タイトル:亜月式円満堂円努 キャラクター名:円満堂 円努(えんまんどう えんど) 職業:美大生 年齢:21歳 / 性別:男 出身:日本 髪の色:黄&ピンクっぽい紫 / 瞳の色:水色 / 肌の色:焼けてない 身長:172cm 体重:65kg ■能力値■ HP:14 MP:11 SAN:55/99      STR  CON  POW  DEX  APP  SIZ  INT  EDU  HP  MP 作成時  10  14  11  18   7  13  17  15  14  11 成長等            1 他修正 =合計=  10  14  11  19   7  13  17  15  14  11 ■技能■ ------------------------ 戦闘系技能 ------------------------ 習得/名前       現在値 習得/名前    現在値 習得/名前      現在値  《回避》      38%   《キック》  25%   《組み付き》   25%  《こぶし(パンチ)》50%   《頭突き》  10%   《投擲》     25%  《マーシャルアーツ》1%    《拳銃》   20%   《サブマシンガン》15%  《ショットガン》  30%   《マシンガン》15%   《ライフル》   25% ------------------------ 探索系技能 ------------------------ 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値  《応急手当》30%   《鍵開け》 1%   ●《隠す》  70%  《隠れる》 10%   《聞き耳》 25%   《忍び歩き》10% ●《写真術》 50%   《精神分析》1%    《追跡》  10%  《登攀》  40%   《図書館》 25%  ●《目星》  80% ------------------------ 行動系技能 ------------------------ 習得/名前    現在値 習得/名前   現在値 習得/名前     現在値  《運転》   20%   《機械修理》20%   《重機械操作》 1%  《乗馬》   5%    《水泳》  25%  ●《製作(爆発物)》80%  《操縦()》  1%   ●《跳躍》  40%   《電気修理》  10%  《ナビゲート》10%   《変装》  1%    《》      % ------------------------ 交渉系技能 ------------------------ 習得/名前    現在値 習得/名前      現在値 習得/名前 現在値 ●《言いくるめ》80%   《信用》     15%   《説得》15%  《値切り》  5%    《母国語(日本語)》75%   《》  % ------------------------ 知識系技能 ------------------------ 習得/名前      現在値 習得/名前      現在値 習得/名前  現在値  《医学》     5%    《オカルト》   5%   ●《化学》 26%  《クトゥルフ神話》0%   ●《芸術(造形)》  80%   《経理》 10%  《考古学》    1%   ●《コンピューター》51%   《心理学》5%  《人類学》    1%   ●《生物学》    46%   《地質学》1%  《電子工学》   1%    《天文学》    1%    《博物学》10%  《物理学》    1%    《法律》     5%    《薬学》 1% ●《歴史》     30%   《》       %    《》   % ■戦闘■ ダメージボーナス:0 名称 成功率 ダメージ 射程  攻撃回数 装弾数 耐久力 / 備考                              /                              / ■所持品■ 名称             単価 個数 価格 備考 スマホ               1   0   オレの手段 財布                1   0   オレの資源 ストゼロ              1   0   オレの水分 煙草                1   0   オレの酸素 ゴーグル              1   0   オレの視界 ネックウォーマーマスク       1   0   オレの仮面 工具セット             1   0   オレの道具 「ジ・エンド・オブ・エンド」    1   0   オレの終幕 =所持品合計=     0 所持金 預金・借金 ■その他■ メモ: オレに残っている最古の記憶といえば、保育園の壁一面に園児達の絵が飾られていて、その中でも一際目立つオレの絵を大人達がザワついて眺めていたことだ。 オレはそれを、どんな気持ちで聞いていたんだっけ。 特徴:素早い、急速な回復力 職業:芸術家(基本) 職業ポイント:EDU×10+DEX×10またはPOW×10 職業特記:専門とする分野の芸術または製作技能に+10%のボーナス 年収:2000万円 財産:1億円 円満堂 円努(えんまんどう えんど) 21歳 男性 国内でも最も難関とされる美術大学に通う男性。 交流した際の印象としてはかなりダウナー、というか陰険な雰囲気。ネットリとした喋り方な上に人相がめちゃくちゃ悪いのでだいぶ近寄り難い。それと同時に楽しいことや面白いことを好む陽気な性格でもあり、髪や服の色も派手でよく目立つ。他の学生からは「話しかけにくいけど、話しかけたところで邪険に扱われたりはしない」「良い奴ってほどじゃないけど思ってたよりは仲良くなれそう」「それはそうと一人の世界で満足できるタイプっぽいから話題やテンションを合わせづらい」というようなことを思われがち。実際に追う者は拒まないが去る者もあまり追わないタイプで、家族などの特別仲が良い相手でなければ積極的に交流を持とうとするのは珍しい。 幼少の頃から類稀な手先の器用さを見せ、特に芸術方面の才能は大人目線でも明らかなものであった。 幼い頃から頭角を現し、息子の才能に肯定的だった両親が円努のできそうなことをあれもそれもと何でもやらせ、高校生の時点では既にSNSを通して個人的な依頼が来るほど芸術家としての将来を確立していた。その実力を遺憾無く発揮し有名美大に現役合格。自分と同じく才ある者と並び、精力的に創作活動に取り組んでいた。 しかし最近になって円努はめっきり大学に来なくなった。行方不明……なんてことはなく連絡を取れば返事は来るし会おうと言えば会えるのだが、大学に来ないのかなどと問えば適当にはぐらかすばかり。何か精神の状態が悪いのかというとそうでもなく、相変わらず雰囲気は不健康的だが本人の調子は至って平常そのもの。円努自身の家族とも仲は良いままのようで、しかも大学と関係のない個人的な作品依頼には時たま応えているらしいので、彼の才能を知っている講師や同級生ほどこの現状を惜しんでいるが、今の時点ではその嘆きに報いる気はないようだ。なぜ彼が急にこうなったのかは誰も理解していない。 しかし円満堂円努自身は、ただ一人、己の心境に起きた変化を全く正しく理解していた。 良く言えば寛容、悪く言えば軽薄。オレとオレの家族のことだ。 オレが特異な才能を持っていると分かったとき、両親や姉弟はゴッドハンドだのなんだのと褒めそやした。幼心としても家族に囃し立てられるのは気分が良くて、いわゆる芸術活動自体も楽しいものだと思ってたから、オレがこの道を選んだのは極々真っ当な話だったのだろう。 想像通りの色を練って見た通りに線を引くことや、思った通りのそのままに形を捏ねることは、オレにとっては自分の手を閉じたり開いたりすることと全く変わらないように感じた。機械みたいに正しい描写ができるのは前提で、いつだって求めるべきはそれ以上。作品をより良くするための試行錯誤を重ねるのはやりがいがあった。 ガキの頃から好きだったのは非現実的で目に悪い色遣いだ。奇想天外な配色は図工の先生には嫌われたが、それをいたく気に入ったらしい両親はむしろ教師のセンスを罵倒した。むしろオレとしては、ならばどんな大人も唸らせるような完璧な作品を作ってやろうじゃないかとやる気になって、事実としてそれはしばらくの時間をかけた後に達成された。青色の太陽は当時の校長が全校生徒に紹介する出来だったらしい。 大学合格の通知が届いたとき、喜びや安堵よりも確信を抱いた。オレがこれまでの努力で培ってきた技術は正当に評価されるものだったという確信だ。 才能はスタート地点の差に過ぎない。並外れた努力をした者だけが集うこの場所では、これまでの狭い世界で神様扱いだったオレもただの人の子に成り下がる。落胆はなく、ただワクワクした。きっとたくさんの面白いことが待っているだろうと思えた。 そしてオレの予想は正しくて、大学生活は面白かったし、そればかりか全くもって順風満帆だった。当然のことだが流石のオレでも一筋縄でいかないことは多々あったものの、その辛酸込みでの充実した創作活動をしていた。自分が得た技法を余すところなく用いて世界で通用するほどの作品を目指す。簡単に言えるが単純な話ではない。オレが素晴らしく思うのでやりたいこと、つまりはオレ自身の作風と、周囲が求めているものの擦り合わせ作業は骨が折れる。その分講評で認められるのは嬉しいものだった。 だからこそ、オレの作品に対する時たまの酷評が理解できない。オレはオレがやりたいと思ったことをやっているのに、魂がないだの芯がないだのと抽象的な言葉で切り捨てられてしまうことが全く納得できなかった。 一度や二度というただの偶然で済まされる回数ではないが、誰も彼もに言われてしまうほど明らかな欠点でもないらしい。その時たまの酷評は、そもそもオレ自身の感性を込めた作品に対しては的外れな指摘であるはずだから、終わった後はいつも志を共にする友人と愚痴を言い合っていたのだが、それでオシマイにすることは何故かできないまま喉に刺さった小骨のように違和感が残り続ける。 同じような指摘を幾度も受けるにつれ、ただキャンバスと向き合っていたいだけの時間にもそれらの言葉が脳裏を掠めてしまって不快だった。身に覚えのない指摘がストレスなのかなんなのか。躊躇なく捨ててしまえるはずのそれらが、これまでは自由自在に動かせていたオレの手を少なからず拘束している。そのことが心から面白くなくて、その面白くなさを振り切るように作品作りに没頭した。 取り組んでいた課題の作業が佳境に入ってからオレは新たに面白そうなアイデアを思いついた。取り入れなくても完成はできるだろうがそれでは楽しくない。まずは実行するための参考資料を纏めて、一人暮らしのアパートにそれを持ち帰ることとした。 その帰り道の途中、オレはオレがやりたいと思ったことを確かに形にしている、ということを改めて実感する。頭の中のアイデアは無尽蔵で、それを叶えるための技術もあって、更には今もなお自らのために新しい方法を吸収し続けている。創作活動について他者の意見を気にしすぎるのは雑念に他ならないが、それでもやはり、一部の講師や同級生がオレにした指摘は全くもって的外れな言葉であるように思えたし、オレは一刻も早く自分のこの考えが間違っていないと証明したかった。オレがオレの魂に忠実であると示すためには信号を待つ時間さえ惜しくて、決して軽くはない荷物を持って歩道橋の上を渡る。 引っ越しが多い家に生まれたからこそ思うがこの振斗区、というか東京は交通量が多い。田舎に暮らしていた頃は歩道橋をわざわざ使うまでもなく道路を渡っていたし、それでも滅多なことはよほど起こらなかった。何の気なしに道路を見下ろしながらそんなことを考えて、歩みは止めないまま目線を上げる。街は人工的な明かりが煌めいていて、すっかり日が暮れた今でも暗闇に視界が支配されることはない。幼い頃に歩いたあぜ道のあまりの暗さを思い出したオレは、ほんの一瞬、ほんの少しだけ、目の前にある眩しさに気を取られた。それでも歩く速度の遅れは傍目から見れば分からないほどで、キラキラ光る街を横目に見ながら、オレのなんてことない一歩が地面に着く。 瞬間、爆発した。 轟音、が鳴っている。一拍遅れて、は?と、口から音が漏れた。 と同時に本能で手すりを掴む。大きくはないものの確かに揺れを感じたからだ。 状況が分からない。片手を離したことで抱え切れなくなった資料がいくつか落ちて、正面から吹く風でページがバラララと捲れていく。 何が起きた? 視界の中の異常に目を向けた。少し離れた場所にある、確か、放棄されていたらしいビルが爆発したらしい。爆発した? 現実時間にしてみればほんの一瞬で理解できたはずのオレは、それでもなお呆然としたまま、現象の跡形でしかなくなったビルの残骸を見つめている。 その視界の中心に、二度目の爆発が起きた。 隣接した、やはり放棄されたビル。非常事態へのあまりの衝撃に口がヒクつくのを感じる。再度鳴り響く轟音が体の中心を突き刺すのに、その感覚をどこか他人事のように思う。内側から派手に壊れていく建造物と飛び散る破片がスローモーションで見えて、にも関わらずオレは、この遅れた世界の中ではなんだってできたはずなのに、その光景に釘付けになって動くことができなかった。 我に返ったときには周囲の人々が騒然としていて、女の叫び声とかガキの泣き声とか、誰かが警察に通報する声とかが聞こえた。 オレはまだ呆然とした気分だったが、ふと自分が前のめりになっていることに気付いた。手すりを掴んだままに無自覚に身を乗り出していたらしい。 そうして道路を見下ろして、あ、と思う。持っていたはずの、印刷した資料をホッチキスで纏めた紙束を気付かないうちに落としていた。 拾いに行こうかとも思ったが、往来のど真ん中、しかも付近で爆発事故が起きたばかりのここで自動車の隙間に突っ込むなど自殺行為に思えた。こんな状況では、いくらオレが信号を守っていようと向こうもそうしてくれるとは限らない。 そこまで考えて、いや、そもそも。目を凝らしてよく見てみれば、どうやら資料は既に轢かれてダメになってしまっていると気付いた。印刷の手間がかかったのに勿体ないなと思って、けれどもそれだけだった。なんだか呆気ない終わり方であるように感じた。 信号が変わる。自動車達がまた我先にと動き出す。薄っぺらな紙を重ねただけのそれは少しも通行の邪魔にはならなくて、己を轢きちぎっていくタイヤになんの影響も与えられないみたいだった。 ただのアイデアを形にするための試行錯誤ではない、身を突き動かすような衝動は何年ぶりだったろう。 帰宅した俺の片手にはコンクリートの破片が握られていてそれがずっしりと重い。あれからただ何事もなく帰るということが何故かオレにはできなくて、警察の到着よりも早く爆破跡に駆け付けてこんなゴミを持ち帰ってきた。ただの不幸な事故、もしくは悪意による悲劇として感慨もなく片付けられてしまうのは勿体ないことのように感じたからだ。 課題のために検討するつもりだった資料を雑に放り投げ、破片だけを手にしたまま床に就く。頭の中を不明瞭な言葉がグルグルと回って‪纏まらない。視覚、聴覚、嗅覚、その他五感から齎されるあらゆる刺激はいつだってオレに尽きないアイデアを与えてくれるし、非日常に遭遇したオレの脳は活性化していたから今の状態ならなんだって創り出せる気がした。だが同時にあまりそれが素晴らしいことだとも思えなくて、この世の全てをインスピレーションにできそうな現状はむしろ煩わしくさえあった。騒がしい頭と覚醒した五感から逃れるように目を閉じて、ただ呼吸に集中する。何もいらないし、欲しくもない。人生で初めて芸術のことを、邪魔だと感じた。 いや、違う。初めてではない。 本当に昔のことだ。保育園の壁一面に園児達の絵が飾られていて、その中でも一際目立つオレの絵を大人達がザワついて眺めていた記憶がある。オレが思い出せる限りでは最も古い記憶で、オレはそのざわめきをどんな気持ちで聞いていたのかすっかり忘れていた。 今、思い出した。あのときオレは、「うるさい」と思っていたのだ。 壁一面が不定形かつカラフルな混沌で飾られていて、オレにはそれが本当に素晴らしいことのように思えたのに。ただ一つ正確無比なだけのオレの絵ばかりが注目を浴びて、大人達が計画していたみたいに代わる代わるオレの言葉を聞き出そうとするから不快でしょうがなかった。何も褒められること自体が嫌なのではない、他のガキ共が描いた意味の分からない絵を鑑賞するというオレの楽しみを阻害されるのが嫌だった。こんなことになるのなら"普通"に絵を描くんじゃなくて、下手なフリでもすればよかったと幼心に漠然と感じていた。 視覚で得た情報を正しく脳内再生する能力には自信がある。この力がいつだってオレの造形を支えてきた。 先程見た爆発をスローモーションにして思い返してみる。目を閉じた真っ暗な視界の中で、脳髄の中心で破壊を繰り返すそれだけが明滅としていた。轟音に身を震わされる感覚さえ完璧に思い出せる。この記憶が掠れ消えてしまわないように何度も何度も思い出した。闇の中で爆発が繰り返される度に、知らず知らずのうちに迷い込んだ迷路を壁ごと破壊していくのに似た爽快感を覚えた。 確認作業をしばらく反復してから、オレはゆっくり目を開ける。ボヤけた視界には電球の光が眩しくてつい目を細めてしまう。なんだか不思議な感覚だ。この部屋の天井って、こんなに白かったっけ。 自分の頭が妙に冴えている気がして奇妙だった。目を閉じていた時間は大して長くないのに、永遠に近い眠りから目覚めた直後のようにスッキリとした気分になっていた。 たった一つ確信めいた感覚がある。これを試そうと思う。せっかく一日を費やして集めてきた資料は無駄になってしまったが、そんなことはもうどうでもよかった。 オレが持つ才能の本質とは、つまり自分自身の体をほぼ完璧にコントロールできるということだろう。慎重さを要する細かい作業とやらさえ敵ではなく、それよりも大して事前知識のない化学的知識のほうが強敵だった。幸いにも、己がやりたいことの結果だけを求めるのであれば必要最低限のお勉強は早くに理解できて、地頭賢く産んでくれた両親には感謝した。 わざわざ手作りなんかしているのは市販の物を利用するのでは恐らく規模が足りないからだ。そう、規模がこの実験の要。小さすぎても実行する意味はないが大きすぎるのは身の丈に合わない。それに実験には相応の場所が必要だ。通行人に目撃される心配がないほど閑散としていて、それでいて年代が古く誰も使っていない建造物があり、ある程度建物と距離を取れる広さも揃っていることが条件だった。居住地近辺の都会ではまず見つからない。これまで作品制作で稼いできた金があるから、多少交通費に無駄遣いしても使い切ることはないだろう。オレは本来なら課題に費やすための期間をふんだんに使って計画のための準備を進めた。 実行の日は訪れた。 時間帯は夜。見つけた場所は電灯も少ないような田舎で、人通りがないとはいえども周囲だけを明るくするわけにもいかないから、オレは暗視ゴーグルを着けることにした。この目で直接見たかったので残念だったが、どうせ暗ければ肝心の実験を見られないのだから仕方ない。 俺が目星をつけたのは、どうなったって多分誰も困らないような放置されている家屋。そこに用意した物体を取り付ける。本当はオレの行動によって誰かが困ったところでどうでもよかったのだが、声をあげる人が多ければ多いほど大事になってしまうだろうからそれは避けたかった。面倒な二次災害で自分が被害を受けるのも嫌だから、ただ地面の上で建材を組み合わせただけの、時代が古い建築物である必要もあった。 念の為に顔は隠しているが周囲を再度確認し人がいないことを確かめる。多少距離を取ってから暗視ゴーグルを装着すれば、慣れない色彩であるものの風景がくっきりと見えた。仕掛けを手にした右手は柄にもなく震えている。緊張というより、高揚で。 これは正しく実験だった。化学的な反応が正しく作動することを確かめるためではない。オレが、オレ自身を確かめるための実験だ。多分オレがこの準備期間で考えた全部の予想が正しくて、だからこれは、ただの分かりきった最終確認だった。 故に。胸の内を占める期待はオレの行動を後押しするばかりで、ほんの少しの躊躇も思い起こさない。震える右手を、それでも思った通りに動かして、オレは仕掛けを起動させた。 瞬間、爆発した。 轟音が鳴っている。ド派手にぶっ壊れる家屋を見て口から漏れたのは、今度は笑い声だった。最初は控えめだったそれは次第に抑えられなくなって、思わず腹から声を出した。 ああ、やっぱりそうだったのか。 オレは今、ようやく、オレの正体を確信した。オレ自身が素晴らしいと思うことや喜びを覚えること、そのトリガーを何年も誤解し続けていた。 芸術のために試行錯誤することではない。世間に求められる作品を送り出すことでもない。古めかしい先駆者達を実力で唸らせることでもない。自らの魂をキャンバスに投影させることでもない。 そうだ、オレは。オレは、ただ。 ただ、派手なことが好きなだけだったんだ。 新たなアイデアさえ試されず放棄されていた俺の作品は、未完成のまま講評を明日に控えていた。 深夜、誰もいない構内。何人かは居残って徹夜で仕上げでもしてるんじゃないかと思ったが予想が外れた。恐らく治安の悪化を理由に早い帰宅を促され締め出されたのだろう。そこまで考えたところで、鍵がかかっていたのはそれが理由かと気が付く。施錠のせいで侵入には苦労させられたが、まあ人がいないのは邪魔が入らなくて好都合かと思い直した。やることは変わらないから誰かいたところでどうでもよかったが。 正直このまま放置したって構わなかったのだが、せっかく自分の正体を理解できたんだからその記念に仕上げてやろうと思ったのだ。 キャンバスの前に立つ。イーゼルから取り外されて壁に立てかけられたそれはキュビスムを用いたものだった。 別に今まで取り組んできた芸術活動は嫌いじゃなかった。でも自らのことを知った今にしてみると、嫌いではないというただそれだけだったのかもしれないとも思う。壊したいほど嫌ってもないし、壊したいほど愛してもなかった。この全くお綺麗な大学にはただの一つも爆弾なんて取り付けていないし、この先もそうする気はない。 小さな物を選んだとはいえ液体が入ったバケツを何個も運ぶのは少し疲れた。とはいえここまで来たらあと少しだ、勢いのまま終わらせてしまおう。これまでしてきた試行錯誤の全てを。 オレは派手な色が好きだ。バケツを一つ両手に持つ。液体が波打っているのを少しの間見つめてから、もう一度キャンバスに視線を向けた。濃い色使いが全体に塗りたくられた、未完成とはいえ迫力のある絵だと我ながら思った。 そしてオレは、手にしたバケツを思いっきり、キャンバスに向けて振りかぶった。 バシャッと音を奏でて一面の赤が垂れる。慎重に狙いを定めたわけでもないので、はみ出したインクは壁や床さえ盛大に汚した。描き途中の絵は当然原色によって隠れて修復不可能になっていく。 オレはそれを一瞬見てから、ほとんど間髪入れずに次のバケツを手に取って青色のインクをぶちまけた。それが終われば次は黄色。そこから更に色の三原色をもう一回ずつぶちまける。周辺はインクまみれになって、これは翌日確認した講師が卒倒するだろうと思い、しかしオレにはもう関係のないことかと思い直した。 赤青黄色を被さったキャンバスはオレにとっては最高の完成品だったが、客観的にはとても作品とは呼べないような代物になった。それこそガキの稚拙なイタズラみたいな有様だし、実際この場の惨状を切り取って見ればイタズラそのものにしか見えないだろう。芸術の難儀さに発狂した若者の自傷行為か、同級生の作品に嫉妬した学生の凶行か、オレが何かを言わない限りはそんなストーリーを盛られるのだろうと想像してつい小さく鼻で笑った。 ちょっとした心残りも片付けられたことだし、と帰り支度をしたところで。原色が垂れてほんの少しだけ薄まった箇所から、過去のオレが必死に描いていたキュビズムの女と目が合う。 ほとんど固有の色をなくしたその瞳が不思議と恨めしげに見えて、そのことが妙に面白かった。作品が自らを産んだ作者を憎むことも、作品が作者を憎んでいるという根拠のない妄想自体も、心の底から馬鹿らしかったからだ。今度こそ明確に口から短い息を吐いて平面の女を嘲笑し、もう用はないのでさっさとその場を後にした。多分もうあの絵を見ることはないだろうなと思ったし、特に惜しい気もしなかったので振り返ることはなかった。 あぁ、本当に。あの日から、あの爆発事故を見た日から、オレはずっと楽しくて仕方がなかった。 そうだ、オレはあのときだってただ驚いているだけのフリをして、本当は上がる口角を抑え切れなかったのだ。歪む口を片手で隠して、食い入るように身を乗り出して、大事に印刷したつもりの資料さえ落としたことに気付かないまま。オレがすっかり忘れてしまっていたオレ自身を生まれ直すみたいに思い出して、永い夢から目が覚めたような気分だった。 でももしこうはならなかったら。あのとき違う帰り道を選んだり、大学に居残ったりしていたら? ふと思ってからイーゼルの目の前に背中を丸めて座るオレ自身を想起して、あぁなんて可哀想なヤツなんだ!とまた嗤った。それと比べて今のオレのなんたる幸運かと、悍ましい仮定世界の哀れなオレ自身を、上機嫌に吹いた口笛と共に遠くへ飛ばしたのだ。 振斗区を中心に時たまニュースを騒がせる、原因不明の爆発事故。状況からして事故というよりも事件と呼ぶべきとされるそれは、主に二人の人物によって成されるものであった。 そのうちの一人こそが、自らが創造者ではなく破壊者であると自覚した円満堂円努である。 円努は試作を重ねながらも元来の器用さや賢さを活かして爆弾制作技術を高め、最初は小規模だったところから徐々に範囲の広い建築物爆破を行っている。 幸いにも彼には既に芸術で稼いでいける地盤があった。爆破計画の資金調達のために世間が求める作品を感慨もなく送り出し、それに対しての報酬で自身の趣味に打ち込むというサイクルを既に確立しつつある。 なお円努の人生が大きく変わるきっかけとなった爆発事故とは、もう一人の爆弾魔である不破井屋印座宝(本名:不破乾大)によるものだ。円努は不破井屋と比べれば、爆弾魔としての場数も技術もまだまだ未熟だろう(ほとんど全ての無害な人類と比べれば何十倍も成熟しているが)。 円努は彼の顔も名前も知らないし当然会ったこともないが、自分があの日見たものやその他複数の建築物爆破をしている人物がいるらしいと勘づいて、叶うことならば一目お会いしたいと考えている。円努にとっては例えどんな人物であろうと、自らの正体を思い出させてくれた尊敬すべき先駆者であるからだ。 『ジ・エンド・オブ・エンド』 指でつまめるサイズの、しかし強力な小型爆弾。円努が持つスマートフォンから特殊な操作をしないと起動できないようになっている。 円努はもし自身の死を直感することがあれば、即座にこれを飲み込んで自爆しようと考えている。円努にとっては自分自身さえ派手に弾け飛ぶ最期こそが最も素晴らしい幕引きであるからだ。 なお円努のこの価値観は彼にとって大変好ましい人物にも適用される。もし彼が心から気に入った人間が老衰や病死などの"地味"な終わりを迎えようとするものなら、彼は無理やりにでも自らの手で爆死させようとするだろう。どうしたって関わるべきでない危険人物である。 ■簡易用■ 円満堂 円努(えんまんどう えんど)(男) 職業:美大生 年齢:21歳 PL: STR:10  DEX:19  INT:17 アイデア:85 CON:14  APP:7  POW:11  幸 運:55 SIZ:13 SAN:99 EDU:15 知 識:75 H P:14  M P:11  回避:dex*2  ダメージボーナス:0 ―――――――――――――――――――――――――― [技能](職業技能点:340 個人技能点:170) (書式:職業/個人<成長>[その他]) ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 ――――――――ここに記入―――――――― ・防具 ――――――――ここに記入―――――――― ・所持品 ――――――――ここに記入―――――――― [プロフィール]