タイトル:こゝろ キャラクター名:青柳 史郎 (あおなぎ しろう) 職業:大学生 年齢:22 / 性別:男 出身:鎌倉 髪の色:烏羽色#180614 / 瞳の色:媚茶#716246 / 肌の色:ブルべ夏 身長:181cm 体重:78kg ■能力値■ HP:13 MP:7 SAN:/99      STR  CON  POW  DEX  APP  SIZ  INT  EDU  HP  MP 作成時  16   9  10  10  11  16  14  18  13   7 成長等 他修正        -3 =合計=  16   9   7  10  11  16  14  18  13   7 ■技能■ ------------------------ 戦闘系技能 ------------------------ 習得/名前       現在値 習得/名前    現在値 習得/名前      現在値 ●《回避》      60%   《キック》  25%  ●《組み付き》   45%  《こぶし(パンチ)》50%   《頭突き》  10%   《投擲》     25%  《マーシャルアーツ》1%    《拳銃》   20%   《サブマシンガン》15%  《ショットガン》  30%   《マシンガン》15%   《ライフル》   25% ●《日本刀》     75%   《》     %    《》       % ------------------------ 探索系技能 ------------------------ 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値 習得/名前   現在値 ●《応急手当》70%   《鍵開け》 1%    《隠す》  15%  《隠れる》 10%   《聞き耳》 25%   《忍び歩き》10%  《写真術》 10%  ●《精神分析》31%   《追跡》  10%  《登攀》  40%  ●《図書館》 75%  ●《目星》  70% ------------------------ 行動系技能 ------------------------ 習得/名前      現在値 習得/名前   現在値 習得/名前    現在値  《運転》     20%   《機械修理》20%   《重機械操作》1%  《乗馬》     5%   ●《水泳》  55%  ●《製作(料理)》15% ●《操縦(自家用車)》6%    《跳躍》  25%   《電気修理》 10%  《ナビゲート》  10%   《変装》  1%    《》     % ------------------------ 交渉系技能 ------------------------ 習得/名前    現在値 習得/名前      現在値 習得/名前     現在値 ●《言いくるめ》45%   《信用》     15%   《説得》    15%  《値切り》  5%   ●《母国語(日本語)》95%  ●《外国語(英語)》86% ------------------------ 知識系技能 ------------------------ 習得/名前      現在値 習得/名前      現在値 習得/名前  現在値  《医学》     5%   ●《オカルト》   8%    《化学》 1%  《クトゥルフ神話》0%   ●《芸術(文学)》  65%   《経理》 10%  《考古学》    1%    《コンピューター》1%    《心理学》5%  《人類学》    1%    《生物学》    1%    《地質学》1%  《電子工学》   1%    《天文学》    1%    《博物学》10%  《物理学》    1%    《法律》     5%    《薬学》 1% ●《歴史》     35%   《》       %    《》   % ■戦闘■ ダメージボーナス:1d4 名称 成功率 ダメージ 射程  攻撃回数 装弾数 耐久力 / 備考 竹刀                           / スタン                              / ■所持品■ 名称 単価 個数 価格 備考       1   0       1   0       1   0       1   0 =所持品合計=     0 所持金 預金・借金 ■その他■ メモ: 〇青柳の性格分析 基本的には好青年であるが、それは興味のない他者への対応である。程度面倒がないように円滑な交友関係を築く為の振舞いはするものの、青柳にとってはそれが常であり、最も興味の薄い他者に対しての応対であることに間違いはない。しかしながら青柳が好青年であるとの評価を受けている理由としてはその物腰の柔らかさと、言葉遣いの丁寧さにある。それによってある程度の親密さを勘違いさせながら、深入りしない程の距離感を保つことに成功している。この処世術は元来の性格と家庭における教育の賜物であり、幼少期には突っかかる同窓生を歯に衣着せぬ物言いで泣かせることがしばしばあった。 先生に対しては憧憬の念を抱いており、興味を抱くに値する人物であるとの認識を持っている。故に先生に対して今以上にお近づきになりたいと思うことはあるが、これまでの人生において上っ面だけの関係しか築いてこなかったことによる、慕う相手への行動方針が未だ決められず迷走状態にある。 〇青柳への客観的視点による分析 東京大学の学生で、現在は文学部の四年生をしている。剣道部に所属しており修練に励んではいたものの、強くなるためのやる気を出したのは『先生』、『小宮金之助』が師となってからである。周囲からの評価は比較的悪くなく、優しい人であるという認識が当てはめられている。後輩に対しても旧時代的圧政を強いる等の言動がなく、同じく剣道部の友人等とよく比較対象にされているがその評価は依然として高いままである。しかしながら突出して慕うような対象としては見られておらず、有り体に言えば良い先輩である。 〇物事の経緯 ・大学二年次 青柳と友人の想い人がデートをする→空気が悪くなり、向こうから無理と言われる 友人との恋愛話の後、先生と出会い話をする→少し先生に対して興味を持つ 先生と親睦を深める→先生への憧れを交えた恋心の芽生え ・大学三年次 先生が剣道場を営んでいる(地域の子供たちに軽く教える程度)ことを知り、大学の剣道部に入部する 一学年上の女生徒と仲良くなる→先生の事が好きなのがバレる 大学の帰り、先生宅に足を運び先生が竹刀を振っているところを眺める→指南を請う 先生の指導に応えるため、先生に値する価値を獲得することを目指すようになる→女生徒の事が好きで努力しているのだと先生に勘違いされる 勘違いを払拭するため、クリスマスの時期に一人で先生の家に向かい、自分の瞳と似た色のネクタイピンをプレゼントする。 ・大学四年次 一か月前に先生が引っ越し、連絡が取れず心配している 〇先生との関係について 先生と出会ったのは、友人から会うことを頼まれた女子と初めての逢瀬をした日の最期、愛想を尽かされ出ていった時だった。一部始終をとあるカフェで披露したものだから人からの注目を集めるのは必然であったものの、幸いにも青柳が水をコップの水を勢いよく撒かれたのを見ていたのは、閑散としたカフェで一人コーヒーを嗜んでいた先生ただ一人だった。彼女が店を出ていった後、青柳は先生に会釈をしてから帰った。カフェは青柳の馴染みの店であり、それからも度々訪れているうちに同じく常連だった先生とも話すようになった。青柳は先生の思慮深さと穏やかさに惹かれ、先生との同席がやけに居心地の良いものに感じられた。先生程の人が誰からも恋慕の情を集めていない訳がないと考えながらも、同時に先生の纏う雰囲気のせいか終生の独り身であるようにも思われた。 〇シナリオ後  先生からの手紙を受け取った。先生は俺を優しいと言うけれど、優しいのは先生だ。先生が優しいから、俺は夢を見てしまった。もしかすると、自分を受け入れてくれるのではないかと。そんな一分の可能性ぐらいはありそうな夢を。玉藻前を討伐した後、俺は先生の部屋にあった布団で夜を過ごした。あの人の遺した刀とネクタイピンを抱いて、自分の体温で少しずつ温かくなってゆく布団の中で先生の日記と小説を読んだ。何度も、何度も読み返した。読み返す度に、自らの失恋と先生の凶行とに直面しては涙を流した。遺品に残った血の匂いは青柳を覆う暗闇に充満し、血の匂いと混ざり合った布団の匂いは自分の知らない先生の一面を想起させる。手に持った日本刀で自らを切り刻んだ先生はずるい。自分の見せたい部分しか見せてくれない。一方的に押し付けて、こっちの気持ちなんて考えもしていない。ほんとうに、せんせいはずるい。 〇布団の中  先生の使っていた布団に入ると、身が竦む程に冷たさを感じる。布団をすっぽりと頭まで被り、膝を抱え込むようにして寝転がっていると、段々と布団の中が温かくなってくる。けれどこれは青柳の熱だ。青柳以外に受け取る者の居ない灼熱だ。身体は熱くなろうとも、心の穴から吹く風は無感情に冷たさを青柳に感じさせる。想い人を亡くした事で終わりを迎えた初恋は、青柳の人生に深い傷を残した。何年経っても、何をしていても、決して消える事のない傷を。 〇先生との出会い(読まなくても可)  パシャッ。冷やされた水が髪の毛を伝って滲みていくのが感覚として分かる。店が繁盛していないおかげで周囲の目がそれほど辛くないことに感謝するべきか、静かな雰囲気のせいで彼女の怒号が響き渡ったことを後悔するべきかがその時の俺には分からなかった。目の前に座っていた彼女は椅子から立ち上がり、握りしめた空のグラスをテーブルに叩きつける。透明のグラスで殴られた不透明な木製のテーブルが乾いた音を鳴らす。あんたなんて知らないと吐き捨てただけで出ていった彼女が、頼んでいたホットココアの代金を置いていかなかったことを少し気にしながら、慌てて奥から出てきたこの小さなカフェの店主にココアの注文を取り消してもらう。店の隅で窓の外を眺めていた紳士が自分の方を見ているのが分かる。目が合い、ばつが悪い俺は思わず彼に謝っていた。 「お見苦しいものを見せてしまってすいません。今日はもう、片付けて帰るんで。」 そう。とだけ彼は言った。紳士の返答はまるで大騒ぎをした俺には興味がなく、ふと音がしたからそちらを向いてみただけだとでも言いたいかのようだと感じられた。ある程度片付けてから飲んだ珈琲は思っていたよりも美味かった。  あんなのと会うのではなかった。高校の頃からの友人から、お前に一目惚れしたという女子がいるから一度会ってやってくれと言われ、こんな事で数少ない友人を失う事もあるまいと仕方なく彼女とは時刻を決めて会うことになった。彼女の容姿は世間一般的に良いとされる部類であろうことは理解出来たが、なぜ友人がこの女を薦めてきたのかが私にはとんと分からなかった。初対面であるはずの俺を過度に理解出来ているような振舞いをしながら、こちらにも深い理解を求める。所謂理想の男性像を、彼女が俺に見ているということはしばらく話すうちに判明していった。そしてそのことに気がついてからは、俺は彼女の理想像からわざと外れるような発言をするよう努めることにした。若し理想ではなかったのだと離れてくれるなら良し、理想ではなかったが俺の事を好いていると言うならそれに付き添わない理由もなかった。そう思っていればカフェで感情に全権を握らせたような言動をし始めたのだから堪ったものではない。 「俺はあの馬鹿丸出しな女子(おなご)のどこがいいのか分からんよ」  女を薦めてきた森にそう愚痴ると、森は馬鹿はお前だと俺を罵り、こう付け加えた。 「そこがいいんぢゃあないか。まあ、お前と彼女が合わんだろうと思いながら遭わせたのは悪かったが」  あの日、彼女が私に氷混じりの水を掛けてから暫くの後、森は俺に彼女と付き合うことになったことを告げた。なんでも気になった女が居たので鎌倉の海水浴場に連れて行ったのだが、夏の休みで同じく森に誘われていた俺を見て、女が一目惚れをしたのだと言う。仕方ないから一度合わせてみて失恋させてやろうと思ったそうだ。 「そこをおれが搔っ攫ったという訳だよ」  一度盗られたあぶらげが食べられずに済んでよかったと森は笑った。 「お前が馬鹿を好きだったとは初めて聞いた」 「おれは馬鹿が好きなのではないのだよ。彼女は確かにばかかもしれぬが、馬鹿ではないはずだよ」 「何が言いたい」 「彼女は所謂恋愛脳というやつで、それを取り立てて言うならばまったく彼女は愚か者だろうよ。けれどもだ。お前に振られる話のレヴェルとしては高いものではなかったか?ん? 」  森の言う通りであった。俺は彼女を馬鹿であると断じたが、知能という面においては馬鹿よりも賢いと言える部類の人間であると思える素養が、彼女との会話にはあった。しかし、そうであったとしても、以前の森であったならば付き合わぬであっただろうに。 「『賢い女子は察しが良くて困る』ではなかったのか?」 「まあな。しかしおれも考えを改めたんだ。勿論こと恋人において賢い女子は持て余すが、嫁としてなら賢い方がよいではないか、と」 「そうか。で、あれば俺も上手くいくことを願っておくとしよう」 俺がそう返すと森はそろそろ彼女と約束の時間だと言い、俺達はそれぞれの代金を置いて解散した。  あの快楽主義者が結婚を望むとは。心のどこかで、あいつは俺と一緒に行きつけにしたバーで酒を飲むものだとばかり思っていたが、そうではなかったのか。そこまで考えたところで勝手に想像を押し付けていた自分を恥ずかしく感じ、それと同時にあいつに置いていかれるような気がした。いつからか、俺はそれほどあいつに心を許していたのか。どうしたものかなぁ。 「どうかしたのですか」  比較的高いが、それでいて落ち着いた雰囲気を持つ男の声が聞こえた。少しだけ自分の口が開いている事に気付き、いつの間にか頭から外に出してしまっていたのだと理解するのにそれほど時間はかからなかった。声のした方を見ると派手さは感じないものの、革のつま先から頭まできっちりとお洒落をした紳士が立っていて、俺の頭にはいぶし銀という言葉がよぎった。 「おや、見た顔だと思えば何か月か前にカフェで水を掛けられていた青年でしたか」  そう言われて漸く、俺は目の前の紳士が女と入ったカフェに座っていた人物であることに気がついた。 「その折はお見苦しいものを見せてしまって申し訳ありません」 俺がそう形ばかりの謝罪をすると、紳士はそれを見透かしたようにくすくすと笑い始める。 「ああ、すみませんね。気にすることはないですよ。キミは所謂被害者というやつでしょうし。キミも困った女子を捕まえたものですね」 「全くです」  今となっては水を掛けられたことなどどうだってよかったが、会話の体裁を保つために紳士の慰めに応じてみせる。適当にあしらってしまってもよかったのだが、面倒である事以外に冷たくする特段の理由もなかった。とは言ってもこのようなのを相手に長々と会話を続ける趣味もないので、適度に広がらぬ返答を心がければよいだろう。 「ふむ。恋仲......というよりも女子の方が青年に惚れているといったところでしょうか。おそらく女の子は一目惚れであったのでしょうね。しかし、夢を覚まさせるにもあのやり方は少々強引だったのではありませんか? 」  突然に俺と彼女の間柄を的中させた紳士に俺は驚きを隠せなかった。この男はどうしてそれを判別できたのであろう。もしやこの間の会話を全て盗み聞きしていたのではあるまいか。そうであるならば大人しい顔をしてとんだ食わせ物だ。俺は少しだけこの紳士に対する警戒を強めた。 「いやすみません。そこまで警戒させるつもりもなかったのです。ただ、水を掛けられて尚出ていった女子を追いかけるでもなく、彼女の注文していたものを気に掛けていたものですから」  確かに会話を聞かずともその様子から推測は出来るだろう。だが、それまでの精緻な推測と、他にもある可能性を排除して結論に持って行った博打的な思考とが、俺の中で上手く噛み合わなかった。 「それで、どうかしましたか。よければこの前のカフェに行って珈琲でも飲みながら話でもしましょうか。あそこは行きつけでして」  声を掛けられて、俺は自分がぼうっとしていた事に気がつき、加えて森という友人への勝手な想像を思い出した。あの店に行くのは少々気まずいが、目の前の男が自分よりもよほど賢いかもしれないという直感と、このよく分からない紳士自体に対する興味が勝った。俺達は当たり障りなく、目指す店舗について会話を交えながら歩いた。その会話では相変わらず男の輪郭は掴めなかったが、人物像をぼんやりと眺める程度には理解を及ばせる事が出来た。  店に入ると扉に取り付けられたカウベルが口の中で飴を転がしたような音を立て、新聞を読んでいた眼鏡のマスターがいらっしゃいと声を掛けてきた。紳士はまるでここが自分の指定席だと言わんばかりに席を選び、着ていたブラウンのコートを壁に掛けて座った。向かい合うように座った俺達は、そこで漸く自己紹介をする。俺は自らの名前が青柳史郎と言い、今は東京大学の学生をしている事を告げた。紳士の名前は小宮金之助と言い、近くの剣道場で師範をしていると話した。  カフェの店内に他の客はなく、暫くして注文を取りに来たマスターに二人ともが珈琲を注文した。ぐつぐつと湯を煮えさせているサイフォン式のコーヒーメイカーの音が店内で流れるジャズに混ざり込み、心地よい雰囲気を醸している。外の寒さに冷やされた空気は窓に結露を作り、水滴を白く曇った窓に垂らした。 「さて、お話を聞いてもいいでしょうか」  小宮金之助は俺にそう促した。  小宮金之助はよく、先生と呼ばれていた。いや、先生と呼ばれているようだと言った方が正しいかもしれない。剣道場で師範をしていると言っていたが、そのせいか通行人に『先生』と呼ばれる場面を俺自身も何度か目にすることがあった。教職でも医者でもないから少しこっぱずかしいけれどね、と笑う彼に俺はどこか親近感を抱くようになっていた。小宮金之助という紳士と二度目に会ったあの時、俺は目の前の人物が持つ知恵の大きさに舌を巻き、それどころか少しばかりの尊敬を抱いた。加えてその敬意は決して欠けず、会話を続ける度に深まっていった。  初めて話をした日から一月ほど経った頃、俺は彼を『先生』と呼ぶようになっていた。呼び始めた頃は面映ゆそうにしていた先生も、木々の変化が二度起こる間に慣れてくれたらしかった。 「初めて呼ばれた時は酷く困りましたが、キミの先生と呼ぶ声にも聴き慣れましたね。本来私は先生と呼ばれるような人間ではないのですが、キミに呼ばれるのは少し嬉しくもあります。キミが先生と私を呼ぶ度、また来てくれたかと思ってしまうのですね」  先生は少し照れた様子で、そう俺に話してくれた事があった。俺はそれが嬉しくって堪らなくなってしまって、何も返せずにその場でにやにやと頬を緩ませるだけしか出来なかった。  俺が先生のもとを訪ねる時は、いついつなら空いていますよと先生に教えてもらった日にしていた。先生の都合が悪い時に訪ねて困らせてしまってもいけないし、俺は全く構わないのに待たせてしまったと先生に謝らせてしまうのが申し訳なかった。けれどその日は偶然剣道場の傍を通ったものだから、もしかするとおられるのではないかと覗きに行ってしまったのだった。時間からして、既に生徒が帰ってしまっていたのだろう。先生は風通しのよい剣道場で一人、剣を振るっていた。握る木刀を振る度に散る先生の汗がキラキラと輝き、傾く夕日にほのかに照らされた精悍な横顔は皺の一つ一つでさえ素晴らしく見えた。  先生の目が俺を捉えたのは、夕焼けが残りを使い切った時だった。辺りの暗いことに気付いたのか縁側に置いていたタオルを拾い上げて、タオルを片手に身体に付いた汗を拭いながら顔を上げる。先生は俺の来訪に驚いた顔をして、それから少し笑った。 「いつから居たのですか? もう少し早く声を掛けてくれればよかったのに」 「すみません。お邪魔してはいけないと」 「いいえ、邪魔などありませんよ。ただ、もう少し早く声を掛けてくれていれば買い物にも間に合ったでしょうに、この時間では間に合いそうもありませんね。そうだ、良ければキミも食べていきますか。大したものはありませんが」  先生からのお誘いに胸が躍るような心地になった俺が少し呆けた後で大きな返事をすると、先生は愉快そうに笑った。明かりの少ない暗闇でも、先生の笑顔だけは俺の目にしっかりと映っていた。  先生は俺に剣道を教えてくれるようになった。それというのも俺が先生とご飯を一緒出来たことに喜び、味を占めて先生の剣道場にまで足を運ぶようになったからだった。先生の教え方は優しくて、俺がもう少し厳しくてもいいのにと言っても、先生はただ困ったように微笑むだけだった。先生と親しくなるにつれて、その優しさが自分と距離を取るためのものに思えてもどかしく感じるようになった。先生のずっと変わらない優しさが、俺に段々と息苦しさを足していった。  先生の門下生は俺一人ではない。門下生は近所に住む小さな子供達がほとんどで、俺の様に大学にも通っているのは俺の他には一人しかいなかった。そいつの名前は橘烈花。橘はなんの偶然か俺と同じ大学に通う大学生で、学年は一つ上だ。剣道部にも所属している橘は、勿論俺よりも剣道をやっていて素人目で見ても分かるほどに上手かった。そんなこともあってか、橘はいつも先輩風を吹かして喋る。「年上を敬えよ、少年」というのが彼女の口癖で、耳に胼胝ができる出来る程によく聞かされた。 「年上と言っても一つだけじゃないか」 「しかし少年の年齢が私を超す事は一生涯ありえぬのだよ若人よ」 「それはそうと、必要以上に年齢が上の事を主張したり、そうやってワザと古臭い口調を使うのは子供っぽいと思うけれど」  子供っぽいのはキミも同じじゃぁないか。そう言って彼女は笑った。この女は俺が先生に憧れという名の情愛を抱いている事を知りながら、わざわざ年齢差というものが決して縮まらぬという事実を口に出す。未来のミスと言われるにはあまりに性根が腐っていると言わざるを得ないが、本人曰くミスコンだとかいうルッキズム社会に漂う腐敗臭はこんなものではないらしい。彼女自体自分の容姿が恵まれている事は自覚しており、一年次には入学したハイのまま出演した。しかし入学したてでまだ高校生のような幼さのある顔立ちと、大学生活による人への伝手を持たないせいもあり、数々の強敵を相手に大した成果も出せずにミスコンは終わったらしい。二年目は準備を整え、万全の態勢で挑んだものの前回の優勝者に妨害をされて失速してしまったのだという。 「酸いも甘いも嚙み分けたせいでついつい昔を懐かしんでしまうのは私のお茶目なところだね。そうは思わないかな」 「はいはい、そうですね」 「心のこもっていない称賛というのは案外寂しいものだよキミ」 「相変わらず仲が良いですね」  目の前の美女と歓談していると、スーツを着こなした先生が俺たちに声を掛けてきた。美しいエメラルドグリーンをした二つの瞳は、こちらの考えなど全て見透かしているような。そんな煌びやかな輝きを、先生の眼の奥に幻視した。先生は俺の事をどう思っているのだろうか。最初に会った頃から先生は優しい。ずっと優しい。だから先生の真意が推し量れなくて、先生からどう思われているかが、自分でもおかしいと思うくらいに重要視してしまう。 「仲が良いだなんて言葉じゃあ言い表せられない程に私らはマブダチですよ」 「違います。適当な事言わないでください。先生、この人の言う事の大半は嘘ですから信じないでくださいね。僕を困らせる為だけにわざわざこういうことをするんだこの人は」 「ではそういうことにしておきましょう。邪魔して悪かったですね、私が居ると緊張してしまうでしょうに」 「い、いえ、そんなことは......」 「無理しなくていいですよ。私の家に来るのも、そう頻繁でなくて構いませんから」  そう言って先生は去ってしまった。まただ。先生はこういうことをよくする。最初はあまり良く思われていないからなのかとも考えたが、先生の方から話しかけてくれることも増えてきた今でさえこうなのだから、何か別の理由があるのかもしれない。 「人と距離を取りたがる理由、か......」 「どったの少年」 「いえ、なんでもないですよ」 「また先生の事かい。キミは本当に先生の事が好きだよねぇ。しかし先生も掴めない人だ、しんどくなる時もあるだろう。先輩でよければ相談しておくれよ」 「そう、ですね。ありがとうございます」 「うんうん、じゃあ今度飲みに行こうじゃないか」 「それ、お酒が飲みたいだけだったりしないですか」 ■簡易用■ 青柳 史郎 (あおなぎ しろう)(男) 職業:大学生 年齢:22 PL: STR:16  DEX:10  INT:14 アイデア:70 CON:9  APP:11  POW:7  幸 運:35 SIZ:16 SAN:99 EDU:18 知 識:90 H P:13  M P:7  回避:dex*2  ダメージボーナス:1d4 ―――――――――――――――――――――――――― [技能](職業技能点:360 個人技能点:140) (書式:職業/個人<成長>[その他]) ―――――――――――――――――――――――――― [持ち物] ・武器 ――――――――ここに記入―――――――― ・防具 ――――――――ここに記入―――――――― ・所持品 ――――――――ここに記入―――――――― [プロフィール]