タイトル:"封印指定"ナナ キャラクター名:被検体番号31番 種族:ティエンス [特徴:通じ合う意識] 生まれ:軍師 ■パーソナルデータ・経歴■ 年齢:29 性別:女 髪の色:銀  / 瞳の色:翡翠 / 肌の色:はだいろ 身長:167 体重: 経歴1:軍人(ソルジャー)Lv.5 経歴2:お菓子職人(パティシエール)Lv.5 経歴3: 穢れ度:0 ■能力値■      技     体     心 基礎    9     11      8    器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神 A~F   5   4   5   7  12   9 成長            2   2   1 →計:5 修正  10   2   9   6  15  12 =合計= 24  15  25  26  38  30 ボーナス  4   2   4   4   6   5    生命 精神    抵抗 抵抗  HP  MP 基本  19  20  71  78 特技         0  15 修正 =合計= 19  22  73  95 ■レベル・技能■ 冒険者レベル:15 Lv ソーサラー   3 Lv  /  コンジャラー 11 Lv マギテック   2 Lv  /  エンハンサー 1 Lv アルケミスト  2 Lv  /  ライダー   15 Lv ウォーリーダー 10 Lv  /         Lv ■戦闘特技・値■ [参照]  特技名       : 効果                    : 前提 [pIB34] ルーンマスター   : 魔法拡大を宣言せずに使用出来る       : 魔法技能1つのLv11 [p1-289]魔法拡大/数     : 対象を拡大するごとにMP倍増、達成値は個別  : [p1-280]ターゲッティング  : 誤射しない                 : [p1-280]鷹の目       : 乱戦エリアや遮蔽物越しに射撃・魔法攻撃可能 : [p1-290]魔法拡大/すべて   : 残り全ての魔法拡大を使用可能        : [p1-283]MP軽減/コンジャラー : 消費MP-1(最低1)、拡大時は-1後に倍     : [p3-212]キャパシティ    : 最大MPに+15。グラスランナーは無効     : [p2-234]ダブルキャスト   : 魔法の行使を2つ同時に行う。ただし魔力-10  : [p2-230]魔晶石の達人    : 魔晶石を2つ同時に使用できる        :    魔物       全力    知識 先制 移動 移動 基本   0  12  15  51 修正        2 特技        0 =合計=  0  12  17m  51m ■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■ [参照] 特技名      : 効果                           : 前提 [p]  アンチボディ   : 毒・病気に対する生命・精神抵抗+4            : [p]  遠隔指示     :                             : [p]  騎獣強化     :                             : [p]  探索指令     :                             : [p]  魔法指示     :                             : [p]  特殊能力解放   :                             : [p]  魔法指示回数増加 :                             : [p]  獅子奮迅     :                             : [p]  HP強化      :                             : [p]  HP超強化     :                             : [p]  瞬間魔法指示   :                             : [p]  特殊能力完全開放 :                             : [p]  騎獣超強化    :                             : [p]  八面六臂     :                             : [p]  威嚇       :                             : [p]  人馬一体     :                             : [p]  パラライズミスト : 相手の回避ー1                      : [p]  ヒールスプレー  : 対象を回復                        : [p]  陣率:軍師の知略 : 先制判定を「ウォーリーダー技能+知力ボーナス+1」で行う : [p]  進展の構え    : 移動力+5,制限移動+2、陣気+1            : [p]  強靭なる丈陣Ⅰ   : 生命または精神抵抗+1、判定後消失、陣気+1       : [p]  強靭なる丈陣Ⅱ   : 生命または精神抵抗+1、陣気+1             : [p]  強靭なる丈陣Ⅲ   : 生命または精神抵抗+2、陣気+1             : [p]  強靭なる丈陣Ⅳ   : 生命または精神抵抗+2、陣気+2             : [p]  鉄壁の防陣Ⅲ:鋼鎧 : 防護点+3                        : [p]  怒涛の攻陣Ⅲ:旋刃 : 命中力+1と物理ダメージ+1、陣気+1          : [p]  陣率:効力亢進  : 1回だけ魔法ダメージ+4または回復量+4         : [p]  傷病の見立て   : HPの回復量+5、陣気ー1                 : ■装備■ ・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力        Lv 命中 追ダメ 回避 ファイター : グラップラー: フェンサー : シューター : ・武器 価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照) 1700            0      0   0 [] *カードシューター / (p) 7100            0         0 [] *氷結界の鎖 / 魔法の発動体加工 (p) 7000            0         0 [] *氷結界の鎖 / (p) =価格合計= 15800 G ・防具    必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考 鎧 :  7   0   3  2150 ソフトレザー / アビス強化 魔法ダメージー1 盾 :              / 修正: = 合計 =    0   3  2150 G (回避技能:) ・装飾品    価格  名称         / 効果 頭 :3000  栄誉の軍師徽章    / 戦闘中に1回だけ鼓咆の系統変更時にランク維持 耳 :7500  ラル=ヴェイネの金鎖 / 装備部位その他を得る 顔 :2000  味覚のピアス     / 味覚を敏感にし、薬品学判定+2 首 :1500  ロッセリーニの調声器 / 背中:5200  ウェポンホルダー改  / 右手:500  知力増強の指輪    / 左手:30000 正しき信念のリング  / 精神抵抗力+2 腰 :12300 不撓のバックル    / ガンの攻撃を精神抵抗/半減で耐える 足 :10080 幸運の羽       / 貫通の巻き込まれ判定が1~2になる 他 :500  器用増強の指輪    / 他 :500  筋力増強の指輪    / =合計=73080 G ■所持品■ 名称          単価  個数 価格  備考 レッサードラゴン    36000 1   36000 レンタル フリッカーハンマー   3000  4   12000 レッサ―ドラゴンの全部位へ装備 命中力+1 ウィンドコート     4000  4   16000 レッサ―ドラゴンの全部位へ装備回避+1 防護点+2                    0 部位再生の秘薬     9000  2   18000 月光の魔符+2      1500  3   4500  精神抵抗力+2 陽光の魔符+2      1500  3   4500  生命抵抗力+2 月光の魔符+1      500  2   1000 陽光の魔符+1      500  2   1000 アビスシャード         12  0   初期                 1   0 ウィンドコート     4000  1   4000  ディバインホースに装備 回避+1 防護点+2 ディバインホース    5000  1   5000  レンタル フリッカースター    3000  1   3000  ディバインホースに装備 命中力+1                 1   0 アウェイクンポーション 100  2   200 マテリアルカード緑B   20   30  600 マテリアルカード緑A   200  30  6000 マテリアルカード緑S   2000  4   8000 ロッセリーニの印形絵具 100  10  1000 ロッセリーニの魔導筆  2000  1   2000 冒険者セット      100  1   100 魔晶石5点        500  35  17500                 1   0                 1   0 魔香草         100  30  3000 器用増強の指輪     500  2   1000  予備 知力増強の指輪     500  2   1000  予備 筋力増強の指輪     500  2   1000  予備                 1   0                 1   0                 1   0                 1   0 保存食         50   30  1500  残り203食                    0 魔化された岩      2000  4   8000  ロックゴーレム用の素材 黒曜石の盾(中)    600  4   2400  ゴーレム強化素材 かばうⅡを習得 柘榴石の活力(中)   800  4   3200  ゴーレム強化素材 最大HP+10 鋼玉の守護(中)    400  2   800  ゴーレム強化素材 ガーディアンⅠを習得 呼応石         100  5   500  ゴーレムへの命令を変更する 防寒具         80   1   80 水袋          20   1   20 水袋          200  4   800  砂漠で買った水 砂漠装束        200  1   200                 1   0 受益者のシンボル        1   0   シンボリックロア発動条件 人形          5   5   25   軍服を着た二頭身の人形 マギスフィア小     200  1   200 古びたマギスフィア小  200  1   200  魔動機術"サウンドレコーダー"に変形している。                 1   0 砂上船         1000  1   1000 魔動機式砂上舟     1000  1   1000 特別ギルド印章     0   1   0   命の流砂亭のギルド印章 宿泊費         30   1   30 =所持品合計=   166355 G =装備合計=    91030 G = 価格総計 =   257385 G 所持金   10430G 預金・借金    G ■魔力■ 知力ボーナス: 6 特技強化ボーナス: 0 武器ボーナス: 0  名前  Lv 追加修正 魔力 真語魔法 3       9 操霊魔法 11      17 深智魔法 3  -     17 魔動機術 2       8 ■言語■       話 読            話 読 共通交易語 ○ ○ / 巨人語       - - エルフ語  - - / ドラゴン語     - - ドワーフ語 - - / ドレイク語     - - 神紀文明語 - - / 汎用蛮族語     - - 魔動機文明語○ ○ / 魔神語       ○ - 魔法文明語 ○ ○ / 妖魔語       - - 妖精語   - - / グラスランナー語  - - シャドウ語 - - / ミアキス語     - - バルカン語 - - / ライカンスロープ語 - - ソレイユ語 - - ・地方語、各種族語     話 読 名称 初期習得言語:交易交通語、魔神語 技能習得言語:魔法文明語、魔動機文明語 ■名誉アイテム■ 点数 名称    古モルガナンシン    アンナマリーア    ベロニカ 1500 始まりの剣★    栄誉の軍師徽章 100 専用装備化  50 専用鎧化 所持名誉点: 159 点 合計名誉点:1809 点 ■その他■ 経験点:670点 (使用経験点:131500点、獲得経験点:129170点) セッション回数:5回 成長履歴: 成長能力 獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ)  メモ 1- 知力   102000点(   /102000 / 回) 2- 知力   12580点(12480 /   / 2回) 3- 生命力    0点(   /   / 回) 4- 精神力  14590点(14290 /   / 6回) 5- 生命力    0点(   /   / 回) 6-        0点(   /   / 回) 7-        0点(   /   / 回) メモ: 【むかしむかしのお話】  ――ああくそ、また失敗だ。魔動機に呼応していない。  ――やめとけよ、失敗だなんて。つまりこの子は俺達の思考を読めるってことだ、ただの赤ん坊には酷だろ。  ――うるさい、畜生、何がダメなんだ、もうアストレイドの化石も少ないってのに、機解種の生誕には至っていない。理論上は可能な筈なんだ、一体何が足りないってんだ……!  自らの目の前で言い合う男達の言葉の意味を、その赤ん坊は何も理解できていなかった。  ただ彼らの意識から感じる失望と落胆感から、赤ん坊は何となく、自分は望まれてこの世に生まれたのではなかったのだという自覚と共に、物心というものを覚えた。  被検体番号77番、それが彼女の名前だった。  人族が最も栄華と繁栄を手にしていた時、後の世から魔動機文明後期と言われていた時代。  そんな時代に彼女が生まれた場所は、北の奈落に最も近く、魔神との戦いが最も激しいコルガナ地方の一国、魔動機と意識を通ずることが出来るティエンスを人為的に造り出すことを目的とした研究所であった。古代文明の遺跡からティエンス製造の秘術が発掘され、さらに材料となる神性生物の化石も発見されたことから発足したプロジェクトらしい。  世話係の研究員曰く、機動外骨格を始めとした魔導兵器が主戦力となっているこのご時世で、ティエンス機解種はその性能を更に発揮することが可能なため、対奈落における最高峰の戦力となる見込みとのことだった。 『で、僕たちの力不足もあり、残念なことに君たちは普通のティエンスとして生まれてしまったワケだけれども』  研究所の一室、集められた子供達を前に、教壇に立った世話係は続ける。 『失敗作だから処分しまーすなんて前時代的なことはしないから安心してね。って言っても意味わかんないか。まぁとにかく、君たちも魔神と戦うために生まれてきたのには違いないし、ティエンスだけあって身体能力も高めだ。将来優秀な兵士になれるように訓練を頑張っていこう』  世話係が言った通り、失敗作の子供達はその日から魔神と戦うための訓練に明け暮れた。訓練を受ける日々の中、77番は魔法適正および戦局を見抜く視野の広さを見出されたことから、最前線上における指揮官候補生としてのカリキュラムを受けることになる。  実験の失敗作という割には、被検体達は恐らく恵まれた扱いを受けていたのだろう。  理不尽な体罰は受けなかったし、自由時間で被検体同士のコミュニケーションも許されていた。そのおかげか、同じカリキュラムを受けていた被検体同士で親しくなる姿もあった。77番も例に漏れず、いくつかの友人を作りながら、将来魔神を駆逐するという与えられた使命を果たすため、日々訓練に勤しんでいた。  このようにして、失敗作でありながらも成人するまで合理的で厳格な訓練を受け続けた彼女達は、北の最果てから侵攻する魔神に対抗する立派な兵士として派兵されることになる。  研究所での訓練の甲斐あってか、実戦でも彼女達は上々の活躍をすることとなった。特に77番の率いる部隊は、戦況を見極め必要に応じて援護を行う遊撃隊として、一際目立った戦果を挙げていた。  戦が終わった後、77番の部隊が研究所まで戻る道中で、巨大な竜の死骸を発見する。本来なら寄り道などする立場ではなかったのだが、一定の戦果を挙げた後の高揚感と、これまで文献でしか教わっていなかった幻獣の姿を見た興奮感から、部隊員達はこぞってその死骸に駆け寄り観察を始めていた。  竜の死骸は傷だらけであった、おそらく先の戦に巻き込まれ、魔神達に襲撃され命を落としたのだろう。 『ナナたいちょー、こっち来てくださいよぉ、なんかいますよー?』  77番という被検体番号をもじって、隊員達からはそう呼ばれていた。彼女を呼んだ隊員の27番は死骸の、何かを護るように不自然に垂れていた翼を捲り、その中を指さしていた。  捲った先では小さな竜の赤ん坊が、こちらを非常に警戒した目つきで睨んでいる。 『……竜の子供か』 『みたいっすねー、でもなんでこんなとこにいるんすかね?』 『この死骸が親なんじゃない? 多分だけど』  他の隊員達も集まり、十数人のティエンスが一体の小さなドラゴンに好奇の視線を向ける。  竜の赤ん坊はそんな77番達を睨みながら何かを叫んでいるが、残念ながらこの場にその意味を解読できるティエンスは居ない。しかし彼女達は失敗作であり普通のティエンスだったので、言語による意思疎通は必要なく。  通じた意識の中で分かったことは、この竜の赤ん坊の親はやはりこの死骸だったということ。赤ん坊はその事実に絶望し、更には見つかってしまったことから彼女達に最期の抵抗をしようと必死にもがいていたこと。  その感情に77番は、なぜか自分の物心がついた時に向けられていた研究員達からの失望と落胆を思い出し、重ね合わせていた。 『研究所に連れて帰ろう』  気付けば、77番はそう言っていた。幻獣など戦力価値としては魔動機に劣ることは百も承知であり、処分される可能性も高かった。それでもこの場に置き去りにして魔神達の餌食になるよりかは、まだマシだろうと判断した故の行動だった。 『えー? なになにナナちゃん、同情とかしちゃうタイプだったんだ、意外だね~』 『……いやこれは私達の種族特徴を踏まえた上で将来的な戦力増強を見込んだ――』 『ふふ、はいはいそうだねー、早く帰らないと懲罰もんだから急ごうねー』  77番とは特に仲が良く、部隊の副隊長を務めていた31番に楽しげに揶揄われながらも竜の赤ん坊に手を伸ばす。  今なお警戒していた竜の赤ん坊は、しかし通じ合う意識によって彼女達に敵意や殺意がないことを理解したのか、伸ばされた手に身を預け、無事保護されることとなった。  連れ帰った竜の赤ん坊に対する研究所の反応は、予想に反して温情のあるものだった。  最初に相談を持ち掛けられた世話係の研究員は驚いていたものの、彼女達の要望になるべく応えるべく上層部に図ってくれたようで、最終的に下された命令は”戦術価値検証のため戦線へ投入。所内駐在中の世話は第77番遊撃分隊に一任、駐在・戦闘中問わず対象を起因とした事象により自軍に物的・人的問わず何らかの被害を与えた場合、敵性行為とみなし殺処分”。ということで、連れ帰った責任もあり、世話係は77番の部隊が務めることに。  殆どティエンスで意思疎通が可能な環境もあったからか、最初は警戒していた竜の赤ん坊も次第に部隊員達に心を開き始める。戦線投入の際も77番の分隊に編成され、赤ん坊ながらも竜の力を遺憾なく発揮することで、77番達との絆を深めていっていた。  この子の名前はどうするんだと、副隊長の31番から聞かれた日があった。 『私達が付けるのか? 識別番号しかない私達が?』 『もーナナちゃん、識別番号だって立派な名前じゃん? それにほら、結局私達の間ではこうやってあだ名で呼びあってるんだし』 『それはミイが勝手に決めるからだろう……』  好物の飴を咥えた31番は自身で決めた自身のあだ名を呼ばれたことで満足げに笑う。 『そりゃあ数字じゃ味気ないからね、私達だって生きてるんだから。――ほら、いつまでも”あのドラゴン”とか”竜の赤子”とかじゃ作戦行動中にも支障でるよ?』  そう言われると弱る77番、戦場における迅速な指揮命令に影響が出るのは避けたかった。実際のところ、これまで支障が出ていたワケではないのだが、名前を付けないと引き下がろうとしない強情な副隊長が目の前にいることもあり、考えに考えた結果”ゼロ”と名付けることにした。  名付けた名前を聞いて、『うーわ、安直』とでも言いたそうな呆れた目で77番を見る31番だが、一応上官にあたる人物の決定に逆らうつもりはなく、すぐにいつもの楽し気な笑顔で次の話をし始めていた。  ――そうした日々を過ごしていく内に、3年ほどの月日が流れた。被検体達の年齢は18歳。  この時期、奈落からの魔神侵攻に落ち着きが見え始めており、時折はぐれ魔神のようなものを討伐する程度で、コルガナ地方の国々にも特段大きな被害が生じることも無くなりつつあった。  その為か、コルガナ各国の民衆では以前は少数派だった軍拡反対派の声が大きくなっていた。  77番が所属していた研究所もその影響を受けることになる。この数年で輝かしい戦果を挙げていたティエンス部隊ということである程度の知名度を有していたせいで、本プロジェクトにより人為的に生まれたティエンス達の人権を解放しろといった抗議文や活動が行わていたのだった。  確かに、各国の軍事規模は表れる魔神勢力に対して少々過剰となっており、軍事費縮小の動きは至極当然の流れだったのかもしれない。  そんな情勢下にて、研究所に彼女達に下した措置は―― 『”――上記を踏まえ、将来における有望な戦力確保の観点から、77番分隊員11名に仮死状態への移行を命じる。有事の際、所長決裁のもと蘇生措置を実施することとする”――って、要はこれ問題を先送りにしてるだけっすよね。世間から私達を解放しろーって声がうるさいからって。はぁ、魔神なんていつまた活発になるのか分かんないのに。ホントに起こしてくれるんすかねぇ?』  研究所からは少し離れた街はずれにある、霊安所まで続く通路を歩く11名のティエンス達、辞令を読み上げた分隊員の27番が不服そうに愚痴を漏らす。 『ニーナ、気持ちは解るけど命令だから仕方ないよ。来年はウチの研究所の予算も殆どカットされちゃうみたいだし。部隊を維持するお金もないんでしょ」  そう諭すのは副隊長の31番。飴を口の中で転がしながらそう言う彼女自身も表情自体は暗い。それは他の隊員達も同じだった。  これまで、魔神達と戦い、この地に平和と安寧をもたらす為に奮闘してきた筈だった。その兆しが見えてきた途端に、厄介払いのような扱いを受けることに、もどかしい気持ちを抱かないのも無理があるのだろう。 『……良いじゃないか。私達は、魔神と戦うことが使命なんだ。私達が眠るということは、今世界は平和ということだろう? 私達の生きる時代は、平和な世ではなく、魔神や蛮族が蔓延る戦争の時代なんだ』  部隊員達と自分を納得させるため、77番は言葉を紡いでいく。 『それに、私達は離れ離れになることはない。いつ目が覚めても、一緒にいる。そうだろう?』 『でもナナちゃん、ゼロは……』 『はは、それこそ次に目が覚めた時は、成長したアイツを目に出来るかもな』 『……うん、そうだね』  霊安室に入ると、数人の研究員と、仮死状態中の自分達を護衛するための戦闘用魔動機が目に入った。  部隊員達は研究員達の指示に従い、それぞれ用意されている寝台に身を預ける。 『では、準備の出来たものから仮死状態への移行を』  指示通り、ティエンス達は自らの時を止め始める。  77番も仮死状態に移行しようとした、しかしその直前、彼女の頭に一つの疑問が生じる。  部屋の中にいた戦闘用魔動機である。自分達を護るためのものだと信じて疑わなかったが、どうしても違和感が拭えない。  それが77番の眠りを妨げていた。この違和感の正体を突き止めなければ、何か取り返しのつかないことが起こる気がして――  そして77番は気が付いた。護衛用魔動機なら、普通配置するのは部屋の外だろう。万が一部屋の中に敵性因子が入った時点で自分たちの被害は免れない。  ならば、部屋の中に魔動機が居る理由、それは、 『……もう仮死状態に移行したのか? 外見からでは判別不能だが』 『こちらの被検体は脈拍・呼吸共に停止しています、恐らく他の個体も同様かと。確認しますか』  研究員達の話し声が聞こえる。 『いやいい。何人か起きてようが脅威にはならんだろ……全く、本当に良いのかねぇこんなことして。こんな時勢に仮死状態移行中の魔動機暴走による事故死だなんて隠蔽工作。暴かれるに決まってるってのに』 『今の政治家どもは世間の波に流されやすいですからね、目下の爆弾を抱えておくのが嫌なんでしょう。――主任、指示を』 『ああ、処分実行を――』  即座に起き上がった77番が研究員の頭を殴り飛ばす。  仮死状態に移行していないティエンスがいたことが予想外だったのか、現場は混乱状態になっていた。 『皆、起きろ! 私達は――!』  目を覚ますティエンスは居ない、皮肉にも、自分が彼女達に伝えた言葉が、何も疑わずに信じて仮死状態に移行することを後押ししたようだった。  直後、鳴り響く銃声。誰かが命令を実行したようで、魔動機が寝台に横たわるティエンス一人の命を奪った音だった。 『――ロック……! そんな、貴様、貴様ぁ!』  そもそも武器の携帯を許可されていなかった彼女は、殴り飛ばした研究員の腰にぶら下がっていた片手銃とマギスフィアを強奪。魔動機術を行使し、研究員と魔動機に銃弾を放っていた。  研究員達の脳幹は全て貫通させた。しかし魔動機は複数の銃弾を受けたにもかかわらず稼働を続け、無慈悲にティエンス達の命を奪い続けている。 『そんな、やめろ、やめてくれ……!』  一人、また一人の仲間の命が消えていく光景を前に、胸が張り裂けそうな絶望感が77番を襲う。  魔動機による処刑は九人目まで完遂されていた。残るティエンスは、自分を除きあと一人、魔動機は命令通りの所定ルーチンを繰り返し、無防備に横たわっている最後の一人に銃口を向ける。  その銃口の先は、副隊長の31番だった。研究所では子供の頃、同じ指揮官候補生のカリキュラムを受けていたため、一番古くからの付き合いであった。被検体達に呼び名を付け始めたのも彼女で、被検体達の中でも一番、自分たちのことを家族のように大事に想ってくれていた、面倒見の良い姉のような存在だった。  77番にとっても、一番大切な人で―― 『あああああああああああああ‼』  気付けば、77番は魔動機の前に身を挺していた。容赦なく、魔動機から放たれた銃弾は彼女の腹部を抉り、弾丸から迸る魔力の塊が、全身に激痛を走らせる。 『――こ、のぉ……!』  しかし同時に、77番は魔動機に対して銃弾を放つ。真正面から放たれたそれは、破損していた装甲の隙間を掻い潜り、魔動機のコアを貫いたのだろう。  幾多のエラー音と煙を上げながら、しかしようやく、大量虐殺を実行した魔動機はその活動を停止した。 『はぁ……はぁ……――ぐっ⁉』  撃たれた腹部が熱い、体中に嫌な脂汗が流れている。いやそれだけではない、徐々に体の感覚が麻痺し、視界が霞み始めてていた。これは明らかにただの魔力弾による影響ではないことを、77番は察した。 『毒、か……クソ共が……』  確実に殺すための仕込みだったのだろう、毒を治癒する方法は、この霊安室に存在していない。  自らの最期を悟った77番は、静かに眠ったように見える、しかし心臓を正確に撃ち抜かれ、二度と目を覚ますことのないティエンス達に目を向ける。  ――ロック、イーサン、イリヤ、ナコ、ナンシー、ゴージ、スーレイ、ニコ、そして……ニーナ。 『すまない、すまない……』  おぼつかない足取りで仲間達の傍を歩く、そして最後に辿りついたのは、ただ一人無事に仮死状態を続けている31番の寝台。  先ほどの戦闘でマナを使い果たしてしまっていた77番には仮死状態を蘇生させるためのマナは残っておらず、安らかに眠る彼女の頬をそっと優しく撫でる。 『……コマンド、”サウンドレコーダー”……』  しかし、蘇生に必要な量は残っていなくとも、魔動機術を一つ行使する分にはまだマナが体内に残っていた。  強奪したマギスフィアにコマンドワードを音声入力し、録音機に変形させて31番の手に握らせる。  建物の外から、今まで聞いたこともないような途轍もない轟音が聞こえてきていた。さらには天地開闢が始まったかと錯覚するほどの地震。何かがこの大陸で起こり始めたのは疑いようのない事実であった。しかし、その轟音すらも今の77番には気にならない。  今彼女がやるべきことは、残されてしまうたった一人の家族に、少しでも寂しい想いをさせないよう計らうことだけだったのだから。  そして77番――ナナは、31番――ミイに、最期の言葉を語り始める。 【魔動機術”サウンドレコーダー”の音声記録】  ……ミイ、まずは、すまない。お前一人を遺してしまうことになってしまって。  察しの良いお前のことだ、すぐに気付いてしまうだろうから、先に言っておくよ。皆……死んでしまった。私ももう、永くない。  お前を安全な場所に移そうかとも考えたが……どうやら、そんな力も残っていないらしい。  ……そうだな、何か、言うこと……お前がいつも言っていた通り、私は、口下手だからな、上手く話せないな。  ≪激しい轟音≫  ……凄い音だろう? 何か、外で起こっているらしい。この混乱なら、もしかすると、私達の処分確認どころの話では、ないかもな。  もし、もしお前が……この録音を無事に聞けていたら、きっと世界が、変わってしまった後なんだと、なんとなく思うんだ。  私達の国も……存在も、何も記録に残っていない。そんな世界だ。人族が、どうなっているかだって、怪しい。  ……なぁ、ミイ、どうせお前のことだ。自分一人が生き残ったって意味なんか、ないって言って、早まろうとしてるだろう?  そんな腑抜けのお前に、隊長からの――ナナちゃんからの……最後の、命令だ。  どうか、生きてくれ、私達が生きた証を……此処に、あったのだと。この世界に、残して、そして――  ――お前なら、大丈夫。きっと、新しい絆、を……幸せ、な……―――――――  ≪以降、記録時間終了まで肉声記録なし≫ 【経歴】  魔動機文明時代末期、コルガナ地方のある国ではティエンス機解種を人為的に生み出そうとしたプロジェクトがあった。  そのプロジェクトの失敗作の一人で、普通のティエンスとして生まれたのが本キャラクター。  失敗作でもティエンスには違いないので、魔神の侵攻に対する戦力として育成されてきた彼女は成人した15歳から分隊の副隊長として戦場で戦うことになる。  三年後の18歳、理由は不明だが魔神の侵攻が落ち着いてきたこともあり、軍事費縮小の動きが強まった結果、彼女の所属する分隊員達に仮死状態への移行を命令されることに。  しかし、人権派閥の運動を受けて暴走した一部の政治家により、非人道的な実験で生み出された彼女達の抹殺処分が裏で下されていた。処分直前に異変に気付いた分隊長が奮戦するも、彼女以外の被検体は分隊長含め全員死亡。なお、その騒動の直後に≪大破局≫が発生し国そのものが滅びたため、抹殺処分の成否は有耶無耶になり、長い年月彼女は仮死状態となっていた。  三百年後の現代、当時コルガナ地方で冒険者活動をしていたスレイ=オブライエン率いるパーティが受けた依頼により、彼女が眠っている遺跡――霊安室の調査が実施された。  遺跡を護るかのように出没した十体のアンデッドを浄化した後に、最奥の部屋にてスレイ達は仮死状態のティエンスを発見し、蘇生措置を施すことになる。  目が覚めた時点では状況が分からず錯乱状態に陥っていた彼女だったが、スレイ達による事情聴取と現代の説明を聞いたことや霊安室の状況を見て、三百年の時を超えたこと、何より自分の大事なものの全てを失ってしまったことを理解する。  半ば自暴自棄になった彼女はその場で自殺を試みるが、スレイによって阻止。そして自身がいつの間にか手に持っていたサウンドレコーダーの再生を促される。  再生された音声を聞いて号泣した彼女は、命令された通り、かつての仲間達がこの世界に存在したことを証明するため、スレイ達に同行し冒険者として知名度を上げることを目的に生きることとなった。  スレイ達に名前を尋ねられた際に、当時の自分の被検体番号を言いかけたが、これから世界に知らしめる名は自分の名では不相応だとして、分隊長の呼び名であった”ナナ”を名乗ることとした。  遺跡を出た直後、一匹のレッサ―ドラゴンがスレイ達の前に舞い降りる。このドラゴンも遺跡を護っていたようで、スレイ達はドラゴンが不在の隙を突いて遺跡を調査していたのだった。  しかしそのドラゴンは三百年前にナナ達が保護した竜の赤ん坊であるゼロが成長した姿だった。「懐かしい匂いがしたから、思わず飛んできちゃったぜ」とのこと。  それから、ナナとレッサ―ドラゴンのゼロは、暫くの間スレイ達と共にコルガナ地方で冒険者活動に勤しんでいた。  レッサードラゴンを使役する冒険者、しかも魔動機文明時代の生き残りとくれば、名が広がるのは早かった。 彼女自身の立ち振る舞いも、彼女本来のものではなく当時の部隊長をなんとなく模倣し、少し棘のある言い回しをして目立っていたのも要因の一つかもしれない。  そんな折、活動拠点としていた国からナナに対し出頭命令が下される。出頭した先で国の大臣から告げられたのは、自身の出生に関する事実の供述と、知的財産確保のための仮死状態への移行命令であった。  現時代の倫理観でそのような命令を下す国はまず存在しないと考えられていたが、どうやら滅んだ筈の三百年前の国の血筋を受け継いでしまっていたらしい。  命令。と聞いて非常に不愉快な気分になったナナ。また、そもそもとして過去のトラウマが蘇るせいで仮死状態への移行をナナは出来ないでいた。  そういった事情もあり、ナナは国からの逃走を図る。仮死命令とそれに伴う捕縛命令は隣国にまで出回っており、”封印指定”のナナと呼ばれるまでそう時間はかからなかった。  これまで一緒に冒険をしてきたスレイ達に国を離れることとこれまでの感謝を伝えると、事前に相談しなかったことを一喝された。そもそもスレイ達も、ナナを逃がすための準備をしていたようで、パーティメンバーの思惑は一致していた。  仮死状態から目覚めてから、一人ぼっちになってしまったと思い込んでいたナナだったが、この現代で新たな仲間に出会えていたのだと初めて自覚し、改めてスレイ達に感謝の言葉を伝えるのだった。  そうしてブルライト地方のラージャハ王国まで拠点を移したナナは、そこからの十年間で多大なる功績を挙げることになる。  特に目立った功績はない、しかし彼女の特筆すべき点として、レッサ―ドラゴンを使役し、かつゴーレムすらも率いる故の戦術幅の広さ、魔動機文明時代に培われた指揮官能力が、冒険者としての力を遺憾なく発揮しており、危険度未知数の奈落の魔域攻略を幾度となく成功させてきた実績を持っている。  結果、彼女はブルライト地方に名が残る英雄として、非常に高い知名度を誇ることとなった。これは、かつての分隊長の命令を、忠実に遂行した結果であった。  性格としては、かつての分隊長の厳格な性格を模しているだけであり、素は思いやりのある優しい性格であることから、時々ツンデレみたいな言動を取ることもある。かつ昔から飴、もしくはそれに類する甘い食べ物が好物で、特にケーキ等の嗜好品を口にした時の幸せそうな表情をゴシップ記事に乗せられたことから、そのギャップについても高い知名度を誇ってしまっている。