなくば汝の魂は我が物となる」何故か身体を動かせないルークは一言「アイネウス」と応えるとその骸骨は動きを止めた。 「このような問答、一時の戯れに過ぎぬ。汝の魂は既に我が手中にあるも同然である」そう言って骸骨は闇へ消えて行った。 ルークが目を覚ますと神殿の中だった。同時に目を覚ましたルディはルークを上から見下ろすような形で同じ夢を見ていたという。あれは一体なんだったのか。 「ともかく、貴方の魂が取られなくて良かったわ」「何故?お前には関係ないことだろう」「仲間は守るものだって聞いたから」「お前は守りたいと思うのか?」「守るべきであって守りたい訳ではないわ」「おかしな奴だな、守りたいと思わないのなら守らなければいい」「守りたくないわけではないわ」「どっちなんだ。長生きだと言うわりに随分と曖昧なものの捉え方をするんだな」「長生きだから、かもしれないわ」「若輩者には分からん考え方だな」「なら長生きなさい?」「それが出来れば、な」二人がそう話していると他のメンバーも目を覚まし始めた。同じ夢を見てたのはルディとルークだけらしかった。 ベルに逸れた仲間を知らないかと聞くと、彼らもこの廃都の何処かで目覚めたはずと言い、この瓦礫まみれの場所よりオベリスクを通して再度過去の世界に戻って合流する方が手っ取り早いと言われる。オベリスクは王都エリュシオンの至る所にあったのでジョン達が目覚めた場所の近くにある可能性も高い。 ジョン達が同じ発想で過去の世界に来てくれることに賭けて一行はオベリスクを探しを始める。すると瓦礫の山の中で二足歩行の猫[ピート]と出会った。 ベスティアにしては妙な出で立ちのピートは旅商人だと名乗り、この地下空間を探索する冒険者相手に商売をしているらしい。猫の身のこなしでするすると敵を躱してここまで降りてきたらしく、色々と知っているので情報も売っているという。試しにいくつか情報を買ってみるも知っている情報しかなかった。 仕方ないので無視してそのまま奥に進むと巨大な黒い竜が眠っていた。ベルから助言は受けていたがジョン達と合流するのが先だろうということで、その手前にあった見知らぬ少女が封じられたオベリスクに触れ、過去のエリュシオンへと再度旅立った。 仮設したキャンプ場で目覚めたジョン達は改めて周囲を探索する。するとこの廃都の南西と南東にそれぞれ更に奥に進めそうな場所を発見する。南西は奥から熱気を感じ、南東は奥から冷気を感じる。位置的には南西の場所は過去のエリュシオンで小高い丘に何か建造物が建てられようとしていた場所で、南東は同じく建設途中だった塔があった場所と同じだと気付く。この奥地を探索するのはメンバーが集まってからにしようということになり、ジョン達は手前にあった乳児が封じられたオベリスクに触れ、過去の世界へと旅立った。 過去のエリュシオンに戻ったジョン達が目覚めたのは、昨日渡ることが出来なかった対岸側であり、現代の廃都と同じ場所に出て来るということがわかった。 後ろにはヴィアンシエールの巨木かそれよりも大きな塔が建設されているところであり、現場監督と思わしきヒューリンが奴隷のネヴァーフ達に塔を作らせていた。話を聞くと都を守る為に皇帝の命で作られているということしか知らないようで、余所者が来るところじゃないと門前払いされた。 昨日は欠航していた渡し船が出るようになっていたのでそれを利用し、対岸のエリュシオン市街地へと三人は戻っていった。 他のメンバーはスラム街近くのオベリスクで目を覚ましたが、スラム街の方は赤竜団の拠点がある可能性があるとのことで兵士達による調査が行われているらしく封鎖されていた。とりあえずジョン達がいたという河辺の方へ行くと丁度対岸を渡って来た彼らと合流した。 ミゲルの住む廃墟に戻ろうとする道中に過去の世界のベルとアンジェに出会い、ここが夢の世界だと言う事は伏せつつも自分達は未来人で未来の世界のベルから協力を求めるよう言われたことを伝えた。未来のベルから聞いた当人しか知らないようなことを伝えて信頼して貰い、協力を約束して貰った。 しかし特に宛てもないのでそのまま別れ、ミゲルの住む廃墟に行くが彼は留守のようだった。未探索な場所であり赤竜団の拠点があるかもしれないというスラム街はこの世界では封鎖されているが、一度現実世界に戻りスラム街内部のオベリスクに触れてこちらに帰ってこれば潜入できるだろうという事で、現実世界に戻る為の手段は眠る事のようなのでそのまま廃墟で眠ることになった。熟睡はしていないとはいえここ最近寝てばかりだ。 現実世界に帰って来てからスラム街の方角に向けて、脆そうな箇所を探し武器やつるはしで瓦礫を破壊しながら先に進む。 道中瓦礫に埋もれていた使えそうな素材を拾ったり、崩れた瓦礫に巻き込まれたりしながらかつてのスラム街へと辿り着くと、そこには小さな女の子が封じられているオベリスクが立っていた。それに触れ、再度夢の世界に行くと目論見通り封鎖されているスラム街の中に潜入できた。 強引に捜索をしている王宮騎士の警邏隊の目を掻い潜りながら探索すると、赤竜団の拠点となっていた酒場に居た団員が警邏隊の様子を伺っている所に出くわす。 そいつに案内させ、巧妙に隠された裏路地を通って赤竜団のアジトへと辿り着くとナイズに出迎えられた。ナイズ嫌いのリンやイリーナは彼に会うとほぼ毎回軽く武器を交わして小競り合いを繰り広げるのだが、今回ばかりは近くに警邏隊がいるかもしれないと互いに矛を収めた。一先ず情報交換をすることに。 ナイズの話によると王宮に仕える騎士達のトップである将軍ラウマントゥスが非常に強力でナイズを含む赤竜団の総力を以てしても敵わないらしい。 その他赤竜団の団員の話から、街の中心にある聖堂には「夢見の予言者」と呼ばれるとても高貴な身分の人物が軟禁されているという情報と、王都を囲うようにして建てられている4つの塔は今の皇帝の代より前から作られ続けており不思議な事にどの塔にも出入口のようなものが存在しないという情報と、エリュシオンでは七大神信仰が禁じられておりかつて王都エリュシオンにあった神殿は既に焼き尽くされており廃墟が未だ存在するという情報を得る。その神殿というのが現実世界でベルが居た場所だろう。他の情報は確定情報ではなかったこれまでの経緯から推察していた通りのものであった。 ルディはその夢見の予言者が何か知っているかもしれないと言い、打開策を模索していたナイズが「だったら正面から殴り込みと行くか!」とノリ気になったので、腹ごしらえをしながら聖堂侵入計画を立てることになる。ジョンはナイズに秘伝の特製激辛ドラゴンスープの作り方を教わっていた。 その後しばらく外の様子を見るも警邏隊が跋扈していたので明日の明け方に行動を移そうということになる。 サイコカンパニーのメンバーはアジトを出て未探索だったスラム街を探索する。すると南側に以前ヒルべニアで見た夜魔の製造所を発見した。 樽に詰められたドロドロの血肉や骨を巨大なプールのような穴に溜めており、穴の中では数百もの夜魔の赤子が薄い膜に包まれて血肉の中に浮いていた。 ヒルべニアの地下で見た光景と同じだが、ここで夜魔を作っていたのは王宮の兵士達だった。夜魔は軍用生物兵器として作り出され、戦争などで運用されているのは既に知っていたので特に驚きはなかった。隙を突いて兵士達を穴に突き落とすと、夜魔になりかけの出来損ない夜魔達に瞬く間に捕食された。 兵士達が持っていた鍵を使い、近くにある兵の詰所に侵入して物品を漁った後、このスラム街を脱出する為に詰所のベッドで眠ることになった。 目を覚ますと無事現実世界に戻って来ていた。そういえばナイズは寝ても帰ってこれないらしい。何か理由があるのだろうか。 市街地の方へ戻る為に東へと向かおうとするが、天井の岩盤が崩落したようで道中は岩とそれに押しつぶされた瓦礫でかなりの難所になっていた。 通れそうな場所を見極めつつ、つるはしを使い岩を砕くと鉱物や原石が手に入った。どうやら天井部の岩は鉱脈らしい。 力に覚えのあるジョン、神薙、リン達が道を切り拓いている間にルークは鉱物や原石をベースにいくつかの素材を調合して「魔弾」という弾丸を作り出す方法を志摩から聞いた。魔導銃は魔力の弾を射出する武器だが、魔弾は魔力を媒介する性質があるので魔導銃でも撃ち出せるそうだ。以前から志摩の魔銃を見て使えそうだと思っていたところだったので丁度良かった。市街地跡まで通り抜けて幼児が封じられているオベリスクに触れて夢の世界へ戻った。 目覚めると夜明け前だった。詰所で寝たのが夕刻だったので良い時間になっていたようだ。赤竜団が拠点とする酒場へ行くとナイズが待っていた。 聖堂侵入計画は赤竜団の団員が王都各地で陽動を行い、聖堂前の門番はナイズが食い止め、その隙に我々が正面から侵入するというものだ。 赤竜団の各員からの合図を受け取り、ついに作戦が実行される。 聖堂前の門番をナイズが斬りつけ、兵士達がナイズに群がってきたのを物陰から確認すると隙を見て聖堂正面の大階段を駆け上がった。 後ろからの追撃はナイズにより押し留められたが、聖堂の中からも兵士が打って出てきたので迎え撃つ。兵士を倒して階段から転がり落としながら頂上まで進み、聖堂本殿の前にある広場まで来ると今度は武装した神官達が襲ってきたのでそれも返り討ちにする。 すると、槍に串刺しにされたままの姿のナイズが階段の下から頂上の広場まで吹き飛ばされてきた。頑丈なナイズは重傷だが致命傷ではなかったようでまだ生きていた。2頭の漆黒の馬が引く戦車に乗った大柄の男が、無理矢理戦車を引かせて階段を駆け上がって来た。どうやらあれが魔将と謳われるラウマントゥス将軍らしい。ラウマントゥスがリンに向かって槍を投げるが、それを庇ったナイズが肩を貫かれ、そのまま聖堂本殿の壁に串刺しになる。 ラウマントゥス将軍との戦いは苦戦を強いられるも、将軍が投げる数十本の魔槍をルークが全て撃ち落とし、ジョンが作り方を教えて貰っていた激辛ドラゴンスープの効力で戦場は炎に包まれ、将軍を倒すに至った。どういう理論かは全く分からないが実際そうなったのだから他に説明のしようもない。 将軍が倒されたのを見ると周囲にいた兵士達は恐れおののき我先に逃げ出して行った。その間、ポポはナイズの応急手当をしていた。命に別状はないらしい、相変わらずしぶとい奴だ。ジョンは激辛ドラゴンスープのあまりの力に感動し、ナイズに他に知ってるレシピが無いか聞いていた。 聖堂の中に入ると祈りを捧げる為の大広間の他、いくつか部屋があったがいずれも無人だった。最後に残った一番奥の部屋を開けると、そこにはルディによく似た少女がいた。夢見の予見者こと少女ユリアは、自身が初代アイネウスの直系の子孫であり15代皇帝の娘で、生まれてからずっとこの聖堂に囚われていると言う。 そしてユリアは今あるこの世界が既に滅びた過去の王都エリュシオンであり、夢の中の世界であることを自覚していた。この夢の世界は生と死の狭間にある[忘却界]という領域らしい。忘却界はオベリスクに封じられ死ぬことも出来ない人柱達の見る夢によって創造され、初代皇帝の魔術により王都エリュシオンを丸ごと忘却界へと移動させ、今なお夢の世界で存続していると言う。ちなみに普通の人間である人柱達はオベリスクから出す方法はなく、オベリスクを砕くと死ぬらしい。 この忘却界のエリュシオンは、エリュシオンが滅びるまでの最後のひと月を千年以上も繰り返しており、ユリアだけはその間の記憶を引き継いでいるそうだ。 イリーナがメリトの様子を話すと、それはオベリスクに封じられた時の症状と酷似しているとユリアは言う。徐々に身体が石になったように結晶化していき、死ぬことがないまま夢を見続け、やがて身体が完全に結晶と化してしまうと二度と元には戻らず、身体を砕いて殺す以外解放する手段はないという。 何故チェルノブイリの子供達を結晶化させたのか聞くと、現実世界の廃都にあるオベリスクはこの忘却界の王都エリュシオンを維持するため楔であり、更に人柱を増やせばこの夢の世界に封じられている王都エリュシオンを現実世界に、それも結晶化した子供達がいる地上に出現させることが出来るとユリアは説明する。 初代皇帝の目的は現代でのエリュシオン帝国の復活であり、結晶化しつつある子供達を元に戻すにはその魔術をかけた初代皇帝を完全に消滅させる他ないという。 ルディが何故自分の夢に何度も出てきたのか聞くと、ルディはユリアの生まれ変わりだという。ここにいるユリアは既に死人であり、死んだ際に次元を超えて生まれ変わった姿がルディなのだと。そしてユリアがここに閉じ込められているのは、時が来れば初代皇帝の魂に身体を乗っ取られ、初代皇帝をこの世に復活させるための器として生かされていたという。既に身体が滅んだ今となってはユリアは初代皇帝に狙われる理由はなくなったが、ユリアの生まれ変わりであるルディは初代皇帝の魂に身体を乗っ取られる可能性が高いと言い、初代皇帝が身体を乗っ取れるのは初代皇帝の血筋かその魂を継ぐ存在だけなのだと説明した。 初代皇帝だけでなく歴代皇帝は全てこの聖堂の地下にある[皇帝の墓所]に埋葬されているというが、墓所への出入り口は皇帝と一部の墓守しか知らないという。 皇帝ですら簡単には入れない場所なようで、何かしらの強力な魔術で封じられているという話を聞いた事があるそうだ。 ずっとここに閉じ込められているだけあって、あまり詳しいことは知らないようだったのでこれからどうするかを考える。元々この夢の世界へは初代皇帝の魂を倒す手掛かりを探しに来た。歴代皇帝達が眠る墓所とやらに行くことが出来れば、初代皇帝と相見えることができるのだろうか。 ユリアは初代皇帝が消えればこの夢の世界も消え、今オベリスクに封じられている子供達もただの石になると言い、元より皆既に死人となっている者達なので早く解放してやって欲しいと願った。そして「そろそろ夢から醒める時」と言うと近づき頭を一撫でしてきた。すると急激に意識が遠のいた。 目を覚ますと薄暗い空間だった。ランタンで明かりを確保すると、かなり崩壊しているがそこが先程までいた聖堂だという事がわかる。 現実世界に戻って来たのだろう。目の前にはミイラのようになっている遺体があり、恐らくはユリアの成れの果てだろうと推測できた。 壁の亀裂をつるはしで崩すと、ところどころ崩落している大階段まで出て来れた。ついでにナイズと治療していたポポ、ナイズと喋っていたジョンもそこにいた。 3人は気付くとこの現実世界に戻ってきていたという。別に直接撫でられる必要はなかったらしい。 大階段を地上付近まで降りてきた時、大階段の一部が崩れておりその中に通路らしき場所があるのを発見した。通路の壁にはエリュシオンの歴史と思われる壁画が描かれており、中に入って奥へ進むとそこには青く透き通った巨大な扉があった。扉は未知の物質で出来ており、取っ手も鍵穴もない。 するとルークの首飾りの青金石が淡く光り震え出した。それを扉へ近づけるとガラスが割れるように扉は砕け散り、その欠片は光の粒となって消えた。 更に奥へ進むと今度は翠の透き通った巨大な扉があった。同様にルークが持つ翡翠を近づけると砕け散った。そのまま先に進むと今度は赤く透き通った巨大な扉があった。おそらくは残りの秘石、全て揃えればこの奥にある皇帝の墓所へ行けるようになるのだろう。わかりやすくなってきた。 通路から出て来ると、怪我を治療してくれたことに礼を言いつつもナイズはこっちはこっちで調査すると別れを告げてきた。 「赤竜団はいいのか?」「よくわかんねぇけど、要はあいつらは幻だったってことだろ」「寂しく無いの?」「俺はずっと一人で生きてきたんだ、今更寂しいなんて思わねぇよ」そんな会話を交わしたあとナイズは寂しそうに去って行った。結局ナイズは何が目的でこのエリュシオンを旅してるんだろうか。 4日ぶりにチェルノブイリに帰還することになり地上に出て来ると、門番をしていた衛兵に無事だったのかと驚かれた。話によるとサイコカンパニーは約半年間消息不明だったらしい。神薙と志摩が合流した際にあの夢の世界とこちらの世界では流れる時間の速さが違う事は把握していたがまさかそこまで経過していたとは。 チェルノブイリの街に入ってすぐ、いつも探索を終えて解散する十字路までやってくると各々慌ただしく家路につくのをルークはぼんやりと見送っていた。 賢者ハロルドは特に変わりは無かったが、翌日メンバーの話を聞くと、ノイシュの母ソフィアは第三子を身籠っており、メリトは身体が半分ほど結晶に包まれていて、教会で世話して貰っていたニーズは成長して少し大きくなっおり、リンは元々勝手に空き家に住み着いていたためその空き家が取り壊されて新しい家になっていたので住む場所がなくなり宿屋に寝泊まりすることになり、ポポは部族の集落が既に移動しており帰ることが出来なくなり、セーナはアデルに嫁ぐ為にライン王国へと行ってしまったらしい。知らない間に地上では色々あったようだった。 -幕間- 神薙は半年間で人口が急激に増えてしまい衛兵が足りず治安が再び悪化しつつあったチェルノブイリを見回り、ジョンは半年間消息不明だった間の事務処理をするため家に軟禁状態となり、ポポは集落の手掛かりを探すため他の街に聞き込みに行った為、残りのメンバーで今まで発見してきた龍を倒す事になった。 ベルが以前言っていた竜族の守護者の力の結晶である5体の龍の内、青龍、緑龍、黒龍は既に発見済であり、倒せば力を得ることが出来るという。 かつて竜族の守護者がいた遺跡の底にある湖に浮かぶ小島で眠っている青龍の元へ訪れて戦いを挑んだ。 倒すと青龍の身体を光が包み、やがて光は縮小して小さな石となった。一旦チェルノブイリに帰り、ソフィアに石を見せるとそれは青竜石という龍の力の結晶であり、常人にはその力を扱えないがウィザードであれば応用すれば力を増幅させることができるという。また、その龍の力の持ち主の子供でもあるニーズヘッグの主であるリンも扱う事が出来そうだとソフィアは言う。リンがその石を持つとリンを認めたかのようにその石は青く輝きを放った。リンが持てばニーズヘッグを強化できるだけでなく主であるリンもその力を利用できるようなのでそのままリンが持つことになった。 しばし休憩を挟んだあと、ヴィアンシエールの巨木へ向かうことにした。その道中にある地下宮殿の書庫を再度物色したが、もう有用そうなものはなかった。そのまま森へと通り抜けて半年ぶりに訪れたヴィアンシエールでは、相変わらず住人達から歓迎を受ける。 近衛兵の話によればティアはあの後すぐに女王に即位したそうだが、ひと月ほど前にティアだけがこの森から抜けてあの地下宮殿へ出れることが発覚したようで、恩人であるサイコカンパニーの手伝いをしたいと数日前に旅立ってしまったという。ティアは王族が受け継ぐ数々のマジックアイテムを装備して旅立ったので並の兵士より戦力を持っているらしいが、今どこでどうしているのかはわからないらしい。危険なので止めたかったが聞く耳を持たず、ティア以外の者はこの森の結界の外には出れないようで止めることが出来なかったので、もし見つけたら呼び戻して欲しいと依頼される。我々を手伝いに行って我々の手間を増やすとは本末転倒だ。しかし、何故他の者が出れないのだろうか? 思えば結界の外に出れているのは竜族の守護者の子であるニーズヘッグと妖精族の守護者の子であるティアだ。 両者とも既に守護者としての役割はなくなっているが何か関係があるのだろうか? 以前このヴィアンシエールの巨木の枝を伐採した材木が既に使い切ってしまったのでついでにちょっと伐採して行こうと志摩が提案し、住民に切っても良い枝を教えて貰いその場所へと向かった。チェルノブイリの東にある森の木々より立派な太さの枝を切り出し材木を採取していると、大きな鳥の羽音が聞こえてきた。 いつか倒した巨鳥ルクである。まだ別個体が生息していたようだ。戦闘中イリーナが食われかけるも、前回倒した経験を生かして巨鳥を殲滅した。 再度チェルノブイリに戻って木材を武器屋に運び込んで加工して貰う。その際に帰って来たポポ、抜け出してきたジョン、巡回を終えた神薙が合流した。ちなみにポポの仲間の遊牧民達の行方は結局わからなかったらしいが、いずれ巡回して戻ってくるので最悪でも数年後には合流できるそうだ。 チェルノブイリ市民達の話ではこの半年の間にヴィアンシエールのある妖精の森や廃都となっているエリュシオンまで辿り着いていた他のギルドも現れ始めたようだが、妖精の森は立ち入り禁止となっており入るとヴィアンシエールの衛兵に追い返されるようで、廃都エリュシオンのオベリスクは触れても忘却界のエリュシオンには飛ばないようだった。後発組の冒険者達にとってはさぞ訳の分からない地下遺跡だろう。我々にとっても訳は分からないが。 地下宮殿に戻り廃都エリュシオンを訪れると、猫の商人ピートは変わらず商売を続けていた。最近はちらほら冒険者が訪れるようになり一応商売はやっていけてるらしい。ピートは2、3ヵ月ぶりに我々と会ったと言う。以前は忘却界とこの廃都を行き来している時に出会ったので地上よりはラグが少ないようだ。 2,3カ月あれば新しい情報を仕入れたかとピートからいくつか情報を買うも、相変わらず我々の知っている情報しか持っていなかった。ぼったくりである。 ピートと別れ、以前黒龍を見つけた場所まで行くと相変わらずその場に居た。チェルノブイリ市民達の話ではこの黒龍による冒険者の犠牲者も出てるそうだ。 見たところ今朝倒した青龍より遥かに強大な力を持っているようで、今の我々では歯が立たないかもしれない。とはいえ無理に倒す必要もないので黒龍の目を盗んで瓦礫に隠れながら黒龍の佇む広場の奥へと進むことにした。広場の奥には巨大な建造物の痕跡があった。既に瓦礫の山と化しているが、地下室は無事なようだ。 地下へ進むとどうやらこの建物は王立図書館だったようで、この地下室は閲覧禁止の書物が蔵書されている場所のようだった。 相変わらずルディしか読めない文字で書かれた魔術研究の書物があり、内容は人間を生きたまま結晶化する研究や夜魔に関する実験の報告書などであった。 その他、数多くのスクロールが手に入った。古代エリュシオンの未知の魔術で作られたスクロールと呼ばれる書物は開くとそこに込められたエリュシオンの古代スキルを習得できるもので、これまでの探索でもいくつか手に入れてきた。一度使うと効力を失う消耗品な為、今までは一人につき1,2つのスキルしか習得していなかったが、ここで手に入れたスクロールのお蔭で更に多くのスキルを得ることが出来た。 根こそぎスクロールを掻っ攫って、帰りは煙玉を利用して黒龍の横を走って駆け抜け王立図書館を後にした。 そのままヴィアンシエールに戻ると既に日も暮れていたので住人達の厚意に甘えて一泊した。 翌朝、住人達に緑龍の話を聞くといつからかこの巨木の頂上に住み着いたと言い、ずっとそこにいるが近づかなければ危険はないので放置しているようだった。 ヴィアンシエールの書庫に再度訪れ前回取り漏らしたスクロールを回収した後、市街地を出て巨木の頂上まで行くと話の通り緑龍が居た。アニマルエンパシーで会話できるかもしれない、と言い出したイリーナが近づいて話しかけるが案の定通じなかったようで襲い掛かっていた。そもそもドラゴンはアニマルではないので当然だ。なんとか緑龍を倒すと、青龍と同じように光に包まれると透き通った緑色の結晶[緑竜石]となった。 これでここまで探索した場所でやり残したことは後は黒龍討伐だけとなった。黒龍は後回しにするとして、今進める場所は廃都の南西と南東にある通路。 情報を整理して今回はとりあえずチェルノブイリへ帰還することになった。チェルノブイリへ帰還すると衛兵達がジョンを捜索していたようで、そのままジョンは衛兵達に引きずられて館へ帰って行った。それを見送って他のメンバーもいつもの十字路で別れて解散となった。 -第八章- ライン王国にいるセーナからギルド:サイコカンパニー宛に招待状が届いた。我々は既に知っているが世間的にはまだアデルが婚約した事は公表されていないので婚約発表が行われるらしく、それに伴い婚約披露宴のパーティーがあるので是非とも参加して欲しい、とのこと。 ラインまでの往復の馬車代、宿泊費、披露宴でのドレスのレンタルなどは全て無償で用意する旨が書いてあり、こちらの負担は一切ないという。 セーナの養父でありチェルノブイリ領主ニクラスとその妻チヅルはどうしても外せない別件があり、社交界に慣れさせるのにも良い機会だということでジョンをチェルノブイリ家の代表として行かせる事になっているようで、ジョンとそのお供を頼まれた志摩はほぼ強制参加らしい。 ギルドメンバーの中にはセーナと深い関わりの無い者も幾人かいたが「せっかくご招待を受けたんですから皆で行きましょう!!」と張り切っているイリーナに押されて参加することを決めていた。興味のないルークとルディは不参加を表明、出発の日に店の手伝いの約束をしてしまっていたノイシュは後から駆け付ける事になった。迎えの馬車は披露宴の前日に前入りするそうなので、翌日に早馬を飛ばせば十分間に合うとのことだ。 出発の前日、ジョンは志摩を自室に呼び密談を交わしていた。「有り体に言えば暗殺?ちょっと一発ヤッてくれない?」「うん?いいけど誰を?」「ターゲットは後で現地で教える。ただしターゲット以外は一切危害は加えるなよ」「え、うん?」「勿論タダとは言わん。これでどうだ?」「おっけー!!」「あともう一つ、別件で頼みがある。チェルノブイリ家の次期当主、なってみない?セーナに押し付ける気だったけど難しそうだしさ」「えーっと…なんかそれ色々問題ない?」「その辺は俺に任せろ」「自由に生きたいしなぁ」「それは俺も同じだから」窓から月明りが挿す中、そんな話が進んでいた。 出発当日、ライン行を表明していた面々がルークの家の前に押しかけてきた。ドンドンと扉を叩いて各々が呼びかけてくる。 「ルークさん!薬売りに何度もラインに行った事あるんですよね?案内してください!」「街の入口に観光案内所があるからそこへ行け」 「披露宴で豪華な料理食べ放題だよ」「別にいらん」 「おいルーク、お前が来てくれないと男が俺一人になっちまうから宿屋で寂しいだろうが」「いや知らん!子供か!!」 「ルーク、ああして騒がれては近所迷惑じゃから早よう行ってこい」「おいジジイ!何勝手に開けて―――!!」 次にルークが目を覚ました時には馬車の中だった。 ラインに到着すると街で一番の高級宿に通され、翌日また迎えに来きますと馬車は去って行った。 「せっかくですし観光しましょう!」とイリーナは断ったルーク以外のメンバーを引き連れて街へ繰り出した。 格安商店でポーションを買ったりして観光を楽しんでいる一行をよそに、ルークは街の住人に街の様子やアデルの噂話を聞いたりした。 アデルはチェルノブイリの異変に逸早く駆け付け、積極的に地上に現れた夜魔討伐を行っているアデルは民衆の支持を幅広く集めているようで、そんなアデルの婚約発表が明日行われると言う事で街はその噂で持ち切りだった。セーナは名前こそまだ公表されていないようだったが、かなり高貴な身分の者と噂されていた。 一方、志摩は何かと理由をつけて観光メンバーの元から抜け出すと披露宴が行われる迎賓館の周囲を一人調査していた。厳重な警備体制が敷かれており、この警備網を突破するのは難しそうだ。そんな中、自分と同じ様に迎賓館の様子を伺う黒い影を発見するも追跡した途中で撒かれてしまった。 その夜、ラインには公認の賭場があるということでジョンは強引にルークを引き連れ月夜亭という賭場を訪れる。 ジョンは手持ちの金をオールベットして所持金を倍に増やしていたが、結局他で負けて所持金は元通りになっていた。 貴族らしき者から冒険者まで色んな者達が集まるこの場は情報収集にうってつけだと思ったルークは上級装備に身を包んだ冒険者に話しかけた。 このラインを拠点にして活躍し、それなりに名の売れた冒険者らしいその男は明日の披露宴に参加するそうで、話によればアデルは冒険者を高く買っているようで一定のレベル以上の冒険者は大体が招待されているという。万全な警備体制が敷かれている上に上級冒険者が招待客として参加している、と聞きジョンが黙り込んだので、冒険者の男と別れた後ルークはジョンに問いかけた。「随分と大人しいがまさか明日何か企んでる訳じゃないよな?」「え、いやいやそんなこと何も考えてないっすよ」「成程な。まぁどのみち俺は明日参加しないから関係はないが、巻き込むなよ」「何に?」「何にもだ」と語りながら宿に帰った。 深夜、ジョンと志摩は宿屋の屋根の上で密会をしていた。「――というわけで衛兵だけじゃなく客の冒険者にも気を付けた方がいい」「こっちも気を付けた方がいいこと見つけたよ。現場の下見に行ったけどそこでコソコソと何かをしていた怪しい奴がいた。後を追ったけど職人街辺りで撒かれた、あの身のこなしは間違いなく同業者」「俺はお前にしか依頼はしてないけどなぁ。まぁそいつにも気を付けた方がいいな。状況によっては報酬も上乗せしよう、危険手当だ」 翌朝、ポポは結果的にチェルノブイリに唯一残ることになったルディに何かお土産を買おうと、イリーナと共に商店街へと繰り出していた。 ルディが好きそうな古書を買った帰り道、イリーナは謎の紋様が刻まれた魔法陣を路地裏で発見した。その紋様はイリーナの母が隠している背中の入れ墨とそっくりだった。魔法陣がどういった性質のものなのかは不明で、触ったり魔力を流したり色々と試してみるも特に何も起こらなかった。更に、よく見て歩いてみると別の場所にも同様の魔法陣が設置されていた。これが何なのかはわからないが、一応昨日買ったラインの地図に魔法陣があった場所を記す事にした。 宿屋に戻ってそのことを地図を広げつつ共有すると「ちょっと調べてみる」と志摩は出て行った。ちなみにジョンは朝から賭場に行っており不在だった。 賭場で所持金の大半を失ったジョンがとぼとぼと歩いていると志摩と鉢合わせた。二人は協力して魔法陣を探すと、イリーナが記した場所以外にも複数個所に同様の魔法陣を発見できた。特に中央広場や職人街などに多く発見したが、この魔法陣が何なのかまではわからなかった。 早朝にチェルノブイリから早馬で駆けつけたノイシュとルディが宿屋に合流した。ルディは来るつもりは無かったそうだが「大人数の方が楽しいって!」と、ノイシュに半ば強引に連れられてきたらしい。志摩とジョンも帰還し、更なる魔法陣の情報を共有する。一応聞いたがルディにもそれが何かはわからないそうだ。 そうこうしていると迎えの馬車がやってきた。披露宴に興味のないルディとルークは不参加を表明し、他の一行は馬車に乗って披露宴会場へと向かって行った。 披露宴会場の控室へと通された一行は貸し衣装を借りてドレスやスーツに着替えた。いつも半裸だったジョンやイリーナなどは特に別人のように雰囲気が変わった。控室にセーナが飛び込んでくるとそのままジョンに抱き着いた。「本当に無事で良かったぁ!」と、セーナは半年ぶりのメンバーと再会を喜んだ。セーナはサイコカンパニーが戻ってこないまま数ヵ月が経過した頃にラインへやって来たそうで、ずっと皆を案じていたそうだ。 そこへアデルもやってきた。一行はしばしその二人と談笑していたが、やがて執事のような男が呼びに来てアデルとセーナは退室した。 しばらくして騎士がやってくると、武器になるようなものは会場には持ち込めないので預からせてもらうと言ってきた。目に見えて目立つ装備は粗方預けることになったが、エリュシオン産の装備は現代では装備に見えない物も多いので、特に止められなかった装備は念のためそのままにして会場へと向かう事にした。 会場は豪華絢爛な内装が施され、高そうな料理や酒などを楽しんでいる高貴な身分であろう者達やスーツやドレスを着慣れてなさそうな冒険者風の者達が大勢いた。メンバーは各々ブュッフェスタイルの料理を取りに行った際にジョンは志摩に小声で「実行できそうな時があればすぐにでもやれ」と指示を飛ばしていた。 やがてアデルとセーナが入場すると、瞬く間に二人に何とかしてお近づきになろうとする貴族達に囲まれてしまった。その後ポポが上流階級の貴族に口説かれたりとなんだかんだあった後、ようやくアデルとセーナが一行の元へやって来た。一行はアデルとしばし言葉を交わすと、アデルはジョンに「すまないがジョン、少しの間セーナを頼む」と言った後に志摩に「ちょっといいか?少し二人で話がしたい」と言って二人は奥へと去って行った。「どうしたんだ?」「さあ?・・・・あ、そういえば皆さんはこの半年間あの地下遺跡で何をなさってたんですか?」志摩を連れ出したアデルを特に気に留めるでもなく、一行はセーナと会話を続けた。 そんな中、恰幅の良い貴族が近づいて来て「失礼ですがセーナ殿、こちらの方とはどのようなご関係で?」と言うのでセーナが説明すると、セーナの義兄であり、チェルノブイリ家の次期当主であり、今世間を騒がせているあの異形の怪物に関する調査で最も名高いサイコカンパニーのギルドマスターということで、ジョンはすぐに貴族たちに囲まれた。質問の嵐を適当に流しながらもジョンはイライラしてその辺のスプーンやフォークを何本も手元で捻じ曲げており、それを見かねたセーナはジョンの手を取り人混みから逃げ出した。他のメンバーは近づくと巻き込まれそうだったのでそれを遠巻きに見ていた。 人気のないバルコニーへといざなわれた志摩はアデルにノンアルコールカクテルを差し出される。後ろにはアデルの側近の騎士達が2名控えていた。 「志摩、君はここに集まった者達をどう思う?」唐突に切り出されたアデルの問いに戸惑う志摩。アデルは自分がライン国王の実子ではなく元々は孤児だった事を明かすと、そのお蔭で信用してはならない相手がなんとなくわかると言い、志摩も自分と同じなのではないかと問いかけた。 「私を亡き者にしようとする者にとってこの場は絶好の機会だ。志摩、君の目を信じて、私を守ってはくれないか?」とアデルは手を差し出した。 志摩は少し悩んだあと、その手を取ろうとした―――その時。街から大きな爆発音が轟いた。 会場内に地鳴りのような音が響くと、しばらくして騎士が駆け込んできた。「ラインの街に突如巨大な魔物が出現しました!!申し訳ございませんが冒険者の皆様、手を貸して頂けませんでしょうか!?」その声に貴族たちはパニックとなり、冒険者達はドレスやスーツが汚れるのも気にせず慌てて装備を取りに控室へと戻って行った。「ジョン!志摩をもう少し借りる、セーナは頼んだぞ!」と遠くの方でアデルが志摩の手を引いて奥へと去っていくのも見えた。 急いで着替えた冒険者達が街へ駆け出していくのを一行は料理を食べながらぼんやり眺めていると「忍び寄るサイコカンパニーの皆様とお見受け致しました、どうか皆様もご協力頂けませんでしょうか!?」と騎士が頼み込んできたので、頼まれたら仕方ないと早速着替えに行こうとすると「セーナ様とその親族であらせられるセーシ・チェルノブイリ様は我々が警護させて頂きますのでこちらへ!」と二人は騎士達に強引に連れていかれてしまった。 「人に頼んでおいてギルドメンバー二人も連れてくなんて。しかも一人はギルマス…」「まぁジョンさん、当人はあんな感じですけど身分は高いですし、特に今回は花嫁のお兄さんですから」「えっと、行かないんですか?」「みんな窓の外見て!思ったよりやばそう!早く行こ!」 一方、宿屋ではお土産ではなくプレゼントとしてポポから貰った古書を読むルディと、リンから預かったニーズヘッグの面倒を見ていたルークが、外からの爆発音に同時に顔を上げた。すると窓の外に巨大な山のような何かがあり、その何かと目が合った。ルディはそのまま本に目を落とし、ルークは溜息を吐いてニーズを抱きかかえた。メキメキメキ、とその巨大な何かによって宿屋が押しつぶされそうになると、ルディもようやく本をパタンと閉じた。 「もう巻き込まれた」「何?」「なんでもない。まぁ、行きますか」「仕方ないわね」「向かいの部屋は空き部屋だったぞ」「……仕方ないわね」 ルディとニーズを抱きかかえたルークは押しつぶそうとしてくる巨体の反対側、向かいの部屋の窓から外へ飛び出すと同時に宿屋は轟音と共に押しつぶされた。 二人が振り返るとそこには数十メートルもある巨大なカタツムリのような魔物がおり、周囲にはパニック状態で民衆が逃げ出していた。 「魔法陣、ね。そりゃこんなデカい奴がこの距離に近づくまで誰一人気付かなかった、なんて事はないよな」「二人だけでやれるかしら?」「ニーズヘッグも入れてやれ。大丈夫だ、街中にこんな奴が現れて呑気に披露宴続けてるほど平和ボケはしてないだろ」「援軍を待つの?」「別に倒してしまっても構わんぞ」 文字通り山のような大きさの巨大カタツムリを翻弄し、ルディとルークとニーズヘッグは二人と一匹でその魔物を倒した。 ルークは倒壊した建物の瓦礫に上ってカタツムリが何処からやってきたのか痕跡を探し、ルディはその瓦礫に腰かけ本の続きを読んでいると、ジョンと志摩を除くサイコカンパニーのメンバーがやってきた。「ルディ!ルーク兄ちゃん!大丈・・・・夫そうだね?」「遅かったな。そんなに慣れない服を着替えるのは大変だったのか?」「え、もう倒しちゃったんですか?」「ええ、邪魔だったから」「心配するだけ無駄だったようね」「心配した方がいいのは他の現場だな」 そう言ってルークが指さす先には遠方で同様の巨大カタツムリ[マウントマイマイ]が3、4匹暴れまわっているのが見えた。他の冒険者達が戦っているようだが、時折一般市民の叫び声も聞こえてくる。更に近くで「誰か助けてくれ!こっちでゴーレムが暴れまわってるんだ!」という声も聞こえる。 「行こう!」「おう、行ってこい」「いってらっしゃい」「え、ルークさんとルディさん行かないんですか?」「襲われてる訳でもない、報酬が出る訳でもない、別にラインに思い入れもない。故に倒すメリットは特にない」「早く続きを読みたいの」「別にお前らを止めてないだろ、頑張って来い」 やる気のないルークとルディは、「サイコカンパニー指定で協力を仰がれたからきっと報酬が出る」とか「こんな煩い中じゃ集中して本読めないでしょ」などと口々に言いくるめられ、最終的には強引に皆に引っ張られていった。「なんか昨日今日とこんなのばっかりだな・・・・」 近くに発生していた火を吹くゴーレム4体を薙ぎ倒して周囲を見渡すと、他の場所でもゴーレムが暴れまわっていた。他の冒険者達も応戦しているようだが、倒しても倒してもキリがない様子に現在進行形で魔物が何処からか湧き出ているのかもしれないと思い、ルークは魔物の発生源を探すべく単独行動となり、残りのメンバーは新たなゴーレムを討伐しに向かうことになった。 ジョン・ドゥもといセーシ・チェルノブイリとその義妹セーナ・チェルノブイリは騎士二人に王城の奥へと案内される。 その道中誰一人として出会わなかったことに違和感を持ちつつも大人しく着いていくと、とある部屋に通され中に入るや否や扉を閉められた。 「まさかここまで素直に来てくれるとは。警戒心の欠片も無い、とは正にこの事だ」と照明も点いていない暗がりの部屋で何処からか声がする。 セーシは咄嗟に剣を引き抜き、自身の喉元に迫る刃を受け止めた。「ほぉ、さすがはあの名高きギルドを率いる冒険者。ただの貴族ではないようだな」 その何者かを蹴り飛ばして距離を取り、セーナに傍を離れないよう指示しつつセーシは周囲を見渡す。遮光カーテンが掛かった暗い部屋では顔を確認することは出来なかったが十数人に全方位囲まれてることは分かった。セーナに武器を一本貸し与えて戦闘が始まるも多勢に無勢で苦戦する。 セーナが敵の凶刃に倒れるも、セーシは覆面をした敵達を薙ぎ倒し、頭領らしき者をカーテンと窓をぶち破って城外へ斬り飛ばすことに成功した。 刃には毒が塗られていたようで苦しむセーナを肩に背負いながらセーシは扉の鍵を壊して部屋の外へ出る。話では王侯貴族達はこの城に避難したはずだったがそれにしては静かすぎる。誰一人見当たらない王城をセーシは解毒薬を求めて走り回ることになった。 「君なら気付いていただろう、志摩?街にモンスターが現れる少し前に、隠れるように姿を消した者達があの披露宴会場に居た。彼らをどう思う?」 護衛もつけずに駆け出したアデルに着いて来た志摩は冷静に「どう思うって?」と聞き返した。薄暗い廊下を二人きりで足早に歩きながらアデルは言葉を続ける。 「騒ぎが起きる前にあの会場を抜け出した者達は皆この廊下へと消えていった。示し合わせたようにな」「ふーん」「ふふっ、誤魔化さなくていい。気付いていたはずだ、彼らの存在に。志摩、私は君をとても高く評価している。あえて直接的に言おう。アーシアンでありながら未知の怪物への適確な対処、チェルノブイリ家に上手く取り入り養子のような待遇で迎えられるそのしたたかさ、あの会場で不審な行動を見せる者を見抜く洞察力に、この状況でも動揺一つ見せない冷静さ…。私は人を見る目はある。君は私から見てとても優秀な人間であると断言できる」「買いかぶり過ぎでは?」「さぁどうだろうな?これからわかるさ」 どういう意味かと志摩が問うとアデルは「今頃セーナが襲われている頃だろう。まぁジョンはなんだかんだでやる男だ、問題はないだろうが」と淡々と言う。 「話逸らしてます?」「すまないな。だが到着したぞ、ここだ」アデルはそう言って目の前の扉を思いっきり蹴り飛ばした。鍵が掛かっていたらしい扉は蹴り破られ、中に居た十数人の貴族達が驚愕の眼差しを二人に向けた。「さぞ驚いた事だろう。殺そうと思っていた相手が今目の前にいるのだから」 アデルは志摩に向かって彼らが企てた計画を話す。ここにいるのはアデルの義兄の取り巻きや今回の婚姻で不都合がある貴族達で、アデルとセーナを亡き者にするために暗殺者や闇組織を使って今起きているこの事件を起こした犯人達だという。パリス同盟の要人達が集うこの披露宴で騒ぎを起こす事で自分達のアリバイを確立し、混乱に乗じて暗殺者を嗾ける算段だったと言い、まさか私とセーナが別々に避難するとは思っていなかったようだがな、と付け加えた。 「さて、ここまで大掛かりな企てだ、この中に首謀者がいるはずだが……志摩、どいつだと思う?」「全員締め上げればいいんじゃないですか?」「成程、君ならそうするか」と二人が不穏な話をし始めるとそれまで言い訳を並び立てていた貴族達は「ええい、養子の、しかも末弟の分際で!」と激情する。 それを無視してアデルは志摩に問う。「彼らはこの披露宴と言う場を利用し、ライン都市部に対する大規模テロとライン王家の王子たる私とその婚約者の暗殺を企て実行した。そして、私はそんな彼らの計画を朧気ながら感づいていたものの私に仇なす者を炙り出す為にあえて見逃し実行させた。これが今回の事件の全貌だ。志摩、君の目にはどちらが悪に映る?」「悪も正義もないのでは?政治とかよく分かりませんが立場が違えば思う所も違うでしょう」「それは尤もだ。では質問を変えよう。君はどちら側に立ちたいかな?」「まぁ・・・・政敵の潰し合いとかどうでもいいですけど、無関係な市民への危害はダメだよね」と志摩は武器を抜いた。 すると動揺した貴族の一人が「もう隙を伺わずともよい!さっさと出て来て私達を守らんか!」と叫ぶと何処からともなく覆面をした暗殺者が5人現れた。 戦闘が始まるも、自ら騎士を率いて各地の怪物を撃破していた並の冒険者以上の実力を持つアデルと遠近両方の攻撃手段を持つ志摩との共闘で一方的な戦いとなっていた。次々やられる暗殺者達を見て貴族達が罵倒を始める。「大言を吐きおって!お前達にいくら払ったと思っている!私の計画が露呈したのもどうせお前達の不甲斐なさ故であろう!」そう叫んだ貴族の足に志摩は魔法弾を撃ち込み、貴族の男は叫び声を上げる。「首謀者見つけましたよ」「そうか。しかし考えたのだが、ここにいる者全てが共謀した、という事にしておこうか」「まぁその方が都合が良いでしょうしね。分かりました」そう言って志摩とアデルは難なく暗殺者達を倒した後、大した戦闘力を持たない貴族達を拘束していった。そして首謀者と思わしき男の懐から出てきた一通の手紙をアデルは拾い上げる。 「成程、[断罪の赤手]か。ここ最近良くない噂を聞く過激派組織だ。彼らを金で動かし魔物を街へ引き入れたか。結局は手段を選ばない…いや、選べない下等な連中だった訳か」「どの口が言う!自分の妻となる者を囮に使った分際で!貴様とて手段を選んでおらんではないか!」「必要だったからそうしたまでだ。無駄に悪運の強いボディガードを付けたがね。それにな、私の妻となる者は"とある高貴な血筋"だ。少々のことで"命を落とせるような"運の持ち主ではないのだよ」「なんだと…?まさか、彼女は――」と貴族の男が何かを言おうとした時、アデルは突き付けていた剣を思いっきり振り下ろして首を切り落とした。 他の貴族達が悲鳴を上げる中、「やはり知っている者もいたか…」とアデルは小さく呟いた。そして「そう悲鳴を上げるな。まいったな、これではまるで私の方が悪人だ」と志摩に誤魔化すように笑いかけた。「殺しちゃって良かったんですか?」「良くないな。これでも貴族だ。さて、どうしたものか」「我々の功績にしなくてもいいなら『我々が来た時にはこうなっていた』って事にすればよいのでは?」「成程、流石だ志摩。…という事だ、恨むなら自分の不運を恨んでくれ」 そう言ってたった今殺した男が帯刀していた宝飾がたっぷり付いた剣を拾い上げると、拘束していた他の貴族達を次々と切り殺して行った。 「・・・・さて、では行こうか」全ての貴族を殺した後、静かになった部屋でアデルは志摩を促した。「なんでこうなったのかなぁ…」と志摩はぼやくのだった。 結局解毒薬が見つからずセーシは無人の厨房で解毒効果のある料理を作り、それを意識が朦朧としているセーナに口移しで食べさせると毒気が取り除かれたようで、相変わらず意識はないが呼吸は安定してきた。それを確認し再びセーナを右肩に背負って厨房を出たところで、城の近衛兵達と鉢合わせた。 話によれば身の安全を守るべくセーナを探していたのだという。そして毒は払ったものの負傷しているセーナを医療班の元へ運ぶことになった。近衛兵に連れられ城の大広間を横切ると、そこには披露宴会場で見た来賓達が騎士に護衛されながら避難していた。そのまま奥へと連れられると、そこは簡易の医療室となっておりセーナは医療班の治療を受けた。話によれば命に別状はないようだ。そんな中、騎士達からアデルがまだ王城に避難してきて居ないことを聞く。 という事は披露宴会場であった迎賓館にまだ居るのでは?と思いセーシは装備を整え、アデルを捜索する騎士達を引き連れて迎賓館へと向かった。 「見たまえ、志摩。これが今日私が行ったことだ」迎賓館の屋上でアデルは志摩に言う。小高い丘の上にある迎賓館の屋上からは街が一望でき、そこからは数体の巨大な魔物が街を破壊している様子やゴーレムなどが市民を襲っている様子が鮮明に見る事が出来た。「私は奴らの計画を止める事が出来た。であるのに私に仇なす彼らを排除するため、それをしなかった。その結果がこれだ。志摩、私は悪だろうか?」「悪でしょうねえ」「ああ、そうだろうな」「ですけど、それを誰も知らなければ悪は何処にも無い事になるんじゃないですかね?」「一つの着眼点としてとても良い意見だ。だがそうなると私は君を口封じしなくてはならなくなる」「そうでしょうねえ」「その武器を仕舞ってくれ、志摩。それは私の望むところではないんだ」「じゃあどうするんです?」志摩が問うとアデルは意を決したように言った。「志摩、私の仲間にならないか?」「私、サイコカンパニーの一員なんですけど」「分かっている。その上で、だ」 そしてアデルは語りだす。異形の怪物の登場を切っ掛けに世は乱れ、それにつけ込むかのように陰謀を企てる者達が台頭し始めた。以前からの妖魔の脅威や南の神聖ヴァンスター帝国の侵攻なども消えたわけではない。今パリス同盟がこの状態では何かの拍子にいとも簡単に崩壊してしまいかねない。これを治める事が出来るのは物理的にも権威的にも大きい力を持った人間だ。ライン王国及びこのパリス同盟を再結束し強固な国へと作り替えるためには手段も問わないつもりであり、その一つがセーナとの政略結婚だと言う。だが当然それだけで全て上手くいくわけではない。この野望を叶える為には優秀で信用のおける人物が一人でも多く必要なのだと力説する。「そう、時に非道な手段を用いる事になる私を、決して裏切らない仲間が必要なのだ」「どうして私なんですか?」「ずっと気になっていたのだ。そう、あの日チェルノブイリ邸で君を見た時からね。これはもう直感だとしか言えない」「もしかして口説かれてます私?」「そうだな、もし君があと10年早く生まれていれば真面目に口説いていたかもしれないな」そう笑った後、アデルは真剣な面持ちで「それで、どうする?」と聞いた。 「私は今、仕事を請け負ってここにいるので」「勿論、私の仲間になるからといって彼らと縁を切れというつもりはないさ。早急に解決が必要な例の地下遺跡調査 さえなければあのギルド丸ごと私の仲間に引き入れたいくらいなのだから」「あー・・・・そっちの件もあるんですけど、私元の世界でも仕事があって」「君は仕事仕事というが、何の為に仕事をしている?大義や名誉の為か?やりがいや道楽の為か?」「うーん、そう言われるとお金の為ですかねえ?」「なら私が相応な額を出す、と言えばどうなる?」「うーーーーん。生活が安定してて自由に生きれるなら断る理由がないですねえ」「なら契約は成立かな?」「まあ、そうですね」 そう言って二人は握手を交わした。その背後、遠方で巨大な魔物が倒されていくのが見える。 「首尾よく魔物達を倒しているようだな。披露宴に名のある冒険者達を呼んだ甲斐があった」「知ってた計画は『朧気ながら』だったのでは?」「ああ、何が起きるかまでは分かっていなかったが、戦力は多い方がいいだろう?」「それはそうですね」「さて、街の方の問題は解決しつつある。奴なら暗殺者も撃退しただろうし、王城なら騎士も大勢いるからセーナも預けてくるだろう。私と志摩がまだ城に避難していない事を知れば、奴は―――ジョンはじきにここへやって来るだろうな」「合流するんですね。じゃあ今は待ちですか?」「ああ、そうなるな」「では私は街の方のお手伝いしてますね」 そう言って志摩は箒型狙撃銃で遥か遠方の街で暴れている魔物を撃ち始めた。「はははっ、そんなことも出来るのか。全く実に多才だな」 迎賓館の屋上から志摩の魔弾が街の方へ飛来していくのを確認したセーシ、もといジョンは「アデルは屋上にいるみたいだ、案内してくれ」と騎士に伝えた。 「ご案内します」と言った騎士の案内で迎賓館の階段を上りながら、ジョンはその騎士に「セーシ様は記憶を喪失なされたと聞きましたが、アデル様の事はどこまで覚えておいでですか?」と問われた。本人や両親からとても仲が良かったとは聞いたが全く覚えてない、とジョンが答えると騎士は、昔からアデルは周囲にジョンの事を唯一の親友であり最も手強い好敵手だと語っていた、と言った。「それが見る影も無くこんなのになっちまって、悪い事したなぁ」「何を仰いますか、アデル様は今でもそう我々に仰っております。先日も『もし私が道を踏み外す事があったとすれば、それを止めるのはセーシしか居ない』と」「随分信頼されてるんだなぁ記憶ねえけど」「記憶を失っても人の本質はそう簡単に変わらぬものです」「そんなもんかねえ。ま、期待されてるなら出来る範囲で答えようかね」 そんな話をしながら屋上へとジョンは辿り着いた。「来たか、ジョン。セーナは無事か?」「ギリギリな!『セーナは頼んだぞ』じゃねえよ!襲ってきた奴ら誰だよ!」「はっはっは、例えギリギリであってもジョンならセーナを守ってくれると思っていたぞ」「死にかけてんだぞこっちは!」「だが生きている、だろ?例の地下遺跡探索でもそうだ、幾度も死にかけたり呪われたり・・・・そもそも記憶のほとんどを失っても、お前は生きている。運も実力の内と言うがお前ほどの悪運の持ち主は見たことが無い。だからこそ、信用も出来るというものだ」「嫌な信用のされ方だな」「そう言うな。これでも誰よりも信用しているんだぞ?」 志摩が嬉々として街中の魔物を狙撃する中、しばし二人は談笑する。そしてアデルは真剣な面持ちになると「少し下がっていてくれ。心配せずともこの館に脅威はもうない」と騎士達に言い屋上から退場させた。「さて、ジョン・・・・いや、セーシ。お前に伝えなければならない事がある」「急に改まってなんだ」「今起きている魔物によるテロとセーナ暗殺未遂を起こした首謀者達は既に排除した」「あっそう」「そしてこれを見てくれ。これはその首謀者達の一人が部下に渡した密書だ。ここには街で騒ぎを起こし混乱に乗じて私とセーナを暗殺する計画が簡潔に記されている。私がこれを手に入れたのは、半月前だ。お前ならこの意味が分かるだろう?」「さっぱりわからんな」「ふっ、とぼけおって。つまり、私はお前とセーナと無関係な市民達を利用して私の邪魔になる者達を片付けたという事だ」「それは必要なことだったのか?」「ああ、私にとっては、いや、この国にとっても必要なことだったと、少なくとも私はそう思っている」「国を背負う事になる立場に居ればそういう事もあるんだろうなぁ。んじゃお前の友として、あとセーナの兄貴として一発殴らせて貰うが構わないか?」「私は私の行いが正しいものだったと信じている。故に、私の行為が不服であるなら拳ではなく剣を抜け、セーシ。あの時の一騎打ちの続きをしようじゃないか。ただし、あの時と違って真剣で、な」「道踏み外したら俺が止めるんじゃねえのかよ」「私はまだ踏み外したと思ってないのだ。だから戦う、ということだ。お前が例の地下遺跡で得た力に関しては報告を受けているぞ。お前は親しい者の心を剣に具現化出来るそうだな。さあ、私から剣を抜いてくれ」「そう言われてもギルドメンバーとセーナ以外は試したことないぞ」と、訝し気にジョンはアデルの胸元に手をかざすといつものように光り輝き、装飾の一切ない研ぎ澄まされた一振りの剣が手元に現れた。 それを見たアデルは笑い出す。「それが私の心の形を表したという剣か。成程、装飾も無ければ面白味も無い。だが実用的だ。であれば斬り合うには問題ない」 「なんでそんなやる気なんだ」「いずれ真剣に戦いたいという気持ちもあったから、と言えば満足か?」「不満だが殴ってやりたい気持ちは増した」「それは結構だ。・・・・志摩、この戦いの見届け人になってくれるか?」「わかった」「志摩、お前さあ・・・・」「ジョンごめんね~」「セーシ、覚えているか?いや、覚えていなかったな。私とお前は昔からよくこうして一騎打ちをしていた。勿論木刀で、だったがな。そして現在までの戦績は互いに99勝99敗だ」「そんなに戦ってたのかぁ」「模擬戦は勿論、お前とは細やかな事でも何でもよく競い合ったものだ・・・・これを、最後の勝負にしよう。私はじきにライン国王を継ぐ事になる。お互い、それぞれの道を歩むことになるのだ。そうなればもう昔のようにはいくまい」「なら最後は勝たせてもらうか」「それはこちらのセリフだな。私の門出だ、100勝目を祝い代わりに頂くとしよう。―――ゆくぞ!」 アデルの剣の型は基本的にはジョンと同じものである為、勝負は拮抗する。だが、記憶を失いジョン・ドゥと名乗るようになって以降習得したスキルは全く違うものだった。「一つ聞きたいんだが、志摩はここに居るってことでいいんだよな?」とジョンが問う。「彼女はこの勝負の見届け人だ。当然そこにいるが・・・・どういう意味だ?」「あるものは利用しても文句ないかってこと」「無論だ。戦場にある物はどのような物でも利用するべきだ。しかし志摩に助力を請うのは頂けないな。これは私とお前の勝負だ」「いや、利用するだけだから」そう言ってジョンはアデルから引き抜いた剣を思い切りアデルに叩きつける。力任せのその一撃でジョンが持つ剣は真っ二つに折れ、光の粒となって消えた。「くっ・・・・!!だがこれしきでは私は倒せんぞ!!」「分かってるからさっき聞いたんだよ!」そう言ってジョンは近くに居た志摩の胸元に手をかざすと志摩の心の剣を取り出した。「おら!構えろ!もう一発いくぞ!」そしてジョンは再び力任せに剣を振りかぶると受けきれなかったアデルの剣は弾き飛ばされ、地上へと落ちて行った。それを呆然と見送った後、アデルは大声で笑いだした。「はっはっは、相変わらず型破りな奴だ!私の負けか!」「残念ながらそれは違うな」「何?」「こっちももう武器は無い」アデルがジョンの方を見るとジョンが先程取り出した剣も砕け散り、光の粒となって消えていた。「俺の力は短時間に連続して同じ人間から剣を抜くことは出来ない」「そうか…なら引き分け、か……」 アデルは何かを決心したように、志摩が持つ短剣を貸してくれと頼んだ。志摩がそれを渡すと、アデルはそれをジョンへと差し出した。 「私は私の目的の為にお前の妹を危険に晒し、治めるべき民に多くの犠牲を出した。私はこの国の為に必要だと思って行動したつもりだ。その点に置いて私は一切の疑念も無ければ後悔も無い。ジョン・・・・いや、セーシ。お前が私を許せないというのなら、私が道を誤ったと思うのなら、お前の手で今ここで私を止めてくれ」 「今の一騎打ちは引き分けじゃなかったのか?」「ああ。だが私がお前を欺き、お前の家族を危険に晒した事に変わりはあるまい。私を裁く者がいるのであれば、セーシ、それはお前であって欲しい」「裁く、ねぇ…。俺は誰かの上に立つような人間じゃないからそういうのはわかんねえけど、裁くとか裁かないとか、必要なのかそれ?俺はさっき言った通り、一発殴らせろってくらいだ。あとセーナに謝れ。それくらいだな。その後自分がどうすべきなのかは俺に委ねるんじゃなくて自分で考えろよ」「・・・・そうか。なんとも厳しいな、お前は。この刃を突き立てられるよりも厳しい」そう言ってアデルは短剣を志摩に返すと、両手を広げて歯を食いしばる。その様子を見て、ジョンは思いっきりアデルの顔を殴った。数メートル飛んで後方の扉に激突すると、アデルは口から血を滴らせながらも笑った。 「今まで喰らったどんな一撃より重たい一撃だった。やはりこの勝負は私の負けだ、セーシ」「んじゃ俺からはこの一発と勝ち一つで全部チャラにしてやるよ」 「ああ、約束通りセーナに謝罪し、セーナからの叱りも正面から真摯に受け止めるとしよう」「覚悟しとけ、あいつの説教はキツイぞ」「知っている。お前が行方を眩ませてから数ヵ月、彼女と共に居たんだ。私とて少しは彼女のことを理解しているつもりだ」「そういやそうだった」「そもそも、彼女が私との結婚を決心したのは、お前が半年も行方知れずだったのが決定打なのだぞ?街が発展したことで急激に地位が向上したチェルノブイリ家の跡取り息子が突然消えたのだ。不安定になった父君と母君の立場を盤石にする為に、私が彼女を何かしらに利用する気だと分かっていながら彼女もまた私を利用しようと考えたのだろう。ライン王国の次期国王の妃となればチェルノブイリ家を守るのは容易だからな。したたかな女性だよ、彼女は」「うーん、俺のせいだって言われると何も言えねえ」「お前は昔から領主の跡を継ぐのを嫌がっていたから、行方知れずになっていなかったとしてもいずれこうなっていたかもしれんがな。・・・・セーシ、もし私が失敗し道半ばで倒れた時はセーナを助けに来い。私の行く道は敵だらけだ。その時彼女を助ける事が出来るのは、お前しかいない」「任せろ」「信じているぞ。それと、もし私が道を踏み外したとお前が思った時は、剣を抜き再び私の元へ来い。その時はまた剣を交わそうではないか。では、達者でな」そう言ってアデルは屋上から去って行った。それを見送り、しばらく屋上から下を眺めていると、アデルは何かを指示しながら騎士達と共に城へと向かって行くのが見えた。 「アデルは自分が引き起こした、みたいに言ってたけど犯人アデルじゃなかったな」「そうだね」「志摩。アデル暗殺の件、キャンセルで」「まぁ事件の真犯人達はもう死んだしね。あ、前金返す?」「いいよ、巻き込んじまったし」「んじゃありがたく」「しかしアデルが何か企んでるみたいだってセーナからの手紙に書いてたから何かしでかすだろうとは思ってたけど、こうなるとはなあ」「道踏み外したと思ったら止めに来いって、言われるまでもなく止めに来てたよね」「……そういや志摩、アデルとなんかあった?」「うーん…あった」「何が?」「うーん…明日話す。今は街行って皆と合流しよ」「そだな」 ジョンと志摩が合流する頃には街の騒動は完全に鎮静化していた。ルークを始め数人の冒険者が魔物を転移させていた魔法陣を消し去り、街で暴れていた魔物達も全て片付けられ、他の冒険者達によってこの魔法陣を起動していた過激派組織[断罪の赤手]のメンバ―達も捕らえられていた。その者達が雇い主である貴族達の名を吐いたことで彼らが隠れていた部屋に冒険者達は押し掛けるもそこには死体しかなく、現場の状況から仲間割れによる同士討ちだと思われた。 その後サイコカンパニー含め街に現れた魔物討伐に尽力した冒険者達には、ライン神殿を通してライン王国より報酬が配布されたのだった。 翌日、騎士達の迎えで王城へと連れ出された志摩はアデルと共に謁見の間へと通された。 そこにはライン王国現国王エレヴォンドが玉座に座っており、アデルは淡々と昨日起きた事件について報告を始めた。 「アデル。我が息子よ。普段魔物の相手しかせぬ冒険者の目は誤魔化せても近衛兵達の目は誤魔化せん。兵達の報告ではその見事な切り口から主犯格の首を切り落としたのはお前ではないかと疑いがかかっておる」エレヴォンドがそう言うとアデルはあっさりとそれを認めた。「ええ、私がしました。彼らの犯した罪を考えれば当然の処罰かと。偽装を行ったのはあくまで民を無暗に煽らぬ為です」「とはいえ彼らは我が王家に使える貴族達だった。聞けば一度拘束された痕跡もあったというではないか。何故殺した?」「父上・・・・いえ、エレヴォンド国王。そもそも何故このようなことが起きたとお考えですか?この国が疲弊し力を失いつつある事は民衆でさえ知っています。そして心無き者はこのような機を逃しはしないのです。そのような者が全員あの場で処刑されたとは私は思えません」「つまりは、見せしめということかね?」「抑止力という点ではそう捉えて頂いても構いません」「しかしそれにしても・・・・うぅむ・・・・」「王よ。重要なのはそこではありません。問題はこの国が弱っている限り、それを利用しようとする者が現れるということなのです」「ふむ。だが、この国が疲弊しているのは例の異形の怪物を始め様々な問題が起きている故だ。一つ一つ対処するしかあるまい」「それは現在パリス同盟の各国家がそれぞれ問題に対処しているからではありませんか。私はかつてこのパリスがそうであったように、貧弱な同盟関係ではなく一つの国家として結束するべきであると考えます」「何を馬鹿な事を・・・・各々立場と事情というものがある。そうはいかん」「国家どころかパリス同盟自体が危機的状況にあるこの期に及んでそんなことを言っている場合ではありません」「くどいぞ、そうはいかんのだ」「いいえ、そうして頂きます」アデルはそう言うと、謁見の間に居た衛兵と騎士達が一斉にアデルに対し跪いた。 「既にそういう手筈は整っております。父上も、ご賛同頂けますね?」その様子を見たエレヴォンドは悲しそうに右手で頭を抱えると、溜息を吐いた。 「アデルよ、養子といえども私にとってお前は実に良い息子だった。だが少しばかり早く大人になり過ぎたようだな」「流石は父上。聡明で助かります」 「・・・・あ、もう喋ってもいい?これ私が居る必要あった?」「こう上手くいく保証はなかったからな。ちゃんと謝礼はするよ」と志摩に対して笑顔を見せた。 同日の正午。数時間前に何か大事な発表があるので王城の前に集まるようにと突如国王から号令が発せられ、城の前は多くの民衆でざわついていた。 そこへ王城の高台に、礼服に身を包み王冠を手にしたアデルが近衛兵を引き連れながら現れた。声を増幅する魔道具を用いてアデルは民衆に向かって演説を始めた。「諸君、我々は今かつてない程の危機に直面している。皆も感じていることだろう。この国は今疲弊し弱っている。我が領土にある街、チェルノブイリから始まった災いによって国の宝である若き命は病に倒れ、水は淀み、田畑は荒れ、村々は怪物達に蹂躙され多くの民が傷ついた。昨日の大規模テロもその一つだ。心無き者の謀略により多くの命が失われた。これらのことこそ、この国が力を失っている証左である。この国、ひいてはパリス同盟が力を失いつつある今、南の侵略国ヴァンスターが黙っているだろうか?妖魔が大人しく野山に潜んでいるだろうか?…否!奴らはこれぞ好機とこの地を蹂躙することだろう!我らは今こそ、王族や貴族、平民などという枠組みを超えて一丸となり力を合わせる時なのだ!かつてこの地にはパリスと言う名の大国があった。パリスをまとめあげたのは覇王と呼ばれる人物だ。覇王は彼の時代より更に古き時代に栄えた強靭な大国の血筋だったと言われている。紹介しよう、我が妻となる女性を。彼女こそ、かの覇王の血を引く正当な後継者である!彼女はかつてスラムに生まれ、しかしその人格と高潔さで多くの者に認められ今ここに立っている!これこそ七大神の導きに他ならない!我らはこの導きに従い、彼女を旗印とし今こそ一つになるべきなのだ!今ある同盟よりも結束を深め、かつてのパリスよりも力強く、生まれ変わらねばならない!我々は抵抗なくして滅びることはない!我々は必ずや抗い、そして勝利を得る!かつての大国パリスがあったこの地には、そのパリスの数倍もの規模と国力を有する黄金の大国があった。その名はエリュシオン帝国!私は今ここに、エリュシオン帝国の再興を宣言する!!我らはこれより同盟を脱し、パリスを再統一する!その暁には本日が我らが帝国の建国記念日となるだろう!!」アデルのその宣言に民衆は熱を帯び、次第に拍手と歓声が響き始めた。 この日、かつてパリス同盟の一国であったライン王国の地に置いてエリュシオン帝国を名乗る勢力が蜂起する事となる。それに恭順するかのように、パリス同盟のいくつかの小国家もエリュシオン帝国の傘下に入ることを表明した。この日を境に、エリンディル西方の勢力図は大きく変わる事となった。 「―――と、言うわけでヘッドハンティングされちゃったんだよね。だからファージアースに帰ったらアンゼロットには何か上手く言っといてくれない?」 その日の午後、王城の一室に集められたサイコカンパニーのメンバーは志摩からギルドを脱退したい旨を聞いた。 元の世界では生活の為に金を稼ぐ手段としてウィザードをしていただけであり特に思い入れは無いらしく、その仕事を放棄するならあの地下遺跡にも特に思い入れはない、ということだ。ノイシュの母ソフィアがかつてそうだったようにこちらの世界に帰化したとて元の世界では殉職したと思われる程度なようだし、こちらの生活でも新帝国の皇帝の側近となれば高待遇は間違いないだろう。「金で裏切るのか!」「別に裏切った訳じゃないよ~、手伝える事あったら手伝うって。そもそもジョンだって私に金でアデルを――」「いやぁ冒険者ってのは別にいつ辞めてもいいもんだしな!フィルに続いてメンバーの新たな門出を祝うか!」 こうして志摩はギルドから脱退し、志摩を置いて一行は往路と同様に馬車でチェルノブイリへと帰還する事になったのだった。