タイトル:ベアトリス・フェイ・ユニオン キャラクター名:ベアトリス・フェイ・ユニオン 年齢:18 性別:女 髪の色:赤 / 瞳の色:緑 / 肌の色:小麦色 身長:94.0cm 体重:13kg キャラクターレベル:7 Lv メインクラス :メイジ サポートクラス:イリュージョニスト (1レベル時:シャーマン) 称号クラス: 種族:フィルボル ■ライフパス■ 出自:前科者/ビジランテを取得 境遇:平凡/ 目的:好奇心/ ■能力値■ HP:54 MP:84 フェイト:5     筋力 器用 敏捷 知力 感知 精神 幸運 種族    6   8   9   7   8  11   8 作成時   0   0   0   5   0   0   0 →合計 5点/5点 特徴    3         5 成長等      1   3   6   1   6   1 →合計 18点/LvUp分18点 =基本値=  9   9  12  23   9  17   9 ボーナス   3   3   4   7   3   5   3 メインクラス   0   0   0   1   1   1   0 サポートクラス           1      1   1 他修正 =合計=   3   3   4   9   4   7   4 ■戦闘■ [キャラシート版]      能力 装備右/左 スキル  他  合計右/左(ダイス数) 命中判定   3  -1/ -1        2/  (2D) 攻撃力  --   2/  2        2/  (2D) 回避判定   4    6         10   (2D) 物理防御 --    8          8 魔法防御   7    1          8 行動値    8    4    3     15 移動力    8    0          8m ■戦闘■ [全項目版]    物理 魔法     命中 攻撃 回避 防御 防御 行動 移動 射程 種別  Lv  冊子 右手   -1   2   0   0   0   0   0 至近 打撃   6 左手 腕 頭部          2         2       防具   2 胴部          2   4      2       防具   3 補助          2   4   1          防具   5 装身                          装身具   1 =小計=右 -1   2   6   8   1   4   0    左 能力値   3 --   4 --   7   8   8 スキル                  3 その他 =合計=右  2   2  10   8   8  15   8    左 ダイス  2D  2D  2D ■装備■    価格  重量 名称 [クラス制限] 備考 右手 3200  5   アークスタッフ [] パッシブ:魔術判定に+2 左手         [] 腕          [] =合計=3200 5 /  重量上限9 頭部 300  2 風音の帽子 []         パッシブ:【行動値】+2。フィルボル専用。 胴部 600  3 フィルボトラベルジャケット [] パッシブ:【行動値】+2。フィルボル専用。 補助 1800 2 フィルボリング []       フィルボル専用。 装身 1000 1 大きな目 []          パッシブ:装備者の行うエネミー識別判定とアイテム鑑定の達成値に+3 =合計=3700 8 /重量上限9 ■所持品■ 名称         価格 重量 備考 ミニポメロ      0   0   パッシブ。このアイテムは【MP】を[CL×5]点持つ。所持者はこの【MP】を自分のものとして使用できる。この【MP】は基本的に回復できず、アフタープレイで最大まで回復する。 釣り竿        1   5   パッシブ。所持者が使用する《フィッシング》の効果に+1D。 バックパック     0   30  パッシブ。所持者の携帯可能重量+5。 ドレス        1   15  儀礼服。 眼帯(アクセサリー) 1   3   眼帯。 ポーションホルダー  0   150  パッシブ。種別:ポーションのアイテムを5つまで重量0として携帯可能 筆記用具       1   1   紙、ペン、インクのセット HPポーション 1個   0   30  使用者の【HP】を2D点回復。 ハイMPポーション 1個 0   300  使用者の【MP】を4D点回復。 冒険者セット     5   10  野営道具、ロープ、ランタン、火打ち石のセット。 =所持品合計=    544 G (重量 9/上限14) =装備合計=     6900 G = 価格総計 =    7444 G 所持金   11729G 預金・借金    G ■特殊な判定■     能力値  スキル  他  合計 (ダイス数) 罠探知    4         4 (2D) 罠解除    3         3 (2D) 危険感知   4         4 (2D) 敵識別    9      3  12 (3D) 物品鑑定   9      3  12 (2D) 魔術     9      2  11 (3D) 呪歌               (D) 錬金術              (D) ■スキル■ 《スキル名》       SL/タイミング                                                                                                                                            /判定  /対象/射程/コスト/制限    /効果など 《ニンブル》      ★ /パッシヴ                                                                                                                                             /-    /自身/-  /-   /      /作成時に行動値+3 《マジシャンズマイト》 3 /パッシヴ                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /-   /      /魔法攻撃のダメージに+[SL]dする。 《コンセントレイション》1 /パッシヴ                                                                                                                                             /-    /自身/-  /-   /      /魔術判定+1D。 《マジックフォージ》  2 /DR直前                                                                                                                                              /自動成功/自身/-  /3   /シーン1回 /その攻撃のダメージに+[(SL×2)D]する。 《リゼントメント》   1 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /-   /シナリオ1回/魔法攻撃と同時に使用。その魔法攻撃を「対象:単体」に変更、ダメージに+[CL×10]する。 《マジックブラスト》  1 /ムーヴ                                                                                                                                              /自動成功/自身/-  /3   /      /「タイミング:メジャーアクション」「対象:単体」の「分類:魔術」の「対象:単体」を「対象:範囲([SL×2]体)」に変更する。 《エキスパート》    1 /マイナー                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /3   /      /「タイミング:メジャーアクション」の魔術判定に+1D。 《デイメア》      1 /メジャー                                                                                                                                         メジャー/魔術  /単体/20m /7   /      /対象に魔法攻撃。その攻撃のダメージは[2D+5](貫通ダメージ)となる。 《フォッグミラージュ》 1 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/単体/20m /-   /シナリオ1回 /対象が魔術判定を行ったあとで使用。判定ダイス1つを除外し、達成値を算出。 《サンドクラウド》   1 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/単体/20m /-   /シナリオ1回 /対象が命中判定を行ったあとで使用。判定ダイス1つを除外し、達成値を算出。 《ディストラント》   1 /DR直前                                                                                                                                              /自動成功/単体/20m /6   /ラウンド1回/攻撃のDR直前に使用。対象が行うその攻撃で1点でもHPダメージを与えた場合、[恐怖]を与える。 《エンサイクロペディア》1 /セットアップ                                                                                                                                           /自動成功/自身/-  /-   /      /エネミー識別を行う。 《コンコーダンス》   1 /パッシヴ                                                                                                                                             /-    /自身/-  /-   /      /「対象:場面(選択)」「射程:視界」のすべてのエネミーにエネミー識別を行う。 《イメージマジック》  1 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /4   /      /「分類:魔術(幻)」以外の「分類:魔術」と同時に使用。「分類:魔術」を「分類:魔術(幻)」に変更し、攻撃のダメージに+2Dし、「効果」に「対象が「分類:植物、アンデッド、機械」以外の時に有効」を追加する。 《デコイイメージ》   1 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /6   /シーン1回 /回避判定と同時に使用。その回避判定に使用する能力値を【精神】に変更する。 《ファントムペイン》  2 /効果参照                                                                                                                                             /自動成功/自身/-  /-   /シーンSL回 /バッドステータスを与える攻撃、スキル、パワー、アイテムと同時に使用。任意のバッドステータスに変更する。 《イメージチェイン》  1 /メジャー                                                                                                                                             /魔術  /単体/10m /5   /      /対象が「分類:植物、アンデッド、機械」以外の時に有効。[2D+5]の〈無〉属性魔法ダメージ。1点でもダメージを与えた場合、[縛鎖]を付与。 《クリエイトフィールド》1 /ムーヴ                                                                                                                                              /自動成功/自身/-  /-   /シナリオ1回 /「タイミング:メジャーアクション」「対象:単体」のイリュージョニストのスキルの「対象:単体」を「対象:場面(選択)」に変更する。メインプロセス終了まで持続 《一般スキル》     SL/タイミング/判定  /対象/射程/コスト/制限/効果など 《フィッシング》   1 /効果参照 /自動成功/自身/-  /-   /  /シーン終了時に使用する。MP回復を行う。【MP】を[2D+(CL×2)]点回復する。 《ビジランテ》    1 /パッシヴ /-    /自身/-  /-   /  /隠密状態のキャラクターを発見しようとする。あるいは隠密状態のあなたを発見しようとしている対象との対決の【感知】判定に+1Dする。 《モンスターロア》  1 /パッシヴ /-    /自身/-  /-   /  /エネミー識別判定+1D。 《トレーニング:知力》1 /パッシヴ /-    /自身/-  /-   /  /知力基本値+3。 《トレーニング:筋力》1 /パッシヴ /-    /自身/-  /-   /  /筋力基本値+1。 ■コネクション■ 名前 / 関係    /    / ■その他■ 使用成長点:225点 (レベル:210点、一般スキル:15点、ゲッシュ:0点) レベルアップ記録:サポートクラス / 上昇した能力基本値 / 取得スキル Lv1→2:セージ / 知力、感知、精神 / サンドクラウド、ディストラント、 Lv2→3:イリュージョニスト / 器用、知力、精神 / エンサイクロペディア、コンコーダンス、 Lv3→4: / 知力、精神、幸運 / マジックフォージ、リゼントメント、イメージマジック Lv4→5: / 敏捷、知力、精神 / エキスパート、イメージチェイン、ファントムペイン Lv5→6: / 敏捷、知力、精神 / マジックフォージ、マジックブラスト、デコイイメージ Lv6→7: / 敏捷、知力、精神 / マジシャンズマイト、クリエイトフィールド、ファントムペイン メモ: ・物心ついた頃には祖母との2人暮らし。 ・幼い頃、近所の人からは犯罪者の子として疎まれていた。 ・そのため、同年代の子供に挑発され、喧嘩になることも多く、男勝りな性格に育った。 ・ある時、祖母から譲り受けた冒険譚を読み、冒険者に憧れを抱く。 ・祖母からシャーマンとしての基礎を学んだ。 ・6歳からアイテール学園に入学。学生寮に入り、その後は平凡な学生生活を送る。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 俺は、物心ついた頃には父親も母親もいなかった。 ばあちゃんと2人暮らし。それが俺にとって当たり前の生活だった。 なんてことない平凡な暮らしをしてたが、1つだけ平凡からズレてたことといや、俺の親が犯罪者だったってことだ。 おかげで周りでは陰口を言われ、避けられた。 だが、正直、それが苦になるようなことはなかった。ばあちゃんとの暮らしは楽しかったし、いろんなことを教えてもらった。 特に俺の心に残ったのは一冊の本。『終末幻想XIV』。 そこには1人の冒険者の物語が綴られていた。その冒険者は幾度の試練を知恵と力と勇気で乗り越え、そして最後には世界に安寧と笑顔を取り戻していた。 俺はその物語に引き込まれた。俺もこんな心躍るような冒険をしたいと思った。 ばあちゃんにそんな話をしたら、あまり良い顔はされなかった。 あのときの困ったような顔は忘れられないけど、でもその後は「アンタがやりたいって言うなら、それが一番いいことなのよね。」と言って、そして俺に冒険者のことをいろいろ教えてくれた。 そして、俺をアイテール学園に入学させてくれた。 俺はこのアイテール学園で一人前の冒険者になって、あの物語のような胸の高鳴る冒険をするんだ! //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 専門訓練で知力基本値+2 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// リシア王女に連れられていったあの洞窟での冒険からしばらく経った頃だった。 俺はあのときの冒険の興奮が忘れられず、学園の中で勉強をすることも手につかず、冒険に行く妄想ばかりしていた。 そしてある時、図書館で1つの文献を手にする。その本の表題は"伝説のポメロクイーン"。 そこにはとても希少なポメロのことが記されていた。 正直、何でも良かったのだと思う。 ただ、旅の目的が欲しかったんだ。 俺は居ても立っても居られず、学園を卒業し、”ポメロクイーン”を探す旅に出た。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// Episode 1 "深層密林 ラヴュリス大森林" まずは旅をするための仲間を募るべく大きな街へ向かうことにした。パリス同盟の1つであるピアゾンへと俺は向かった。 しかしそうなった時にどうしても通らざるを得ない場所があった。それが"深層密林 ラヴュリス大森林"だ。 多種多様な動物系エネミーが生息している他、その広さから準備をせずに入ると迷子になることも多い。 しかしながら、かじった程度の冒険の心得さえあれば、通り抜けるだけならそう苦にはならない。 だが……ことはそううまくは運ばなかった。森を歩き始めて2日目の晩だった。 運悪くウルフの群れに襲われた。 「くそ……、まさかこんなところで出くわしちまうとは……。」 一匹だけなら今のベアトリスであれば、難なく倒すことができたろう。 しかし、群れとなるとそうはいかない。一匹を倒している間に他の個体に攻撃される。 下手に手を出すと一瞬にして肉塊になってしまう。しかし、あの俊敏な個体からこの足場の悪い森の中で逃げのびるのは不可能に近い。 冷静に考えながら、走っているその時、木の根に足を取られつまずいてしまう。 「クソッ……万事休す……か。」 俺は大木を背にしてウルフ達に向き直る。 ウルフ達は俺が何もできないのを理解した上で様子をうかがいながらゆっくりと包囲していく。 リーダーらしき個体が吠え、仲間たちへと攻撃の合図を送った。 ここで俺の冒険は終わってしまった。そう思ったその時、耳元で囁く声がした。 「大丈夫か?ここは俺たちに任せろ。」 次の瞬間、3人の人影が目の前に現れ、周囲のウルフを薙ぎ払った。 助けてくれた彼らは、目的は違えど、過程が同じため共に旅をしている仲間だという。 まずはアーシアンの少女、こひな。このエリンとは違う別の世界から来たそうで、元の世界へ帰る方法を探し、旅をしているらしい。 2人目がネフィリムの青年ウゲツ。こひなに一目惚れして、旅を共にしているとのこと。本人には、世界中のダンジョンを旅したいという建前で話しているようだ。 最後にドゥアンのゴウライ。元バイキングで、周囲に自分より強い相手がいなくなってしまい燻っていた。そんな時に、こひなと旅するウゲツと戦い、お互いの強さを認め合い、強者を求めて旅することにしたという。 彼らはこの森の主が持っていると噂されている「水中行動ベルト」を取りに来たのだという。 ベティ「なあ、この森を出るまで、俺もアンタ達について行ってもいいか?」 こひな「いいけど……、私達はこのあとこの森の主を倒しに行くんだよ?一緒に来ても大丈夫なの?」 ベティ「構わねえ。っつうか、むしろ俺にも手伝わせてくれ。さっき命を救ってもらったお礼がしてえんだ。ホラ、この通り少しだが、魔法の心得もある。」 ゴウライ「ホウ、少しはできるようだな。」 ウゲツ「俺はこひちゃんがオッケーなら全然いいけどね!」 こうして、俺はこのラヴュリス大森林を彼らとともに探索して回った。 即席のパーティーではあったが、俺のエネミー識別能力や恐怖を与える能力は相性が良かったのだろう。 なんなく踏破して、最奥にある森の祭壇へとたどり着いた。 そこに鎮座していたのは1体の巨人族だった。 俺たちはその巨人族と相対すると、啖呵を切り、そして……。 ゴウライ「貴様の力、私に示してみよ。」 ウゲツ「さて、お前が持ってるお宝とやら、渡してもらうぜ!」 こひな「うん、ベティさんも準備はいいですか!」 ベティ「ああ、いつでもいいぜ!」 戦いの火蓋が切って落とされた。 戦いの末に俺たちは巨人族を撃破し、その奥に眠る宝を手に入れた。 ベティ「……これが、水中行動ベルトか?」 ゴウライ「間違いないだろう。これには水神の加護のようなものを感じる。」 ベティ「そもそもこれを何に使うんだ?」 こひな「えっと……、それはね!」 ウゲツ「おーい、とりあえず、ブツがあったなら先に街へ戻ろうぜ。話はそれからでいいだろー?」 こひな「それもそっか。じゃあ、また後で話すね。」 こうして一行は大森林を後にした。 ピアゾンへたどり着いた一行は、酒場で今日の冒険の話を肴に盛り上がった。 そして、こひなは昼の話の続きを語ってくれる。 こひな「私達の大まかな旅の目的は昼間に話したと思うけど、今、目下の目標にしてるのは、”海洋神殿 アトランティカ”っていう場所なの。そこは、海の底に沈んでいる神殿で、とても普通に泳いでたどり着ける場所じゃないんだ。だから水中で自由に身動きが取れるようになるこのベルトと、あと1つ、水妖石っていう水中で呼吸ができる石が必要なんだ。次はその石を取りに行くつもり。」 ベティ「なるほどね……。そこはあまり人が立ち入らないような場所なのか?」 こひな「そうだね。それはそうだと思うよ。」 ベティ「そうか……。なあ、その旅、俺も同行させちゃくれねえか?俺の目的は伝説のポメロを探すことだが、それにはこのエリン中くまなく探さなきゃいけねーんだ。目的は違うかもしれねえが、世界を旅するって過程は一緒だし、少しは役に立つと思う。どうだろうか?」 こひな「いいね!私は賛成!」 ゴウライ「貴殿の強さは認めた。構わん。」 ウゲツ「こひちゃんが良いって言うなら俺が口挟むことはねーよ。ただ、足は引っ張んじゃねーぞ?」 ベティ「ああ、よろしく頼むぜ。」 こうして、ベティは彼らの仲間となり、冒険が始まるのだった。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// Episode 2 "臨海大巣 シェースタ洞穴" ゴウライ「さて、次なる目的地だが。ここだ。」 そう言ってゴウライが指差したのは、ピアゾンよりさらに北側にある海岸線。 ゴウライ「シェースタ洞穴だ。」 ウゲツ「ちょっと~、俺が調べたんですけど~?」 こひな「まあまあ、みんなちゃんと分かっていますから。」 ウゲツ「だよね~!さっすがこひちゃん!」 ベティ「水妖石だっけか?そこにあるってアテはあんのか?」 ウゲツ「ああ、そこにはサハギン族の巣があるらしい。水妖石は奴らの専売特許みてえなもんだからな。そこにいきゃあんだろ」 ベティ「なるほどな。」 こひな「さて、じゃあ準備をして向かいましょうか!」 こうして一行はピアゾンを後にした。 数日の移動の末、目的地にほど近い都市、ガルドへとたどり着いた。 ウゲツ「……。」 ベティ「どうかしたのか?ウゲツ。」 ウゲツ「いや、誰かに見られているような気がしてな。」 ベティ「俺らにそんな価値なんてないだろ。誰が見るってんだよ。」 ウゲツ「まあ、確かにそんなに金になるようなものは多くはねーけど。」 ウゲツは訝しみながら街を歩くが、周りには実際怪しげな影は見当たらない。 勘違いだと良いのだが。 次の日、俺達は朝からシェースタ洞穴へと向かった。 ベティ「……やっぱりいるな。」 こひな「見張りですか。」 ベティ「ああ、だがこれではっきりした。あの洞穴はやはりサハギン族の巣だ。」 ウゲツ「うっし、ここは俺に任せな。」 そう言うとウゲツは気配を消し、見張りに接近。音もなく見張り役のサハギンを三枚におろす。 ゴウライ「うむ、見事なり。」 ウゲツ「さ、とっとと先に進もうぜ。」 一行は先へと進んでいく。 中は非常に湿っており、洞窟の中にいても海風を感じる。 慎重に進みながら、サハギン族を倒していく。だが、俺達は忘れていた。 彼らの本領を発揮するのは、”水中”であると。 洞窟を一歩一歩進んでいくと、突如、足場に激流が流れる。 警戒はしていたが、とっさのことに足をすくわれ、流されていく。 こんな時に軽くて小さい体は不利だななんて、のんきに考えていた。 そして、大きな水しぶきと音を立てて、水中へと放り込まれる。 その先にいたのはたくさんのサハギンの群れだった。 水中だと詠唱もできず、ましてや満足に体を動かすことすらできない。 今度こそもうだめかと思ったが、次々と襲いかかるサハギンを一刀のもとに伏していた男が1人。 そう、ゴウライは元バイキングであるがゆえに、彼もまた水中での戦闘が本分なのだ。 ゴウライのいつもにも増した膂力と他の者のサポートにより、並み居るサハギンたちをなんとか退けた。 ベティ「いや、やべぇな。さすがに水の中でのサハギンを相手にするのは骨が折れるぜ……。」 ウゲツ「ゴウライがいなきゃ今頃海の藻屑だぜ。」 ゴウライ「他愛ない。」 なんとか窮地を脱した俺達は洞穴を最奥まで進んだ。 そこは開けた空間になっていて、その空間の半分以上は湖のようになっていた。ただ、その湖の先には洞穴の出口が見えており、海へとつながっているのがわかる。 そこへ俺たちがたどり着いたとき、ボコボコと水面が泡立ち、中からサハギン族の長が現れた。 サハ長「人の巣を荒らしてまわる蛮族共め。ここで刺し身にしてくれるわ!!」 ベティ「アレはジョークなのか?」 ウゲツ「さあな。関係ねえ。やっちまおうぜ。」 こひな「ささ、早いところ宝をいただいてしまいましょう♪」 ゴウライ「御意に。」 サハギン族との熾烈な戦いの末に、俺たちは勝利した。 サハ長「ああ、ワタクシがたたきになってしまったのねん……。」バタリ… ベティ「ハァ……ハァ……。なんとかなったな。」 ゴウライ「うむ、良き戦いであった。」 ウゲツ「さて、宝をいただいちまお……ん?」 ウゲツの視線の先には怪しげにうごめく影が宝を持ち去ろうとしていた。 こひな「ちょっと!なんですか貴方は!待ちなさい!」 ???「……。」 謎の影は一瞥くれるとそのまま姿をくらまして逃げていった。 ウゲツ「やられた!クソッ、俺たちがここに来た意味が……。」 ベティ「マジかよ……。つか……今、アイツの腕に刻まれてた刺青……。ぐっ!」 ベアトリスの頭に痛みが走る。そして見覚えのあるようなないようなそんな情景がフラッシュバックする。 目の前には大柄な男。その頬には先程と同じ形の刺青……。 痛みはすぐに引いた。 こひな「大丈夫ですか!?」 ベティ「ああ、問題ねえ。ちょっと頭痛がしただけだ。だが、すまねえ。大事な水妖石が持ち去られちまった。」 ゴウライ「一杯食わされた。」 ウゲツ「チッ、一旦宿に戻ろう。ここにこれ以上いる意味もねえ。」 そうしてガルドまで戻ってくるのだった。 街に帰ってきてからは各々、食事などを済ませ寝るようにしたが、皆一様にもやもやとした気持ちで一夜を過ごすこととなった。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// Episode 3 "顕罪高地 ベース=ヴァンガルス" ウゲツ「やるぞ。カチコミだ。」 宿の朝食でウゲツが口火を切る。 ゴウライ「その言葉を待っていた。」 ゴウライは広角を上げる。 こひな「ええ、私の出身の世界には落とし前って言葉もあります!」 ベティ「だがどうする?手がかりもねえ。」 ウゲツ「それならアテがある。」 と懐から紙を取り出す。 そこには昨日の謎の人影が腕に刻んでいた刺青のマークと同じイラストが描かれていた。 ベティ「……っ!それは。」 ズキン……ベアトリスの頭が痛む。 ウゲツ「ああ、昨日のやつが腕に刻んでいた刺青だ。これはいわゆるギルドシンボル的なもんじゃねえかと俺は睨んでる。」 こひな「じゃあ、そのマークについて調べたらどこのギルドが関わってるかわかるってこと?」 ウゲツ「ま、あくまで可能性の1つだがな。」 こひな「でも、やってみないより良いよ!とりあえずは聞き込みからだね!」 しばらく街で聞き込みをしているとこれが有名な犯罪者ギルドのシンボルであることが分かった。 彼らの拠点とする場所は転々と移り変わっており、騎士団や自警団でも居場所を掴めないことでも知られていた。 ベティ「犯罪者ギルドか……めんどくさそうだな。」 こひな「それに、私達が拠点を探している間に逃げられたりしないでしょうか?」 ゴウライ「あり得るな。」 ベティ「ん?つーか、ウゲツはどこいったんだ?」 見渡すと少し先から歩いてくるウゲツの姿が。 ウゲツ「よう、待たせたな。」 こひな「どこ行ってたの?」 ウゲツ「なーに、野暮用ってやつさ。それより知りたくないか。連中のアジト。」 ベティ「何!?分かったのか!」 ウゲツ「ああ。このへんは元々俺の出身地なんだ。地元のことならよく理解してる。で、だ。ここいらで拠点を構えられそうなのは数箇所ある。」 ウゲツ「そして、ヤツらの最近の出没した地域を調べてみた。それと合わせて見てみると……だ。」 こひな「すると……?」 ウゲツ「ここだ。ここに奴らはいる。」 そして、俺達はヴァンガルスと呼ばれる高地の麓へとやってきた。 どうやらこの高地の上に拠点を構えているようだ。 その証拠に高地へ登っていく道の入口にあの刺青を入れた人物が2人、見張りに立っている。 俺たちは引きつける囮役と見張りを倒す役を分担し、突破することにした。 こひなとゴウライが囮役としてうまく誘い込み、ウゲツと俺で確実に敵を倒す。 その目論見はうまく行き、先へ進むことができた。 あとは見張りを倒したことがバレるまでに目的のものを回収して帰ってくるだけだ。 ところどころ敵が巡回していたが、かわしたり始末したりしながら先へと進んでいく。 そして、遊牧民族の使いそうな簡易的な家屋がいくつかある開けた場所へとたどり着く。 どうやらこの時間帯は人が出払っているようで、人目を盗んで家屋の中を捜索するのは容易だった。 念の為、見張りから剥ぎ取った服で返送したゴウライとウゲツが家屋を探してまわり、ついに俺たちが見つけたあの水妖石の入った宝箱を見つけた。 しかし、持ち帰ろうとして、出口へ向かっているところを見つかってしまい、敵の集団に追いかけられる。 ベティ「オイ、マジかよ!『俺に任せとけって、このへんじゃ変装で右に出る奴はいなかったんだぜ』って言ってたじゃねえか!」 ウゲツ「しょうがねえだろ!合言葉なんて聞かれるとは思ってなかったわ!」 ゴウライ「やむなし。走るぞ。」 後ろから犯罪者ギルドのメンバーたちが連れ立って追ってくる。 その先頭に立っているのはリーダーらしき男だ。 モブ「サブリーダー!アイツら捕まえたらどうしてもいいんっすよね!」 サブリーダー「かまへんで!煮るなり焼くなり好きにしな!ただ、あの女は気に入った!ウチがもらうで!」 こひな「ひー!なんか怖いんですけど!!」 ウゲツ「こひちゃんは俺が守る!もう少し、頑張って走ってくれ!!」 こひな「は、はひぃ!」 必死で麓まで駆け下りる。もう少しで追いつかれるというタイミングでなんとか降りてくる。 そして…… ウゲツ「備えありゃ嬉しいなっと!!」 と叫ぶやいなやウゲツが思いっきり地面を踏み抜く。 カチリという音とともにそこからつながった縄に火がつき、そして岸壁の上から大きな爆発音とともに岩が砕けて降ってくる。 その岩は追手を前後で分断し、追手の数は奇しくもベアトリス達と同じ人数となった。 ベティ「さて、やっちまおうぜ!」 ゴウライ「落とし前……と言ったか。」 こひな「やっちゃいましょう!」 ウゲツ「俺らに喧嘩を売ったことを後悔させてやんよ!」 そして追手との戦いをチームワークで圧倒し、ベアトリスたちは勝利する。 こひな「ふぅ、なんとかなりましたね!」 ウゲツ「こひちゃんが無事ならオッケーだ!さっさとずらかろう!」 ベティ「……なんかその言い回し、俺らのほうが悪者っぽくねえか?」 こうして一行は無事水妖石を取り戻し、街へと帰還するのだった。 薄暗い部屋の中椅子に腰掛ける大柄な男の前に1人の男がひざまずいて報告をしているようだ。 ???「それで?貴様は何が言いたいと言うのだ。」 モブ「ですから、このキャンプを襲ってきた奴らに逃げられまして……。」 ???「ハァ……。全く。よくもその報告をここに持ってきたものだ。」 モブ「お、お許しを……っ!ア、ア、アァアアアアアア!!!」 メシメシといった軋むような音とともに報告に来た配下の頭をその男は片手で握りつぶす。 ???「オイ、テメェら、誰でもいい。奴らに目をつけておけ。ウチに手ェ出すってことがどういうことか教えてやらねぇとなァ。」 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// Episode 4 "海底神殿 アトランティカ" ベティ「海だー!!イヤッッホォォォオオォオウ!!」 こひな「こらこら、ベティさん、はしゃぎすぎてはいけません。私たちは海底神殿を探しに来たのですから!」 ウゲツ「いや、こひちゃんも水着だしはしゃぐ気満々じゃん……。でも水着もサイコーだぜ!!」 ゴウライ「うむ。悪くない。」 俺たちはパリス同盟を大きく南進し、国境を超え、神聖ヴァンスター帝国のとある海岸へと来ていた。 これから海底神殿へと潜るにあたり、一時の休息をしていた。 こひな「おっと、泳ぐならこれは外しておきませんとね。」 そう言ってこひなは腕につけていたブレスレットのようなものを外し、荷物とともに置いた。 ベティ「それは?」 こひな「ん?ああ、これね。これは時計なんだ。こっちの世界のものじゃないけどね。」 そう言ってベティに見せてくる。 ベティ「へぇ、これが……。この切り替わってる表示が時刻を示しているのか。ん?なんか今、同じ文字が揃った瞬間だけ少し時間が長かったな?壊れてるんじゃないのか?」 こひな「ああ、それはね。『クロノスタシス』って言うんだ。数字が揃った瞬間だけ少し時間が長く感じる錯覚現象らしいよ。」 ベティ「ほーん、不思議なこともあるもんだ。こーいう雑学的なことは知ってたほうがおもしれえし、俺の冒険日誌にでも書いておくか。」 そう言ってかばんの中から日誌を取り出し、そこに書きこんでいく。 ウゲツ「こひちゃん!ベティ!早く来いよ!どっちが泳ぐスピードが速いか勝負しようぜ!!」 ゴウライ「よかろう。」 ウゲツ「ゴウライ、テメーはダメだ。元バイキングとかズルだろ。」 そうして、穏やかな時間は過ぎていく。 そして、次の日。 今度は海の上で泳ぐのではなく、海の中へと潜っていた。 そして深く深く潜っていくと、水面からの光が届くか届かないかというくらいの水底にその神殿はあった。 周囲には海流が渦巻いており、常人では流されてしまうだろうが……。 事前に準備していたアイテムがあるおかげでその流れにも流されず、神殿へとたどり着くことができる。 内部にたどり着くと、海底にも関わらず水はなく、呼吸も可能であった。 ベティ「ぷはっ!」 ウゲツ「スゲェなこりゃ……中に空気があるとは……。」 こひな「でも、助かりました。このまま水妖石使って中を探索するのは骨が折れたでしょうから。」 ゴウライ「私は構わんがな。」 ベティ「んじゃ、お宝探しと行くか!」 海底神殿の中はまるで迷宮のようになっており、まるでここに立ち入る者に試練を与えるかのように行く手を阻む。 時には通路の天井が開き海水がなだれ込んでくる。 時には床が開き、危うく落下しそうになる。 何もない部屋かと思えば、周囲にある石像は全て魔導機械で、それらにとり囲まれ、襲われる。 いくつもの試練を超え、そして最後の扉へとたどり着く。 最奥の部屋には1体の巨大な魔導機械。一行が部屋に入るとそのモノアイが赤く光り、動き出す。 ???「ピー、ガガ。コノ アトランティカ ヲ 訪ネシ者ヨ。コノ先ヘト進ミタクバ、我ニ力ヲ示セ。」 ベティ「だってよ。やってやろうぜ!コイツをぶっ壊してこの神殿踏破だ!」 こひな「強敵そうです……。気をつけてくださいね!」 ゴウライ「強敵……!心が躍る!」 ウゲツ「っしゃあ行くぜ!!」 その魔導機械は強かった。巨躯から繰り出される強烈な拳。 銃口からは火炎放射。背中のからは電撃を出す。 俺たちはそれらをかわし、反撃し、時には真正面から受け手痛い怪我を負う。 一歩間違えば死んでしまう。そんな紙一重の戦いを繰り広げ……。 「見事ナリ。強キ者ヨ……。先ヘ進ムガヨイ。」 そう言うと、魔導機械は沈黙し動かなくなる。 そして、魔導機械が最初に鎮座していた場所の床にあった扉が開き、階段が現れる。 ゴウライ「まだ先があるようだ。」 ウゲツ「宝じゃねえか!?行ってみようぜ!」 そして、俺達が下まで降りるとそこには、とても広い空間が広がっており、まるで祭壇のようだった。 周囲には壁画が描かれており、どうやら古い時代に描かれたもののようだ。 そして奥の壁の前には台座があり、その上には宝箱が置いてある。 ウゲツ「うおお!やべぇな!ヤバすぎてやべぇぜ!」 ベティ「これぞ冒険って感じだな!」 ゴウライ「壮観である。」 こひな「この壁画って……。ねえ、みんなは先に行ってて!私はこの壁画について調べてみる!」 ベティ「俺の知識も役立つかもしれねえ。手伝うぜ。」 ウゲツ「んじゃ、俺らは宝箱を空けに行きますか!」 ウゲツ「さて、と、何が入ってるかな……?」 ゴウライ「開けるぞ。」 蝶番の軋む音がして宝箱がゆっくりと開く。 ウゲツ「うおぉぉ……!お……お?」 ゴウライ「これは……地図に……石版か?」 中には2枚の地図が入っている。 ウゲツ「の、ようだな……。それも、これが指している場所はヴェンガルド峡谷を超えた先、霧の森だな。そこから、山へとつながっている……か?」 ゴウライ「霧の森、あそこは年中霧が出ている上に、出るエネミーも強力であるが故に何者も近寄らぬ場所。それを紐解く地図であるならば希少なものやもしれぬ。その先に繋がる山とやらは私も知らぬな。」 ウゲツ「この石版もそこで使うのか?」 ゴウライ「おそらくそうだろうが、まだ如何とも言い難い。」 ベティ「この壁画は火の時代よりも前のものだぜ……。」 こひな「ベティさん、壁画のこの部分が気になります!解読できますか……?」 ベティ「少し時間はかかるが……、ふむ、下に書いてある文字は、『我らが儀にて彼方より稀なる強者来たれり』。この壁画が示しているのは、異世界からの召喚の儀式か!!」 こひな「そんな昔から異世界からの召喚は行われていたのですね……。と、すると次のこの壁画は……。」 ベティ「『強者、世界を救う役目を終え、霊峰の山嶺より帰還せり』。」 こひな「やっぱり……!元の世界へ帰る方法なのですね!!」 ベティ「良かったじゃねえかこひな。お前の悲願に一筋の光が差したな!」 こひな「……はい!」 ベティ「他の壁画は……当時の生活の様子ってとこか……。ん?これは……!」 ベアトリスが見つめる先にあった壁画には金冠模様の入ったポメロらしき生き物が描かれている。 ベティ「もし、今この領域が人の手の及ばない領域となっているのであれば、俺にも一縷の望みはあるか……?」 このあと、皆で合流し、情報を共有する。 そして俺たちは霧の森へと向かうことにした。 これがこのメンバーでの最後の冒険になるかもしれないと感じながら……。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// Episode 5 "秘匿霊峰 ラ=ゼニス" 俺たちは長き旅の末に、エリンディル西方の中でも北方にある霧の森へとたどり着いた。 ここは年中霧に覆われており、また、力の強い妖魔も出没するため、人は滅多に近づかない。 こひな「ついにここまで来たね……。」 ウゲツ「だなー、長かったような短かったような。でも大変だったのは間違いねえな。」 ベティ「さて、と。例の地図を出そう。」 地図によると森の中には目印になる別の種類の木が植えてあり、それをたどることで霊峰への入口となる洞窟へとたどり着くとのこと。 途中、エネミーと遭遇し、戦闘になりながらも着実に進んでいく。 そして、洞窟へとたどり着き、中へと踏み込んでいく。 洞窟を進むと、そこには身の丈の数倍はあろうかという大きな扉がそびえていた。 その中央には水晶がはめ込まれており、その紋様はどことなく海底神殿で手に入れた石版と似ている。 ゴウライ「ここでかの石版を用いるのではないか?」 ウゲツ「っしゃあ任せろ!」 そう言ってウゲツがカバンから石版を取り出すと、その石版から一筋の光が扉の水晶に伸びていく。 次の瞬間、扉の文様が光り輝き、重く大きい扉が徐々に開いていく。 開いた扉の先には広場のようになっており、そこからは霧の森を一望できた。 ベティ「すげえな。こんなすげえ景色が……霧が海のようになってまるで雲海だな。」 こひな「絶景だあ……。」 ウゲツ「俺、こひちゃんと一緒にこの景色を見たこと……絶対忘れないよ!」 ゴウライ「浸るのもよいが、先へ行かねば。まだ先は長いやもしれぬ。」 そう声をかけるゴウライに続いて皆山道を登っていく。 しばらく登ると、そこには現代のものではない家がいくつも建っており、集落を作っていた。 ベティ「これは……いつの時代のものだ?少なくとも現代のモンじゃねえ。」 こひな「壁画と関係があるのなら火の時代より前ってことになるのかな……?でもすごいね、こんなにしっかり残ってるなんて。」 ゴウライ「もはや遺跡に等しいな。」 ウゲツ「んー、なんか気配がしねえか?」 そう言ったウゲツに習い、注意深く見渡すと、そこには隠れてこちらを見るポメロの姿があった。 他にポメロの姿はなく、どうやらこの集落に一匹で住んでいるようだ。 ウゲツ「コイツは驚きだな。こんなところにポメロが住んでいるとは!」 こひな「でも、ポメロは森に住むのが一般的では?なぜこんなところに。」 ベティ「……少し前に、ポメロの乱獲があった時期があってな。もしかしたら、乱獲から逃れるために人の手の及ばないこの村まで逃げてきたのかもしれねえな。現に見てみろ、俺たちを見て怯えていないか?」 ゴウライ「確かに。そのように見えるな。」 こひな「なんだか胸の痛くなる話ですね。」 ベティ「すまねえ、そこのポメロさんよ。怯えさせるつもりはなかったんだ。俺たちも用事が済んだら出ていくからよ。一晩でいいから泊めさせてくれねえか?」 そう言ってカバンの中から果物を取り出して、そっとそこに置く。 ポメロは警戒しているためか、家屋の影から姿を現そうとはしない。 ベティ「……警戒してるのか。まあ、ここに置いておくから好きにしてくれればいいさ。さて、これで最低限の礼儀は尽くしたろ。ここで一晩明かして残りの旅路は明日にしようぜ。」 こひな「そうですね!ここなら屋根もありますし、そうしましょう!」 そしてその場から少し離れたところへ移動し、俺たちはここで休むことにした。 その夜のことだった。 動物の鳴き声で俺たちは目を覚ます。 これまでの旅で聞いたことがある、そう、これはポメロの鳴き声だ。それも、悲鳴のような鳴き声をあげている。 俺たちは慌てて外に飛び出した。 すると、そこでは謎の男たちがポメロを追いかけ回し、ポメロを捕らえようとしている。 ウゲツ「テメェら!何やってやがる!!」 大男「あん?あぁ、テメェらまだこんなとこにいやがったのか。まあいい、感謝してるぜ。テメェらの道案内のおかげでこっちは大儲けできんだからよぉ!」 そう言って男取り囲んだポメロを引っ掴み、持っていた袋の中に入れる。 ベティ「クソったれが……。つけてやがったのか!」 こひな「どうしてこんなひどいことを!」 大男「むしろこっちが聞きたいね。こんな大金の元が転がってんのになぜテメェらは何もしねえ?」 ベティ「わりぃな。ばあちゃんにそんなせこい稼ぎ方をすんな。大志を抱いて生きろって言われてんだ。」 大男「……んん?なんかそのセリフ聞いたことあんな。まさかお前……レイラの子か!アレだろ、ミシェーラのババァに育てられたんだろ?ハハッ!懐かしいぜ。」 ベティ「ばあちゃんに……母ちゃんの名前……!なぜ知っている……!」 大男「知ってて当然だよなぁ。なぜならテメェは俺が孕ませたレイラから生まれたんだからよぉ!」 ベティ「なん……だと……。」 大男「あのときは人攫いなんかもやってたからな。捕まえた上玉はイイようにさせてもらったぜ。けどよ、あのミシェーラのババァのせいで俺らのギルドは半壊した挙げ句、攫ってきた女子供も全部パァにされたんだからマジでクソだったぜ。ま、逃げられたクソどもは全員ぶち殺してやったけどな!」 こひな「ひ、ひどい……。」 大男「レイラも例外じゃあねえ。殺したときは見逃してやったけど、お前、脇で見てたろ?どう成長すんのかと思えば、まさかあのババァのとこで育てられてるとはな。」 ゴウライ「この外道が……!」 ベティ「……なるほどな。合点がいったぜ。俺は幼い頃から犯罪者の娘だってハブられて育ったからな。いいさ、テメェみたいなクソが親でもよ。だが、それはそれとして、つけるべきケジメはつけさせてもらうぜ。」 ベティは携えていたグリモアを開き、臨戦態勢を取る。 大男「いいだろう。テメェも母親ともどもヒデェ目に合わせてぶっ殺してやんよ!野郎ども、コイツらをぶっ潰して身ぐるみ全部剥ぎ取ってやれ!だが、あのフィルボルの娘だけは生きて捕らえろ!」 ベティ「ゴウライ、こひな、ウゲツ。すまん、俺の勝手な事情に巻き込んじまった。」 ウゲツ「ハッ、何水臭いこと言ってやがる。俺らは一蓮托生だろうが。」 こひな「そうですよ!それに私もあの人は許せません!」 ゴウライ「私もあやつの鼻っ柱をへし折りたいと思っていたところだ。丁度いい。」 ベティ「まったく。」 ベアトリスはニヤリと笑う。 ベティ「俺はこんな仲間を持ってサイコーにハッピーだぜ。」 そうして戦いの火蓋は切って落とされた。 相手は悪事に特化した犯罪者ギルド。汚い手や人を殺す一撃を躊躇なく使ってくる。 俺たちはそれに、これまで培ってきたチームワークで対抗する。 一進一退の攻防。そして戦いの末に……。 ベアトリスと大男との一騎打ちとなる。 ベティ「これでシマイだ!デイメアァァァア!!!」 大男「クソッ、やめろ、ババァ!俺のギルドを壊すなやめろ……やめろ!!」 大男はブンブンと手に持つナイフを振り回しながら後退していく。 そして、崖までたどり着き、足を踏み外す。その瞬間に、手に持っていたポメロを入れた袋を落とす。 男は凄まじい勢いで崖の下まで転げ落ちていく、霧の下まで落ちたとき、その姿は見えなくなった。 ベティ「うおっ!あぶねえ!」 とっさにベティは袋を受け止める。 ベティ「ハァ……ハァ……。なんとか、なった……な。お前も、大丈夫か?」 袋から顔をのぞかせたポメロに問いかける。 ポメロはキューンと怯えたような、安堵したような顔で鳴く。 それにつられてベティも穏やかな表情に変わる。 しかし、安堵した瞬間、ベアトリスの意識も薄くなっていき、その場に倒れ、視界が暗転する。 頬をなにかに舐められるような感覚で目を覚ます。 ベティ「う、うーん……。」 目を覚ますと、目の前には金冠模様の入った小さなポメロが座り込んでおり、俺の頬を舐めていた。 倒れたまま、視線だけをそちらに動かし、そっと手を伸ばしてポメロを撫でる。 ベティ「よう、良かったな。生きてて。それとすまねえ。アイツらをここまで連れてきちまったのは俺らのせいだ。わりぃ、巻き込んじまった。」 ポメロに意思が伝わったのか伝わってないのか、わからないが、しかし、許すとでもいうように体をこすりつけてくる。 ベティ「許してくれんのか……。そうか。あんがとよ……。っと……、他の奴らは……無事か?」 ボロボロになった体を鞭打ってなんとか立ち上がる。 ベティ「ウゲツ、ゴウライ、こひな!生きてるかー!いたら返事してくれー!」 叫びながら歩いてまわると、右の方からうめき声が聞こえてくる。 そちらに目をやると倒れているこひなが倒れていた。 ベティ「こひな!しっかりしろ!」 こひな「う、うーん……。はれ、ベティちゃん……。」 ベティ「良かった。寝てただけだな。」 こひな「倒せたの……?」 ベティ「ああ、ほれ、ポメロもこの通りだ。」 俺がポメロを手に持って見せてやると、 こひな「良かったぁ。」 そうやってまたごろんと横になった。 ウゲツ「おーい!大丈夫かー!」 ゴウライに担がれたウゲツが声をかけてくる。 ベティ「良かったぜ。そっちも無事みてえだな。」 ゴウライ「当然である。私はさらなる強敵との戦いを望む故に。」 ベティ「頼もしいぜ。」 ウゲツ「さて、と。このまま先に進みてえが。少しばかりここにステイだな。怪我の回復を待ってからのほうが良いだろう。」 こひな「そうだねえ。幸い食事は多めに持ってきてるし。」 ベティ「だな。とりあえず、メシの準備すっから、お前らはそこで待ってろ。」 食事をすべく、カバンから肉や野菜・果物を取り出す。 すると、物欲しそうな目でポメロが寄ってくる。 ベティ「わかったよ。お前らにもくれてやるから待てって。」 そして、その日はポメロも含めて皆でメシを食べた。ポメロは俺がやった果物が気に入ったのか、やたらと俺にすり寄ってきた。 ベティ「まったく、食いしん坊なやつだな。ホラよ。俺の分までやるから食え食え。」 キューンと鳴きながら喜んで果物を口にする。ベティを見ている視線はどこか羨望のような眼差しにも感じる。 ベティ「さっきは起こしてくれてありがとな。」ポンポンとポメロの頭を撫でる。 ウゲツ「めちゃくちゃソイツお前に懐いてんなー。昨日はあんなに警戒してたのによ。」 ゴウライ「動物というのは善意や悪意に敏感なのだ。ベアトリスの彼らを守らんとする意思を受け取ったのだろうよ……ムム、かわゆい。」 ウゲツ「ほーん、なるほどね……って、ん?最後になにか言ったか?」 ゴウライ「いや何も」 それからしばらく休んだ後に、再び山を登り始めることになった。 あのポメロは見送りには来ていなかったが、まあ、まだ寝てるのだろう。 どこにいるのかはわからないポメロに心のなかでそっと別れを告げ、先へと進むことにした。 その先にあったのはまたしても洞窟であった。 中は古い時代からある遺跡のようで、迷路のようなつくりとなっていた。 こひな「うーん、これはなかなか迷いますね……」 ベティ「一応地図は取りながら来てるんだがな。出口がどこにあるのか見当もつかねえ。」 ウゲツ「なあ、さっきからところどころにあるこの石像とか足元の模様が関係してんじゃねえか?」 ゴウライ「『星ぼしが連なりし時、汝らの向かうべき道は開かん。星々を司りしはこの世を支えし元素たる精霊なり』」 ウゲツ「なんだそりゃ?」 ゴウライ「先程の入口に書いてあった言葉だ。」 ウゲツ「何っ!?」 ベティ「元素たる精霊……4属性を司る精霊のことか。と、するとウゲツの言っていたこの像のモチーフは……。」 こひな「四大精霊なのでしょうね。少し調べてみましょう。」 こひなが像に触れ、探っていた時だった。こひなが像の口に手を入れた次の瞬間、像の口が閉じ、こひなの手に食らいつく。 こひな「いぃ……っ!!」 ウゲツ「こひちゃん!!大丈夫!?今引っこ抜くからね!」 こひな「ダメ……!力が強くて……離れない……!」 挟まれた手を引っこ抜こうともがいていると今度はゴゴゴ……という音と共に地震が起きる。 ゴウライ「この揺れは……神の怒りか。」 しばらくすると揺れはおさまり、それと同時にこひなの手も開放される。 引っこ抜こうともがいていたウゲツとこひなはその瞬間に尻もちをついてしまう。 ウゲツ「ってて……。だ、大丈夫!?こひちゃん!!」 こひな「ええ、噛まれた手から少し血が出ていますが、何ともありません……。」 ベティ「クソッ……なんだってんだよ……。まあいい。ともかく無事なら先へ進む方法を探そう。」 ゴウライ「ム、これは……。」 とゴウライが下に目をやると先程まで乾ききっていた遺跡の床が濡れている。と、いうかどこからか水が流れてきているのだ。 ゴウライ「これはまずいやもしれぬな。」 ベティ「まさか俺らを溺れさせようって腹か!?」 ウゲツ「早く出口を見つけるなり、一旦戻るなりしねえと……。」 こひな「た、大変です……。私達が入ってきた入口が……!」 ベティ「マジかよ……。」 見ると洞窟につながっていた入口があった場所は石の壁になっていた。 ベティ「後戻りはできねえってわけだ。」 ウゲツ「お、おい!これ見ろって!」 ウゲツが指さす先には最初に入ってきた時に床にあった模様のついた丸の絵と別の場所にあった赤みを帯びた丸の絵が並んでいるのだ。 ベティ「なるほど……。そういうことか。さっきの石像はこの遺跡が動くトリガーだったんだ!どういう仕掛けかわかんねえが、ひたすら遺跡を動かしてこの絵が並ぶようにする。それで道が開けるはずだ!この水はさしずめ制限時間といったところだろうな……。」 ウゲツ「だー!めんどくせえ!結局どうすりゃいいんだよ!」 ベティ「待て。現状分かっている絵の場所と石像の場所をマップに書き出して……。」 ベアトリスは凄まじい速度で地図に書き込んでいく。 ベティ「ウゲツ!さっきので行ける場所が増えてるかもしれねえ!お前の足の速さで全部確認してきてくれ!」 ウゲツ「合点!」 そうしてウゲツはマップを受け取り、さらに書き加えていく。 ベティ「あとは石像の法則性だな……。ゴウライ、石像の種類による遺跡の動きを確認したい。少し痛いかもしれねえが、試させてくれるか?」 ゴウライ「ああ、体を張るのは私の役目だ。」 ベティ「こひなはゴウライの回復やそのほかの支援を頼む。」 こひな「はい!」 そうして4人で協力して謎を解き明かしていく……。 水位は少しずつだが確実に上昇する。 しかし彼らも負けず1つ、2つ、3つ、着実に絵を揃えていく。 そして……、最後の青い丸が揃ったとき、その先に向かって溜まっていた水が流れていく。 水が流れ終わったその時、そこには出口が出来ていた。 ベティ「ふぅ……、何とか……なったな……!」 こひな「よ、良かったぁ……。」 ゴウライ「私は信じていたぞ。」 ウゲツ「ぜー……はー……。」 こひな「ウゲツくんもありがとう、いっぱい走って疲れちゃったよね?」 ウゲツ「とんでもない!こひちゃんのためなら世界の果てまで走れるぜ!」 こひな「ふふ、ありがと。でもちょっと休んでから先に行こっか!」 ベティ「だな。俺もしばらくはこういうのはごめんだぜ……。」 しばらく休んでから一行は先へ進んだ。 その先は再び洞窟のようになっており、暗い道を前へ進む。 しかし先程の苦難を超えたためか少し気が緩んでいた。 ベティ「しっかしさっきのはマジでヤバかったな。過去サイコーにブルっちまったぜ。」 ゴウライ「!ベアトリス、危ない!」 とっさにゴウライはベアトリスの首ねっこを掴む。 ベティ「ぐえっ」 ウゲツ「なんだなんだ?どうしたってんだよ。」 ゴウライが無言で指さした先はなんと、大きな谷になっていた。 それを見たベアトリスは顔面蒼白になる。 暗いのもあるが、ランタンで照らしても全く底が見えない。 こひな「行き止まり……ですか?でも、他に道なんて無かったですよ?」 ウゲツ「アソコだ。上見てみろ。」 ウゲツが指さす先には神殿の入口のような建造物があるが、そこは谷を挟んで反対側だ。 当然ながら回り込むようなルートもない。 ベティ「どうすんだよこれ……。」 途方に暮れていると、ベアトリスのカバンがモゾモゾと蠢く。 ベティ「ん?なんだ?」 カバンには食料を入れていたはずだが、開けるとそこには1匹の金冠がトレードマークのあのミニポメロがお腹を膨らませてこちらを見ていた。 ベティ「お前!着いてきちまったのか!?ってか俺たちの食いもんは!?」 こひな「あらあら可愛い。」 ベティ「帰り飯抜きかよ……。ウッソだろお前……。」 ベアトリスは露骨にがっかりしてみせる。 するとポメロは肩に乗ってきて、前足でポンポンと肩をたたき励ますような仕草をする。 ベティ「お前のせいだかんな……?」 ポメロはなんのことか分からないと言った体でつぶらな瞳を向けてくる。 ベティ「踏んだり蹴ったりだぜ……。」 ゴウライ「ドンマイだ。」 しかしポメロは何処吹く風。カバンの中に食料がないとわかるとくんくんと匂いを嗅いで餌を探してトコトコと歩いていく。 ウゲツ「お、おい!!そっちはダメだ!」 ウゲツの静止も聴かず歩いていった先には先程の谷。 万事休すかと思って目を背けそうになった次の瞬間、なんとポメロは宙に浮いていた。 こひな「えっ、えっ!?」 ゴウライ「なんと面妖な」 ウゲツ「あのフォルムで空を飛ぶのか……たまげたなぁ。」 ベティ「いやそうじゃねえだろ。」 こひな「凄いですね……見えない足場……こういうのもあるんですね……。」 ベティ「はっきりとは分からねえが幻術の類かもしれねえな。しかし、複数人にこのレベルのってのは聞いたことねえな。」 ゴウライ「だが道は開けた。」 そう言うとゴウライもポメロが歩いた道を着いていくように歩いていく。 俺たちもそれに続く。 底なしの谷の上を何もなしに歩くというのはとても怖い。 下を見ると落ちてしまいそうで、1歩前を歩くゴウライの背を見つめ、着いていく。 そして気がつくと、先程下から見上げていた神殿の目の前にいた。 ポメロはこちらを振り返り、鳴き声をあげる。 ベティ「チッ、悔しいけど給料分の仕事はしてもらったよ。サンキューな。」 そう言ってポメロの頭を撫でる。 ベティ「……お前も一緒に来るか?」 ポメロはきゅーんと嬉しそうな声をあげるとベアトリスの肩に飛び乗ってきた。 こうしてまた旅の仲間が増えたのだった。 こひな「さて、それじゃ行きますか!」 ベティ「ああ。」 そして俺たちは神殿の中へ足を踏み入れていく。 抜けた先は青空が広がっており、外だった。 道は少しだけ先まで柱とともに続いており、その先は広場のようにひらけていて、祭壇のようになっていた。 その祭壇の中心には何者かがこちらに背を向けて立っており、一行が近づくとくるりと振り返り、言葉を吐く。 ???「ほぅ、人が来るのはいつ以来か。知恵と勇気の試練を超えてよくぞここまでたどり着いた。」 その言葉の威厳に恐れたのか、ポメロはカバンの中に隠れてしまう。 こひな「あ、あの……貴方は一体……。」 ???「我が名はイノセンス!純粋なる者なり。そしてまた異界との橋渡しをするこの祭壇の守り人でもある。」 ベティ「異界との橋渡し……ってことは、ここはやっぱり……!」 イノセンス「ここは異界より稀なる強者を召喚し、そしてまた還す場所でもある。」 ウゲツ「……っ!」 こひな「じゃあ、帰れるんですね!元の世界に!」 イノセンス「なるほど、そちらの女性は異界より来たりし子と見える。で、あればこの祭壇を使うことも適うだろう。」 こひな「やったー!」 イノセンス「ただし、この祭壇の使用には代償が必要だ。異界へと繋がる門を開くにはこの祭壇にそれ相応の力を与えねばならん。それは知恵と勇気、そして力である。汝らはすでに知恵と勇気を持ちし者であることを示した。残るは力である。」 そう言うと彼は背に金色に輝く羽を生やし、手には槍を握った。 イノセンス「さあ、この祭壇を用いるのであれば、我に力を示せ!!」 こひな「なるほど、ごめん、みんな……。私のために力、もう少しだけ貸してくれるかな!」 ゴウライ「当然。」 ベティ「任せろ。」 ウゲツ「こひちゃんのためなら!」 こひな「じゃあ……行くよ!!」 こうして……最後の戦いの火蓋切った。 彼は人知を超えた力を軽々と扱い、強力な攻撃を行ったり、攻撃も容易にいなしてみせた。 戦いは熾烈を極め、残る力をすべて注ぎ込んだ。 体はズタボロになり、紙一重で攻撃をかわし、少しずつだが着実にダメージを与え……。 その末に……イノセンスは刀を納めた。 イノセンス「……。なるほど。汝らの力、しかと見届けた。この祭壇を使うといい。」 こひな「やった……の!?」 ベティ「正直、全然勝った気がしねえぜ……。」 ゴウライ「良い……勝負だった。」 イノセンス「ただし、気をつけろ。その祭壇は力とともに送り返す者の記憶をも奪う。覚悟が決まったら、奥にある碑文に記されし文言を、定められた位置で詠唱すると良い。」 こひな「記憶が……。」 ウゲツ「そんな……こひちゃんのことも、今までの旅のことも忘れちまうっていうのか……。」 ベティ「……。」 ゴウライ「ウゲツ。」 ウゲツ「なーんてな!せっかく見つけたこひちゃんを向こうの世界に送り返す手段だ!逃す手はないぜ!」 ベティ「お前……。」 こひな「で、でも……!」 ウゲツ「こひちゃんがそんな顔したら笑顔が台無しだぜ?それにせっかく元の世界に戻れるんだ!それが悲願だったじゃねえか!俺もこひちゃんが自分の願いを叶えられるならそれが一番だと思うぜ。」 こひな「う、うん……ありがとう。」 ゴウライ「こひなとウゲツがそう言うのだ、私が協力せぬ理由がない。」 ベティ「だな。さ、さっさとやっちまおうぜ。」 4人は碑文の文言を記憶し、それぞれが配置につく。 そして、詠唱を始める。 『異界の門よ開け。我らは知恵・勇気・力を備えし者なり。そして異界へと帰りし者がため、知恵と勇気と力に加え、その記憶を我らは捧ごう。』 詠唱をする4人の表情はどこか強張っている。これが最後だと皆が理解しているからだろう。 『ここに在りし者はこの世界での役目を終えたものなり。今ひとたび彼の者の生まれし故郷への扉開き、異界の者を送り返したまえ!』 詠唱が終わると、一面に光が溢れ、空には見たこともないような紋様が浮かび、こひなは徐々に徐々に空へと登っていく。 こひな「ありがとう……!みんな!私、忘れないよ!みんなと行った冒険!絶対忘れないから!!」 そう言って空の彼方へと消え去った。 そしてその直後、残された3人にも光が降り注ぐ。そして徐々に意識が失われ、転移させられた。 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// ベアトリスが次に目を開けたのは、ジャーヴィス・アイテルの協会の中だった。 協会の司祭に起こされて、体を起こすが、少し頭がくらくらする。 記憶も曖昧で、今日がいつなのか、なぜここに倒れているのかわからない。 ベティ「俺は……一体何を?」 司祭「大丈夫ですか?あなたは先程、この協会の中に突然転移してこられたのですよ。」 ベティ「転移……?ぐっ……」 頭がズキズキと痛む。 ベティ「わからないな……一体何が?」 と、座り込んで思い起こそうとしていると、かばんから出てきた小さなポメロがちるちると俺の手を舐める。 ベティ「お前は……?」 司祭「あなたのカバンから出てきましたし、あなたのペットではないのですか?」 ベティ「そう……なのか?」 ポメロをそっと撫でると気持ちよさそうに喉を鳴らす。 ベティ「司祭さん、すまねえな。世話になった。とりあえず、記憶に残ってるとこをたどってみるよ。」 司祭「そうですか。あなたの旅路に幸多からんことを。」 ベティ「さて、お前も行くか……。えーっと……、『カムクアット』なんて名前でどうだ?」 メイズと名付けられたそのポメロはキューンと鳴き声を上げてベアトリスの肩に飛び乗った。 この後、ベアトリスは学園に復学し、18歳までの数年間を学園で魔術の鍛錬と、エネミーに対する知識を増やすことに費やした。 マキラからはアイテムに関する知識を教えてもらい、アイテムにも精通できるよう努力をした。 次なる冒険のために……。 ////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////