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殺し屋。殺人鬼。 初めて人を殺したのは10歳の頃。相手は、両親。家族関係は至って良好で、その名の通り深い愛を注がれて育った。 彼女の人生が変わったのは、家に強盗が押し入った時から。呆然としている深愛の目の前で、強盗犯に両親が刺された。息も絶え絶え、幼いながらでも、「もう助からないであろう」ということは理解できてしまった。そこで、彼女の頭にこんな思いがよぎる。 『知らない誰かに大好きな両親を殺されるぐらいなら、私が。』 幼い子供に何ができる、と油断した強盗犯の隙をつき、台所にあった包丁で急所を一突き。幸運にもと言うべきか、不運にもと言うべきか、どちらにせよ彼女には「殺し」の才能があった。あってしまった。部屋に立ち込める血の臭い、紅に染まったお洋服、もうほとんど息の無いパパとママ。その瞬間、確かに何かが彼女の中で壊れた。 ──綺麗。お人形みたい。 その後、深愛は殺人鬼として、裏社会へと姿を消すこととなる。 彼女のモットーは「美しく殺す」こと。いわゆる虐殺と呼ばれる殺し方は嫌っており、傷は最小限、それこそ死体が人形のように見えるほど、彼女の仕事後は綺麗。しかし唯一、そんな彼女が死体蹴りを行ったことがある。両親を殺した強盗犯だ。 両親を殺したあと、「殺人はいけないこと、逃げなければならない」ということを理解していた深愛が逃げた先の小さな森で、唯陽と出会った。丁度自殺志願者を唯陽がナイフで殺そうとしていたところに鉢合わせ、ふと気が付けば唯陽のナイフを奪って深愛が自殺志願者を殺していた。自殺志願者の依頼は「滅多刺しにしてくれ」とのことだったが、手を加えたのが深愛だったため、滅多刺しにされることもなくあっさりと苦しまずに死んだ。 唯陽と出会っていなかったら、きっと生きていられなかった。心から感謝しているし、家族のように愛している。 唯陽が死ぬときには、深愛のもつ全ての技術を駆使して、最も美しく殺してあげたいと思っている。 「一緒に来る？」と聞かれたから、「行く」と答えた。ただ、それだけ。そんなあっけない始まりだった。 【個別HO】――貴⽅は＜遺書屋＞の⽚割れであり、 遺書を書かせ、⾒届けたのちにその対象を必ず殺す者だ。 相⽅であるHO1は「遺書」という存在にとても惹かれている。 貴⽅もそうかもしれないし、さほど貴⽅は「遺書」という存在に興味がないかもしれ ない。 しかし、この裏社会では裏切りや殺戮は⽇常茶飯事だ。 信頼している相⽅も、⾃分だっていつ死んでしまうかわからないし、 ⾃分達は「遺書屋」として名も知れてしまっているから尚更恨みを買うことだってあるだろう。 だからかもしれないが、貴⽅はいつも⾃⾝の「遺書」を持ち歩いている。 ⾃⾝が死んでしまった時のためにだ。もちろん相⼿は相⽅であるHO1に対してだ。 【夕星 深愛の遺書】 ゆうくんへ 　今、この手紙をあなたが読んでいるということは、わたしはもうこの世にはいないのでしょう。 　っていうのががベターな書き出しなんだよね、きっと。この前本で読んだんだ。一度でいいから書いてみたいと思っていたんだけれど、最初で最後になっちゃったかも。残念だな。 　あのね、おひさまの影で生きるしか術がないわたしたちは、いつかみさまのところに行くことになるか、わからないから。だから、あなたの一番愛する方法で、わたしの言葉を残そうとおもう。あれ、そもそもわたしたち、ちゃんとかみさまのところに行けるのかなぁ。 　あの日、夕陽に照らされたあなたは、世界の何よりもきれいだったよ。 　だから、わたしはあなたと共にゆこうと思ったの。 　あなたと出会えて、わたしは、もう一度生きることができた。 　父のような、兄のような、弟のような、恋人のような、わたしのような、そんなあなたが大好き。 　寂しがりやなあなたが、いつかの世界、おひさまの下で幸せに笑えますように。ごめんね、わたしのいない世界でも笑っていて、と願えるほど、わたしは大人の女性ではなかったみたい。 　わたしを連れて行ってくれたあなたを置いていく、恩知らずなわたしのことを、どうか許さないで。ずっと、ずーっと、赦さないで。忘れないで。覚えていて。 　わたしとあなたで過ごした愛しい日々を、どうか。 　ううん、だめだ。やっぱりお手紙書くの、得意じゃないや。お手紙担当は、ゆうくんだもん。 　じゃあ、またね。世界で一番、愛していたよ。 2020/4/19　ドロップアウトディスパイア　ロスト ごめんね。 2020/6/27　思牙にも懸ける　生還 約束、してくれてありがとう。わたしに、誓ってくれてありがとう。どうか来世は、普通の幸せを。

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