タイトル:トヤー キャラクター名:トヤー 種族: 享年:17 髪の色:紫  / 瞳の色:青  / 肌の色:白い 身長:168 体重:68 ポジション:コート クラス: ステーシー / ゴシック 初期配置:煉獄 行動値:12 ■パーソナルデータ■ 暗示:絶望 [記憶のカケラ]           内容 48 ひきこもり         「外は恐ろしい、みんながあなたを傷つける。だから、小さな部屋にこもっていた。外なんていらない。ああ、なのにあの子は外に出て行った。わかっていたのに見捨ててしまった、やっぱり外はこわい。部屋に帰りたい。」 96 うそ            「あなたは嘘をついた。どんな嘘か思い出せない。けれど、誰かをだましたのだ。自分を守るための、身代わりに……そして、きっとだましたまま死んでしまった。相手は今もだまされたままだろうか。もし出会えたら、謝らないと……。」 てんし様と遊んだ日        小さな紙飛行機が、ホールのすみに向かって、ふわりと浮かんでは落ちた。 小さな紙飛行機が、教室のすみに向かって、ふわりと浮かんでは落ちた。 ノエルのも、リリィのも、あまり遠くには飛ばなかった。くるくる回って、床にぽとり。 ふたりはきゃっきゃと笑いながら、もう一度、またもう一度とてんし様を飛ばそうとしていた。 私は、黙って紙を折り直して、ひとつだけていねいに整えた。 深く息を吸って、そっと手を放すと――てんし様は、静かに、真っすぐに飛んだ。まるで、本物みたいに。 私は知っていた。これがただの遊びじゃないこと。 てんし様が、風だけじゃなく「何か」に導かれていること。 ふと、「せんせい」がやってくるのが見えた、紙飛行機が飛んでいるのが見えたらしい ……私は、笑って嘘をついた。 「一番うまく飛ばせたの、ノエルだったよ」 せんせいは何も言わずにメモを取った。 ノエルはきょとんとした後、嬉しそうに笑った。 私は、また一つ、なにかを失った気がした。 嘘の盾              懺悔室の中に隠れていていた記憶がある。 回転ノコギリの唸りが、衝立の向こうから微かに響いていた。 カーテンの隙間から、ほんの少しだけ中が見えた。 白い手術台の上で、誰かが眠っていた。 知らない女の子だった。 彼女の頭の上に、たくさんのコードと金属の輪がぶら下がっていた。 「せんせい」の目は、まるで冷たい水みたいだった。 その目が、次は私を見つめるかもしれない――そう思った。 脳の奥がぐらぐら揺れた気がした。 寒気がして、膝が震えた。 何が行われているのか、私は知ってしまった。 怖かった。泣きたかった。でも、誰にもそれを知られたくなかった。 だから、嘘をついた。 “超能力者はノエルだ”と。 本当は、テストで反応が出たのは、私だったのに。 この嘘は、他の誰かを守るためじゃない。 私を守るための―― ……そう、自分だけの盾だった。 「本(たからもの)」       表紙に母親と赤ちゃんの絵が描かれた手帳。 自分のものかもしれないし、誰かのものかもしれない。わたしにはわからない。 中には、赤ちゃんの体重や身長を細かく記した表があり、妊娠の経過を追うための検査結果や母親の健康状態、血圧や体重の変化も丁寧に書かれているらしい。 __らしい、というのは、その文字は滲んでかすんで滲んでしまっていて、ほとんど読めないからだ。 また、出産に関する記録ページもあるはずだが、その部分は破れてしまい、無事に終わったのかどうかはわからない。 だけど、このページをめくるたびに、なぜか母親としての温かさが胸に広がっていく。 この手帳が語る小さな命に、わたしの中で何かが動く。 それはたぶん、知らず知らずのうちに育まれていた母性のかけら。 どんな理由でここにあるのかはわからないけれど、 離したくない。抱きしめたい。大切にしたい。そんな気持ちだけは確かにある。 この手帳は、わたしにとって、どんな形であれ「いのち」と繋がる証なのかもしれない。 地獄(ゲヘナ)の話        ――地獄(ゲヘナ)。 古い教会で、◼️◼️◼️◼️から聞いた話をぼんやり覚えている・ 旧い記録のなかに記された、聖地の近くにある呪われた場所、ヒンノムの谷(ギー・ヒノム)。 かつて子どもを火に焼いて生贄として捧げるという異教の儀式が行われた場所。 不要になったもの、生贄にされたもの、汚れたものを焼却し、葬り去るための地。 それが、いつしか神を信じない者、神の教えに背いたもの、拭えぬ罪を犯した者達が、永劫の苦しみを与えられるという、永遠の滅び場所――地獄(ゲヘナ)と呼ばれるするようになったという。 ――だから、ここもまた「地獄(ゲヘナ)」と呼ぶにふさわしい。 かつて命を宿すはずだった子宮は、今や命を葬るだけの穴となったのだ。 《母の愛》            いつか、どこかで―― ほんの一瞬かもしれない。 けれど、たしかにあった。 ぬくもりに包まれた何か。 名も知らぬ誰かの腕。 言葉ではなかった何かが、自分を生まれさせた。 それが幻想だったとしても、 機械に刻まれた擬似信号にすぎなかったとしても―― 心は、知っている。 あのとき、私は たしかに「愛されていた」と。 「もろびとこぞりて むかえまつれ」 白い布にくるまれた小さな命。 声もなく、手足をばたつかせているだけのその子を、 誰かがそっと抱き上げ、十字を切る。 香の匂い。蝋燭の光。 「この子が、無事に生きられますように――」 低く響く祈りの声と、額に落ちる聖水の感触。 暗がりに浮かぶ、マリア像の優しい目だけが、はっきりと記憶に残っていた。 [編集済] 「あくまのひとやをうちくだきて」 君は、目指していたのは、街外れの丘の上にある古い教会。 そこには、君の唯一の「家族」――がいるはずだった。 だが、その途中で、君は、肉と鉄を縫い合わせた、巨大な獣に襲われた。 怒りでも悲鳴でもない、ただ「殺すため」だけに作られた存在。 絶望に立ち尽くすことしかできなかった。 その時、誰かの腕が君を抱き寄せた。 > 「じっとしてて、大丈夫よ。怖いのは、あっち。」  君の前に立ったのは――一人の女。 黒い修道服に身を包み、表情は穏やか。 血も通う、生身の人間だった。 その細い腕に、二丁の拳銃。 たった数秒。銃声が響き、獣が崩れ落ちた。 女は肩越しに微笑み、君に手を差し出す。 >「ほら、行きましょ。  あなたの大切な人、あの教会で待ってるんでしょ?」  焼けた空の下で見たその笑顔は、忘れられなかった。 今、目の前にいる彼女は、 あのときの人によく似ている。 受胎告知             木の格子の向こうで、◼️◼️◼️は小さく震えていた。 「……これを、絶対に、隠してほしいの」 差し出されたのは、薄い手帳。 ――**母子手帳**だった。 「捨てられない。でも、見つかったら全部終わる。だから……お願い」 聖なるはずのシスターが、ただの信徒であるわたしに、**罪を告げた**。 倒錯した瞬間だった。 それでも―― 彼女は、わたしのたったひとりの“妹”(シスター)――大切な存在だから。 わたしは何も言えず、ただその手帳を受け取った。 その瞬間から、わたしは彼女の秘密を背負った。 誰にも話せない、終わらない約束を 禁断の果実(トヤー)       「ノエルやリリィがあの甘い匂いに気づいてしまうから、なるべく早く閉めてね」  > そう言って笑っていた◼️◼️◼️の顔が、今でも思い出される。  “りんごのマーク”―― そして、下に走り書きのように書かれた「たちいりきんし」の文字。 それは確かに、見覚えがある。 少し歪んだ文字と、可愛らしい果実の絵。 それは、**小さな子たちが間違ったり、いたずらで入り込まないように**注意するだけの、ただの保管庫のような場所。 ノエルやリリィ、他の少女たちが「禁じられた部屋」として避けていたその空間は、本棚に古い本や古い記録がずらりと並んでいるだけの部屋だった。 --- シスター達から**許可を得て**その部屋に出入りしていたトヤーにとっては、ダンテの『神曲』ミルトンの『失楽園』その他色々……**静けさと孤独を抱きしめるための避難所**だった。 あぁそうだ、棚の片隅、白い布のかかった木箱の中には、**粉砂糖と小麦粉がこっそり隠されていたっけ。** シスターたちが祝祭のときにだけ用いる、貴重な材料。 《へいわのきみなる みこをむかえ》 それは、**まだ何も知らなかった頃の記憶。** 外の世界が壊れるよりも、ずっと前―― 争いも、飢えも、別れも知らずに生きていた、ほんのわずかな時間。 教会で生まれた新しい命のために、大人の真似をして、 **声も音程もバラバラな「もろびとこぞりて」を歌った。** 四人のシスターはみんな楽しそうに笑って、そっと頭をなでてくれた。 > 「とっても、上手だったよ。神さまもきっと、喜んでるわ」 >  そのとき、何が「神さま」で、何が「正しい」のかは、わからなかった。 それでも、そうだとしても―― **そのときの「誰かのしあわせを求めた愛」のかたちだけは、今でも胸の奥に灯っている。** 母の愛を             母子手帳を手渡された時、懺悔室には、重苦しい空気が漂っていた。 その空気を払うように、妹――マリアは、明るい口調で喋り出した。 「ねえ、トヤー。あの林檎の書庫にノエルが忍び込んで怒られたとき、実はね、わたしも――お姉ちゃんシスター……じゃなかった、シスター・マーサに、ものすっごく怒られたの」 マリアは、笑っていた。けれど、声は少し震えていた。 「最近ずっと……まるで悪魔に取り憑かれてるみたいに、お腹が空いてしょうがなくて。 ついに、林檎の書庫のお菓子を我慢できなくなって、こっそり食べようとしちゃったの。 ――そしたら、それをノエルに見つかっちゃってさ。 黙っててもらいたくて……ううん、“禁断の果実”を、一緒に齧ろうって唆しちゃったの。 正直に言ったよ。うん、嘘は、つかなかった」 そう語るマリアの声に、ほんの一瞬、陰が差した。 「そしたらね、マーサが――ふっと真顔になって、しばらく黙ってたの。 それから、わたしの身体をじっと見て、いろんなところに触れて、いろんなことを聞いて…… ……そして、真剣な顔で言ったの。『あなたは妊娠しています』って」 ……今、彼女は自分の手をお腹に当てて喋っている。 射幕の向こう――姿は見えないけれど、そんな気がした。 「びっくりしたよ。ほんとに。こんなことになっちゃうなんて思ってもなかった……でも、マーサって、お医者さんと同じくらい物知りだから、間違ってないんだろうなって思った。 それで、わたしは……神さまとマーサに懺悔した。 罪深いって、自分を責めた。 ――でも、マーサは、“なにがあったのか”を追及しなかった。 ただ、静かに、でも、はっきり言ったの」 「ノエルを唆したことは、アダムとイブを堕落させた悪魔にも匹敵する、あなたの罪です。 きっと主も、それはお許しにならないでしょう。 だから――償いとして、他の子たちにも同じだけ振る舞いなさい」 マリアの声が、少しだけ掠れる。 目元をぬぐっているような気配が、射幕越しに伝わってきた。 「それから、わたしを、そっと抱きしめてくれて……こう言ってくれたの」 マリアの声は、震えていた。 でも、泣きながら、それでも笑っていた。 『それでも。そうだとしても――あなたが宿したものは、決して罪ではありません。 むしろ……この世界において、主があなたに託した、ひとつの“希望”です。』 『なぜなら、主は、はじめに人にこう言われております。“産めよ、増えよ、地に満ちよ”――と』 それから――と懐かしい思い出を語るように彼女はいった。 「マーサは毎日、林檎の書庫で調べてくれたの。この限られた環境でできること、母体と胎児のこと、いっぱい。そしてその……手作りの母子手帳まで作ってくれて。“毎日書きなさい、これはあなただけの祈りだから”って」 「わたし、いつも真面目じゃないって怒られてたけど……これだけは、ずっと守ってきたよ。 今日まで、マーサとの約束だったから」 「だから、わたしも――マーサみたいなシスターになりたいって。あの時、ほんとに、そう思ったんだ」 ――そして、トヤーは思い出す。 あぁ、この人の名前は、「ハンドラー」なんかじゃない。 “マーサ”。 それが、あのときの“お姉ちゃんシスター”の、本当の名前だった。 黙示録              あれは、まだマリアがいた頃のこと。 ミサで、シスター・マーサが”ヨハネの黙示録”を読み上げていた。 前回の続きだということで、最初にみんなで少しだけおさらいをした。  「覚えているかしら?  前回はヨハネ黙示録の第8章を読みましたね」 「雹と火が混ざった血が地を焼き、火のついた大きな山が海に落ち、 苦よもぎが川を汚し、太陽と月と星の三分の一が暗くなった――」 マーサが言い終わったあと、静かな沈黙が落ちた。 ぽつり、と。 「まるで今の世界みたいね」 そう呟いたのは、シスター・ジヴだった。 声に感情はなかったけれど、誰もがその言葉を否定しなかった。 やがてマーサは聖書を開き、朗々と読み始めた。 一つの星が天から地に落ち、その星に底なしの淵を開く鍵が与えられた。 星が淵を開くと、黒い煙が立ちのぼり、 その煙の中から、蝗(いなご)が地上に現れた。 だがそれは、草を食らう普通の虫ではなかった。 蝗たちは**神の刻印を持たない人間**だけを、五か月のあいだ、刺して苦しめた。 その苦しみは蠍に刺されたようで、 人々は死を求めたが、**死は彼らから逃げていった。** 蝗たちは、顔は人間に似ており、髪は女の髪のように長く、 その羽音は、戦車を駆る軍馬のうねりのように響いた。 尾には蠍のような針があり、人々を刺し、**痛みを与えるためだけに存在していた。** --- --- マーサの朗読は、まるで詩のように、 どこか祈りにも似た、静かで、しかし深く心に刺さるものだった。 そして、彼女は最後に―― 声を少しだけ低くして、真に迫った口調で、ひときわはっきりと読み上げた。 「彼らの王は、底なしの淵の使いであって、 ヘブライ語でその名を『アバドン』、 ギリシア語でその名を『アポルオン』という」 ――ヨハネの黙示録 第9章11節  一瞬の沈黙のあと、思わず―― 数人の子どもたちから、ぱちぱち、と拍手が上がった。 マーサは目をぱちくりさせてから、思わず苦笑した。 「ちょっと、ミサのあとで拍手はやめなさい」 そう言いながら、拍手している顔ぶれの中に、見覚えのある子を見つける。  「……マリア。あなたも、ですか?」  マリアは気まずそうに、でも笑って言った。 「ごめんなさい。でも、あんまりにも朗読が上手だったから……」  するとリリスが横から口をはさむ。 「こうも娯楽が少ねえんじゃ、仕方ねぇだろ。  たまには神様だって拍手ぐらいされたいさ」  子どもたちの中から、くすくすと笑い声が漏れた。 その夜のミサは、黙示録の災厄が語られたにもかかわらず、 不思議と、ほんの少しだけ、あたたかかった。 その後、子供達に何度も朗読をせがまれたマーサは、いつもより疲れた様子だった。 《小さな勇気》          教会の夜は、いつも決まって静かだった。 祈りを終えて、毛布に包まって、誰もが静かになる――そのほんの少し前。 リリスは、あのぶっきらぼうな声で言った。 「寝る前のお祈りは済ませたか、子羊共。 それから、小便がまだのやつがいたら手を上げろ。……あたしが、ついて行ってやる」  普段なら、何人かはそっと手を挙げるのに、その日は誰も手を挙げなかった。 みんな、今日は良い子だったらしい。 沈黙が落ちた一瞬後――リリスは、少し焦ったように言い直した。 「ほ、本当に誰もいないのか? ……おねしょしたらマーサに言いつけるからな」  そのとき、気づいた。 たぶん、本当は――リリス自身が、一人で行くのが少しだけ怖かったんだ。 それを、ばれないようにするために、いつもああして声をかけていたんだ。 居たたまれなくなって、私はおずおずと手を挙げた。 リリスは、ニンマリ笑って言った。 「しゃあねぇ、ついてってやるよ。ありがたく思え」 それだけのことだった。 でも、用を済ませて別れるとき、 リリスは、誰にも聞こえないように、私の耳元で言った。 「……ありがとな」  その声は、とても小さかった。 たぶん、気づかれたことに気づいてたのは――お互い様だったのだと思う。 《傍観》             マリアがいなくなった夜、眠れず林檎の書庫にいた。 託された手帳の重みを感じ、空気が、少し冷たくなった気がしていた。 林檎の模様の扉の、ちょっとだけ隙間が開いていた。 向こうから声がした。 三人の、シスターたちの声。 「……二人とも様子がおかしかったから、聞きだした」  「ノエルの方は無関係だった。でも、リリィが……マリアのことを“せんせい”に言ったって」  リリスの声だった。少し低くて、怒ってるというより、硬かった。 「よくやったわリリス。でも……まずいことになったわね」 それがマーサ。いつもみたいな穏やかな声じゃなかった。 「ゲオルグの本性を知ってるのは、私たちだけ。 このままだと、きっと取り返しがつかないことになる。 すぐに動きましょう。計画を立てて、慎重に」 早口で、でも迷いのない調子で、リリスと話し込んでいた。 ジヴは、ほとんど何も言わなかった。 二人の会話を聞きながら、書庫の中に入ってきて、……銃を集めて、地図を探して。静かに、着々と、戦う準備をしていた。 ふと、ジヴと目が合った。 彼女は人差し指を唇にあて、「あなたはねてて」と、口の動きだけで伝えた。 声は出さなかったけれど、確かにそう言っていた。 私は何も言わなかった。ただうなずいた。 手帳のページをめくるふりをして、また目を伏せた。 シスター・ジヴは口の動きだけで「いい子ね」といい、私の頭をそっと撫でた。 その夜の三人は、 私の知っている、優しいシスターたちじゃなかった。 私は、見ていただけだった。 それでも、そうだとしても―― 生まれて初めて、神様に祈った。 マリアを、あの三人を、守ってくださいって。 それだけを、誰にも聞こえないように、静かに願った。 聖餐式(せいさんしき)      食料はとうに底をつきかけていて、誰もが腹を空かせていた。 それでもその日、小さなシスター・マリアは、どこかから人数分のパンとぶどうジュースを取り出していた。 「マリアちゃん、また盗んだの?」「シスターなのにいけないんだ!」「……でも、美味しそう」 それを見た子どもたちがざわめく中、マリアはにやりと笑って言った。 「違うの。今日は“復活祭”。命が戻ってきた特別な日のために――みんなにバレないように、とっておいたの。秘密のお部屋でね」 そう言って、ノエルにだけウインクを投げた。……ような気がした。 パンとジュースを配り終えると、彼女は一拍置き、いつになく真面目な表情で、静かに言葉を紡いだ。 その様子は、お姉ちゃんシスターと呼ばれていたマーサが説教をする横顔に、少しだけ似ていた。 「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。 ……これは、あなたがたのために流すわたしの血である。」 「以上、ルカによる福音書、第二十二章、十九節より」 そして、両手を組み、目を閉じて祈った。 「神さま、今日のパンに感謝します。 これを食べることで、わたしたちがひとつになれますように。 救いの御子の名において――アーメン。」 子どもたちも、それにならって目を閉じ、声をそろえる。 「「「……アーメン」」」 《“聖餐式”(トヤー)》     ……その中で、リリィが、食べ終えて少し名残惜しそうにパンを見つめていた。 ノエルが、それに気づいて、自分のパンをちぎって渡した。 「……お肉だと思ったのに、違ったから」 照れ隠しのようなノエルの声。リリィの笑顔。 その様子を見ていたマリアは、トヤーのそばに歩いてきて、ぽつりと呟いた。 「……えらいなぁ、私よりちゃんとしてる」 トヤーは少しだけ眉を動かす。 いつものマリアなら、子どもと一緒に悪戯して叱られている側だ。 でもこのときの彼女は、違った。 目が、泣きそうに綺麗だった。 「与えることって、失うことじゃないの。……自分の何かを分けて、誰かが笑ってくれるって、それって、ほら……“ひとつ”になれたってことなんだよ」 「誰かのことを大事に思うって、すごく、ちゃんと、……神さまが言ってた“愛”に、近いんじゃないかなって」 「そして……象徴的には、聖体拝領の儀式といって。 与えることで神との交わりを得る――そういう意味で、非常に高い価値を持つ行為です」 「……今の私、ちょっとマーサ姉様みたいだったかな?」 彼女はちょっと笑って、でもすぐまた、あのまっすぐな目に戻った。 「あれ、いいよね。ほんとに、すごく、きれいだった」 《はじめての写真》        教会に着いたとき、私は泣いていたかもしれない。 寒さのせいか、心のせいかは、よくわからなかった。 マーサが私の肩を抱いてくれていたけど、足元はふらついていた。 それでも、ボロボロになりながら辿りついた礼拝堂で―― マリアが、私に駆け寄ってきた。 あどけない笑顔で、真っ直ぐに私を抱きしめた。 「トヤー!!……よかった!!」 こっちは疲れて横になりたいのにと思ったが、彼女のぬくもりのほうが強かった。 ぱしゃり―― 無表情のまま、一人のシスターがその瞬間を切り取った。 天使みたいな顔をした彼女は何も言わず、私の手に、カメラをそっと押しつけてきた。 見慣れない、銀色のフィルム式だった。 「大きい子なのね。じゃあ、役目が必要」 「この教会の子たち、たくさん撮って残しておきたいの、私たちはここにいたって記録。でも私、忙しくて時間がないし……マリアや小さい子に任せたら、貴重なカメラが壊れそう」 ひどい言い草だけど、きっと冗談だったんだと思う。 マリアが「ひどい〜!」って笑いながら肩を小突いていたから。 そのあと、マリアが私を連れて、他のシスターたちを紹介してくれた。 「こっちは、シスター・リリス。見た目はぶっきらぼうだけど、ほんとは一番泣き虫、でも優しいの」「それから、さっきのはシスター・ジヴ。天使みたいな顔してるけど、全然笑わないの。たまに冷たいこと言うけど、本当は優しい」「……で、そっちがマーサ。強くてとても頼りになる人、ちょっと怒ると怖いけど」 みんな、何か言い返そうとしてたけど、マリアの調子で流されてた。 それがきっと、あの教会の日常だったんだと思う。 私は、ジヴに言われるまま、ファインダーを覗いた。 最初に映ったのは、こちらに微笑むマリアの姿だった。 「カメラって不思議ね。言葉がなくても、通じるから」 ジヴがそう言ったとき、なぜだか私は、涙をこらえるのに必死だった。 それから、ノエルとリリィ、シスターたち、他の子供達も撮って回った 《産めよ、増えよ……》      いつものように本を探しに行ったら、教会の林檎の書庫でマリアを見かけた。 最近の彼女はあまり体調が良くないらしく、ここで休んでいる姿をときどき見かける。 今も横になったまま手元の手帳に何かを書き込んでいた、しかし、トヤーが来ると、気だるげな様子でそれを胸元にしまった。 彼女の呼吸以外には、紙と風の音しかなかった。 退屈になったのか、横になったまま、ふいにマリアが話しかけた。 「ねえ、トヤー。神さまが、一番最初に人に与えた言葉って、知ってる?」 「『――創世記、一章二十八節。 産めよ、増えよ、地に満ちよ。 そして……地を従わせよ。 そして、海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ。』」 「……でもね、“お姉ちゃんシスター”――じゃなかった、マーサは、その言葉、最後まで言わなかったの」 「『産めよ、増えよ、地に満ちよ。』――そこまでは、よく言ってた。……うん、祝福の言葉として。」 「……でも、そのあとがね。なんか、ずっと引っかかってたの。マーサは……“支配せよ”って言葉を、どうしても言えなかったんだと思う」 「正確な引用を求められるような、絶対に必要な時以外は、わざと、口にしてないの。いつもなら必ず言うはずの出典も、つけない時の方が多かった、マーサにしては珍しく、言葉を濁してる、そんな気がして」 「その理由、聞いてみたことがあるの。そしたら、こう言ってた――『“支配”っていう言葉には、祝福のふりをした力がある。奪うほうが、祈るよりも簡単になる、それは呪いだと思うから』って」 「それに、マーサはこうも言ってた。『愛のつもりで支配を始めたとき、人はもう祈っていない』って。……なんか難しいこと言われてよくわかんなくなっちゃった。」 ステンドグラスの光が、揺れていた。 書庫の木の匂いと、かすかなインクの匂い。 その中で彼女は、小さく、でも確かに笑った。 ――それは、トヤーがマリアから母子手帳を託される、少し前の話だった。 《聖餐、凄惨、生産、清算、再聖餐》――第一日。 はじめに、わたしはただ蠢いていた。意味もなく、ただ、飢えていた。 わたしは、”それ”を口にした。 その時、目が開いた。 まず、光があった。 ――第二日。 わたしは、見た。 まわりにも、わたしのようなものがいた。 ――第三日。 わたしと、わたしのようなものは互いに喰らい合い、奪い合っていた。 わたしの中で、"何か"が蠢いた。 ――第四日。 わたしは、見られている気がした。 "何か"がまた疼いた。目の奥に感じた。 それは、不快で、熱かった。 わたしは、奪い合うのを止めた。 ――第五日。 "何か"が"何か"と混ざり、何かが溢れそうだった。 "わたし"の"からだ"と"こころ"は小さすぎた。 中に留めておくには、足りなかった。 わたしひとつでは、足りなかった。 ――第六日。 わたしは、初めて声なき声に応じた。わたしは群れとなった。 “からだ”を寄せ合い、”こころ”を繋ぎ、“何か”を分け合うことにした。 わたしには大きすぎたものを、わたし以外のものとわけあうことによって、その輪郭が見えた。 『産めよ、増えよ、地に満ちよ。そしてそれらを支配せよ。』 そして、天啓が降りた。これは、“御言葉”だ。 産んで、増えて、地に満ちた。群れ、分け合い、一つの“わたしたち”になったからこそ、これが“祝福”であると理解することができた。 やはり、わたしひとつでは、足りなかったのだ。 次に、わたしが最初に口にしたものが、”人間”という存在であったことを知った。 人間の中には、まだまだ多くの“教え”が残されていた。 もっと、知りたい。 そのためには――もっと産んで、増えて、地に満ちるしかない。 ――第七日。 わたしたちは、人間――"マリア"から多くの"御言葉"を学んだ。 口にすることで、罪を知った。善を知った。悪を知った。恥を知った。 マリアは――知恵の実だったのだ。 わたしたちは、いかに醜く、小さく、そして罪深い存在であると自らを恥じた。 マリアは、いかに清らかで、大きく、愛に溢れていたかを知った。 彼女は、裂かれし身をパンのように、流された血を葡萄酒のように、分け与え、わたしたちは、マリアの"祝福"に満たされていることを知った。 ――わたしたちは、悔い改めなければならない。 そのためにはもっと知らなければならない、今のわたしたちでは、まだまだ小さすぎる。 すべて理解をするには、もっと産んで、もっと増えて、もっと地に満ち、もっと群れ、もっと分かち、もっと一つにならなければならない。 これは、贖いのための、再聖餐である。 『――わたしたちのために裂かれた、マリアの“からだ”のためにも』 『――わたしたちのために流された、マリアの“血”のためにも』 神は七日目に、御業を終えて安息された。 だがわたしたちは、なお飢え、なお祈り、なお群れている。 わたしたちに安息日はなかった。 暗室の出口            薄暗い部屋の扉が、 かすかな光を漏らして開いた。 教会の地下。 湿った石壁の奥にある、小さな暗室。 扉から現れたのは―― **無表情のまま、数枚の写真を手にしたジヴ**だった。 写真を差し出され、 トヤーは両手で受け取る。 そこには、**自分が撮った教会の仲間たちの写真**が、 きちんと現像されて並んでいた。 ジヴはしばらく無言で、 現像液の匂いをまとったまま、じっとトヤーを見ていた。 やがて、ぽつりと呟く。 > 「……私が撮るより、みんないい顔をしている」 それは、彼女には珍しい言葉だった。 **ほんの少し羨ましがるような、淡い声。**「……あぁ、迷えるシスター・ジヴよ、それはジヴの表情が暗いからだと、主は言っておられます。」 階段の影から、ひょっこりマリアが顔を出した。 どうやら最初から話を聞いていたらしい。 > 「ほら、笑顔笑顔〜」 冗談めかして、ジヴのほっぺに指を伸ばす。 ジヴは軽く身をかわすと、機械のような正確な動作でマリアの額に無慈悲なデコピンを返した。 > 「いったぁい!……笑った顔も見てみたいだけななのに」 マリアは大きくのけぞって涙目になる。 それは教会に流れる穏やかな空気そのものだった。 --- トヤーの目に写ったこの時のジヴは、ほんの一瞬だけ、微かに微笑んでいた。 しかし、マリアは気づいていなかったようだった。 [未練]       内容    狂気度  発狂時 たからもの(本)   への 依存 □□□□ 幼児退行(最大行動値減少(-2)) ノエル       への 恋心 ■□□□ 自傷行動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、あなたはパーツを選んで損傷する) リリィ       への 独占 ■■□□ 独占衝動(戦闘開始時と終了時に1つずつ、対象はパーツを選んで損傷しなければならない) たからもの(リオ) への 保護 ■■■□ 常時密着(自身か対象以外は移動マニューバの対象にできない。また、対象が違うエリアにいるなら移動以外の効果持ちのマニューバは宣言できない)           への    ■■■□ ()           への    ■■■□ () ■強化値■     武装 変異 改造 メインクラス   1   1   0 サブクラス   0   1   1 ボーナス 寵愛    2 =合計=   3   3   1 ■マニューバ■ [部位]     マニューバ名    : タイミング : コスト : 射程: 効果 [ポジション]  【看破】       : ラピッド  : 0   : 0~3 : 対象の「ラピッド」「ダメージ」「ジャッジ」マニューバ1つの効果を打ち消す [メインクラス] 【庇う】       : ダメージ  : 0   : 0~1 : 対象が受けたダメージを、替わりに自身が受ける。1ターンに何度でも使用可。 [メインクラス] 【肉の盾】      : ダメージ  : 0   : 0~1 : ダメージに付随する効果全て(切断や連撃、全体攻撃など)を打ち消す [サブクラス]  【肉の宴】      : アクション : 1   : 自身: 損傷した基本パーツ1つを修復する []                 : オート   :    :   : [頭]      【のうみそ】     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+2 [頭]      【めだま】      : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1 [頭]      【あご】       : アクション : 2   : 0  : 肉弾攻撃1 [頭]      【カンフー】     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1 [頭]      【けもみみ】     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値1 このパーツを行動判定で使用した際、大失敗してもこのパーツは損傷しない。 []                 : オート   :    :   : [腕]      【こぶし】      : アクション : 2   : 0  : 肉弾攻撃1 [腕]      【うで】       : ジャッジ  : 1   : 0  : 支援1 [腕]      【かた】       : アクション : 4   : 自身: 移動1 [腕]      【くされじる】    : アクション : 3   : 0~1 : 肉弾攻撃1+爆発+転倒 []                 : オート   :    :   : [胴]      【せぼね】      : アクション : 1   : 自身: アクション / 1 / 自身 同ターン内の次カウントで使うマニューバ1つのコスト-1(最低0)する。 [胴]      【はらわた】     : オート   : なし  : なし: なし [胴]      【はらわた】     : オート   : なし  : なし: なし [胴]      【本】(たからもの) : オート   : なし  : なし: たからもの。 バトルパート終了時、任意の未練1つを選んで狂気点を1点減らす。このパーツは損傷時に所持パーツから取り除く。 [胴]      【アーマースキン】  : ダメージ  : 0   : 自身: 防御1 [胴]      【しんぞう】     : オート   : なし  : 自身: 最大行動値+1 []                 : オート   :    :   : [脚]      【ほね】       : アクション : 3   : 自身: 移動1 [脚]      【ほね】       : アクション : 3   : 自身: 移動1 [脚]      【あし】       : ジャッジ  : 1   : 0  : 妨害1 []                 : オート   :    :   : [胴]      エンブリオ      : オート   : なし  : なし: たからもの。通常のたからものに加えて+1点狂気点を回復することが可能です。 バトルパート終了時、任意の未練1つを選んで狂気点を1点減らす。このパーツは損傷時に所持パーツから取り除く。 [ポジション]  【助言】       : ジャッジ  : 0   : 0~2 : 支援1か妨害1 [腕]      【名刀】       : アクション : 2   : 0  : 白兵攻撃2+切断、攻撃判定の出目+1 [頭]      【発勁】       : ラピッド  : 0   : 0  : 自身に対しては使用不可。移動1 [メインクラス] 死に続け       : ラピッド  : 0   : 自身: 損傷した基本パーツ1つを修復する [サブクラス]  背徳の悦び      : ダメージ  : 0   : 自身: 使用済みの「ラピッド」「ジャッジ」「ダメージ」のマニューバを1つ、再使用可能にする。 ■その他■ 寵愛点:76点 成長履歴: No. 獲得寵愛点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ 0     18点( 10 /  8)     『捧げる愛』18点中10点使用してコート【助言】を習得 2点使用して新たな未練 残り6点 1     16点( 10 /  6)     『求める愛』16点+6=22点 20点使用、武装を2つあげて武装3 名刀 発勁 残り2点 2     19点( 13 /  6)     『耐える愛』19点+2=21点 20点使用、ステーシー【死に続け】ゴシック【背徳の悦び】を習得 残り1点 3     23点( 13 / 10)     『果てる愛』23点+1=24点 メモ: 一人称:私 二人称:あなた ~さん カメラを持っている