タイトル:Leroy(ルロイ) キャラクター名:Leroy(ルロイ) 職業:農民 年齢:22 / 性別:男 出身:フランス ブルージュ 髪の色:夜の湖 / 瞳の色:月光 / 肌の色:白 身長:185cm 体重:65kg ■能力値■ HP:13 MP:18 SAN:63/79      STR  CON  POW  DEX  APP  SIZ  INT  EDU  HP  MP 作成時   9  10  18  15  18  15  17  16  13  18 成長等 他修正 =合計=   9  10  18  15  18  15  17  16  13  18 ■技能■ ------------------------ 戦闘系技能 ------------------------ 習得/名前       現在値 習得/名前    現在値 習得/名前      現在値 ●《回避》      50%   《キック》  25%   《組み付き》   25%  《こぶし(パンチ)》50%   《頭突き》  10%   《投擲》     25%  《マーシャルアーツ》1%    《拳銃》   20%   《サブマシンガン》15%  《ショットガン》  30%   《マシンガン》15%   《ライフル》   25% ●《杖》       80%   《》     %    《》       % ------------------------ 探索系技能 ------------------------ 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値 ●《応急手当》50%   《鍵開け》 1%    《隠す》  15% ●《隠れる》 85%  ●《聞き耳》 75%  ●《忍び歩き》50%  《写真術》 10%   《精神分析》1%    《追跡》  10%  《登攀》  40%  ●《図書館》 60%  ●《目星》  85% ------------------------ 行動系技能 ------------------------ 習得/名前    現在値 習得/名前   現在値 習得/名前    現在値  《運転》   20%   《機械修理》20%   《重機械操作》1% ●《乗馬》   37%   《水泳》  25%   《製作()》  5%  《操縦()》  1%    《跳躍》  25%   《電気修理》 10%  《ナビゲート》10%   《変装》  1%    《》     % ------------------------ 交渉系技能 ------------------------ 習得/名前    現在値 習得/名前        現在値 習得/名前 現在値 ●《言いくるめ》90%  ●《信用》       35%  ●《説得》35% ●《値切り》  25%  ●《母国語(フランス語)》100%   《》  % ------------------------ 知識系技能 ------------------------ 習得/名前      現在値 習得/名前      現在値 習得/名前  現在値  《医学》     5%    《オカルト》   5%    《化学》 1% ●《クトゥルフ神話》20%  ●《芸術(演技)》  75%   《経理》 10%  《考古学》    1%    《コンピューター》1%   ●《心理学》90%  《人類学》    1%    《生物学》    1%    《地質学》1%  《電子工学》   1%    《天文学》    1%    《博物学》10%  《物理学》    1%    《法律》     5%    《薬学》 1%  《歴史》     20%   《》       %    《》   % ■戦闘■ ダメージボーナス:0 名称    成功率 ダメージ 射程  攻撃回数 装弾数 耐久力 / 備考 大きい棍棒   80 1d8                     /                                 / ■所持品■ 名称       単価 個数 価格 備考 ランタン付きの杖    1   0             1   0             1   0             1   0 =所持品合計=     0 所持金 預金・借金 ■その他■ メモ: ■名前 本名: Louis・Vincent =Valoi(ルイ・フィンセント=ヴァロワ) 偽名: Leroy(ルロイ) ・Leroy…古いフランス語の「王様」 ・Vincent…フィンセント・ファン・ゴッホから ・Valoi…ヴァロワ朝 ●ルイ11世 「遍在する蜘蛛」(l'universelle araigne)という奇妙なあだ名を付けられていた。良く言えば用心深く、悪く言えば陰険。至るところに網を張って、引っかかった獲物は食べてしまう。 彼はシャルル7世の中央集権化政策を引き継ぎ、百年戦争後の荒廃したフランスを統一させるに最も成功した王である。その領土併合にあたって、戦争よりも主に外交・政治的な陰謀を用いて国内平和を保った。 珍しい動物の剥製や不思議な植物、聖遺物、などの収集癖があり、科学にも興味を示した。 このように現代人には理解困難な、しかし魅力のある歴史上の人物である。 (Wikipediaより抜粋) ●星月夜 画家フィンセント・ファン・ゴッホの著名な作品の一つ。月と星でいっぱいの夜空と画面の4分3を覆っている大きな渦巻きが表現主義風に描かれている。 糸杉はまるで炎のようでキャンバスの下端から上端まで描かれており、それは土地と空を視覚的に接続する役割を果たしている。 天と地を接続している糸杉は、一般的に天国と関連して、死の架け橋の象徴とみなされている。また糸杉は墓地の木ともみなされており、哀悼の意を表しているという。 「今朝、太陽が昇る前に私は長い間、窓から非常に大きなモーニングスター以外は何もない村里を見た」 ゴッホから弟のテオに当てた手紙より。 ●蜘蛛 七つの大罪の「強欲」に位置する。 しかし英国では努力と忍耐の象徴とされ、神話上でもムハンマドやダビデを救ったとされる伝説が残されている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特徴表 ・3-1 天気予報士 外を見てアイデアロールに成功すれば、1d6+1時間の正確な天気を予想できる。降水確率や風の向き、強さ、嵐の時間帯、雷の落下しやすい位置なども予測可能。 ・2-5 鋭い洞察力 優れた感覚の持ち主であるため目星に+30% _________________________ ■基本情報 名前: Louis・Vincent =Valoi 一人称:俺 二人称:君、貴方/お前 誕生日:4/14 誕生花:ボタン… 「風格あるふるまい」「王者の風格」 好き:自然、動物、友人、昼寝 嫌い:有象無象の馬鹿、権力を振りかざす馬鹿、世の中が平等だと勘違いする馬鹿、甘えきった馬鹿、自分から幸せを奪うクソ野郎 前向きで明るく、どんなときも笑顔を忘れない好青年! 力も体力もあまり無いが、いつも一生懸命村のために働いている。泥に汚れることも手が傷付くことも厭わずどんな仕事でも喜んで引き受ける。居るだけで場が和やかになるのであちこち引っ張りだこ! 柔らかい物腰と誰もを平等に扱う誠実さ、麗しい見目から、村人からは「月明かりのルロイ」と愛されている。(美女と野獣冒頭のベルみたいな!) 芝居がかった詩的な口調で喋る。王子のような態度。 ……… 10年前に革命によって殺された王族の生き残り。ホントに王子なんだなあ〜これが笑! とにかく自分を不幸に追いやった何もかもが気に入らない。穏やかで無害なもの以外全て自分を殺すか陥れるための道具に見える。極度の人間不信で厭世家。嫌いなものが何か聞かれたら、「そういう無駄な質問をしてくるお前みたいなやつ」と答える。 「ルロイ」としては世の全てを愛する穏やかで優しい青年。世界を照らす白い月明かり。 「ルイ」としては世の全てを憎む陰険で姑息な青年。世界を包む暗い新月の夜。 _________________________ ■人物・性格 善意を素直に受け取ることができない捻くれ者。自分に善意を向けてくる人みんな信じられない。善人の思考理解できないし愚かだし損するだけだと思ってる。 出処の不明瞭な焦りと怒りが常に体を満たしていて、この世の全てに嫌悪感が溢れている。本人はこれを「熱い」と表現している。臓腑が炎でじわじわと焦がされていく感覚らしい。 芝居がかった口調も王子然とした優しい態度も全て意図的なもので、実際は心の中で「アホくさ」と悪態をついている。ホント綺麗事ばっかで喉が焼けそうだ! しかし「ルロイ」の言動全てが嘘という訳ではなく、実際に村の人(ロマンやミラ)のことは大切に思っている。そのため自身の身を顧みず村のために出来ることはするし、心の底から幸せになって欲しいと思っている。 合理的ではないと分かりながらも情を切り離すことの出来ない、悪役のなりそこない。馬鹿な愚か者。かと言って思いを素直に口に出来るほど器用でも無いから善人にもなりきれない。まあ、この際善でも悪でもどっちでもいい。 幼なじみのミラやロマンの前では王子気取りのキザな「ルロイ」では無く捻くれ者の「ルイ」として話す。彼女たちは優しくも麗しくもない自分を肯定してくれる数少ない理解者であり、心より信頼している(本人にそう伝えたことは無い)。特にミラと話していると心が穏やかになって、少しだけ「熱さ」が薄れる。だからこそあまり近くに居たくない。危ない目にあって欲しくない。 殺人鬼や病の話も聞き捨てならない。その魔の手が自分の村まで及ぶようなことがあれば、自分は今度こそ神を恨むだろう。 幼少期は「ルロイ」のように品行方正で穏やかだった。誰もがルイが王座に着くことを望むような出来た人間だった。朗らかで民と国と自然を愛していた。しかし歪な生育環境が影響し、現在のひねくれて達観した人格になって行った。 ルイを突き動かすのは王族としての誇り(笑)と、復讐の怒りと、焦りと、苦痛と嫌悪である。ただただ熱いという感情、その炎が赴くままに生きている。 国を治める王としては狭量かつ民への愛も自国への愛も無いが、王座に就かねばならないという強迫観念に近い思いだけがある。この、煤と悪意に塗れたフランスを再建するのは何がなんでも自分でなくてはならない。自分以外の馬鹿どもには出来ないんだ!持って生まれた王者の宿命を他のゴミ野郎に渡してたまるか!! 失われた前王シャルル7世の形見を手に入れ、腹を抱えてアイツの死を笑ってやりたい。勝利王と呼ばれて尚、惨たらしく殺された父を、腹の底から馬鹿にしてやりたいのだ。そして何も知らないまま死んで行った母を、弟妹を弔いたい。 自分が王に成りたいのは、嫌いな全ての者たちへのいわば当てつけのため。玉座を手にしたら今までの誰より真っ当で素晴らしい王になってやるよ!! 「お会い出来て光栄だ!俺はルロイ。しがない農奴の身だが、どうぞ何でも申し付けてくれ!」 「夜風に香る藁、目を閉じると穏やかで満ち足りた気分にならないか?君も焦らず、1度立ち止まって休むといい。」 「すまないが教養が無くてね、俺の態度は失礼だっただろうか…。謝るよ。お詫びになにか出来ることはあるかな?」 「あ゛ぁーーーっ黙れ虫けら共がッ!冗談も大概にしてくれ。お前みたいなクソ野郎と同じ空気を吸ってるってだけで、俺は腹が立って死にそうなんだよ!!」 「税金まみれの脂肪蓄えた豚の食い残し。それに群がる汚いハエ。フランスとかいうゴミ溜めの、汚泥の底の玉座が俺の居場所だ。」 _________________________ ■経歴(ルイ11世の史実を参考にしているが、シナリオの都合上年代が大幅にずれている箇所が多々ある。) 春風に蒲公英が揺れる爽やかな朝、ルイは王位継承者第1位としてシャルル7世とマリー・ダンジューの間に生まれ落ちた。茂った木々の隙間から零れる日差しが柔らかく白い肌を照らし、母の温かな腕が体を包んだ。使用人と医者が歓喜の声を上げ、公務中だった父が慌ただしく部屋のドアを開ける。 太陽と祝福に包まれたこれが、記念すべきルイの誕生だ。 美しい毎日だった。パンの焼ける香り、本の詰まった棚、父の肖像画、庭先の花、全てが微笑んでいるようだった。母が自分の髪を梳いてくれる時間が好きだった。穏やかで満ち足りた午後がずっと続いているような幼少期だった。 しかし賢いルイが無垢な子供でいられる期間は余りに短かった。まず尊敬する父、シャルル7世が、愛妾であるアニェスに溺れていくのを見た。アニェスはヨーロッパ初の公妾になるほどシャルル7世に愛されていたが、その贅沢趣味は些か行き過ぎたものだった。光るダイアモンドのアクセサリーが憎たらしかった。母マリーも彼女の美貌を認めてはいたが、ルイは穏やかな母を忘れアニェスにのめり込んでいく父に不安感を覚えていた。父の鋭い眼光が濁り、胡乱な道へ足を踏み出していく姿はなんとも言い難い不愉快さがあった。 そして予想通り王宮内でのアニェスの発言力は段々と増していった。 やがてルイにはカトリーヌ、ヨランド、ジャンヌ、マドリーヌ、シャルルという5人の弟妹が出来た。段々と家族と過ごせる時間がなくなっていった。自分の足で歩けるようになってからは母に抱き上げられることも減り、代わりに本と向き合うことが増えた。使用人に迷惑をかけるわけにもいかないから、黙って1人で過ごした。兄妹達との会話はあまり無かったように思う。撫でたり、食卓で一言二言交わしたことはあっただろうが、成人したルイの記憶に残らないくらいの浅い交流だ。 かつてあんなに輝いていた窓の外が酷くつまらない灰色に思えた。揺れる蒲公英の嘘のような丸さ、幼い黄色も見飽きた。当時読み漁っていた物語の中で優雅に振る舞う王子の姿が妙に滑稽で、今も忘れられない。時期王たるものが恋などに現を抜かして、馬鹿が。そういう奴のせいで国が壊れるんだ!幼いルイの感想はそれだけだった。(挿絵は非常に美しかった記憶があるので、芸術全般に対して興味がなかったわけでは無いらしい。) 初めて玉座に座る父を見た時は確かに格好いいと思ったのだが、2度目に見た時は置物のようだと感じた。3度目に見た時は「アホくさ」という冷めた感想が浮かんだ。ルイは父親が嫌いだった。女に誑かされて正常な判断すら出来ない父を危ぶんでいた。自分が生まれた日、公務を中断してまでマリーの部屋に駆け込んできた父の第一声目が「男か?五体満足か?」だったことを使用人から聞いて失望した。 村娘ジャンヌ・ダルクを起用し、百年戦争を終結へと導いた勝利王の栄光と裏腹に暗愚な背景を持つシャルル7世。ルイは心底彼を嫌悪していた。それでも、自分が彼の跡を次いで次期王になる心構えはあった。まだ2桁にもならない歳の頃だ。このフランスを自分ならもっと豊かでもっと良い国にできると思っていた。 思いたかった。そう信じたかった。希望を持たなければ、王宮という名の人間牧場では死んでしまうから。生きる意味が無くなってしまうから。 …… 少し背の伸びたルイの密やかな楽しみは、真夜中に部屋を抜け出して夜風を浴びることだった。外へ出て貧しい国の灯りをぼうっと眺めると、王も民も関係なく夜に溶けていく気がした。とても気持ちが良かった。星空と草花、月、そして自分だけの世界で目を閉じると気分が軽くなった。よく晴れた夜はこっそり部屋を出て、見張りに見つからないように庭で空を眺める。たったそれだけの時間が、ルイの娯楽だった。 無害な自然が好きだ。鳥のつぶらな目はこちらを値踏みしない。やわらかい芝は青い匂いがする。唯一心を許せるのは、そんな無害で素朴なものたちだけだった。 だがそんな静かな時間も長くは続かない。 11歳の頃、いつも通り部屋を抜け出し庭に行くと大嫌いなアニェスが居た。月が蒼い、肌寒い夜だ。アニェスは甘い香水の匂いを纏いながらゆっくりとルイに近づき、賢い猫のように話し出した。 「私の事がお嫌いなんでしょう?」 「私が貴方のお父さんを盗ってしまったとお思いで?」。 何も頭に入ってこなかった。こんなことなら外に出ないで部屋に居たら良かったと思った。もう部屋に戻ります、と控えめに伝えると、アニェスが部屋まで送ると申し出てきた。断る理由も無くそのまま部屋に向かうと、アニェスはルイを抱き締めてそのままキスをした。分厚いゴムが口内をまさぐるような不快感に背筋が凍った。この女は何をしようとしている?一体、何を考えている?突然のことに思考が追いつかず、足は何故か固まって動かない。視界の反転、大きく柔らかいベッドに押し倒され、ゆっくりと体を触られた。子を愛撫する母の手つきでは無く、男と交わる女のそれだった。アニェスはそれから、見せつけるように自身の肌着を脱ぐ。 「貴方、私の事が本当にお嫌いなのですね。でも大丈夫。きっとわかっていただけます。貴方もシャルルも、所詮は同じ男なのですから。」 この女、王だけでは飽き足らず次期王である自分まで食うつもりか。贅沢趣味にも程がある。 ああ、なんて気持ちが悪い!精一杯の力でアニェスを突き飛ばして逃げた。走って、外に向かった。はだけた服を直しながら、恐怖と怒りで零れ落ちそうな涙を懸命に堪えていた。水が飲みたい。気持ち悪い。何だあの女。俺と父が同じ?笑わせるな。反吐が出る。雌豚め、消えろ、消えろ、消えろ。 鳥につつかれて目が覚めると自分は庭で寝ていた。最悪の目覚めだった。腹が立って仕方がなくて、その日のうちに父の部屋を訪ねてアニェスを追い出してくれと申し出ると大喧嘩になってしまった。父は馬鹿すぎる。あの女は人の形をした悪魔だ。吐き気を催す香水の匂いと、好きでもない相手とのキス。冷たい手になぞられた腹、その、さらに下。全て気持ち悪かったのに、怖かったのに、嫌で嫌でしかたなかったのに、誰にも言えない。言ってもわかって貰えない。悔しかった。殺そうと思った。 思ってしまった。 それ以来アニェスの食事に密かに水銀を混ぜるようになった。賢いルイは緻密に計画を立て、化粧品などに含まれる水銀を利用し長い時間をかけアニェスを死に追いやろうと決心した。 家族、側近、誰もこの行為には気が付かなかった。あるいは、見て見ぬふりをしていたのか。 それから一年後。ルイが12歳になった頃。 国内の情勢はより厳しくなり、王権に対して国民の反感も高まっていた。国はピリピリとした緊張状態に包まれ、王宮内にも重い暗雲が立ち込めていた。不安そうなマリーの顔、抱かれる腹違いの弟、ため息の増えた父、荷物をまとめ始めた使用人。例えどんなに幼い子どもでも、この様子を見れば自分たちが危うい立場の者なのだと理解できるだろう。このままではシャルル7世の統治も時間の問題だと感じた。戦争好きな彼では確実にフランスを立て直すことはできない。莫大な、形のない焦りが心を満たす。では、自分なら出来るのか?あの椅子に座り、この荒れ果てた国を治めることが。勝利の後にあるのは停滞か、敗北のみだ。勝利王の跡を継ぐことが自分にできるのだろうか。 たった12歳の、年端もいかない少年に与えられようとしている冠はあまりに重く、そして歪んでいた。 …… 来たる冬の日の夜。 冷えた空気に夜空が冴えて、星が満遍なく広がる日だった。遠く伸びる糸杉、渦を巻く星団、鮮やかな夜の景色とは裏腹にルイの心は暗い。妹のジャンヌが高熱を出したのだ。もちろん妹への心配もあったが、ただでさえ不安の多い王宮内に更に不安材料が増えたこと、慌ただしく廊下を駆け回る侍女たちを煩わしく思った。何となく心がザワついていた。今夜は何かが起きる、そんな確信があった。 布団にくるまり意味もなく素足をばたつかせていると、ドアの外が一際騒がしくなった。ジャンヌが吐血したらしい。慌てて看病担当の侍女が部屋を飛び出し、父を呼びに行く音がする。何故父なのか?医師はどこへ行った?ドア越しに会話を聞いていたルイの頭にそんな疑問が浮かんだ。まあ、病に伏せている少女が父に会いたいと思うのは当然か。そう自問自答したものの、違和感は拭いきれなかった。 数拍おいて、ジャンヌの部屋に何かを運び込む音。だいぶ重そうだが一体なんだろう。 侍女が呼吸を整える音。ぶつぶつと何かを言っているがよく聞き取れない。祈っている?怯えている? しばらくの後、父の足音。足を引きずって歩く彼の足音は特徴的だったからすぐに分かった。父は息を切らしていた。ジャンヌの危篤と聞いて急いで寝室からやってきたのだろう。ジャンヌはアニェスとの初の子供であるということもあり、父の愛娘だった。5人の兄妹の中で父はジャンヌを最も大事にしていた(イングランドに捕えられるジャンヌ・ダルクを見捨てた男のくせに、皮肉だ。) なんだ?何かがおかしい。杞憂であってくれればいい、だがもし予想が当たっていれば…。 ルイは部屋を出て長い廊下を進み、ジャンヌの部屋の方へ走って向かった。丁度父がジャンヌの部屋の扉に手をかけたのが見えた。待って、待って父様、手を伸ばす。 鼻をかすめるのは油の匂いだ。広い廊下にも充満するほどの濃い油の匂い。 愛娘ジャンヌの発熱。 呼ばれる父。 何か重いものが運び込まれたジャンヌの部屋。 「すみません、すみません王っ!!!?!ど、どうかお許しください!家族共々脅されているのです!!!ああああ、あああっ!!!」 侍女の絶叫、ガシャンと床に割れ物が落とされる音。正面の部屋からは顔を真っ青にした侍女が出てきて、こちらに目も向けず走り去っていった。全てを理解したルイは真っ白な頭のままジャンヌの扉を開け、父の名を呼んだ。 赤赤と燃える鮮烈な炎が喉の奥を焦がす。まとわりつく油の匂いも床に散らばったガラスも、口から血を流して嘔吐く妹に覆いかぶさる父も、 全て 全て  醜い 父は泣いていた。ジャンヌ、すまないジャンヌ。どちらのジャンヌへ向けたものか、父は熱波で息も絶え絶えになりながらしわがれた声で泣いていた。アニェス、愛しているよ。マリー、共に過ごしてくれてありがとう。カトリーヌ、ヨランド、マドリーヌ、皆健やかに育ってくれ。 馬鹿らしい。早く逃げろよ。ジャンヌはもう助からないのに。炎は部屋を埋めつくし、廊下に迫ろうとしているのに。 _ルイ、お前は絶対に王になれ。玉座はお前のためにある。 焼け切れた喉で、シャルル7世はそう言った。 駆け出す。外へ、外へ行かねば。黒煙で視界が悪い。母は、弟妹は無事か?無事なわけが無い。クソ、クソが。息が苦しくて頭に酸素が回らなくて上手くものが考えられなくて足だけが動いていて、最低だ!いい加減にしてくれ!こんな最低の国の、最低の玉座が俺のためにあるだと!?熱い、あついあついあついあついあついあつい!!!逃げろ生きろと自分に唱えているのは誰だ?大天使ミカエル?それとも悪魔サタンか?自分自身?父?わからない。外から激しい怒号が聞こえる。クーデターだ!国民が攻めてきたのだ!うざいうざい、あつい、だれか どうして 許せない 何故? 廊下に転がる死体、死体、死体から目を逸らす。 その中に母マリーの姿があった。すみません母様、俺は貴女を連れて行けない。 門を抜け、冷たい冬の夜の風。濃紺をさらに濃くした闇の中にごうごうと燃え盛る城の一角。黒煙が糸杉のように真っ直ぐと天に向かうのを見ていた。赤い炎。ああ、人の死は赤いのか。国の死は、王の死は赤いのか。 眼前には何人もの国民達がいて、肩で息をする自分を見るなり「王の子だ!」と掴みかかってきた。「革命だ!革命だ!」狂ったように唱える男たちに何度も腹を殴られる。乱雑に体を持ち上げられ、ボロ雑巾のように投げ捨てられてはまた掴みあげられ殴られる。 このまま死ぬのか、俺は。 意識が暗い夜に溶けていった。 … 目が覚める。目が覚めたということは、自分は死んでは居ないということだ。擦り切れた衣服、痛む身体中、縄で縛られた腕。ここは馬車の貨物台だろう。目隠しされているようで辺りの様子はわからないが、激しい振動でそう察しがついた。自分は身売りされるのか。だが死んでいないなら良い。いくらだって逃亡のチャンスはあるはずだ。再度自分に喝を入れるように唇を噛み締めた。 乾いた血の味がした。 そこからはお察しの通り事が運び、商人たちの遊び道具として高値で売られたルイは奴隷のように扱われることとなる。熱い。ずっと炎が体を満たしている。自分はこんな所に燻っている場合では無い。ただひたすら逃亡の機会を待った。どれだけ酷いことをされても、自分の中に炎が燃え続ける限りは耐えられる。不快極まりない毎日、朝も夜も億劫だったが心は折れなかった。ルイは人並み外れた忍耐力の持ち主だった。 耐え忍ぶ毎日の中で、父が死んだのは国民のクーデターによる革命のせいだと話を聞いた。妹ジャンヌは毒を盛られて高熱を出し、看病に当たっていた侍女が脅しをかけられ城の炎上に加担したようだ。そして火事によりマリーや他の弟妹、アニェスも死亡したらしい。 くだらない。 そして1年と経たないうちに転機は訪れる。酒を飲んで泥酔した主人がルイに手錠をかけ忘れて眠ったのだ。この機会を逃すわけにはいかない。本当はこの男も殺してやりたいほど憎かったが、それで脱走が失敗しては元も子もないため嫌悪を飲み込んでこっそりと部屋を出る。いずれ自分が玉座に座った時こいつを見つけ出して、適当な罪で惨たらしく死刑にしてやろう。 クローゼットから丈の合わないシャツを引っ張り出し、姿を隠すために布を羽織った。目指すはなるべく遠く。どこかの村。この身を隠すことの出来る農村に行こう。馬車を借りることも出来ないから仕方なく徒歩で、昼夜飲まず食わずで村を目指す。馬車に乗せられていた時、微かに牛の声がした。恐らくは近くに集落か村があるはずだ。空腹も足の疲れも気にならなかった。ただ酷く喉が渇いていた。 風に香る藁。土と草と、人の声。 やっとの思いで村にたどり着くと、怪訝そうな顔をした女性が遠くから声をかけてきた。汚れたシャツに美しい顔立ちというあべこべな見た目の、どこから来たかもわからぬ少年。どこから来たの?名前は?女の問いかけに答えられるものはひとつとして無かった。それどころか、疲労と飢餓が限界に達し、ルイはどさりと倒れ込む。慌てて駆け寄るその女性の足に縋り付き、ルイは惨めにも懇願した。「ここに住ませてください!なんでもするから!馬小屋でもいいから寝れる場所が欲しいんだ!」。最早、自分の声が言葉になっているのかも分からなかった。必死だった。そんなルイの必死さに気圧されたのか、女性は腰に提げていた水筒を渡して水を飲ませてくれた。ただの水だというのに涙が出るほど美味かった。 女性はそれから何も言わず村の偉い人を呼びにいった。何事かと野次馬も増え、気づけば自分は注目の的となっているではないか。ルイは居住まいを直し、水筒の蓋を閉め、現れた壮年の男性…恐らくは村長と思しき人物にお辞儀をした。外套代わりに纏っていた布をつまみ、かつてみた絵本の馬鹿な王子のように流麗に。 初めまして、俺はルロイ。訳あって住む場所を無くしてしまった。どうかこの村に住ませてくれ。できることなら、どんな事でもやるから。 この言葉には嘘も隠し事も含まれていたが、それ以上に必死で真摯なものだった。誰もが、彼を許さない道理は無かった。 かくして貧しい村に貧しい仲間が増えた。 ルロイは豪語した通りどんな仕事でも全力でやった。温室育ちで体力も筋力も人並み以下だったが仕事の覚えは早く、何事も効率良くこなすことが出来るのが強みだ。村民に会えば欠かさず挨拶をしたし、助け合いの精神を忘れなかった。正直農村の実態がこんなに厳しいとは思わなかった。王宮暮らしがどれほど贅沢で恵まれていたか嫌でも思い知らされる毎日。隙間風の吹く家、足りない食料、高すぎる税、全て想像していたよりも苦しいものだ。乞食を生業にする者まで居るだなんて見るに耐えない。そんな時毎度ルイを満たすのはあの炎だった。今の王は何をしているのか?それともそんなフランスの基盤を築いた過去の王が悪かったのか。考えれば考えるほどに熱くなる。この腐った国、善人を救わず悪人ばかりがのし上がる構造に腹が立った。 ミラという少女と仲良くなった。彼女は明るく働き者で誰からも愛される人で、新参のルロイのこともよく気にかけてくれていた。ルイはこういう底抜けの善人と接する時、どうしていいか分からなくなってしまう。美しいガラス細工を汚れた手で持ち上げることに抵抗があるように、触ったら壊してしまうのではと不安になるのだ。 だが1度、彼女に呼び止められて「ルロイはいつも何に大してそんなに怒ってるの?」と聞かれたことがある。 自分は怒っていたのか、とその時初めて気づいた。 よく分からない、自分を蝕む感情を言い当てて見せた彼女に興味が湧いた。それから、彼女とはルイとしてよく話すようになった。初めて素で話した時、ルロイからは想像もできないようなくすんだ人格とねじ曲がった思考にミラは驚いたものの、それ以上に嬉しそうな顔をして見せた。ルイもそれが嬉しかった。 だからこそ、こんなにうつくしい心のひとと一緒に居てはいけないと思う。 ロマンという青年のことを知った。彼の祖父は自分の父の臣下だったと言う。年代的にはまだ彼が愚を極める前の、輝かしい勝利の時代だっただろうか。あんな男に仕えていただなんて気の毒だと思うが、ロマンの両親のおかげで自分は無事暮らせているのだろう。数少ない事情を知る者として感謝はしている。 ロマンの冷静で聡明なところを評価しており、非常に有能な人物だと思っている。頭が切れる人間は多い方がいい。ルイがミラへ向ける感情は庇護に近い友愛(恋とは明確に異なるもの)だが、ロマンのことは対等な者として認めている。 何度も冬を迎えて、その度に僅かな春が来た。それを繰り返し10年の月日が経とうとしていた。フランスには怪しい病、殺人鬼の話題が跋扈し、国の情勢は極めて危ういものとなっている。農奴たちもその日暮らしを延々と続けているような状態で、誰が見ても厳しい毎日を余儀なくされていた。更に人々を襲い始めた原因不明の病が追い打ちをかけ、苦しい中でも明るかった人々の顔にすら影が落ちていた。 そんな時、村に教会からの召集がかかった。なんでも病の状況の報告のため教会に出向いて欲しいらしい。 吉報だ。これを逃す手はない。 ルロイは迷いなくそれに立候補し、村民たちもルロイならと快く任せてくれた。 村に来た10年前からかなり伸びた身長。彼に幼い第1王子の面影は無い。 教会に行き、王冠を取り戻せ。あの炎が自分を急かす。熱さで身が焦げ、もう心地よいほどだ。息もできないゴミ溜まりのこの国、その腐敗の中心で凱旋をしよう。濁った泥から玉座を掬って、我が物顔で腰掛けるのだ。 見よ、愚王シャルル7世。 そして阿婆擦れアニェス、可哀想なマリー、あの日俺を殴って好き勝手暴いたお前、お前、お前、お前、お前。 お前たちにふさわしい王になってやる。 なんてったってそこは、「俺のためにある」らしいからな。 「今更悔しいなんて言っても無駄だ。幕は上がった!革命だ!革命だとも諸君!」 _________________________ ・月のワルツ/諫山実生 ・アイロニックメタファー/蝶々P ・Iron Lotus/Mili _________________________ ■HO2 残された血族 農民であるあなたには秘密がある 前王シャルル7世の血を引いている。しかし王であった父親は革命によって裏切りを受け殺害され、自分も同じように殺されかけたため逃亡し隠れるように暮らしている。 このままここでひっそりと暮らせばたしかに長く生きながらえることはできるだろうが、それでもあなたには王族としての誇りがある。 奪われた家族の形見と名誉を取り戻す、そして革命を起こし再び王の座に戻ると亡き家族に誓った。世論は今傾いており、すこぶる現王の評判は悪い。王族の象徴たる王冠を取り戻せばなんとか王権を取り戻すことができるかもしれない。 『教会のどこかに保管されている王族の誇りの象徴たる王冠を取り戻すこと』『家族の形見である品を取り戻すこと』『王座の奪還』それがあなたの目的だ。 ここ最近蔓延している病の原因調査のため自分のいる村が抜擢され、自分はそれに立候補した。教会へと向かいそこで状況報告をすることとなる。 このチャンスを逃せば次いつになるかはわからない、一世一代の計画を実行しよう。 あなたにはHOの恩恵が与えられる。 <隠れる><忍び歩き>の初期値が50 駆け引きや立ち回りがうまい、交渉技能に+20補正 過酷な状況下で生きてきたことからショックロール時にCON*6で判定できる。 また、毒に対する耐性がある、POT対抗に+20補正 ■簡易用■ Leroy(ルロイ)(男) 職業:農民 年齢:22 PL: STR:9  DEX:15  INT:17 アイデア:85 CON:10  APP:18  POW:18  幸 運:90 SIZ:15 SAN:79 EDU:16 知 識:80 H P:13  M P:18  回避:dex*2  ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――― [技能](職業技能点:320 個人技能点:170) (書式:職業/個人<成長>[その他]) ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 ――――――――ここに記入―――――――― ・防具 ――――――――ここに記入―――――――― ・所持品 ――――――――ここに記入―――――――― [プロフィール]