タイトル:すざきさん キャラクター名:石田 貞夫(エネミー) 種族:人間 年齢:34歳 性別:男 髪の色:黒 / 瞳の色:黒 / 肌の色:肌色 身長:168cm 体重:55キロ ワークス  :フリーター カヴァー  :おぢさん シンドローム:オルクス ■ライフパス■ 覚醒:素体 衝動:吸血 ■能力値と技能■ 【肉体】:6 (シンドローム:0,0 ワークス:1 ボーナス:0 成長:1) 〈白兵〉:SL1 / 判定 6r+1 〈回避〉:SL / 判定 6r 〈運転〉:SL2 / 判定 6r+2 たぬき 【感覚】:6 (シンドローム:1,1 ワークス:0 ボーナス:0 成長:) 〈射撃〉:SL / 判定 6r 〈知覚〉:SL / 判定 6r 〈芸術〉:SL / 判定 6r 〈芸術〉:SL5 / 判定 6r+5 タヌキ 【精神】:9 (シンドローム:1,1 ワークス:0 ボーナス:3 成長:) 〈RC〉:SL6 / 判定 9r+9 〈意志〉:SL3 / 判定 9r+3 〈知識〉:SL2 / 判定 9r+2 レネゲイド 〈知識〉:SL5 / 判定 9r+5 植物 〈知識〉:SL5 / 判定 9r+5 Dメモリ 【社会】:8 (シンドローム:2,2 ワークス:0 ボーナス:0 成長:) 〈交渉〉:SL / 判定 8r 〈調達〉:SL3 / 判定 8r+3 〈情報〉:SL1 / 判定 8r+1 ウェブ 〈情報〉:SL2 / 判定 8r+2 噂話 【HP】    192 【侵蝕基本値】 160% 【行動値】   21 【戦闘移動】  26m ■エフェクト■ 《スキル名》     /SL /タイミング /判定    /対象 /射程/コスト/効果など 《ワーディング》   /★$/オート$   /自動    /シーン/視界/-$  /非オーヴァードのエキストラ化 《リザレクト》    /1$ /気絶時$   /自動    /自身 /-  /[SL]d$/コスト分のHPで復活 《コンセントレイト》 /3 /      /      /   /  /2   / 《得意領域》     /3 /セットアップ/      /   /  /3   /RC判定+[LV]個 《》         /1 /リアクション/シンドローム/自身 /至近/2   /CL値-LV 《幸運の守護》    /1 /リアクション/RC     /自身 /至近/1   /〈RC〉ドッジ 《ダンシングシミター》/1 /メジャー  /RC     /   /視界/3   /白兵武器をレベル個まで選び×3+攻撃の射撃を行う 《生命増強》     /5 /常時    /      /自身 /至近/   /HPレベル×30 《加速する刻》    /1 /イニシアチブ/      /   /  /   /わりこみ 《完全なる世界》   /1 /メジャー  /      /   /  /   /判定ダイス+1攻撃力+レベル×3 《要の陣形》     /1 /      /      /   /  /   /対象三体 ■装備とコンボ■ ・武器とコンボ 名称               価格 種別 命中  攻撃力  G値 射程 メモ 1+2+5【フルバースト・大地の牙】    3   18r+9 21          ドッジダイスー1個同エンゲージ不可、CL8 1+2+5+11【限界突破・大地の牙】     3   19r+9 33          ドッジダイスー1個同エンゲージ不可、CL7 2+4+8【掴めざる心臓】         3   18r+9            6 CL8 1+2+6+7+武器【切り札100↑】      1   15r+1 2(+10)     至近 ドッジダイス-1 武器壊れる CL7 PB-30B                 1   6r-1  10(+10) 4      +はシナリオ三回まで =価格合計= 0 pt ・防具     装甲 回避 移動  価格  名称 / 備考 鎧 :               / 下着:               / 修正: = 合計 =  0   0  21    pt ■所持品■ 名称        単価 個数 価格 備考 思い出の一品    2   1   2   〈意志〉判定+1 思い出の一品       1   0   昔、嫌がる親戚JKに「兄妹の絆の証!」と言って買ったお揃いのキーホルダー 、なんたら島のマスコットらしい腹立つ顔の青い鳥の形をしている           1   1   1   〈情報:UGN〉ダイス+2              1   0   攻撃力+10(シナリオ三回)           3   1   3   2d10回復 コネ・アハト       1   0   シナリオ中2回まで30以下の達成値が出た場合、現在の達成値に+5出来る。意思判定+2 情報1d2で1なら+22なら-2           1   1   1   オートで装備 めもり(義妹)       1   0   しんしょくじゅっぱーていか ナックルダスター  1   7   7 従魔の指輪        1   0   完全なる世界を使ったダメージ+1Dしんしょく+2 コネ:ギルド       1   0   裏社会、ギルドの達成値常時+1シナリオ一回それらの判定ダイス+1 コネ:商人        1   0   いつでも購入判定可能、シナリオ一回交渉10成功で半額購入可              1   0 石田家ホームビデオ    1   0   選んだ技能の判定に+3、暴走解除 =所持品合計=     14 pt =装備合計=      0 pt = 価格総計 =     14 pt 【常備化ポイント】 22 pt 【財産ポイント】  0 pt ■ロイス■ 対象          好意  悪意  備考 親父          懐旧  劣等感 色々あった。 純血統                 最大LV+2そして現在LV+1 対象は[得意領域」 アハト         尽力  不安 ハタラケ・シソウ【S】 好奇心 不安  おもろいけど突っ走るから危なっかしい             信頼  不信感 信頼不信とかいう矛盾             感服  不安  ナンパできる度胸すげぇ、春こないなぁ             尽力  不安 ■その他■ メモ:  イニシアチブ 加速する刻 セットアップ 得意領域3 メジャー コンセ3+ダンシミ3+完全なる世界3 13dx7+9 攻撃 (+1)d+38 ダメージ(30B×2+従魔の指輪) リフレ1+幸運の守護 13dx9+9 精神ドッジ  俺が石田貞男になってから、随分と時が経ったように思える。  もう十年以上も前の話だ。  俺は物心ついたときから19歳まで、とある非人道的な組織の管理する、研究施設にいた。  今思えば、そこはFHの戦闘員を育成する為の施設だったのかもしれないが、建物はおろか周辺の地形ごと消し飛んでしまったため詳細は不明なままである。  俺は身寄りがない孤児で、施設には他にもそういった子供が沢山いた。  人里離れた場所に建設されたそこでは、各地から集められた子供達を利用した人体実検や戦闘訓練などが行われていた。  無理やりオーヴァード化させられ人殺しの技術を叩き込まれる毎日。  そんな日常を壊す計画を立てたのは、実検体の中でも特に優秀と評されていた、ノイマンとブラムストーカーのクロスブリードの少年だった。  結果として、彼の尽力と施設内の協力者の助けにより、子供達の大半は施設を脱走することに成功するが、彼を含め何人もの同胞が犠牲になってしまった。  俺もその時逃げ延びた実検体の一人なのだが、この件についてはまた別の誰かが詳しく説明してくれるだろうから、今回はその後の、つまり俺が【石田貞男】になった経緯を話そう。  もう爆発音は聞こえず、燃え盛る赤も目に入らなくなった。 「はぁっ、はぁっ…」  全身傷だらけで、着ている【0030】と書かれた白い服もボロボロ、そんな有り様の少年は走っていた、ところ狭しと生い茂った木々の枝で、月の光すら差し込まない闇夜のなかを。 「止まれ、ない…まだ、止まれないんだ!」  精一杯腕を振り、一心不乱に大地を蹴る彼の移動速度はアスリートも顔負けで、普通の人間でないことが伺える。 「やっと、出たんだ…外に…!」  だが、驚異的な身体能力を持っている少年にも限界はあるらしく、段々とふらついたり躓くことが増えていた。 「まだだ…まだ!」  そうして、道すらない森のなかを進むうちに、遠くのほうに小さな灯りが見えてくる。  それが目に入った瞬間、少年は全身に力を漲らせ、韋駄天の如し走力をもって風のように夜道を疾走しはじめる。 「…!」  この調子なら、永遠に進み続けられると錯覚するほどの彼の力強い姿には、どこかまるで小さくなった蝋燭の、最期に激しく揺らめく炎のような危うさがあった。 「もうすぐ…灯りが…すごそこに!」  少年が目指す光、恐らく人の住む町の灯りであろうそれは、進むほど確実に近付いており、満身創痍の彼を動かす唯一の動力源となっていた。 「俺は、俺は…まだ終われ…ぁ!?」  不意に彼の視界が大きく揺れ、直後全身に強い衝撃が襲いかかる。 「あ…なんだってんだ…くそっ…」  なにかに躓き転んだことを理解するのに、数秒を要してしまった少年は、改めて自分の肉体と精神が限界を迎えていることを知り、苦悶の表情を浮かべ、そう吐き捨てる。 「くっ…ぁ?」  少年はもう一度走り出すため体を起こそうとするが…全身は石のように固くなっていて、指1本すら動かない。 「おい…もう少しだって、言ってんだろうがよ…」  口から漏れる声は小さく、思考が緩やかになっていくのを感じる。  地に倒れ伏した彼が朦朧とする意識のなか最後に見て、聞いたものは近付いてくる光となにかの駆動音、それと駆け寄ってきた誰かの焦りを含んだ叫ぶような声だけだった。  気づくと、少年はそこに立っていた。 「…ここは?まさか、あの世じゃないだろうな…」  少年以外存在しない、真っ黒な空間。 『あの世なもんか…お前はまだ生きているだろ?30』  後ろからいきなり声をかけられた少年が反射的に振り返ると、そこには赤いツンツン頭の、見知った顔の青年が笑顔で立っていた。 「っ!?24!!よかった、無事だったんだな!?」  自分を【30】と呼んだ赤髪の青年、24の姿を見るなり少年ー30は、驚きと歓喜の入り交じった表情を浮かべ詰め寄る。 『無事、とは言えないと思うぜ…ここは多分お前の精神世界。つまり、ここにいる俺とリアルの俺は別物…【現実の24】は今ごろ過度な力の行使でジャーム化してるだろうし、仕掛けた特性の爆薬で施設ごと吹き飛んでるだろうよ』  24はまるで他人事のようにそう答えると30に背を向け、なにもない暗闇に向かって手を伸ばす。  するとそこに、白く発光する扉が現れた。 「精神世界?それならなんで俺の精神に24が居るんだよ?ジャーム化!?爆薬…?聞いてないぞそんな話!皆脱出したら24も離脱するって!」  まるで訳が解らないとばかりに首を傾げながら30は24の背中に問いかけるが、彼は答えずに白い扉のドアに手を掛け、少年のほうに向き直る。 『今はそんなことどうでもいいさ、大事なのはお前がまだ生きていて、人生の大部分が残ってるってことだぜ』  満面の笑みで言いながら、24は扉を勢いよく開け放つ。 「おいおいまてまて、ホントに何も解らないぞ!?たしかにお前は昔っから変なことしか言ってなかったし…ノイマンのくせして脳筋だし…って、そうじゃなくてちゃんと説明しーーー」  何から何まで理解不能な状況の連続に脳処理が追い付かずパニクる30。 『おうおう、待たん待たん!さぁ、行ってこい!れっつえんじょーい!!』  そんな彼の手を素早く取った24は、その場で体を回転させ、遠心力とその他諸々の力を以て、30を扉の中にぶちこむのであった。  頭が真っ白で、何も考えられない。  だが、次第に意識の輪郭がくっきりしてきてる気がする。  暗い空間に光がさし、それがどんどん近付いてくる。  やがて光の中心に、誰かの姿が見えた気がした。  それは、さっきまで会話してた、そして、もう二度と会えないであろう人物であった。  俺は、遠くで微笑んでいる彼に向かって手を伸ばし、そしてーーー。 「24ーーー!!!」  ものすごい勢いでガバッと飛び起きた彼は、自分が寝ていたことと、ついさっきまで起こっていた全てが夢であったことを理解した。 「おぉ、起きたかい」  不意に近くから聞こえる若干しゃがれた低い声、いきなりの声かけに驚きつつも、声の主の方へと顔を向ける30。 「24ってのがナンなのかはわからんが、随分魘されてたぞ、悪い夢でも見てたのか?」  そこには、座布団に腰かける四十代半ば程の男性の姿があった。 「…ここは何処だ?アンタは何者だ」  30は男性の問いには答えず、警戒心を露にして噛みつくような視線を彼に向ける。 「俺は石田貞文、ここは俺んちだ。しっかし、恩人に向かってそんな顔しなくてもいいんじゃないのかぁ?」  彼の威圧的な態度をものともせず、おどけた口調でそう返す貞文は、彼の年齢にしては少し白髪混じりな頭をかきながら苦笑いを浮かべた。 「恩人…?アンタが介抱してくれたのか?」  貞文の人の良さそうな雰囲気に多少緊張が解れたのか、会話に応じる30。 「おう、ちょいと筍でもとってこようかと軽トラで森のなかを走ってたんだが、遠目にものすごい速さで移動する生き物を見つけてな、常識外れな身体能力だったもんで、つい好奇心を押さえれずに急いで追いかけたんだ…そしたら、お前さんが倒れてたって訳よ」  貞文は、そのときのことを思い出したのか、少し興奮気味に説明した。 「好奇心って…もし狂暴なバケモノだったらどうするつもりだったんだ…あと、たけのことけいとら?なんだそれ」  貞文の軽率な行動の一部始終を呆れた顔で聞いていた30は、自分の知らない言葉が幾つかあったのでそう質問した。 「お?…なぁるほどな、こりゃあ思ったよりも深刻そうだな」  30の言動から何かを察した貞文は、顎に手をあてながら少し考え、顔をあげる。 「あ、そうだ、まだ名前聞いてなかったな!教えてくれよ少年」  渋い表情から一転、柔和な笑みで30に問いかける貞文。 「…30」 「え?…あー、おーけい、ちょいと待ってくれ…」  貞文はそう言ったあと「むむむ…」と唸ると、真っ直ぐに30を見つめ、そして口を開いた。 「よし!貞夫、貞夫だ!」 「…は?」  貞文の言葉を聞いた30は、まるで意味が解らないとばかりに目を見開き首を傾げ、思わず聞き返した。 「だーかーら、名前だよ名前!流石に現代社会で30はアレだろ?だから、貞夫。3(さ)で(だ)0(お)」 「…まて、突っ込みどころが多すぎてついてけないぞ…なんで俺の名前をアンタが考えてて、更にそれがくだらない語呂合わせになってんだ!?」  「アホか!」と叫びながら立ち上がり、抗議する30。 「おいおい落ち着けよ…ってか、一晩で傷が治ってやがる…凄い再生力だな!」  30の全身が露になり、所々欠損がみられる服はそのままだが、貞文の言った通り発見当初見られた痛ましい傷の数々は悉く消え去っていた。 「おい話を逸らすんじゃねぇ!」 「まぁいいじゃねぇか、ここで暮らすんだから続柄は子供がいいからなぁ、実の息子らしく貞って字も入ってるだろ?」  30の意見など何のその、あっけらかんと言い放つ貞文は、腕を組ながら何度も満足げに頷いた。 「大体俺はここで暮らすなんて一言も言ってねぇぞ!」 「お?でも、いくとこないじゃん」 「う…」 「更にお金ないじゃん」 「…おかね?」 「一般常識も危ういっとー」 「…」  と、なんやかんやあって、30は石田貞夫になり、貞文の家で生活することになったのであった。  味のある食事、柔らかい布団に纏まった睡眠時間、掃除洗濯その他諸々…いろんな新しいことを覚えるのは大変だが、それでも充実した毎日を、貞夫は送っていた。  それから月日が流れ、二十六歳になった貞夫は一般ピーポーとしての生き方に少しずつ、だが確実に慣れていくのだった。 「なぁ、貞文さん…今さらっちゃぁそうなんだが、なんであの日、俺を助けてくれたんだ?」  そんなある夜、不意にそんなことを思った貞夫は、近くでテレビを観ている義父にそう話しかけた。 「なんでってぇ…困ってるヤツがいて、それを放っとく訳にはいかんしなぁ…理由なんて、そのくらいで十分じゃないか?ってか、いい加減名前呼びは止めてお父さんと…」  貞文はさも当然と言うように答えると、湯呑みに注がれたお茶をグビッと飲み干しながら不満そうに呟く。 「そ、そうか…なぁ貞文さん、アンタには本当に良くして貰った、だから全部話すよ、決めたんだ」 「お、なんだ?聞いてやるよ」  貞文の文句はスルーされたが、どこか神妙な面持ちで切り出す貞夫の姿に、彼も自然といつものおちゃらけた態度はひっこめていた。  それから貞夫は、自分が物心ついた頃から非人道的な施設にいたこと、そこで人体実験の素体にされ、人外の力を手に入れたこと、その能力を使った戦闘訓練を強要され、そして【あの日】に、被験体全員と施設側の協力者の力添えにより脱出できたことまで、実に彼の人生の大部分を語るのだった。 「…と、いう訳なんだ…俺は人の道を外れた怪物で、戦いにしか脳のない狂戦士だ…今まで黙っててごめん、貞文さん…」  貞夫は、黙っていた罪悪感や助けられた事に対する感謝やらが混じりに混じった複雑な表情で頭を下げる。  そんな彼に対し貞文はというと…。 「うーん、まぁ、知ってた!いや、厳密にはオーヴァードであることは、森で見かけたとき、それと回復力でなんとなく察してた、いやぁしかしマジだったとはな!ハッハッハ!」  やはりいつもの調子にもどり、カラカラと笑いながらそう返すのであった。 「え!?いや、ちょっと待ってくれ!なんで一般人の貞夫さんがオーヴァードのことを知っているんだ!?今の日本では、たしか【そういう情報】は揉み消されて出回ってないんじゃ…」  貞夫の言う通り今現在の日本では、ある組織により情報統制が行われているため、レネゲイド関連のなんやかんやは基本表に出てこないのだ。  それなのにどういうわけか知っていた恩人に驚いた貞夫は、いきなりの展開に目を白黒させている。 「いやぁ、実はおじさん昔探偵、という名目の、俗に言うパイプ役をやっててな!んで、肝心の繋いでるものが特殊でな…警察等の【普通】のトコに頼めないような依頼を、専門家さんに紹介するって感じだったもんで…そういう仕事を長くやってたお陰で、【そういう情報】も結構入ってきてたんだよ」  貞文は、どこか懐かしそうに前職についてそう語った。 「そう、か…それなら明らかに人外の俺を助けてくれたことにも合点がいくか…」 「お?いや、そこは別に関係ないぞ!例え俺が【そういう情報】を知らなかったとしても、家に連れて帰ったさ」  貞夫が勝手に納得してると、それを否定し善人臭の凄いことを宣う彼の目は、嘘を言っているようには見えなかった。 「と、とりあえず、ありがとう、貞文さん!この恩は一生かけてでも返す!…いだっ!?」 「そういうのはいいから!お前さんは今を楽しめば良いんだよ!二十歳そこらって、人生で一番楽しい時期っていうだろ?」  今度は畳に両手をつき、ガバッと頭を下げる貞夫に、目にも止まらぬ速さでチョップを食らわせる貞文は、やはり笑いながらそう返す。  二人はその後、少し雑談したあと、各々眠りにつくのであった。  それから数日後の夕方、貞夫がいつものようにバイトから帰ってくると、玄関に制服姿の見知らぬ女の子が立っていた。 「あ、あの…うちになにか用ですか…?」  普通に生きてればなかなか遭遇しないであろう状況に一瞬思考が止まってしまった貞夫だが、なんとか勇気を出して彼女にそう声をかけた。 「!?」  考え事でもしていたのか、後ろからの声かけに驚いた彼女は、一瞬貞夫のほうに顔を向けるもすぐに目線をそらすと早足で家に侵入し、玄関の扉を閉めてしまった。 「ちょ、おい!それ不法なんたら!」  声をあらげながら大急ぎで少女のあとを追いかけた貞夫は、扉の鍵が閉まってないことを確認すると無駄に無駄な動きでダイナミック帰宅を果たした。 「貞文さん!いるかー!?し、知らん女の子が家凸してきて、そんでーーー」 「おー貞夫、帰ったかー。だーかーら、いい加減お父さんと…」  顔を真っ青にしながら叫ぶ貞夫の前に部屋から出てきた彼は、呑気にそう返すとこの状況のなかあくびをかましながら腹をボリボリと掻いている。 「話を聞けや!知らん娘が家の前に立ってて、声かけたら家に入ってって!」 「おぉ~?なぁんだ、貞夫~!お前も男だなぁチキンなお前がナンパなんて、父さん嬉しいぞ!」  貞夫必死の説明さえもガン無視なお父様は、彼の頭をわしゃわしゃと撫でながら訳の解らないことをほざき喜んでいらっしゃる始末。 「あぁぁぁぁ!?こんの平和ボケが!いいから話をーーー」 「あー、あの子な…うん、まぁ、真面目な話するとな、今日から家に住むことに、そんで、俺の義理の娘になった」  頭をかきむしりながら天を仰ぐ貞男の姿を見て満足した様子の貞文は、手短に要点を抑えてそう説明した。 「…は?…ってのが普通の反応なんだろうが…まぁ、貞文さんのことだから、なんか納得できちまうんだよな…」  彼の突拍子もない言動に関して、貞男自信もよく知っているためやれやれと首を降りながら大きくため息を吐くのだった。 「名前は水樹、十六歳になる高校生の女の子、そしてかわいい…とまぁ、結構スバラスイステータスだが、くれぐれも手は出すなよ?一応家族だから近親S…」 「えぇい黙れ!そういうことじゃないだろ!?住人が増えるのは分かったが、理由だよ!理由!そこが俺は知りたいんだよ!」  いらない情報までベラベラと喋り出す彼の言葉を遮りながら、やはりご立腹の様子で反発する貞男。 「理由、ねぇ…先日、彼女が両親と買い物をしている途中に、店に強盗が入ってな…それで、両親は彼女を守るため撃退しようとして…返り討ちに会い、亡くなったそうだ…書類上は、な」 「…?それは、どういうことだ…?」  貞文の意味深な答えに、貞男は思わず聞き返す。 「ただの強盗じゃあ、なかったらしくてな…なんでもジャームが関わっていたそうだ…これは昔の仕事仲間からの情報だから、非公式でありながら信憑性は高い」 「!?」  彼の口から語られる超常の、それも事実である可能性が非常に高い内容に、かつて自身も【そういうもの】に少なからず関わっていた貞男は戦慄する。 「そういうわけだ…ワーディング下であったとはいえ、覚えていることもあるだろう…事件については触れないようにしつつ、彼女の心のケアを優先しようと思うから、お前も頼んだぞ、貞男」 「わ、わかった」  それから数日が経った。  だが、男二人と彼女の距離が縮まることはなく、それどころか、溝はどんどん深くなっているように彼らは感じていた。  そんなある夜、会話の無いいつも通りの静かな晩御飯中に、貞男は場の空気に耐えられず、口を開いた。 「な、なぁ水樹、最近学校は、どうだ?」 「…別に、普通ですけど」  貞男が必死に絞り出した話題は、あっけなくバッサリと切り捨てられてしまう。 「そ、そうか…そうだよな!普通はいいことだな!」 「そうですね」  なんとか間を持たせようと強引に会話を続ける彼の気持ちなど露知らず、水樹はそっけない態度を貫いている。 「水樹、なにかあったときは、どんどん俺たちを頼ってくれていいんだからな?…家族なんだから!」 「…かぞ、く?」  ここで初めてマトモな反応を示した彼女を嬉しく思った貞男は、はやる気持ちを抑えつつ話を続ける。 「そ、そうだよ!かぞーーー」 「私の家族はパパとママだけだよッ!赤の他人のアナタ達になにが解るの!?」  だが、その反応は、決して良いものではなかった。  テーブルを両手で叩きながら激昂した水樹は、勢いよく立ち上がると、小走りで茶の間から出ていってしまった。 「…」 「あーあ、貞男怒らせた~」  やってしまったと黙り込む貞男と、それに対しテンプレなふざけた言葉をかける貞文。 「軽率だった…」 「確かに、内容はちょっとアレだったが…それにしたって一緒に暮らしてるのに会話の一つもないんじゃアカンだろ…少なくとも、話しかけたのは間違いじゃないよ」  肩をおとし落ち込む彼に、貞文はそうフォローを入れた。 「今回は見事に地雷を踏み抜いたが、話のジャンルを…例えば水樹の好きな事についてとかな…そういうところから距離を縮めていけばいいんじゃないか?」 「な、なるほど!…って、なんで俺がやる前提なんだよ!?」 「なんでって、そりゃあ、俺よりお前のほうが年近いだろうよ?お父さんよりお兄ちゃん、だろ?」 「いや、そこに関しては人によって違うだろ…」  どや顔の彼に冷静につっこむ貞男であったが、その言葉を噛み締めながら今後に活かそうと心に決めるのだった。  だが、それから水樹との会話は全くなく、同じ毎日だけが過ぎていく。  それから数週間後、バイトから帰った貞男は物置に用があり向かっている途中、水樹の部屋の前を通ったとき、微かに聴こえる音に気づく。  それはどうやら彼女の部屋から漏れているらしい。 「これは…音楽、ってやつかな?俺はあんま得意じゃないが…」  いつかの日の義父の言葉を思い出した貞男は、自分の部屋に戻ったあとに、最近の音楽について勉強するのであった。  その夜の晩御飯、今夜も静かに終わっていくものと思われたその静寂の時間は、貞男の一言によって崩れた。 「水樹、お前ボカロって聴くか?」 「え!?あ、いや…多少は」  予想以上の食いつきに期を見いだした貞男は、そこからどんどん話を広げていく。 「実は俺最近さ、結構ハマってて…そんで、もしお前も聴いてるなら、色々話せるんじゃないかな~と思ったわけよ!」 「そ、そう、なんだ…うん、私もよく聴くよ」  少しソワソワしながら、だが先日と違いちゃんと会話をしてくれる水樹。 「なんだぁ?おじさん最近の音楽はサッパリでなぁ…あ、でも歌の上手さでは負ける気ないぜ?」  ついには完全に貞男に任せていた貞文すら参加する程に、音楽トークは広がっていくのだった。 「私もそれなりには歌ってるし…勝てる気しかしないんだけど?」 「貞文さん歌上手いイメージないんだが…二人がその気なら、今度の休みにカラオケでもいくか!?いや、いこう!」  バチバチな雰囲気の二人を見た彼はそう提案するが、すぐに踏み込み過ぎたのではないかと不安になるが…。 「カラオケ…いいね、いきたい」 「うっへっへ…おじさんの実力、見せてやるぜ!」  二人ともノリノリであった。 「ってか、貞男、お前音楽かじったの最近だろ?このなかで一番雑魚説が…ぷくく」  貞文に関してはこんな感じで煽り出すまでである。 「あぁ?俺だって色々聴いてるし歌ってるぞ!?そんなに言うなら、相手になってやるよぉ!」  と、そんなこんなでなんかよう解らんが無事打ち解けることができた三人は、貞男の宣言通り、次の日曜日にカラオケに来ていた。 「ふはははは!?95点!どうだいチミ達!これがおじさんの本気だぁ!」  自分の番が回ってくるたび無限に演歌で高得点を叩き出していた貞文は、とうとう結構エグめの数字を出しやがり勝利の高笑いをあげている。 「いや、すごいのはスゴいが、演歌ってのがなぁ…」 「ふふん!まだお子ちゃまな貞夫男には、演歌のよさはわからないよなぁ~うんうん!」 「あ、あはは…」  最高にムカつく顔で散々煽り散らかすおじさん野郎に二人は苦笑しつつも、少し特別な日曜日を堪能するのだった。  それから数日後、帰ってきた貞男は家に水樹しかいない事に気づくと、不思議そうに首を傾げた。 「あれ?貞文さんいないんか?この時間に出掛けるなんて、珍しいな…」 「そうだね、いつもならその辺で寝転がってるのに…」  先に帰っていた水樹も同じことを思っていたらしく、不安そうにしていた。  それから数時間が経過した頃、貞文がやっと帰宅する。 「おぉ~、ただいまぁ、いやすまんな!ちょいとお仕事が入ってな!いい子にしてたか?おまいら!」  二人の心の家など知らないとばかりに太陽のような暑苦しい笑顔で茶の間に凸ってくる貞文は、その様子とは裏腹に、相当忙しかったのか、どこか疲れがにじみ出ていた。 「おかえり、随分遅かったじゃないすか、仕事つっても、貞文さんもう探偵辞めたんじゃ…」 「あぁそれがな…昔の知り合いが人手が足りないって言うんで、ちょいと助っ人に呼ばれたって訳よ!心配かけて悪かったな!」  それからもほぼ毎日遅く帰ってくる貞文の姿に、二人が形にならないほんの少しの不安を覚えた頃、それはおこった。 「おい!?貞文さん!どうした!?おいってば!」 「あ、こ、これって、救急車呼ぶやつかな…?」  その日は久しぶりにはやく帰宅して例のごとくぐうたらしていた貞文が、いきなり倒れたのだ。  突然崩れた平和な日々の終わりに、二人は不安を募らせながらもなんとか呼んだ救急車に乗せられていく貞文を見送ったあと、自分達も車で搬送された病院に向かった。 「…は?おい、ヤブ医者、いまなんつった!?」  診察室に響き渡る貞男の怒号に驚いたその場の全員が思わず硬直してしまう。 「…で、ですから、石田貞文、お父さんは、癌です、それも、末期の…」  繰り返される医者の言葉についに黙り込んでしまう貞男。  その後二人は、なんの比喩でもなく最後の会話になりかねない面会に向かうのだった。 「…貞文さん」 「おぉ、貞男か、水樹もいるじゃないか!…いやぁ、カッコ悪いとこ、見せちまったな」  バツが悪そうに笑いながら歓迎した貞文は、いつものふざけた態度すらも控えめになっており、その事実に二人は彼の命が長くないことを悟る。 「そんな顔するなよ…俺は、よくここまでもってよかったと思ってるよ…お前らが仲良くしてるとこを、死ぬまでに見れて満足だ」  貞文は、そんな二人に優しく語りかける。 「神様に頼んだんだよ、せめてそれまでは生かしてくれって、な」 「ふざけんな…ふざけんな!なんで仕事なんて嘘ついたんだ!病院にいってたんだろ!?なんで延命治療しなかった!」  ここに来ても平常を保っている貞文の言葉に対し、感情のままに噛みつく貞男は、言葉の強さとは相反し、終始悲しみと悔しさを混ぜたような表情だった。 「そりゃあだって、延命治療するには入院せなアカンだろ?そしたら、お前らとバカやれないじゃないか、それはダメーーー」 「んなことどうだっていいだろ!?ちょっとは心配する俺らの気持ちもーーー」 「よくねぇよ!だって…だって、お前らは俺の子だ、かわいい子供達が、笑顔で過ごしてるところを眺めてたいと思うのは、親として当然だろ?」 「そ、それは…ってか、検査とか病院の対応とか、絶対おかしいよな!?作者はなにやってんだ!5分十分で考えてんじゃねぇぞ!もっと詰めろや!」 「おい貞男やめろ!?メタい発言をするな!作者が可哀想だろ!?」 「それも十分メタいわ!」 「二人とももうその辺にしないと…作者が…」  水樹までこれである、流石家族である。 「…まぁ、そういうことだ、すまんかった、そんで、ありがとうな、お前らと過ごした日々は、むっちゃ楽しかったぜ!」  それから数日後に、彼は亡くなった。  遺品整理の途中、貞文の衣類に手をつけた貞男は、彼との暮らしの記憶を、さながら走馬灯のように呼び起こしながら、ふとある日の会話を思い出す 『親父!その服と帽子かっこいいな!』 『だろ?俺のお気に入りだ!…もし俺が死んだらそんときはやるよ!』 『冗談言うんじゃねぇよ、ぶっとばすぞ!』 「…こんなに早く渡されるなんてな…くそっ!」  家の薄い壁を殴りつけながら、貞文がいつも着ていたコートと帽子を握りしめた貞夫は、無言でそれを着ると、作業に戻るのだった。  二人は深い喪失感を紛らさせるように、それぞれバイトや学校に打ち込んでいた。 「ねぇ貞男、なんで散々拒絶した私を受け入れてくれたの?」  ある休日のこと、ふと思い立った水樹は、貞男にそう問いかける。 「そりゃぁ、困ってるヤツがいて、それを放っとくことはできないしな…ってのは、俺が考えたんじゃなくて、昔同じ質問をしたやつがいたんだよ、んで、された側がこう答えたのさ」 このあとなんやかんやあって疎遠に☆ url: 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