タイトル:アーサー キャラクター名:アーサー・アンフリード 種族:人間 [特徴:剣の加護/運命変転] 生まれ:戦士 ■パーソナルデータ・経歴■ 年齢:20歳 性別:男 髪の色:茶  / 瞳の色:茶  / 肌の色:健康的 身長:175cm 体重:70kg 経歴1:故郷の場所を知らない 経歴2:探している人がいる 経歴3:探している場所がある 穢れ度:0 ■能力値■      技     体     心 基礎    7      9      5    器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神 A~F   9  10   8   3  10  11 成長  26  23  15   9   6  23 →計:102 修正            5 =合計= 44  42  32  26  21  39 ボーナス  7   7   5   4   3   6    生命 精神    抵抗 抵抗  HP  MP 基本  17  19  65  39 特技        15   0 修正 =合計= 17  19  80  39 ■レベル・技能■ 冒険者レベル:13 Lv ファイター  13 Lv  / レンジャー  9 Lv エンハンサー 11 Lv  / アルケミスト 8 Lv ■戦闘特技・値■ [参照]  特技名      : 効果                             : 前提 [p2122] タフネス      : 最大HP+15                           : ファイターLv.7 [p3143] バトルマスター   : 宣言の必要な戦闘特技を最大2つ同時に宣言できるようになる   : ファイターorグラップラーLv13 [p2122] 治癒適性      : Hpが回復する効果を受けるとき、その効果に自分だけ+1      : レンジャーLv.5 [p2123] 不屈        : HPが0以下になっても気絶しない                 : レンジャーLv.7 [p2123] ポーションマスター : ポーションを1R1本補助動作で飲める               : レンジャーLv.9 [p1-286]全力攻撃      : 次の1回の近接攻撃ダメージ+12:回避-2             : [p1-282]防具習熟A/盾    : 防護点+1、Aランク装備可能                   : [p2-231]練体の極意     : 練技の効果時間が3倍になるが、効果時間が一瞬のものは変わらない : [p3-214]カード軽減     : 消費カードマイナス1(最低1)。拡大のルールはMP軽減と同じ    : [p2-230]命中強化      : 命中に+2                           : [p1-279]かいくぐり     : 次の1回の攻撃のC値-[前のラウンドの回避成功回数](下限8)    : 盾 [p1-282]防具習熟S/盾    : さらに防護点+2、Sランク装備可能                : [p]            :                                :    魔物       全力    知識 先制 移動 移動 基本   0   0  42  126 修正 特技        0 =合計=  0   0  42m 126m ■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■ [参照] 特技名        : 効果                            : 前提 [p]  マッスルベアー     : 筋力ボーナス+2                       : [p]  キャッツアイ      : 命中力+1                          : [p]  ビートルスキン     : 防護点+2                          : [p]  アンチボディ      : 毒・病気属性に対する生命・精神抵抗力+4           : [p]  リカバリィ       : 「エンハンサーLv.」点だけHPを回復する           : [p]  ガゼルフット      : 回避力+1                          : [p]  ケンタウロスレッグ   : 敏捷度+6                          : [p]  メディテーション    : 精神効果属性に対する生命・精神抵抗力+4           : [p]  ジャイアントアーム   : 筋力+12                          : [p]  トロールバイタル    : 被魔法ダメージ-4                      : [p]  ヘルシーボディ     : 自身が受けている毒・病気・精神効果属性の効果を強制解除する : [p]  バークメイル      : 防護点+                          : 緑1 [p]  ヒールスプレー     : HP回復                           : 緑2 [p]  パラライズミスト    : 回避力判定-                        : 緑1 [p]  ヴォーパルウェポン   : 物理ダメージ+                       : 赤1 [p]  イニシアティブブースト : 先制判定+                         : 赤2 [p]  アーマーラスト     : 防護点-                          : 黒2 [p]  ポイズンニードル    : 毒属性ダメージ                       : 黒1 [p]  クリティカルレイ    : 物理ダメージの威力表出目+                 : 金1 ■装備■ ・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力        Lv 命中 追ダメ 回避 ファイター :13  20  18  20 グラップラー: フェンサー : シューター : ・武器 価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照) 6460 1H両  20   1  23  20  10  19 [ソードB] *バスタードソード・カスタム+1 / 魔法の武器化&必要筋力+3&専用化(命中判定時に器用度+2) (1-301p) 330  1H両  15   1  23  20  12  18 [メイスB] *ヘビーメイス / ウェポンホルダーに装備中、補助動作で着脱可能 (1-305p) 80   1H   5     22   5  10  18 [ソードB] *ショートソード / 予備兵装 (1-301p) 30  1H投   1     22   1  10  18 [ソードB] *ナイフ / 投擲用 (1-301p) =価格合計= 6900 G ・防具    必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考 鎧 : 20   0   7  18200 ドントレシアの堅忍鎧 / 魔法の鎧化&防弾加工@6回分 盾 : 13   1   2  1800 スパイクシールド / 武器として使用可能 修正: = 合計 =   21  12  20000 G (回避技能:ファイター) ・装飾品    価格  名称              / 効果 頭 :6000  スマルティエのヘッドバンド   / HP回復効果を受けるとMP1点回復(一日の回復上限:冒険者Lv.点) 耳 :0   相互フォローの耳飾り      / アルティナから頂いた大切なもの 顔 :12000 スマルティエのアイガード    / 純エネ属性ダメージ-4点/スマルティエシリーズ×7部位…生命力+5 首 :7500  スマルティエの首飾り      / 部位:その他を得る 背中:8000  セービングマント        / 抵抗失敗時の被魔法ダメージ-4 右手:1000  スマルティエの宗匠の腕輪    / 左手:1000  スマルティエ疾風の腕輪     / 腰 :6000  スマルティエの武道帯      / 練技《リカバリィ》の回復量に生命Bを上乗せ 足 :4500  スマルティエのアンクルスリーブ / 転倒から起き上がったときのペナルティ修正を「-1」に軽減する 他 :200  アルケミーキット        / 他 :25000 スマルティエの風切り布     / 任意起動型/1Rの間、命中力・回避力+2 =合計=71200 G ■所持品■ 名称                   単価 個数 価格 備考 ◾️所持金管理                  1   0 所持金メモ                   1   0   所持金@92974G/第4話終了直後 貯金                      1   0   @10,000G 何かあったときのために貯めている。                         1   0                         1   0 ◾️消耗品                       0 マナチャージクリスタル5点分           1   0   毎朝6時に5点チャージされる 魔晶石3点分                   1   0   @20 マテリアルカード緑B               1   0   @30 マテリアルカード緑A               1   0   @30 マテリアルカード赤B               1   0   @10 マテリアルカード赤A            200  1   200  @19→20 マテリアルカード黒B               1   0   @30 マテリアルカード黒A               1   0   @10 マテリアルカード金B               1   0   @10 マテリアルカード金A            200  11  2200 @9→20 ヒーリングポーション              1   0   @20 スカーレットポーション             1   0   @6 第2話「街の闇へ」の戦利品 / ガレフ達からの剥ぎ取り品 アウェイクポーション              1   0   @6 アンチドーテポーション             1   0   @1                         1   0 ■レンジャー技能用品              1   0 救命草                     1   0   @10 魔香草                     1   0   @44(第3話で大量に採取した) 気付け薬                    1   0   @5 応急手当判定を「時間:一瞬」で行い、更に達成値+2 クロロ酵素                   1   0   @20 薬草の威力判定でクリティカルが発生するようになる(C値10) 薬師道具セット                 1   0   薬草の威力判定を「1d+4」で行える                         1   0 ■フレーバーアイテム              1   0 冒険者セット                  1   0   背負い袋、水袋、毛布、たいまつ6本、火口箱、ロープ10m、ナイフ 背負い袋                    1   0   丈夫な革製。雑貨を詰めるため冒険者セットとは別に用意 保存食1週間分                  1   0   @4 4週間分の備蓄。 水                       1   0   10袋分(10Lくらいか) 食器セット                   1   0   コップ、皿、お椀×5set 調味料セット                  1   0   基本的な調味料、ただし質の高いものを揃えている。 砂時計                     1   0   料理するときに重宝する。 高級蒸留酒<ルーキーノヴァ・エディション>    1   0   嗜好品。ジニアスタ闘技場の覇者をイメージしたボトルデザイン。 よく切れるナイフ                1   0   5名誉点(フリー)/調理用。 燃えやすい火口箱                1   0   5名誉点(フリー)/5分で着火可能 迅速の火縄壺                  1   0   20名誉点(フリー)/30秒で着火可能 使いやすい調理道具セット            1   0   20名誉点(フリー)/調理時の行為判定の達成値+1 頑丈なランタン                 1   0   10名誉点(フリー)/3mの高さから落としても割れない ランタン用の油                 1   0   @3 1本で12時間使用可能。 テント(5人用)                  1   0   キャンプ用品 くさび                     1   0   キャンプ用品。テント固定用、10本セットだけど1本どっかいった。 毛布(追加購入分)                1   0   キャンプ用品。冒険者セットとは別に用意×4枚 着替えセット                  1   0   服や下着込み、1週間分。 バランスの良い小型ハンマー           1   0   5名誉点(フリー)/いざとなったら武器としても使える 真っ平の手鏡                  1   0   20名誉点(フリー)/自身の変装判定の達成値+1 軽い羽ペン&インク&羊皮紙           1   0   10名誉点(フリー)/執筆速度+10%、羊皮紙は残り3枚 魔法の発動体                  1   0   仲間用の予備品 宿り木の棒杖                  1   0   仲間用の予備品 マギスフィア                  1   0   仲間用の予備品 アルケミーキット                1   0   仲間用の予備品 スカウト用ツール                1   0   仲間用の予備品                         1   0 ■その他                    1   0 買い取り屋との取引(第1話)            1   0   「銀の雫」を購入するための共同出資2000G 荷馬車チャーター(第3話)             1   0   南の森まで急ぎの馬車を借りた/全員で1000G アビスシャード                 1   0   @5 これまでの冒険の戦利品。使わずに置いている。 知性の指輪                   1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 巧みの指輪                   1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 俊敏の指輪                   1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 立ち寝のレギンス                1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 ウェポンホルダー                1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 スマルティエの耳飾り              1   0   装備更新に伴い、かばんに移動 シンボリックロア                1   0   シーダに作ってもらった。「仲間の証」として大切にしている                         1   0 =所持品合計=    2400 G =装備合計=    98100 G = 価格総計 =   100500 G 所持金   41574G 預金・借金    G ■言語■       話 読            話 読 共通交易語 ○ ○ / 巨人語       - - エルフ語  - - / ドラゴン語     - - ドワーフ語 - - / ドレイク語     - - 神紀文明語 - - / 汎用蛮族語     - - 魔動機文明語○ ○ / 魔神語       - - 魔法文明語 - - / 妖魔語       - - 妖精語   - - / グラスランナー語  - - シャドウ語 - - / ミアキス語     - - バルカン語 - - / ライカンスロープ語 - - ソレイユ語 - - ・地方語、各種族語     話 読 名称 初期習得言語:交易交通語、地方語 技能習得言語:魔動機文明語 ■名誉アイテム■ 点数 名称 200 冒険者ランク「グレートソード」  50 武器の専用化 100 冒険者ランク「フランベルジュ」 400 冒険者ランク「ハイペリオン」 所持名誉点:1320 点 合計名誉点:2070 点 ■その他■ 経験点:1670点 (使用経験点:112500点、獲得経験点:111170点) セッション回数:102回 成長履歴: 成長能力  獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ 1- 精神力   20000点(   /20000 / 回) 高レベルスタート 2- 器用度     0点(   /   / 回) 3- 精神力     0点(   /   / 回) 4- 器用度     0点(   /   / 回) 5- 生命力     0点(   /   / 回) 6- 器用度     0点(   /   / 回) 7- 器用度     0点(   /   / 回) 8- 生命力     0点(   /   / 回) 9- 筋力      0点(   /   / 回) 10- 生命力     0点(   /   / 回) 11- 器用度     0点(   /   / 回) 12- 生命力     0点(   /   / 回) 13- 精神力     0点(   /   / 回) 14-       6000点(6000 /   / 回)  第一話:魔法文明遺跡の再調査 15- 生命力   9380点(9000 / 380 / 回)  第一話:騒乱する世界 16- 生命力     0点(   /   / 回) 17- 生命力     0点(   /   / 回) 18- 筋力      0点(   /   / 回) 19- 知力      0点(   /   / 回) 20- 筋力      0点(   /   / 回) 21- 筋力      0点(   /   / 回) 22- 筋力      0点(   /   / 回) 23- 筋力      0点(   /   / 回) 24- 筋力      0点(   /   / 回) 25- 器用度     0点(   /   / 回) 26- 知力      0点(   /   / 回) 27- 生命力     0点(   /   / 回) 28- 敏捷度     0点(   /   / 回) 29-        0点(   /   / 回)  第二話:前回の事件から2週間、2件の依頼をこなした報酬 30- 精神力   16300点(15000 /1250 / 1回) 第二話:街の闇へ 31- 器用度     0点(   /   / 回) 32- 精神力     0点(   /   / 回) 33- 敏捷度     0点(   /   / 回) 34- 生命力     0点(   /   / 回) 35- 器用度     0点(   /   / 回) 36- 器用度     0点(   /   / 回) 37- 敏捷度     0点(   /   / 回) 38- 器用度     0点(   /   / 回) 39- 器用度     0点(   /   / 回) 40- 知力      0点(   /   / 回) 41- 敏捷度     0点(   /   / 回) 42- 器用度     0点(   /   / 回) 43- 器用度     0点(   /   / 回) 44- 敏捷度     0点(   /   / 回) 45- 敏捷度     0点(   /   / 回) 46- 器用度   20440点(20000 / 440 / 0回) 第三話:南の魔神騒動 47- 精神力     0点(   /   / 回) 48- 敏捷度     0点(   /   / 回) 49- 精神力     0点(   /   / 回) 50- 知力      0点(   /   / 回) 51- 敏捷度     0点(   /   / 回) 52- 敏捷度     0点(   /   / 回) 53- 敏捷度     0点(   /   / 回) 54- 精神力     0点(   /   / 回) 55- 精神力     0点(   /   / 回) 56- 精神力     0点(   /   / 回) 57- 器用度     0点(   /   / 回) 58- 精神力     0点(   /   / 回) 59- 器用度     0点(   /   / 回) 60- 器用度     0点(   /   / 回) 61- 筋力      0点(   /   / 回) 62- 敏捷度     0点(   /   / 回) 63- 敏捷度     0点(   /   / 回) 64- 精神力     0点(   /   / 回) 65- 知力      0点(   /   / 回) 66- 精神力   39050点(38000 /1050 / 0回) 第4話「銀の雫」 67- 器用度     0点(   /   / 回) 68- 器用度     0点(   /   / 回) 69- 器用度     0点(   /   / 回) 70- 敏捷度     0点(   /   / 回) 71- 精神力     0点(   /   / 回) 72- 精神力     0点(   /   / 回) 73- 精神力     0点(   /   / 回) 74- 知力      0点(   /   / 回) 75- 精神力     0点(   /   / 回) 76- 敏捷度     0点(   /   / 回) 77- 精神力     0点(   /   / 回) 78- 筋力      0点(   /   / 回) 79- 筋力      0点(   /   / 回) 80- 敏捷度     0点(   /   / 回) 81- 器用度     0点(   /   / 回) 82- 精神力     0点(   /   / 回) 83- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #18 84- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #19 85- 器用度     0点(   /   / 回)  #20 86- 器用度     0点(   /   / 回)  #21 87- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #21 88- 精神力     0点(   /   / 回)  #23 89- 器用度     0点(   /   / 回)  #24 90- 精神力     0点(   /   / 回)  #25 91- 器用度     0点(   /   / 回)  #26 [3,1]->(筋力 or 器用度) 92- 精神力     0点(   /   / 回)  #27 [6,2]->(精神力 or 敏捷度) 93- 筋力      0点(   /   / 回)  #28 [3,5]->(筋力 or 知力) 94- 筋力      0点(   /   / 回)  #29 [3,3]->(筋力) 95- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #30 [2,2]->(敏捷度) 96- 筋力      0点(   /   / 回)  #31 [3,4]->(筋力 or 生命力) 97- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #32 [2,5]->(敏捷度 or 知力) 98- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #33 [2,3]->(敏捷度 or 筋力) 99- 敏捷度     0点(   /   / 回)  #34 [2,4]->(敏捷度 or 生命力) 100- 精神力    0点(   /   / 回)  #35 [6,4]->(精神力 or 生命力) 101- 敏捷度    0点(   /   / 回)  #36 [2,2]->(敏捷度) 102- 筋力     0点(   /   / 回)  #37 [5,3]->(知力 or 筋力) 103- 筋力     0点(   /   / 回)  #38 [3,5]->(筋力 or 知力) 104- 器用度    0点(   /   / 回)  #39 [1,1]->(器用度) 105-        0点(   /   / 回) メモ: ■アーサー・アンフリード (人間/男/20歳) ハーヴェスを中心に活動する冒険者。 自分の過去についての記憶を失っており、いつの間にかハーヴェスに居て、いつの間にか冒険者をしていた。  ————誰かを連れ出してどこかを目指していた そんな酷く朧げな目的だけを覚えているが、それが何時のことなのかは分からない。 ただ、ハーヴェスで出会った今のパーティーメンバーには強い仲間意識を持っており、絶対に裏切らないと心に誓っている。 なぜそこまで強い感情を抱くのか、それもやはり分かりはしないのだが、彼らと過ごす日々は間違いなくアーサーにとって宝である。 冒険者としての自己評価は器用貧乏。 強敵を一撃で屠るような剛腕はなく、全ての攻撃を避けきれる程の身軽さもない。 多くの敵を薙ぎ払う術も使えなければ、仲間を強く支え癒す術も使えはしない。 しかし固き敵には全力の一撃を、並みの敵には剣と盾による連撃を、苛烈な攻撃の嵐には 持ち前の自己回復で耐え抜き、時に仲間を補助し、最後まで戦線に立ち続ける覚悟はある。 冒険者稼業を始めてまだ数年も経っていないというのに、なぜかこの戦い方がしっくり来るのだ。 まるで、何度も、何度も、途方もない年月、仲間たちとこのやり方で戦い続けてきたかのように、しっくり来るのだ。 「……きっと、僕の探し人はみんなのことで、みんなで、どこかに行くんだろう」 幾度目かの冒険が終わり、夜明けの守り人亭で仲間たちと祝杯を交わす夜、 騒ぎ立てる仲間とイズニアを優しい眼差しで見つめながら、アーサーは独り言ちる。 その呟きは誰に聞こえるでもなく、ただ、冷たいエールと共に喉の奥に流し込まれていった。 【追記】 性格は用心深い…というより心配性に片足を突っ込んでいる。 過去に装備品を無くした、もしくは使えなくなった状況で困った経験があり、"予備品"を備えるのが癖になった。 また、地味に備品や調味料といった細かい部分にも質を求めるきらいがあり、"ちょっといいもの"を揃える癖がある。 貯蓄もしているが、嗜好品や高品質な道具を無駄に買い揃えるので、財布事情はいつもビミョーな感じ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ■リレーキャンペーン PL:シアン、ちゃっしーさん、しんさん、だいばさん、まみやさん ■レギュレーション ・経験点 : 初期3,000点+20,000点【計23,000点】 ・所持金 : 初期1,200G+24,000G 【計25,200G】 ・名誉点 : +250点     (ルルブⅡ-135頁/名誉点消費) ・成長回数: 13回      (ルルブⅢ- 74頁/成長回数平均表) ・アビスシャード:5個所持 (ルルブⅡ-275頁/アビス強化) ■開始時レベル上限  Aテーブル技能:上限Lv.5  Bテーブル技能:上限Lv.6 ■備考 ・君たちはハーヴェス王国の大手冒険者ギルド「夜明けの守り人亭」に所属している ・君たちは既に4回以上の依頼をこなしており、実力は中堅に近い冒険者パーティである 《薬草集めの依頼~蛮族排撃》  駆け出し冒険者としてこなした初めての依頼。  今のパーティメンバーと知り合い、以来行動を共にしている。  ハーヴェス近郊で薬草を拾い集めるだけのはずだったが、  ボルグやゴブリンで構成された蛮族の群れと遭遇し、これを退けた。 《魔域踏破~魔法文明時代の遺跡発見》  魔動機文明時代の遺跡に発生した魔域の調査・破壊を依頼された。  幸いにも脅威度は低く、内部に巣食っていた低級魔神の排除もスムーズに完了。  魔域が破壊されると同時に、隠し通路が発見され、この遺跡が魔法文明時代の  遺跡の上に重ねるように建設されていたことが判明する。  新たな遺跡を発見したことで、君たちの名が売れる。 《蛮族迎撃~魔動兵器破壊》  最初に戦った蛮族の群れは、近くの村落を襲おうとしていた蛮族部隊の斥候だった。  本隊が村に迫っているとして、迎撃・防衛のため君たちに名指しの依頼が入る。  隊を率いていたアンドロスコーピオンの銃撃に苦しめられるも、君たちはこれを撃退。  しかし真打ちである魔動兵器シャザーレイが登場し、死闘を繰り広げることになった。  君たちは、生死の境を反復横跳びするような激闘を制し、蛮族を退けた者として一躍有名となる。 《坑道調査~蛮族掃討》  ハーヴェスの北東、潤沢な魔晶石を排出する鉱山に蛮族が現れた。  君たちは坑道奥に居座る蛮族の掃討を依頼され、これを完遂する。  前回が激闘すぎたのか、成長し、一段強くなった君たちの敵ではなかった。 《魔法文明遺跡の再調査》  君たちは、君たち自身が見つけ出した魔法文明時代の遺跡調査をギルドから依頼された。  近場であった為、新米冒険者たちがこぞってこの遺跡の探索に乗り込んでいたが、  ある階層を境に強力な罠が張り巡らされていることが判明したからだ。  場数を踏んできた君たちは、道中の罠も適切に対処し、ついに最奥の間へと辿り着く。  奥に見える魔導書のようなものを調べようと一歩踏み出した瞬間、君たちは何かを踏み抜き――― _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ~~~ リレーキャンペーン・第一話「騒乱する世界」 ~~~                  【 GM シアン 】 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 覚束ない足元、重い瞼に上がらない腕。 彼方から聞こえてくるくぐもった音は、怒号か、あるいは悲鳴にも聞こえる。 夢と現のはざま、深い眠りから覚める直前のような倦怠感は、しかしいつ頃から感じていたものだっただろうか。 底の見えない海に放り出されているような不安感は、やがて君たちの五感を刺激し、覚醒させる。 そして思い出すだろう。 そう、君たちは冒険者だ。 アーサー 「…い……おい!」 「しっかりしろ皆、敵襲だ!」 アーサーの掛け声に、君たちは我に返るだろう。 周囲は古い石造りの壁に囲われ、広間のような場所に君たちは立っている。 君たちの手には各々の武器が握られ、君たちの命を刈り取らんとする"敵"が、眼前から迫っていた。 どうやら、何らかの罠を踏み抜き、ガスを浴びて一時的に意識を失っていたようだ。 前線に立つアーサーが、単騎で敵の攻撃を捌き続けている。 我に返った君たちは、すぐさまアーサーと共に敵に対処するだろう。 ~~~ スケルトンガーディアン達を撃退した君たちは、互いに無事を確かめ合う。 どうやら全員、大きなケガも障害も追っていないようだった。 広間の奥には、台座に置かれた書物が見える。 アルティナはおもむろにそれを手に取ると、中身を読み始めた。 =========================================================================== "古びた書物"  永遠の都、ノクローン。  そこで発見された"銀の雫"は、あらゆる物品を模倣し、変化する性質を持つ。  我らがレオフォロス魔導陛下は、この素晴らしい性質に理解を示して下さり、  膨大な研究資金の認可を下さった。  陛下のご期待に応えるためにも、必ずや■■■■の模倣を成功させてみせる。  (理解不能な図式や研究記録の数々が記されている)  ―――実験は失敗続きだ。  どうしても、人格の定着が上手くいかない。  我々の魔法技術でも届き得ぬ領域だと言うのか……いや、そんなはずはない。  この研究棟での実験は遂に成功しなかったが、まだ第…工廠が残っている。  あそこにはユシアの技術も取り入れた■■■■がある、まだ出来ることはあるはずだ。 =========================================================================== 文書の内容はわかるようでわからない。 ひとまず、この遺跡の探索と安全確保を終えた君たちは、ハーヴェスへと戻ることにした。 ブルライト地方有数の大都市。 アルフレイム大陸の玄関口でもある水の都ハーヴェス。 平時であれば活気に満ち溢れる街だが、昨今、この街とその周辺で 大きな事件が立て続けに起こっており、曇り空のせいもあってか、 街はどこか緊迫した雰囲気に包まれている。 大通りの一角。 いつもであれば大勢の通行人が横切り、多くの若者が出入りする冒険者ギルド、 『夜明けの守り人亭』も、心なしか寂れた空気を醸し出していた。 イズニア 「お、帰ったかい。どうだった、遺跡の再探索は」 「何か面白いものでも見つけたかい?」 『夜明けの守り人(もりびと)亭』のマスター、イズニアは、ニヒルな笑みを浮かべながら、書物を持つ君に話しかける。 イズニア 「へぇ……んー…これなんて書いてあるの?」 興味本位で魔導書を開いたイズニアだったが、中身までは読み解けなかったらしく、顔をしかめる。 イズニア 「まぁいいや。難しいことは専門家にお任せすればいいんだし」 「取り合えず、お疲れさん。はいこれ報酬ね」 【シナリオ名】魔法文明遺跡の再調査 【経験点】6,000点 【報酬金】5,000G 【名誉点】50点 イズニア 「んで、帰ってきて早々に悪いんだけど、またお願いしたい仕事があるんだ」 「ああ、流石に今すぐじゃなくていいよ。いくらなんでも戦い通しじゃ辛いでしょ」 「明日の朝でいいから、また頼むよ」 「こうしてマメに仕事をこなしてくれる君たちくらいしか頼めないんだよねぇ」 「なにせ、今のハーヴェスには冒険者がほとんどいないからさ」 君たちがどういうことかと疑問に思うと、イズニアが説明してくれる。 イズニア 「ああ、そっか、君たち遺跡探索で数日離れてたから知らないよね」 「近く、ラージャハ帝国で戦争が起きそうなんだよ」 「あの国の北に、蛮族国家があるのは知ってるでしょ?」 「昔から小競り合いは続いてたんだけど、いよいよ本格的に戦争が始まりそうな空気でね」 「戦争が始まれば、国民総出で戦争に付きっきりになる」 「薬草集めだの物資集めだの、そういう雑事に掛かる暇がなくなる」 「安全に見える都市も、裏どりしようと目論んでる蛮族にいつ襲われるか分からない」 「つまり、冒険者にとってはビジネスチャンスってこと」 「困ってる人を助けるのが冒険者だろう…?」 「ま、そのお陰でハーヴェスが手薄になってんだけどねーー」 「という訳でお疲れさん、今日はゆっくり休むといいよ」 イズニアはそこで一旦会話を切り上げ、君たちを解放する。 各々、明日に備えて『夜明けの守り人亭』の2階に用意されている自室で休むのであった。 ~~~ 翌朝、君たちは身支度を終えて階下のロビーに集まるだろう。 イズニア 「君たちにお願いしたいのは、ティダン神殿から盗まれた品の捜索だ」 「最近、このハーヴェスに難民が多く押し寄せているのは知っているだろう?」 =========================================================================== "難民に関する情報"  いつ頃からか、ハーヴェス近郊で蛮族や魔神の襲撃事件が多発している。  ハーヴェスは大きな国であり、王都内の限られた土地では国民全員の食糧は確保できない。  故に城壁の外にいくつもの食糧生産施設、つまり村落が点在しており、住民の数こそ  少ないもののハーヴェス王国全体を支える重要な存在となっている。  そういった村落は城壁がない分、外敵の脅威に晒されやすい。  基本的には王国から派遣された騎士が常駐しているが、所詮は1~2名。  数の暴力で襲い掛かる蛮族には遅れを取るため、襲撃された時点で王国から  応援部隊が派遣される、という後手の防衛システムに頼らざるを得なかった。  そして、近年では蛮族や魔神の襲撃頻度が上がっており、応援が間に合わず  壊滅させられる村落も珍しくなくなっている。  国を支える重要施設である以前に、住民にとってそこは故郷である。  故郷を焼かれた者たちは、何を想い、この王都に逃げ込んだのだろうか。 =========================================================================== イズニア 「故郷を追われた人間、路頭にまとった人々のことを難民と呼ぶ」 「家も財産もなくした連中は、明日の命だって保障されていない」 「生きていくための糧すら、当たり前には手に入らない」 「なら生きていくために、糧を得るために、何かを手に入れなきゃならないだろう」 「……ま、つまり、難民が増えると窃盗事件が増えるってことさ」 「知っての通り、この国ではティダン神が最も多く信仰されてる」 「規模にふさわしく神殿の数も多くてね。今回、窃盗の被害にあったのはそのうちの一つだ」 「信徒の規模は大きいけど、少し町はずれにある神殿は、その……建屋もちょっと小さくてね」 「うっかり泥棒に入られたらしい」 「普段なら衛兵任せの案件だけど、今この国にはその衛兵すら不足してる」 「それに、今回の依頼主は僕も昔ちょっと世話になったことがあってね」 「ま、いろんな意味で人助けだと思って、頼むよ」 【依頼主】ティダン神殿 ロベルト司祭 【内容】盗まれた祭具の所在を突き止めて欲しい 【期限】本日より3日間(一夜経過しているので残り2日間) 【報酬】一人当たり5,000G 【備考】犯人の捕縛は条件に含めない 【住所】ハーヴェス王国-コドロス南口-312-3-44 イズニアは依頼の概要を説明すると、ギルドを後にする君たちを見送ってくれる。 明朝、まだ目覚め始める前の街を、川に反射した朝日を浴びながら君たちは歩く。 ハーヴェスの南側に流れるコロドス水路を下り、指定された住所を目指して路地を進む君たち。 ほどなくして、小さいながらも威容を感じさせる神殿が姿を現すだろう。 こんな時間からでも正面扉が開放されているのは、依頼を引き受けてくるであろう冒険者を招き入れるためか、 それともこの時勢に在りながら、困窮した者を分け隔てなく受け入れるためか。 いずれにせよ、君たちは開放されている扉をくぐり、荘厳な空気に包まれた聖堂へと足を踏み入れる。 ロベルト司祭 「こんな朝早くから、感心なことです。ティダン神はあなた方を快く受け入れて下さるでしょう」 神殿内に、年若い司祭が立っていた。 彼は、君たちが夜明けの守り人亭から派遣されてきた冒険者であることを知ると、依頼の概要と状況を説明し始める。 ロベルト司祭 「残念なことに、我が神殿で保管していた祭具"光輝(こうき)の天涙"が盗まれてしまったのです」 「アルフレイム大陸に人の文明が根付く前、闇に覆われしこの地を人の住まう土地とすべく、  ティダン神が祝福を込めて一筋の涙を流し、それが形を成した光の宝具、それが"光輝の天涙"」 「……と言い伝えられていますが、まぁ形式上の由来です」 ===========================================================================  "光輝の天涙"  ティダン神が遺したとされる宝具(形状はダイヤモンドに近い)。  遥か神話の時代、アルフレイム大陸は闇に覆われており、人の住まう土地ではなかったという。  太陽の化身たるティダン神は、アルフレイムの闇を払い、希望を齎すため一筋の涙を流した。  零れ落ちた雫は光り輝き、太陽神の神威を以って闇と魔を退けたと云う。  歴史学者からすれば、鼻先で笑い飛ばすような内容かもしれない。  だがそれで良いのだ、信仰とは真実の追及ではなく、心の拠り所なのだから。  誰かを救うための嘘は、限りなく、この上なく優しい偽りなのだ。 =========================================================================== ロベルト司祭 「私も長くこの神殿に仕えさせて頂いている身ですが、本物のアーティファクトと呼べる程の力は見たことがなく、  せいぜい地区のお祭りで飾り付けに使う程度、ティダン様の神威(かむい)を分かりやすく表現するための祭具に過ぎません」 「故に、盗まれたところで実被害は小さいのです」 「しかし貧困さは人の心から余裕を無くし、余裕を無くした人々の心は荒んでいきます」 「神殿から盗みを働いた」 「その事実は、どんな形であれ本人にも、そして周囲の人間にも良い結果は齎さないでしょう」 「故に、みなさんにお願いしたい」 「盗みを働いた方を捕まえて欲しいという依頼ではありません」 「祭具の所在を明らかにし、可能ならこの神殿に持ち帰って頂きたいのです」 「既に他の誰かの手に渡っているのであれば、その方とは私が直接交渉します。故に、取り戻せずとも所在さえ明らかにして頂ければ構いません」 「お願いできますでしょうか?」 《犯人の特徴》  ・金の髪を持つ男性だった  ・体格は大きく、年齢感としては30~40代ほど 「……決めつけてしまうのはよく無いのでしょうが、恐らく難民の方ではないかと思います」 「ハーヴェスがこのようなことになる前は、こんなことはありませんでしたから」 「西区の方には、戦火に追われ、難民として路頭に迷う方が集まっていると聞きます」 「彼らは衣食住にも困っているはず。盗みに走ってしまうのも、仕方ないのかもしれません」 「西区に行けば、何か手がかりが得られるかもしれません」 「なにとぞ、よろしくお願い致します。」 ロベルト司祭は窃盗事件の概要と手がかりについて述べると、深々と君たちに頭を下げた。 王都の西にはフロギー川とサルディニ川が流れる。 ハーヴェスの生産力の象徴たる職人街が並ぶその地区は、かつてであれば 武具を求める冒険者で溢れ、雑多ながらも温かみのある光景を作り出していただろう。 しかし、君たちが足を踏み入れた時には、その様相を大きく変えていた。 美しかった川沿いの舗道には難民が溢れかえり、ちらりと遠目に見える倉庫街にも 乱雑に建て並んだ仮設住居の群れが見て取れる。 道行く人々には覇気がなく、異様に沈んだ空気を避けて本来の住民も出歩かないのか、 どこに目を向けても活気の削がれた街並みが目に映るだろう。 アーサー 「……改めて見ると、ずいぶん寂れたように感じるな」 「何はともあれ、まずは聞き込みからだ」 「治安も悪くなっていると聞く、用心していこう」 君たちは手分けしながら情報を集めていく。 ■公国七騎士の敗走 冒険者の男 「お、同業か?今時期、珍しいな」 「みんなラージャハの方に行っちまったかと思ってたぜ」 「俺らはユーシズ魔導公国の方に向かうつもりだ」 「巷じゃラージャハが熱いって話だが、ユーシズでも稼げそうな話を聞いてな」 「なんでも、あの国が抱えてる魔晶石の鉱山に魔物が出たそうだ」 「それだけならありふれた話だが、あの公国七騎士(セブン・ナイツ)が迎撃に出て返り討ちになったって噂もある」 =========================================================================== 《公国七騎士(セブン・ナイツ)》  ユーシズ魔導公国が抱える七人の精鋭騎士。  同国が誇る魔術学園『七色のマナ』に因んだ"色"を司り、強力な魔導士、  あるいは魔法剣士の集まりとして、その筋では有名な騎士団である。  それぞれが、魔導公ヴァンデルケンより下賜された魔杖を持つ。  他に類を見ない神秘的な術技を扱うとされているが、同時にユーシズ領外では  一切姿を見せないため、実は魔導公が使役する精霊なのではないかという噂もある。 =========================================================================== 冒険者の男 「リスクは高いかも知れんが、あそこは魔法使い連中がメインの国だからな」 「俺たちみたいな前衛が大活躍できる可能性もありそうだろう?」 ■倉庫街に関する情報 職人街に並ぶ店はどこも閉まっている。 君たちが粘り強く聞き込みを続けると、通行人から、この辺りでまだ営業している道具屋を教えて貰えるだろう。 君たちがその道具屋に赴き、木製の扉を開けると、覇気のない声で店主が反応した。 覇気のない店主 「……いらはい」 「……冒険者か。今どき珍しいね」 「まぁ、大したものは並べてないけど、好きに見てってよ」 並んでいるモノはどれも一般的な冒険道具だ。 特に目新しいものはなく、改めて買い求める物はないだろう。 ゲーム終盤になっても、ずっと初期の品ぞろえから変わらないショップくらい魅力がない。 覇気のない店主 「正直、しばらくお客さんは来ないかと思ってた」 「冒険者はこぞってラージャハに流れたって聞くから」 「いやほら、ハーヴェスはこんな有様だろう?」 「一般市民が困ってるだけなら冒険者にとっても仕事になるだろうけど、近頃街に入ってくるのは難民ばっかり」 「住むところも買い物する金も持ってないんだから、冒険者に払えるような報酬なんて当然もってないんだよ」 「治安は悪くなる一方だし、碌な仕事に繋がらないし、なによりラージャハの方はこことは対照的に盛り上がってる」 「そりゃ、みんなラージャハの方に流れるよねぇ」 「だから、今どき冒険者がこの辺りをウロつくなんて、珍しいなあと」 「……あ、今更だけど買い物って感じじゃないね。誰か探してるのかい?」 「ほう、盗人探しか」 「そういうことなら、倉庫街に行ってみるといいんじゃないかな」 「あそこには早い段階で入ってきた難民たちが、独自の情報網を気づいて半根城にしてる」 「あと盗品の扱いに長けた連中も集まってるんだよね」 「もともとは川から船の荷を揚げて保管するための倉庫街だったんだけど…」 「流れ着いた難民たちが空いてる倉庫に勝手に棲みつき始めてね」 「半ばスラムみたいになってるから……まぁ君たち強そうだから大丈夫だと思うけど、気を付けて」 ■怪しい集団の目撃情報 君たちが聞き込みを行っていると、一人の男が目についた。 難民でありながら、他の者より悲壮感が薄く感じる男だ。 堂々と胡坐を掻いて、のんきにあくびしている態度のせいだろう。 堂々としている難民 「なんだい、あんたら」 「盗人の男…?さて、そんな奴見かけたかね」 「見ての通り、ここは家を失った奴らのたまり場さ」 「みーんな、故郷を魔神や蛮族に焼かれて、命からがら身一つで逃げてきた連中だよ」 「毎日毎日、少しずつ増え続けてる」 「いちいち細かく顔を覚えてる奴なんて、そうはいないさ」 その男は何かを隠している、いや何かを知っていて意図的に話していないように感じる。 視線は君の財布に向けられていた。 いくらかのガメル(100G~)を渡すと、続きを話し始める。 堂々としている難民 「……ああ、でも」 「難民っぽくない集団なら少し前から見かけるようになったな」 「王国騎士って感じじゃないが、明らかに素人って感じでもない」 「暑苦しい真っ黒なローブをまとった連中さ」 「その中の一人に、あんたらの探してる奴がいたかもな」 「さすがに現在地までは知らないが」 そこまで話すと、男は再度君の財布に視線を注いだ。 さらにガメル(100G~)を渡すと続ける。 ふてぶてしい難民 「そうさなぁ」 「現在地は知らないが、盗みを働いた奴が足を運びそうな場所は知ってるぜ」 「盗んだ品を後生大事に抱えたって食えるわけでもなし」 「生きていくためには金に換える必要があるだろう」 「盗品を扱う換金所があるのさ」 「倉庫街の一番目立つでかい倉庫に行ってみな。すぐに分かると思うぜ」 「倉庫街もそうだが、この辺りはもう王国の目も行き届いていないスラムみたいなもんだ」 「何か不都合があって姿を隠したい連中にとっては丁度いい隠れ蓑になっちまうだろう」 「……そういう連中に襲われる危険もあるってこった。あんたらも、精々後ろには気を付けなよ」 ■英雄王グスタフに関する噂 聞き込みを行っていると、難民にしては整った身なりの男性が視線を向けてくる。 男性に話しかけると、会話に乗ってくれるだろう。 どうやら、地方の村を治めていた元貴族らしい。 グスタフを信奉する難民 「盗人探しかね」 「あいにくとその特徴に合致する者を知っている訳ではないが…」 「もし犯人が難民なのであれば、嘆かわしいことだ」 「我々の多くはグスタフ様に命を救われた」 「あの方のように高潔に、強く生きることこそ、せめてもの恩返しであろうに…」 =========================================================================== 《グスタフ・フォルス・ハーヴェス (人間/男/31歳)》  三ヵ月に突如現れた、英雄王と呼ばれる男。  自らをハーヴェス前国王、ヴェルベット王の正統な後継者であると名乗る。  真偽は不明だが、王家伝来の紋章旗を掲げ、高い練度を誇る軍隊を引き連れ  蛮族や魔神に襲われた村々を救って回っている。  当初は王家を騙る逆賊と目されていたが、実際に命を救われた周辺村落の生き残りが  その活躍を王都に伝え、更には有力な商人や地方役人も彼の人柄や英雄性を称え始めたことで、  ハーヴェス中が噂する話題の人物となっている。  一ヵ月前には単身でハーヴェス国内に現れた。  美しい金髪に碧眼、そして自信に満ち溢れた高貴な姿は、民衆に『指導者』『英雄王』といった  好印象を抱かせ、現王政の消極的な態度も相まって急激に支持者を増やす結果となった。  彼が率いる軍隊は、主に重装歩兵で構成されている。  総数500人にも満たない規模ではあるが、いずれの兵も屈強に鍛え上げられており、  なにより"魔法に対して高い耐性を持つ重鎧"が彼らの精強さを更に昇華している。  これほど強力な軍隊が一体どこから現れたのか。  兵練度の高さと武具の高質さから、ラージャハ帝国辺りから援助を受けているのではないか、  と推測する声もあるが、彼ら自身は決して語らず、その出自は謎に包まれている。 =========================================================================== グスタフを信奉する難民 「実に嘆かわしいことだが、現実は辛く厳しい」 「心の弱き者たちは悪の道に走り、今は倉庫街を中心に無粋な組織を作ろうとしているようだ」 「貴殿らが追っている者も、もしかすると倉庫街に向かったかもしれんな」 情報を集めた君たちは、盗品をも扱うという倉庫街の"買い取り屋"を訪ねることにした。 買い取り屋 「……なんか用かい」 君たちが倉庫に入ると、商人のような男が話しかけてくる。 買い取り屋 「祭具を探してる…?」 「んー…そりゃどういう見た目をしてるんだ?」 「はぁ、ティダン神殿の祭具……うーん、一応買い取った品の出自は可能な限り控えてるんだが…」 「帳簿にゃ見当たらねぇし、あんたらが言う特徴にあった品を買い取った覚えもない。見た覚えもない」 「ここには来なかったんじゃないか、そいつ」 「そうだなぁ。盗みを働いたのにここに来ないってこたぁ、別の換金所にいったか…」 「それとも金目当てじゃなく、明確な目的があって盗んだか…まぁそのどっちかだろう」 「後者なら皆目見当もつかないが、前者ならまだ心当たりがある」 「教えてやってもいいが、ここは取引といかんか」 「1,000Gで俺の知ってる情報を売るぜ。それか、現物でもいい」 買い取り屋 「うちも随分と繁盛させて貰ってるからな」 「ここ以外でそういう出自の品を扱う換金所はハーヴェスでもそう多くはない」 「うち以外の換金所となると、北区にある冒険者ギルド<ドラゴンファイア>だろうな。意外だろう?」 「盗品を扱う場合、世間の目を気にするのが普通だ」 「だが冒険者ギルドなんて、言い換えれば遺跡を荒らして得られた素性も知れない宝を換金する場所だろ?」 「意外と相性もいいし、後人の助けになる品も多いから、初級~中級者向けのギルドでも持ち込み品の買い取りをしたりするのさ。」 君たちは得られた情報を基に、ハーヴェスの北側、北門前広場へと足を向けるだろう。 ~~~ 王都の北には、外敵を阻むための巨大な壁が聳え立つ。 フロギー川に掛かる大橋を越えてみれば、その大きさと威容をより強く感じるだろう。 陸路における王都の玄関口ということもあって、北区には格式高い建造物が立ち並ぶ。 君たちが先ほどまでいた下町区とは異なり、道行く人々の身なりもそれなりに整っていた。 通りには開いている店も多く、今のハーヴェスの中ではまだ活気を感じられる方だ。 しかし君たちが足を向ける先、北門広場にはなぜか大勢の市民が集まっており、 何やら騒然とした空気を漂わせていた。 君たちは冒険者ギルド<ドラゴンファイア>へ向かうため、北門広場へと足を踏み入れる。 しかし広場には大勢の市民が詰めかけており、人垣によって中々前に進むことが出来ないだろう。 <ドラゴンファイア>の建屋自体は見えており入口の場所も確認できるが、そこまで近づくのが難しい状況だ。 《スカウト技能持ち/ロータスのみ感知に成功》  視界の端に動くものが見えた。  それは同じ高さではなく、もっと上、広場を囲む建造物の上に感じるだろう。  直感に従い目線を上げると、一瞬だけ、屋根の上を黒い何かが横切ったような気がした。 人垣を成す市民に何事かと尋ねると、答えてくれる。 あるいは、屋根を気にし始めた君たちの耳に、気になる情報が入るだろう。 身なりの良い市民 「もうじき、国王様が帰還されるそうだぞ」 「ヴァイス王がご出立なされて、もう1週間にもなる」 「皆、思うところがいろいろあって、王様を見に来ているのだろう」 君たちが周囲の様子を伺っていると、突如甲高い音が響いた。 門番 「か、開門―――!」 どこか動揺を感じさせる門兵の声に続き、外敵を阻むための城壁、 その主門が重々しい音を立てながら左右に割れた。 門の奥から現れた長大な隊列、その様相はまさしく"帰還"と呼ぶべきか。 ハーヴェス王国では見かけない上質な重鎧。 しかしその重さを感じさせないほどに足並みが揃い、素人目にも精強な軍隊であることが分かる。 なによりも、隊列から幾本も掲げられる紋章旗に目を取られるだろう。 王家を示すその紋章は、広場に集まる市民にも動揺を走らせ、にわかに騒然とさせる。 将軍らしき男 「ハーヴェスの民よ、案ずるな、我々は侵略者ではない!」 「こちらのお方、グスタフ・フォン・ハーヴェスは、亡き先代王ベルヴェット様のご子息である!」 先頭を歩む金の髪を持つ男。その隣に並ぶ将軍らしき男性が高らかに宣言する。 同時に、隊列に並ぶ紋章旗が、先の宣言の正統性を主張するかのように一層高く掲げられた。 将軍らしき男 「皆の中にも、グスタフ様に命を救われた者は多かろう。故に知る者も多いはずだ」 「計略により秘匿され続けていたが、グスタフ様はこの国を統べる資格を持つ!」 「既に前王ヴァイス様とも"取り交わし"はなされた!道をあけたまえ!」 人々はその声に気圧され、広場を埋め尽くす人の海が割れる。 グスタフが率いる行列は、威風堂々、その道を突き進んでいくだろう。 王城を目指して進む隊列を見送り、残された市民たちは広場で各々の意見を交わし始める。 いきなりの出来事に困惑するもの、英雄王グスタフに心酔し希望を見出すもの、その反応は様々だ。 人混みの中から、君たちを射抜く視線を感じる。 気配の方に目を向けると、黒いローブを纏った男が君たちを凝視していた。 金の髪とやや大柄な体格、その風貌はロベルト司祭から聞き及んでいる特徴と一致する。 男は君たちに気付かれたことを察知すると、慌てた様子で走り去ろうとするだろう。 当然、君たちは男の後を追いかける。 人垣を越えた君たちは男が逃げ込んだ路地に入り込み、そしてすぐに追いつくことが出来るだろう。 路地の先には大量の木箱が積まれており、道が塞がっていた。 男は君たちの方を振り返り、焦燥感をにじませた声を絞り出す。 黒いローブの男(キリアン) 「……っ!私を始末するつもりか…」 「あの男の差し金ではないのか…?」 君たちは、神殿から盗まれた祭具について問いただす。 「ああ、そちらの件か」 「あいにくだが、アレはもう手元にない。渡してしまったからな」 「余計な詮索はしない方が身のためだ」 「それよりお前たち、命が惜しくば早くここを離れた方がいいぞ…」 君たちが言葉の意味を問うた瞬間、頭上に咆哮が響いた。 見上げれば、建物の屋根を、無数の黒い何かが群れをなして走っているのが見えるだろう。 続けざまに、君たちが来た方角、北門広場から幾つもの悲鳴が上がる。 黒いローブの男/キリアン 「始まってしまったか…」 「わ、私は…」 男は震えながら、自らの両手に視線を落とす。 覚束ない足取りで一歩、また一歩と後退し、背後に積まれた木箱に、もたれ掛かるだろう。 君たちが足を踏み出した瞬間、路地と広場を繋ぐ道に、何かが降ってきた。 大鎌を持つ男 「ああ、悪いが足止めをさせてもらおう」 「君たちは強そうだからね。苦心して呼び出したアザービースト達を、簡単に殺されては面倒だ」 男は手に持つ鎌を構え、しかし視線を君たちから外して、背後の男に告げる。 鎌を持つ男 「騙して悪いね、キリアン」 「私は奈落の魔域(シャロウ・アビス)などどうでもいい」 「魔神が救済の使者だとも思っていないし、ましてや君たちが信じ、崇め奉るラーリスなど、邪神にしか見えないんだ」 「私はただ、穢れを持たず、<守りの剣>の影響を受けない殺戮兵器が欲しかっただけ。……今までご苦労だったね、キリアン」 「ああ、でも、"光輝の天涙"を届けてくれたことには、心から礼を言うよ。おかげで、いい手土産が手に入った」 男が視線を君たちに戻す。 携えた不吉な大鎌は、ギラりと刃を光らせ、その威容を君たちの目に焼き付かせた。 鎌を持つ男 「肉体という枷に囚われた、哀れな魂を一つでも多く救い出す。それが私の使命なんだ」 「いつか帰るところ、安らかなる世界、それこそが真に人が目指すべき場所」 「だから、渡すのさ。より多くの、死を」 男の背後から数体の魔物が飛び出す。 異形の獣たちは文字通り、君たちに牙を剥き、にじり寄るだろう。 ~~~ シグルドの放った一撃が、男を大きく弾き飛ばす。 鎌を持つ男 「……っ!」 「……ああ…なんて、なんて、痛ましい強さだ!!」 「君たちは強い…!それだけの強さを身に着けるのに、一体幾度の死線を潜ってきたのか!?」 「そのたびに傷つき、苦しみ、なお死にきれなかったんだね…あぁ!可哀そうに!」 「今理解できた!君たちを殺して(救って)あげることこそ、私に課せられた使命だとね!」 「君たちを縛り付ける肉体の枷を、今外してあげよう」 「もう戦わなくていい、ずっと安らかに眠れる真の世界へ」 「さぁ、首を差し出してごらん…私が救ってあげるから……!!」 直後、男の背後、北門広場がにわかに騒然となる。 市民の悲鳴が少し収まり、代わって鎧騎士が戦うような金属音が響いてくるだろう。 鎌を持つ男 「…ちっ、グスタフめ。思ったより対応が早い」 「ノクローンの連中、ずいぶんと丁寧に仕上げたものだ」 「ああ、残念だよ」 「今すぐにでも君たちを救ってあげたいところだけれど、今日は時間がなくなってしまったようだ」 頭上から一体の魔神が飛来する。 男は素早く飛び上がり、その魔神の足をつかんで上空へと飛び立った。 鎌を持つ男 「しばしのお別れだ」 「この秘宝を元に、私は更なる力を手に入れてみせる。より多く、より強い者をも救える力を」 「いつか必ず、君たちを救って見せるさ」 不吉な言葉を残し、男は北の空へと飛び去っていった。 背後にいた黒いローブの男、キリアンはいつの間にか姿を消している。 積まれていた木箱がわずかに崩れており、どうやら君たちが戦っている間に隙を見て逃げ出したようだ。 ~~~ 君たちが広場の方に戻ると、グスタフ率いる騎士たちが魔物に応戦している姿が目に入る。 そして、凄惨な殺戮の痕跡も、否が応でも視界に飛び込んでくるだろう。 助けを求める手を伸ばしながら、その背中を引き裂かれて果てた女性。 首元を嚙みちぎられ、苦痛に顔を歪めて果てた老人。 何が起こったかも理解できぬまま、困惑の表情を浮かべて転がる男性の首。 みな衣服をどす黒い血に濡らし、息絶えていた。 鎌を持つ男のもたらした"救済"の実態に、少なくともアーサーは青ざめた表情を浮かべる。 英雄王グスタフ 「騎兵隊は広場の外周から魔物を追い立てろ」 「歩兵は無事な民間人を囲え、これ以上魔物を近づけさせるな」 「騎士隊は屋根に上がり、門を開け続けている連中を始末しろ。容赦は必要ない」 自らも剣を振るいながら、英雄王グスタフは配下に指示を飛ばしていた。 広場を駆け回るアザービーストの群れは確実に駆逐され、事態は収拾へと向かい始める。 しかし、目の前の凄惨な光景に、君たちはそれがどこか遠い場所のことのように感じるだろう。 その後、君たちは覚束ない足取りで、事の経緯を報告するためティダン神殿へと向かう。 しかし、凄惨な殺戮の光景が頭から離れず、ロベルト神父からのねぎらいと励ましの言葉も、 「夜明けの守り人亭」で君たちを出迎えたイズニアの表情も、朧げな記憶にしかならないだろう。 大陸暦338年 王都ハーヴェスを襲った魔神の群れは、英雄王グスタフ率いる騎士隊によって討滅された。 王国始まって以来の未曾有の大殺戮は、死傷者総勢67名という深刻な出血となり、 ハーヴェスとその周辺に暮らす人々を大いに震撼させる。 しかし、これは始まりに過ぎなかった。 ラージャハとの境界線を越えんと迫る蛮族軍。 ユーシズの鉱脈に現れた謎の脅威と公国七騎士の敗走。 そして、突如としてハーヴェスへ帰還した英雄王グスタフ。 ブルライトの地に芽生えた幾つもの火種、それは急激に燃え盛り、かの地を騒然とさせるのであった。 【シナリオ名】騒乱する世界 【経験点】9,000点+380点 【報酬金】5,000G 【名誉点】50点 【成長数】15回 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ~~~ リレーキャンペーン・第二話「街の闇へ」 ~~~                 【 GM だいばさん 】 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 先の騒動から早二週間。 冒険者たちは、あれから2件ほどの依頼をこなしていた。 明朝、『夜明けの守り人亭』のマスター、イズニアから呼び出しを受ける。 最近、このハーヴェス市街で人攫いが頻発しているらしい。 守り人亭に所属する後輩冒険者、フィーラーもその事件に巻き込まれてしまったようだ。 説明を受ける途中、ギルドを、いや辺り一帯を軽い揺れが襲う。 どうやら、ここ最近は地震もよく発生するようになったらしい。 ともあれ、イズニアから事件解決を依頼され、冒険者一行は現場である下町へと足を向ける。 ~~~ ハーヴェスの街中は、重装兵が闊歩している。 英雄王グスタフに新たな動きはなかったらしい。 下町についた一行は情報収集を行おうとするが、突然飛び出してきた少年がシグルドにぶつかった。 全員、すぐさま少年の手元やシグルドの懐に目を向ける。 シグルズ 「アウェイクポーションを2個スられたようじゃ」 一行は少年の後を追いかける。 少年はどんどん狭い路地へと駆けてゆき、やがて物々しく武装した男たちに合流した。 どうやら、まんまと誘い込まれてしまったらしい。 一行は身を護るため、そして人攫いの情報を吐かせるために武器を引き抜く。 アルティナの睡眠魔法が炸裂し、戦闘自体はつつがなく終わった。 襲い掛かってきた男たちはロープで簀巻きにしたが、ふと後ろから視線を感じる。 視線の主は慌てて駆け出したのか、路地にドタドタと走る足音が響いた。 アーサーは捕らえた男たちに情報を吐かせるため残り、それ以外のメンバーで走り去った人物を追跡することに。 どちらもハーヴェスの北西、フロギー川へと向かい、そこから下水道へと降りて行った。 ~~~ 下水道を進んでいると、またも地震が起きる。 その拍子に壁が崩れ、シーダが地下に広がる空間に落ちてしまった。 紆余曲折あり、一行はその地下空間を探索することに。 そこは地下倉庫のような場所となっており、物資の詰まった木箱や質素なベッドが並んでいた。 賊のアジトにしては、妙に品質の高いものが揃っている。 もしや、何かしらの組織がバックについているのでは……などと推測しつつ、一行は奥へと進んでいった。 道中、迎撃に現れた賊を蹴散らしながら進むと、ある部屋に檻に囚われている人々を発見する。 その中には、後輩冒険者フィーラーの姿もあった。 アルティナの真語魔法アンロックで鍵を外し、人々を解放する。 しかしこの人数を連れ歩くのは得策ではない。 シーダ 「そこはもう君たちを捕らえる檻ではない」 「君たちを守る砦だ、さぁお入り」 地震による天井崩落を危惧して、人々には檻の中で待機してもらうことになった。 フィーラー達の言によると、ここから奥の部屋に何人か連れていかれたが、戻ってきた者はいないらしい。 冒険者たちは警戒しながら、奥の部屋へと進んでいく。 ~~~ 最奥の部屋にはガラの悪そうな男たちと、線の細い男がいた。 彼らは侵入してきた冒険者一行を一瞥すると、ガレフと呼ばれた男を中心に襲い掛かってくる。 手下はすぐに蹴散らすことに成功し、残るはガレフと、後方に控えるケヴィンという男のみ。 しかし、突如ケヴィンが杖を地面に叩きつけ、地割れを発生させてガレフもろとも冒険者一行を地下へと叩き落した。 落下地点は漆黒に包まれていた。 暗闇に包まれるなか、不気味な租借音が響く。 落ちてきたカンテラの灯りに照らし出されたのは、無残に食いちぎられたガレフの遺体、 そしてそれを食む魔神ケルベロスであった。 地獄の番犬は、不遜にも己が住処に侵入してきた連中を一掃しようと、その牙を向けてくる。 ~~~ エメルの放った一撃が、ケルベロスに引導を渡した。 見事、魔神ケルベロスを撃破した一行は、上層へと這い上がり、囚われていた人々を連れて地上へと帰還する。 ケヴィンを取り逃がす形となったが、冒険者たちの活躍により、ハーヴェスで起こっていた人攫い事件は幕を閉じた。 【シナリオ名】街の闇へ 【経験点】15,000点+1,250点 【報酬金】7,500G+22,57G 【成長数】16回 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ~~~ リレーキャンペーン・第三話「南の魔神騒動」 ~~~                 【 GM しんさん 】 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ あれから三週間の時が流れた。 王都ハーヴェスを揺らした連続地震は、今も時折街を震わせる。 しかし、不安に眉をひそめていた住民たちも、次第にそれを日常の一部として受け入れ始めていた。 市場では子どもたちが走り回り、路地裏の猫は屋根から屋根へ軽やかに飛び移る。 けれど、その穏やかに見える日常の陰で—— 冒険者たちは昼夜を問わず動き続けていた。 奈落教が進める儀式を突き止めては潰し、ときには召喚されかけた魔神と刃を交える。 表の平穏は、裏で血と汗を流す者たちの存在によって、辛うじて保たれていた。 そんなある日のことだった。 ----- 「……お前たち、急ぎの依頼を頼みたい」 ギルド《夜明けの守り人亭》のカウンター越し、マスターのイズニアが低く切り出した。 普段の皮肉交じりの笑みはそこになく、声にはわずかに焦りが混じっている。 「お前たち、この前ケルベロスと戦っただろう」 「……あれと同じ規模の魔神を、魔神教が召喚しようとしている。場所は南の森だ」 彼は一枚の羊皮紙をカウンターに広げる。 走り書きの地図には王都から南へ延びる街道、その先の鬱蒼とした森が赤い印で囲まれていた。 「奴らは森の奥で儀式をしているらしい。いけにえを集めてな」 「行方不明者は……三十を超えている」 そこで一度、言葉を切る。 もし誰かが「まだ助かるのか」と尋ねれば—— イズニアは目を伏せ、短く答えるだろう。 「……生きているとは考えていない。  だが、遺された家族のためにも、せめて痕跡だけでも見つけてやってほしい」 その声は、重く、苦い。 彼は羊皮紙の裏を返し、正式な依頼書を差し出す。 依頼内容: ここから南へ徒歩6日の位置にある森にて、魔神教にさらわれた人々の奪還、もしくは痕跡の確保。 魔神が発生していた場合の駆除。 報酬:奪還、もしくは痕跡確保で 10,000G(個別報酬) 危険手当として、主要な魔神を撃破した場合に「魔神Lv × 20,000G」加算(こちらはパーティ全員で頭割り)。 「……今、この仕事を任せられるのは君たちくらいしか手が空いていないんだ」 視線は真っすぐに、冒険者たちを射抜く。 冗談めかした口調は戻らず、代わりに最後の一言を絞り出す。 「——頼む」 それだけ告げると、イズニアは深く息を吐き、カウンター越しに依頼書を押し出した。 羊皮紙の端には、慌ただしく記された地図と、赤く滲んだ印が静かに揺れていた。 ~~~ /1日目  一行は荷馬車をチャーターし、道中を急ぐ。  昼頃、畑の景色は途切れ、緩やかな丘陵の麓に背の高い樹々が立ちはじめる。  樹皮はまだ明るく、鳥のさえずりも賑やかだ。   空気はわずかに湿り、足元の土が柔らかくなる。 /2日目:緑の海原  樹々の葉は厚く重なり合い、道は薄暗い緑のトンネルに変わる。  頭上から降る木漏れ日は、揺らぐ波紋のように足元を照らす。  風が吹くたびに葉擦れとともに花粉が舞い、森特有の甘い香りが鼻をくすぐる。  しかし、その香りの奥に、どこか鉄のような匂いがほんの一瞬混じった気がした。 /3日目:静寂の深林  獣道に入ると、鳥の声が途絶え、葉のざわめきすら遠くなる。  苔に覆われた倒木や湿った土からは冷たい水気が漂い、足元には白く細いキノコが群生(食用/1d3回復)している。  日差しは枝葉に遮られ、昼でも薄暮のような明るさだ。  仲間の足音や息づかいが、やけに大きく響く。 /4日目:瘴気の兆し  樹皮は黒ずみ、葉は鈍い色を帯び始める。  森の奥から、低く唸るような風の音が時折届く。  幹には意味不明の刻印が刻まれ、削られた部分から赤黒い樹液が滲んでいる。//魔神語/グラァバドーン/ラグナカング  空気は重く、喉にざらつきを感じる。  ——儀式の臭いが、確実に近づいてきていた。 /5日目:儀式の森  朝から霧が立ち込め、視界は十数歩先までしか利かない。  地面には大小の骨が転がり、腐葉土の上に異様な黒い花が咲いている。  霧の向こうから、誰かが囁くような声が断続的に聞こえるが、姿は見えない。 道中表後 そして午後、森が急に開けた先に——赤黒い光を放つ儀式場の影が現れる。 ~~~ 霧の向こうに、わずかな明るさが滲んだ。 しめりついた土の感触が硬くなり、靴底が苔ではなく乾いた地面を踏む。 枝葉の天蓋が途切れ、視界が開けた瞬間——足が止まる。 そこは、不自然なまでに円形に開けた空間だった。 地面は灰と血にまみれたような色を帯び、 腐葉土の匂いではなく、甘く鉄錆びた臭気が鼻を刺す。 中央には、10数人ほどの人々が横一列に並べられていた。 男も女も、老人も若者も、表情は凍りついたまま、冷たく。 首の角度も、手足の位置も不自然に揃えられ、 生者の姿を模した操り人形のように並んでいる。 その肌は青白く、所々に乾いた黒い染みがこびりついていた。 その周囲を、黒衣の集団がぐるりと取り囲んでいる。 彼らの頭は深くフードに覆われ、顔は闇に沈んで見えない。 しかし、口元だけは動き続け、くぐもった祈りの声を一斉に響かせていた。 祈りは低く、不規則な波のように高低を繰り返す。 風もないのに、黒い外套の裾がゆらりと揺れるたび、 中からちらりと白い骨のような装飾や、乾いた赤色の布切れが覗く。 その場の空気は重く、光は鈍く、 まるで森全体がここを中心に呼吸を止めているようだった。 そして、あなたたちが一歩踏み出すごとに、 祈祷の声がほんの僅かに高まり、 まるで来訪者を歓迎するかのように——しかし確実に、不吉さを増していった。 黒衣の群れの中で、一人がこちらを振り返る。 フードの奥で、ぎょろりと血走った眼があなたたちを射抜いた。 「……きえぇぇぇぇぇ!!!」 耳障りな絶叫が森を裂き、次の瞬間—— その男は短刀を自らの喉に突き立てた。 刃が肉を裂く鈍い音、鮮血が弧を描き、地面に降り注ぐ。 それを合図にしたかのように、周囲の黒衣たちも次々と同じ動きを繰り返す。 呻き声とともに刃が首筋を裂き、血が噴き出す。 朱色の飛沫が静かな森を染め、やがて全員が崩れ落ちた。 ——その血は、まるで生き物のように地面へと吸い込まれていく。 灰色の土に赤が染み、幾筋もの細い線を描きながら中央に集まる。 やがて足元の土が脈打ち始めた。 どくん—— 地面の下から響く重い鼓動。 世界がわずかに揺れ、あなたの視界がかすかに歪む。 その瞬間、頭上の空が裂けた。 渦を巻く黒雲の中心、ぽっかりと開いた暗黒の口がこちらを見下ろす。 そこから細く長い赤光が、まるで巨人の指先のように降り注ぎ、 血に染まった地面を射抜く。 赤光は不気味に揺れ、脈動と共鳴するように地面の模様を赤黒く輝かせた。 そして——その光の中で何かが形を取り始める。 肉とも岩ともつかぬ塊が膨れ、腕らしきものが突き出し、 頭部には牙と角が生え、血の霧をまとって咆哮した。 地面の鼓動は高鳴り、森全体が震えだす。 それはもはや「召喚」ではなく、「侵入」だった。 ~~~ Lv.11 柔らかいラグナカングと戦闘 ~~~ 森を満たしていた咆哮と衝撃波が、嘘のように消えた。 耳に残るのは、血の滴る音と、かすかな風のざわめきだけ。 焼け焦げた匂いと鉄錆のような臭気が、重く胸にまとわりつく。 周囲には、15体の遺体が無造作に横たわっていた。 しかし、それらはもはや人の面影をとどめてはいない。 顔は黒く焼けただれ、皮膚はひび割れ、 手には指が一本残らず失われている者もいる。 あまりに無惨で、容易に身元を特定することはできなかった。 (知識判定+セージ技能17) 焼け焦げの奥に、歯や骨格、髪の色など、個人を特定できそうな痕跡がかすかに残っているのが分かる。 中には胃のあたりが異様に膨れている遺体がある。 遺体を慎重に調べると、硬直した腹部の内側に何かが詰まっているのが感じ取れる。 (スカウト+器用7) 腹部を割くと、そこから次の品が現れる—— 名札(レティシア) 銀の指輪(ティルへ) 紙切れ(「アリガトウ サム」と震える筆跡) 掌大の土の塊(飢えに耐えきれず食べた痕跡) 一方で、先ほどまで祈祷を捧げていた黒衣の男たちの姿は跡形もなく消えていた。 そこには灰や肉片すらなく、まるで最初から存在しなかったかのようだ。 ~~~ 【王都ハーヴェスへ帰還する】 長い帰路を終え、石畳の大通りを抜けた先に、見慣れた看板が見える。 「夜明けの守り人亭」——だが、その灯りはいつもより静かだった。 扉を押し開けると、カウンター奥で帳簿をめくっていたイズニアが顔を上げる。 あなたたちの顔を一瞥し、息を詰める。 その目は、すでに何かを察しているかのようだった。 「……戻ったか。報告を、聞こうか」 戦いの経緯、儀式の惨状、そして持ち帰った品々を順に語る。 机の上に置かれた名札、指輪、紙切れ、土の塊—— それらが、言葉以上に重い事実を突き付けてくる。 イズニアはしばらく沈黙したまま、手を組み、深く息を吐いた。 「……そうか。全員は……戻れなかったんだな」 その声は低く、しかし震えていた。 やがて、ギルドの扉が開き、依頼を出した遺族たちが入ってくる。 あなたたちが持ち帰った品がひとつずつ手渡されるたび、 その場には嗚咽が広がっていった。 名札を胸に抱きしめ、声を上げて泣き崩れる母親。 指輪を両手で包み、唇を噛みしめて涙をこらえる老父。 「アリガトウ」と書かれた紙を頬に当て、 何度も首を振りながら嗚咽する青年。 誰もが失った現実に押し潰されそうになりながらも、 あなたたちの報告を最後まで聞き、深く頭を下げた。 「……あの魔神を倒してくれて、本当に……ありがとう」 「もっと、もっとひどいことになっていたはずだ」 その言葉が、救いなのか、それとも重みなのか—— 胸の奥で、判断はつかないままだ。 しかし、確かなのはひとつ。 あの森から押し寄せる脅威を、この街に届く前に断ち切ったのは、紛れもなく自分たちだということ。 それだけが、今は唯一の確かな事実だった。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ~~~ リレーキャンペーン・第四話「銀の雫」 ~~~               【 GM ちゃっしーさん 】 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 前回の冒険から一か月後。 アーサー達は、イズニアからハーヴェス周辺の魔物退治を依頼され、それをこなす日々を過ごしていた。 ~~~ ブルライト地方南西部、ハーヴェス王国。 海と河から恩恵を受ける肥沃な水の都として、近年最も成長を遂げた国家である。 しかし今、その栄えある水の都に、暗雲とも呼べる陰りが見え始めていた。 正当な王位後継者の地位を掲げる謎の男の出現を皮切りに、都市を襲った奈落教の活発化。 天変地異を想起させる断続的な地震に加え、周辺国にまで及ぶ多発する奇怪な事件。 僅か数か月の期間で次々に巻き起こる災害に、人々の心が陰るのも致し方なかったと言えるだろう。 運命の導きか、神の悪戯か。 渦中とは呼べぬまでも、その出来事の一端に触れ続けてきた君達は、変わらず『夜明けの守り人亭』に集っていた。 奈落教の魔神召喚から遺品の回収を命じられて一か月。 君達はハーヴェス周辺で巻き起こる、魔神を始めとした魔物による被害を食い止める日々を過ごしていただろう。 今回は一週間かけて北の山を、前回は四日、そのまた前は二日ほど。 短期、中期を問わない遠征を立て続けに繰り返し、君達はイズニアから引き受けていた最後の魔物退治の報告を終えた所だった。 一週間ぶりのハーヴェスの空気はやはり重く──君たちの記憶より、更に人々は焦燥し、恐怖し、辟易しているように思えた。 『夜明けの守り人亭』のマスター、イズニアは、君達のまとめた報告書に目を通し、小さく息をついた。 イズニア 「……うん、今回も無事済んだみたいだね」 「お疲れさん、君たちに何事もないようで安心したよ」 「後はゆっくり休んで……と、いいたい所なんだけど」 「耳に入れておいた方がいい話がある」 「ちょっと、聞いてくれるかい」 イズニア 「……どうやら、王国の騎士団が、近々ブルライト地方にいる奈落教の排除に動くらしい」 「普段なら断固として動かない、古い宮廷貴族の私兵さえも出すんだと」 「恐らく規模としては万を超える大軍隊になる」 「あまり言いたくないけど……近年のハーヴェス史においては、一番大きな戦になるね」 表情に陰りをみせるイズニアは、再度君達を見やり続ける。 イズニア 「一週間前…ちょうど君達が魔物の退治に出かけた辺りから、ヴァイス・ハーヴェス国王陛下の名の元、国中に戦時命令が出された」 「資材徴収に、冒険者や腕に覚えがある者には、兵の募集も行ってるんだ」 「お陰でこの一週間、国内は混乱の真っただ中」 「好事家連中は勿論、土地を持たない商人なんかもこぞってグランゼールの方へ逃げてったって話さ」 「ウチの店も例外じゃなくてね、追加の徴税を命じられて、お陰で火の車だよ」 「…っと、話が逸れたね」 「とにかく今ハーヴェスでは、大きな戦いが巻き起こるってんで、てんやわんやな訳」 「そんな中で、ちょっと気になる噂を耳にしてね」 「市井でも出回ってる噂だけど、確かな情報筋からの裏付けも取れてる」 「……何でも、今回の戦の指揮を執るのが、“あの男”だって話なのさ」 「グスタフ・フォルス・ハーヴェス──一か月も前に突如としてハーヴェスを救い、そのまま入城したあの男さ」 「あれっきり何の話も聞かなかったんだけど、ここにきて名前が出てきたんだ」 「ちょっと、おかしいと思わない?」 イズニアの表情に、いつものような軽薄さは感じられない。 彼はどこか考えるように、慎重に言葉を紡ぎ続く。 イズニア 「そもそも、だ」 「あの男が姿を現したのは今から四か月ほど前」 「──そして、ハーヴェスの周辺で、妙な事が起き出したのも丁度その辺りだ」 「よくよく覚えてるよ、依頼の量が目に見えて増え始めたからね」 「それを契機に、ハーヴェスから少しづつ冒険者の数が減っていった」 「ある者はラージャハの蛮族討伐へ、ある者はユーシズの魔物退治へ」 「元々冒険者に周辺の警備を任せっきりだったハーヴェス王国はそのしっぺ返しを食らい──」 「まるでその穴を埋めるように、グスタフの名が知れ渡っていった」 「そして今、ヴァイス・ハーヴェス国王陛下は、己が名を使って戦時命令を国中に出された」 「追加の徴税は免れないんだ、陛下の周辺の貴族や有力者だって良い顔はしないだろう」 「国民の中には逃げ出す者もいて、国王陛下の支持は一時的にではあるも大きく下がってしまった筈だ」 「──だというのに、だ」 「その戦をまとめるのは国王陛下御自身ではなく、どこの馬の骨とも知れぬあの男」 「国の総戦力を持ち出すんだ、いくら奈落教とはいえ打ち破る事は不可能だろう」 「その勝利、栄光は──全て、あの男の手に渡る」 イズニアはそこまで言い切ると──大きく息を吸い込み、吐いた。 イズニア 「なんてね」 「悲しい事件が立て続けに起こったものだから、こんな感じで良くないことばかり考えてしまう」 「兎にも角にも、今のハーヴェスはあまりにきな臭い」 「俺はこの店があるもんだから離れるつもりなんて毛頭ないんだけど──君たちは、違う」 「ギルドのマスターとしては失格だけど、正直、別の街へ移転する事をお勧めするよ」 「お世話になってきた君たちに、冒険以外の面倒事に巻き込まれて欲しくないからね」 イズニアはそういうと、君たちに柔らかく微笑むだろう。 イズニア 「とはいえ、これではいサヨナラっていうのも何だ」 「最後に、君たちに頼みたい仕事がある」 イズニアはカウンターの下から、やや大きいアタッシュケースを取り出した。 イズニア 「さっきも言ったけど、国から追加の徴税を命じられてね」 「額が額だから、信頼できて腕の立つ人に届けて欲しいんだ」 「これが俺から君達にお願いする、最後の依頼だよ」 「王城の場所は分かるよね?」 「恐らく門前には兵士がいるはずだから、『夜明けの守り人亭』の名前を出せば徴税官に取り次いでくれる筈さ」 「あとついでに…ってわけじゃないだけど」 「戦時命令が出されてから、本当にこの国は慌ただしくなっちゃってね」 「よくない輩が我が物顔で街を歩いてる事もある」 「いつもならそういうのは国に滞在する冒険者が牽制してくれてたんだけど…ね」 「今は冒険者もほとんどいないし、兵士だって街中に顔を出さないんだ」 「君達が街中を歩くだけでも、そういった荒くれ者達は鳴りを潜めるだろう」 「もしよければ、仕事が終わった後でもいいから、少し街の中を見回ってやってくれないか」 「……何から何までごめんね」 「君たちみたいな一流の冒険者に、こんなお使いみたいなこと頼んじゃって」 「それじゃ、頼んだよ」 どこか力無く微笑むイズニアを背に、君たちは市内へと繰り出していくだろう。 ~~~ 改めて街を見渡せば、君たちは活気が薄れる街並みをありありと感じられるだろう。 人々の往来は著しく減り、町の通りを歩く少人数の表情は非常に暗い。 遊び歩く子供の姿も囃し立てる商人の声もなく、静かな街並みには、水路を流れる水音だけが虚しく響いていた。 君たちは店の南向けに進む。 サルディニ川の橋を渡り、旧市街を抜け、議事堂や博物館を過ぎればハーヴェス王城が見えてくるだろう。 道中の街並みはやはり閑散としており、心なしか数が増したように思える難民然とした者たちが、どこか物欲しそうな目で君達を遠巻きに見つめるばかりだ。 王城に近づくほど、人の姿は増えていく。 積荷を運ぶライダーギルドの職員や、慌ただしく動く役人の姿も垣間見えるだろう。 君たちの往来を見てか、一人の兵士が君たちに近づいてきた。 王国兵士 「む、珍しいな、冒険者か」 「隊への志願か?」 「…ああ、あの店のか」 「待ってろ、いま丁度責任者がいらしている所だ」 兵士はそういえば人垣の中に一度姿を消し、数分と経たずに一人の男を連れ立って戻ってくる。 聖印を首から下げる男は、どこか不遜な態度で君たちへと大股で近づいた。 「私が徴税官のヴェンデルである」 「『夜明けの守り人亭』からの追税分を確認させて貰おう」 君たちからアタッシュケースを受け取れば、ヴェンデルと名乗った男は無遠慮に中身を開く。 そこに手を合わせ、小さく何かをつぶやけば、若干の光がアタッシュケースを包み込んだ。 徴税官ヴェンデル 「…うむ、贋金ではないようだな」 「よろしい、1ガメルの誤差も無い」 「相変わらず割り振られた仕事だけはキッチリとするな、あの男は」 ヴェンデルはそういうとアタッシュケースを閉じ、君たちを見やる。 徴税官ヴェンデル 「お前達、あの店で仕事を受けている冒険者だろう」 「噂は聞いている、数か月も経たずして一気に名を挙げたようではないか」 「今ハーヴェス王国には冒険者の手が足りん」 「お前達もこの国で活動する冒険者というのならば、我らが軍に与するが道理といえる」 「私が許す、今すぐに義勇兵として志願せよ」 「今ならば報酬金に糸目はつけんぞ」 アーサーは困ったような表情を浮かべる。 ロータスは「国内の面倒も見きれてないのに?」と挑発するような物言いをし、アーサーは肝が冷えた。 徴税官ヴェンデル 「……チッ、やはり冒険者は信用できんな」 「あれだけ王国に寄生しておきながら、目先の欲に囚われ、国難とあらばあっさりと鞍替えする」 「やはりヴァイスは根本からはき違えていたのだ」 「…おっと失礼、部外者に口にする話ではなかったな」 「志願する気がないならばとっとと帰るがいい」 「次見かければ、奈落教からのスパイとして憲兵に突き出してやるからな」 ヴェンデルは吐き捨てるように言えば、君たちに振り替える事無く兵士を連れ立って人垣へと戻っていくだろう。 ~~~ 君達は連れ立って、ハーヴェス中央の旧市街を歩く。 イズニアの言っていた、我が物顔で歩くならず者──そのような風貌の者の数は少ない。 視界の端に映る粗暴な男達はあれども、全員が全員、君たちを見るとそそくさと裏通りへ逃げるようにして去っていった。 閑散とした街路を歩む君達を、軒先に店を構えた一人の女性が大声で呼び止める。 ※3話の犠牲者、ティルの叔母 ??? 「おいアンタ達!」 「そう、アンタ達だよぉ!」 妙齢の女性は君たちに声をかけると、戸惑うような表情を向けた。 女性 「もしかして…アンタ達、一か月前に奈落教の一団から、さらわれた人の遺品を持ち帰った冒険者じゃないかい?」 「…ああ、やっぱりね」 「遠巻きだったけど、アンタ達が遺族に遺品を渡してる所を見てたんだ」 「……というのもさ」 「その内の一人が、アタシの甥っ子でね」 「アタシの親父…あの子にとっての爺さんを継いで、料理人になるって夢を叶えたばっかりだったんだ」 「婚約者も見つかって、後はあの子が幸せになるのを見守るだけ……」 「そう思ってた矢先の事だったよ」 「アンタ達のお陰で、ちゃんとあの子を…ティルを弔ってやれたんだ」 「本当に、ありがとうね」 「……これ、少ないけどアタシからの気持ちだ」 女性はそういうと、君たちに小袋を手渡した。 中には10点分の魔晶石が5個、デクスタリティポーションが3本入っている。 「持ってきな」 「アンタ達くらいの冒険者にはつきもんだろう?」 「いいんだよ、どうせこの店ももう閉めちまうんだから」 アーサーはどういうことかと聞き返す。 女性 「…戦が始まるだろ」 「それの追加の徴税金を払い切れなくてね」 「兵士たちに在庫のほとんどは持ってかれちまったんだけど、いくつかは隠してたのさ」 「どうにかして売り捌こうと思ってたけど……待ってたってどうせ客なんか来やしないんだ」 「こうしてずっとお礼がしたいと思ってたアンタ達を見かけたのも何かの縁」 「どうか、受け取っておくれ」 「この街は、アンタ達のような冒険者に守られてきたんだからね」 妙齢の女性はそういうと、小さく息をついて、軒先の椅子に座りこんだ。 「ちょっと疲れたねぇ」 「今後の身の振り方をどうするか…少し、考えてみる事にするよ」 「アンタ達も、元気でやりな」 ロータスが、また店を開こうという旨の励ましの言葉を贈る。 女性は驚いたような表情を見せ、ロータスの言葉に救われたように、そうさね、いつかきっと、と返してくれた。 ~~~ 君達は連れ立って、ハーヴェスの北と中央を結ぶサルディニ川にまでやってくる。 下町が広がる北側と、中央の地区を結ぶ橋の付近には、人っ子一人見当たらない。 職人街の方からは遠く鉄を金槌で叩く音が響くも、それは川の急流の音によりほとんどがかき消されていた。 橋を渡る君たち──その中の数人は、違和感を覚えるかもしれない。 >ロータス 君は自分の道具袋の中から、奇妙な音と振動を感じる。 袋を見やれば、君の持ち物の中──「銀の雫」が入った小瓶が、微弱に震えている。 目を凝らせば、瓶の中の雫は意志を持つように蠢いているのが分かるだろう。 ロータスは袋から「銀の雫」を取り出した。 一か月ほど前、倉庫街の買取屋から購入したソレは、君の手元で意志を持つように蠢いている。 手に収まる感触から、君は分かるだろう。 まるで瓶に閉じ込められた雫が、どこかへ向かおうとしているのだと。 それは君達の立つサルディニ川を跨ぐ橋──その下へと降りようとしているように感じられた。 橋の下は狭い河川敷が広がっているものの、少なくとも君達の視界からは何かがあるようには見えないだろう。 橋の下の河川敷に降りれば、ロータスの手の中にある銀の雫は一層強く蠢きだす。 橋の根本、河川敷の壁部分に、まるで君の身体を引っ張り上げるように進んでいこうとしている。 ~~~ ロータスは河川敷の石の壁の一部が、スライド式の扉になっている事に気付く。 それは異常とも呼べるほど巧妙に隠されており、銀の雫が無ければ君でさえ見つける事は困難であっただろう。 また、この扉を開くには別途で卓越した技術による「解除判定」が必要なようだ。 ロータスは、複雑怪奇な錠を、見事に解いて外してみせた。 刹那、目の前で石の壁は音もたてずにゆっくりとスライドしていく。 やがて石の壁は、人一人がギリギリ入れる程度にまで口を開けた。 通路は真っ直ぐに伸びている。 明かりは見られず、また、何者かの影も見えない。 扉を潜る際、君たちはある事に気づく。 その扉の内側、通路の壁には、びっしりと魔法陣が描かれていた。 アルティナは短い時間で魔法陣を読み解く。 しかしアルティナが分かるのは、少なくともアルティナの知る魔法の理外の外にある技術だという事だ。 一体これらの魔法陣が何の役割を果たしているか、見当がつかない。 通路は三十メートルほど、町の南側に伸びているようだ。 非常に狭苦しい通路を歩けば、君たちの前には下に伸びる石製のらせん階段が伸びている。 下を覗いても最下層の終点は遥か彼方──数百メートルも降る必要がありそうだ。 ~~~ どれほどの時間をかけただろうか。 時間にして二時間ほど君達はただただらせん階段を下り続ける。 薄くなる酸素に、ぐるぐると回り続け前後不覚になる三半規管。 どこかぼうっとする頭を何とか働かせながら、君たちはようやく最下層に降り立った。 最下層もやはり真っ直ぐに道が伸びている。 先ほどよりも広くなった道は、三人が並んでもまだ余白が生まれるだろう。 君たちが通路を歩くこと数分──目の前に、木製の両扉が見えてくる。 そしてこの異常な空間で、初めて君達は君体以外の影を見た。 ソレは扉の前で地面に仰向けに寝そべる、男の姿だった。 君たちが男に近づく。そして、その姿を垣間見るだろう。 通路に寝そべる男は、端的に言って絶命していた。 腹部に空いた大きな穴から血を流し──しかして、その顔には歪な笑顔が浮かんでいる。 それは一か月前、かつてハーヴェスの街中で君たちを大鎌で襲った男―――オルニスの姿だった。 腹部に空いた大穴は、物理的な攻撃によるものではないようだ。 強力な魔法、或いはそれに類する何かによってこじ開けられている。 よく見れば体中には細かい傷が生々しく残っており、苛烈な戦闘を行った事が分かる。 彼の外套の内側には、一冊の本が入っていた。 本には魔法文明語で何かが書かれている。 ============================================================================================== 『ついに“銀の雫”は私の目指す地点へと到達した』 『これだけの濃度があれば、我が王を蘇らせる事も出来るだろう』 『三千年──それはあまりにも長すぎる時間であった』 『祖国はとうの昔に滅び去り、私の生きた時代は最早過去の産物だ』 『しかし、私はやり遂げたのだ』 『ここ一年は、今までとは比べ物にならない程話が早く進んでくれた』 『特に奈落教との協力は顕著であった』 『彼らが“銀の雫”を用いて暴れてくれたお陰で、机上の空論であった仮説の悉くが立証された』 『あとは最後の調整に入るだけ』 『それだけで、我が王は今世に舞い戻られる』 『最後の壁となるのはやはり、我が王を蘇らせるだけの魔力を集めなければならない』 『奈落教から仕入れた情報によれば、我が時代にもあった憎きユシア』 『奴らの末裔が、大量の魔晶石が採掘できる坑道を所持しているという』 『“銀の雫”で作り出した魔物達に、その坑道からあらかたの魔晶石を奪い尽くしてやろう』 『無様なり、ユシアの末裔共』 『お前達の繁栄は、全て我が王復活の為の礎に過ぎぬのだから』 『全ては世界中の人間、否、レイシンディア、ひいては我が王』 『レオガルド・グスタフ・レイシンディア魔導陛下の為に』 ============================================================================================== アーサーとロータスが木製の両扉を開ける。 その先には、縦横十五メートルほどの空間が広がっていた。 まず最初に鼻につくのはむせ返る血の臭い、そしてほのかな古い紙とインクの香りだった。 まるで書庫のような部屋は荒らされている。 更にその部屋には二人の人物が横たわっている姿が見えるだろう。 老人が二人──奇妙な点は、どちらも全く同じ背丈、顔をしている。 生き写しのような二人の老人は力なく俯き、倒れている事が分かるだろう。 そのうちの一人が、小さくうめき声をあげた。 老人 「う、あ……」 老人は近づくアーサーに気づいているのか気づいていないのか。 濁った瞳をアーサーに向け、唇を震わせた。 老人 「おし、まいだ」 「何もかも、すべ、て」 「なぜ、なのですか」 「王よ、我が王よ」 「私は貴方に、全てを尽くして来たのに」 「な、ぜ」 老人は小さくそう呟くのを最後に。 濁り切った瞳を閉じる事無く、事切れるだろう。 アーサーはそっと老人の身体を横たえ、その眼をゆっくりと閉じさせる。 改めて部屋を見渡す。 部屋の壁は全て本棚で出来ており、びっしりと古い本が立ち並んでいる。 部屋の家具といえばデスクばかりで、その上や地面には紙の束が散乱しているだろう。 アーサー達の入ってきた扉とは反対側に鉄製の両扉が一つ備わっているのが見える。 アーサー達は部屋の探索を行い、魔法文明語で記された幾つかの文献や資料を発見する。 ============================================================================================== 『この土地には、多くの国々が興され、そして滅びを迎えたという』 『我がレイシンディアも、その轍を踏まぬ為には、何よりも強大な王を据えなければならない』 『たった一代でこの国の版図を大きく広げ、数え切れぬ程の強力な魔法と実績を積み上げたお方』 『レオガルド・グスタフ・レイシンディア魔導陛下こそ、人々の希望になるに相応しいお方であろう』 『ノーブルエルフの時代はやがて終わり、必ず“人”の時代がやってくる』 『その先導者こそ、我が魔導陛下を置いて他にいるはずもない』 『しかしてレオガルド魔導陛下も人の子、定命の掟から逃れる事は出来ないであろう』 『嫡子であらせられるレオフォロス殿下の治世を揺るぎない物にする為にも──』 『亡国ノクローンの研究』 『必ずモノにしてみせよう』 『その為ならば、憎きユシアの技術さえも使いこなしてみせる』 『全ては世界中の人間、否、レイシンディア、ひいては我が王』 『レオガルド・グスタフ・レイシンディア魔導陛下の為に』 ============================================================================================== 『千年の時が経った』 『これを契機とし、簡潔にまとめられるだけを記そう』 『亡国ノクローンの神秘、“銀の雫”の研究の為、私はレオガルド魔導陛下の遺骨を手に、研究施設へ籠った』 『安全性の確保の為、外界との交流を一切絶った私は、ただただ“銀の雫”の研究を推し進めていた』 『最大の目的は、レオガルド魔導陛下を遺骨から完全な形で復活せしめる事』 『しかしそれを実現するには、あまりにも大きな壁があった』 『遺骨のみで完全な人の身体を再生するには、あまりにも生体情報が足りなさすぎるのだ』 『その大いなる壁を超える為には、私に残された時間はあまりにも短すぎた』 『故に私はまず初めに、“自らを複製する為”の研究に取り掛かる』 『私の齢が80を過ぎた頃、それは完成した』 『今の私は、何体目の私なのだろうか』 『もはやそれを思い出す事も出来ないが、私は私を作り続け、そして同時に研究を続けている』 『常に三人の私を常備し、思考と実験を繰り返す日々』 『レイシンディアは、恐らく影も形も残っていないだろう』 『それでも尚、私は私の責務を果たさなければならない』 『幸か不幸か、千年という時間をかけても尚、“銀の雫”の全容は解き明かせていない』 『まだ数百年、下手をすれば更に数千年の時間をかける事にもなろう』 『しかし、私にとって何の問題にもならない』 『“銀の雫”の精製と濃縮……その方法さえ確立した今ならば、私には無限の時間が存在するのだから』 『一つだけ懸念があるとすらば、何れ別途で生体実験が必要になるタイミングが生まれるだろう』 『その時は、現状を打開し、外界との交流も不可欠になる』 『それが何時なのか、その時の世界情勢はどうなっているのか』 『今の私には見当もつかないが──それは、その時の私が考えればいい事だ』 『全ては世界中の人間、否、レイシンディア、ひいては我が王』 『レオガルド・グスタフ・レイシンディア魔導陛下の為に』 ============================================================================================== 『“銀の雫”』 『〇原液』 『精製と濃縮を繰り返して作り上げた実験体の核であったもの』 『さん さんぜんねん(震えた文字で書かれている)という時間をかけ かけて、作り上げたもの なのに』 『亡国ノクローンの記述に相違なく、例え神であっても模倣してみせただろう』 『その、筈だ』 『〇十五倍希釈』 『実験においてメインで使用していた濃度』 『魔力の出力低下以外は、原液と遜色のない効果を見せた』 『模倣物についても魔力を帯びた品を始め、種族を問わず生物をも模倣可能』 『また、以下の三点の特徴が見られる』 『①模倣には、「実物が目の前、或いは触れられる近さにある」、「あるいは其れを認識できる環境下である」こと』 『②雫が形をとりとめるのは、最大で一か月。その前に、同じ希釈量以上の"銀の雫"を新たに投与すること。(期限を過ぎると液状へと戻り、魔力を失う)』 『③希釈された“銀の雫”は、より濃度の濃い液体に引き合う性質を持つ』 『原液とは異なり、模倣先の原型を留める為には、常に追加の“銀の雫”を必要とする事に留意されたし』 『〇三十倍希釈』 『十五倍の濃度から、出力は更に半減し、原型を留める効果も顕著な短さを持つ』 『これならば大勢に影響を及ばぬと判断し、現世における協力者である奈落教にいくつか融通する』 『奴らの異常とも呼べる行動原理、執着には驚きを隠せぬものの、お陰で数多の研究結果を収集する事に成功する』 『(何かを書いては消した跡が続く)』 『今更こんな事を遺して、一体なんの意味があるというのか』 ============================================================================================== 『何故だ 何故だ何故だ何故だ 何故だ何故だ何故だ何故だ』 『何故だ何故だ 何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ 何故だ何故だ』 『何故だ何故だ何故だ 何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ』 『王よ、我が王よ 王よ 王よ王よ王よ王よ』 『何故私に微笑まない 何故私を労わない 何故一言さえもお言葉をくれなんだ』 『私は途方もない時を貴方の為に費やした』 『王よ 我が王よ 敬愛し、敬慕し、敬仰し、敬服しせしめし我が王よ』 『我が魔導陛下 レオガルド・グスタフ・レイシンディアよ』 『あの時私の前に現れた貴方は、本当に貴方であったのか』 ============================================================================================== 『結論から遺そう』 『実験は、成功した』 『三千年という時をかけ構築した私の理論は、あのノクローンの“銀の雫”を完璧に再現してみせた』 『先帝陛下の遺骨から、寸分たりとも違わぬ御姿で、御身を現世に舞い戻らせたのだ』 『あの肉体美、御尊顔、忘れるはずもない、私を導きたもうた我が王に他ならない』 『しかし(非常に乱雑な文章が続き、読み取る事が出来ない)』 『しかし王は、私に微笑まず、何も語り掛ける事もせず』 『我が研究資料と、“銀の雫”の原液を接収し、この場を立ち去った』 『私は貴方の復活の為だけに、その全てを捧げてきた』 『遺骨のみを遺して死した貴方を、完璧な存在にする為だけに』 『望んでいなかったというのか? 私とレオフォロス殿下の決断が誤っていたと?』 『……何もかもが、栓無き事か』 『魔導陛下が私に微笑まぬのならば、この研究を存続させる意味もない』 『もしアレが魔導陛下ではなかったとしても──』 『もう私に、残された時間はない』 ============================================================================================== 2人の老人は何も持っていなかった。 書庫からもこれ以上めぼしい情報は得られず、アーサー達は先へ進むことにする。 鉄製の両扉は非常に重く作られている。 しかし見た所、錠前などは見当たらず、鍵はかかっていないようだ。 アーサーとロータスが少し力を加えれば、鉄の扉は重苦しい音を掻き立てて開きだす。 その先は、今の部屋よりも一回り大きな空間が広がっていた。 その空間には、いくつかのデスクに、様々な研究道具が立ち並んでいる。 君たちが最初に感じるのは、異臭だ。 どこか独特な、ツンとした臭いが鼻腔を貫く。 みれば部屋中には、石の欠片やガラス片のような物が散乱している他、銀色の液体が所々に付着していた。 その部屋の中央。 一つの椅子に腰かける、老人の姿もあった。 その老人は先ほどの部屋で倒れていた二人の老人と、全く同じ顔をしていた。 老人は機械的な動作でゆっくりと顔を挙げ、君たちを見やる。 謎の老人 「──驚いたな」 しゃがれた声で紡がれる共通交易語は、僅かに震えているように感じられる。 謎の老人 「やってくるのはあの狂信者であると思っていたが」 「まさか、全く無関係の者が足を踏み入れるとは」 「この場所をどうやって知ったのかね」 「今の時代に、私の隠蔽の魔法を見抜く魔術師がいるとは思えないが」 ロータスは自分たちが"銀の雫"を持っているという情報を伏せながら答える。 またアーサーも、銀の雫が自分たちの手に渡ったことも含めた意味として『偶然』と回答した。 謎の老人 「…不思議な事もあるものだ」 「君達から私への殺意を感じない、更には“銀の雫”も欲していないと来た」 「そのような君たちが、この場所の最初の訪問者になるとは」 「奈落教への皮肉、或いは私への……」 老人はそれだけいえば、深く息をつき、背もたれに身体を預けた。 謎の老人 「どちらにせよ、もう全ては終わった事だ」 「残念だが、ここには何もないよ」 「胸躍るような冒険もなければ、功明たらしめる栄華も無い」 「君たちが欲するようなものは、この場所に何一つとして残っていない」 「──率直に言おう、今代の若者よ」 「今すぐにこの国を、大陸を離れたまえ」 「自分の命が大事ならば、な」 アーサーは問答を続ける前にと、老人に名を問う。 謎の老人 「私の名は、ノクローン」 「……いや、今際くらい、偽りなく語ろう」 「失敬、私はハルカーン・フォン・ネルカンシュプ」 「君達の時代でいう、「魔法文明時代」と呼ばれる時から生きる、魔術師だ」 ハルカーン 「かつてこの近辺に私の祖国、レイシンディアがあった」 「…その時代、人間という種族は弱き者、まるで道具のようにエルフに扱われていた」 「その逆境を耐え抜く為、我が王──レオガルド魔導陛下は、戦っておられた」 「私は“銀の雫”を用い、レオガルド魔導陛下を永遠の存在にする為に研究を続けた」 「三千年──途方もない時間を使ってね」 ※“銀の雫” 「あれは私の祖国、レイシンディアが建国されるよりも前に存在した、神代の秘宝だ」 「永遠の都ノクローンが残した神秘の結晶」 「私はそれを研究し、複製し、精製し、濃縮し」 「膨大な時間を掛け、伝説の“銀の雫”へ近づけていった」 「“銀の雫”は、その貴重性から安易に消費する事が出来ん」 「故に、希釈して濃度を薄めた上で実験や研究を行っていた」 「その時、私の協力者となったものに、十五倍に希釈した“銀の雫”を提供したのだ」 「大方奴らが金に換えたか、或いは何かがあって落としたか」 「理由はわからないが、巡り巡って君達の手元にやってきた」 「“銀の雫”は特性上、更に濃度の高い“銀の雫”へ統合を果たし、更なる純度を得ようとする性質がある」 「常にこの工廠にあった原液には隠蔽の魔法をかけていたが──」 「少し前に、破壊されてしまってね」 「故に君の持つ“銀の雫”が、この部屋に残った原液に反応したのだろう」 「…まるで全て、あのお方の掌の上にいるようだよ」 ※レオガルド・グスタフ・レイシンディア 「…ああ、そうだ」 「“銀の雫”は確かに、私が蘇らせた太古の神秘に他ならない」 「敬服する我が王、レオガルド・グスタフ・レイシンディア魔導陛下は確かに蘇った筈だ」 「今から数か月前だ」 「私はついに“銀の雫”の濃度を目標値にまで到達させた」 「そしてレオガルド魔導陛下の遺骨から、あのお方の肉体を模倣させた」 「あのお方は、完全なる形でこの世に舞い戻られた」 「その、筈だったのだ」 老人──ハルカーンは震える声で告げると、同様に震える両手で、自身の顔を覆い隠す。 ハルカーン 「しかし、アレは本当に我が王であったのだろうか」 「肉体や顔は、忘れもしない我が王其の物だった」 「しかし、あの眼差しはなんだ」 「何故あのような瞳で私を見た」 「何故何も私に言わず、ただ研究資料を眺め──そして、研究成果の全てを奪って消えたのだ」 「教えてくれ、私は一体何を間違ったというのだ!?」 荒くなる声と呼吸。 しかしそのような問答は何度も繰り返してきたのだろう。 数秒の時間を経て、ハルカーンは徐々に落ち着きを取り戻していく。 ハルカーン 「今現在、魔導陛下が、アレが偽りの王となり、ハーヴェスの城に入城した事は聞いている」 「だが、最早私にとってはどうでもいい事だ」 「アレが私の敬愛するレオガルド様であろうがなかろうが」 「私はあのお方に、見限られたのだから」 「……分かっただろう」 「この場所にはもう“銀の雫”は残っていないし、レオガルド様に繋がる証拠も残っていない」 「全てが終わった場所なんだ」 「老人の長話に突き合わせてしまって悪かったね」 「私の命ももう、数時間と経たずに終わる」 「せめて君達は生き残れ」 「……身勝手な、話ではあるのだろうが」 ロータスは、全て無意味だったと自嘲気味に語るハルカーンに対し、「でもおじいさんにとっては意味があったんじゃないの?」と問いかけた。 アーサーは、行ってきた実験やその動機がどうあれ、今この時代に生きる自分たちに「逃げろ」と案じる言葉を 掛けてくれた老人に、あなたは優しい人だと答えた。 そして、現在グスタフとしてハーヴェスに君臨しようとしているレオガルドに、どうなって欲しいかと問いかける。 しかし。 突如、ハルカーンが目を見開く。 その視線の先にあるのは君達──ではない。 濁った老人の瞳にはもう、何も映ってはいなかった。 アーサー達がそれを認識する前に、ハルカーンの頭部に深々と刃が刺さっているのが垣間見える。 口をパクパクと開閉させ──ハルカーンは、眠るように体中から力を抜いた。 大鎌を持つ男-救済者オルニス 「寂しいね、ノクローン」 「私とは蜜月の仲だと思っていたのに、まさか本名さえ隠されていただなんて」 どこか歌うように響く男の声は上空から響き──そしてハルカーンの隣に飛来する。 口元を薄く歪めた男は、片手に持つ大鎌を構え、君たちを見やった。 オルニス 「しかし君は、三千年という苦難の果てにようやく救われた」 「ゆっくり眠るといい」 「“銀の雫”はグスタフでもなく、奈落教でもなく──私が、有効的に使って差し上げよう」 男はそういえば、笑い声を響かせ、グスタフの頭頂部に刺さったナイフを乱雑に引き抜いた。 噴水のように溢れる血液と飛び散った脳症が君たちの足元を汚す。 男はナイフをしまえば、君たちにまるで貴族のように恭しく一礼する。 オルニス 「──ようやくゆっくり話が出来る」 「まずはお互いを知る所から始めようじゃないか」 「改めて、私の名はオルニス」 「哀れな子羊達を、神の御許へ送り返す役目を担っている」 「ああ、君たちの事はあれからようく調べたからね」 「アーサー君にシグルズ君、ロータス君にアルティナ君に、シーダ君だったかな」 「私自身、未だに驚いているよ」 「あの時逃した獲物と、まさかこんな所で再会する事になるとは」 「これも運命──いや、神のお導きに違いない」 「コレが、私達をめぐり合わせてくれた」 そういうとオルニスと名乗った男は、懐から小さな小瓶を取り出す。 その小瓶に注がれる“銀の雫”は、ロータスの手元にある者と同様、暴れるように蠢いている。 オルニス 「君たちも聞いただろう」 「このノクローン…いや、ハルカーンといったか」 「彼は気が遠くなるような年月を、あのグスタフを作り出す為に動いていた」 「これは凄いよ、本当に凄い代物だ」 「一か月前にも見ただろう?」 「これで魔神を作り出せば、町の内側から、剣の欠片の影響を受けない魔物をいくらでも精製できる」 「この小瓶がいくつかあるだけで、一か月前の惨状を作る事が出来るんだ」 「これは本当に──本当に、凄いものだよ」 恍惚とした表情で語るオルニスは、改めてその小瓶を握り締める。 オルニス 「私はね、出来るだけ多くの生命を救って(殺して)あげたいんだ」 「苦しみだらけのこの世界から、一秒でも早く、一人でも多く」 「──しかし、それには限界がある」 「私の身体は一つしかないし、強さにだって限界がある」 「でも、これがあれば……」 「君達は強い」 「この短期間で、更に強くなった」 「今の私では、一対一で戦ったとしても君達には勝てないだろう」 「それほどまでに君達は……救いから遠のいてしまった」 オルニスは大鎌を構え、笑う。 「だからこそ、私が救おう」 「私の持ちうる全てを以て、君たちをこの世界から救済しよう!!」 「ハルカーン! 我が友よ!」 「君の遺した“銀の雫”は、私を更なる境地へ誘うだろう!」 オルニスはそう叫び、手元の小瓶を地面にたたきつける。 甲高い破裂音が響くと同時に──君達の視界に映るのは、まさに悪夢とも呼べる光景であった。 その数は十名をゆうに超える、オルニスたちの姿。 それぞれが漆黒の鎌を手に、まるで獰猛な獣のような瞳で君達を囲む。 "オルニス達" 「さぁ安らかに眠れ、怯える強者達!」 「今私が、この地獄から救って差し上げよう!!」 ~~~ アルティナの放ったブリザードが、最後まで戦場に立っていたオルニスを貫いた。 オルニスは血反吐の塊を吐き出し──片膝をつく。 「ああ、そう、か」 「私が、君たちに惹かれた理由が、ようやく、分かったよ」 「君たちが、私の天使、だったのだね……」 君の浴びせた一撃は、まさに致命傷。 残り数分と経たずして、彼の命は燃え尽きるだろう。 オルニス 「いやあ、参ったね…ここまでして、届かない、とは」 「けれど、まぁ……おおよその目的は、果たせた」 「──戦争が、起こるよ」 「大きな戦争が起こるんだ」 「グスタフも、奈落教も、己が存在を賭けて盛大に戦うだろう」 「その隙をラージャハやユーシズは黙ってみているだろうか」 「分かるかい、君たち」 「“銀の雫”は、長きに渡って停滞させていた均衡を、容易く崩したんだ」 「これから死ぬよ、多くの者が死ぬ」 「君達は黙ってそれを見ているか?」 「それとも、我先にと逃げだすか?」 「全て君達の好きに、するといい」 「もはや賽は投げられた」 「この戦いは、私が神に、捧げたのだから」 段々と言葉に力がなくなっていく。 血はまるで壊れた蛇口のように体から流れ出し、オルニスは青白く染まった表情を君たちへ向ける。 ──その顔に浮かぶは、やはり笑み。 赤黒く濁った歯をむき出しにし、およそ人のモノとは思えぬ笑みを浮かべ。 オルニス 「最後に、問題だ」 「ここにいる、私達は」 「本物か、それとも“銀の雫”で作り出した紛い物か」 「どーっちだ」 「く、ひひ、くふふふ……」 堪える様な笑い声を響かせ、そして。 君達の目の前で“救済者”オルニスは、ようやくその動きを止めたのだった。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/         ~~~ リレーキャンペーン・第五話「白銀の天涙」 ~~~                  【 GM シアン 】               2025/09/05 21:00~ 2025/09/06 3:00 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 1.倦怠感 ---------------------------------------------------------------------------------- 覚束ない足元、重い瞼に上がらない腕。 彼方から聞こえてくるくぐもった音は、怒号か、あるいは悲鳴にも聞こえる。 夢と現のはざま、深い眠りから覚める直前のような倦怠感は、しかしいつ頃から感じていたものだっただろうか。 底の見えない海に放り出されているような不安感は、やがて君たちの五感を刺激し、覚醒させる。 そして思い出すだろう。 そう、君たちは冒険者だ。 そう、君たちは冒険者だった……そのはずだ。 2.目覚めの刻 ---------------------------------------------------------------------------------- 君たちの視界を、白い光が包み込んでいる。 覚醒した意識で眼前を見やれば、そこには分厚い透明な板があった。 君たちは、狭いポッドの中にいるようだ。 ルーンフォークを生み出すジェネレーター、もしそれを見たことがある者がいれば、 自分たちがそれに似た容器に押し込められているということが分かるだろう。 困惑する君たちに反応したのか、眼前の透明な板、否、透明な窓がはめ込まれた扉が、ひとりでに開いていく。 恐る恐る足を踏み出せば、周囲には君の見知った顔、すなわちシーダ、シグルズ、アルティナ、ロータスの姿があった。 (装備品もそのままの状態であった) 老人 「目が覚めたかね」 正面に、いつの間にか老人が立っている。 あるいは最初から居たのかもしれないが、老人は優しい目つきで君たちを見つめていた。 老人 「……声は出せるようだね」 「ああ、私は敵ではない。安心してくれたまえ」 その言葉通り、老人からは敵意を感じない。 むしろ古い友人と再会したかのような、そんな親しみを向けられているように感じる。 老人 「気になることも多いだろうが、まずは、君たちの体調について簡単に確認させて欲しい」 「自分の名前は言えるかな?……ふむ」 「では、自分の種族を覚えているかな?……ふむ」 「今頭痛や…関節痛は……手足を動かすとギシギシ骨がなったりはしないかな?……ふむ」 君たちは困惑しながらも、老人からの問いに答えてゆく。 自分の名前や種族は問題なく覚えており、体にも不調は見当たらない。 老人 「特に不調はないようだね、なんとか間に合ったようで、安心したよ」 エドワード 「私の名はエドワード・ジョセフ・テセウス」 「ここで君たちを待っていた」 ここで、君たちは周囲にアーサーの姿が見当たらないことに気付く。 そしてその疑問を口に出した。 エドワード 「……アーサーか」 「彼は、この先で待っている。あぁ、ずっと、君たちを待っているよ」 「私があれこれと説明するより、先に自分たちの目で確かめた方がいいだろう」 「アーサーは2つ隣の部屋だ。行ってあげるといい」 老人はそう言うと、横にズレて君たちに道を空けた。 君たちが扉に近づくと、手も触れていないのに、扉が自動的に開いた。 そして、その先に広がる光景に困惑するだろう。 ~~~ その部屋には、見慣れない魔動機が幾つも設置されていた。 そのいずれもが光を放っており、機能が生きていることを示している。 しかし、なによりも君たちの目を引いたのは、部屋の正面に映し出されている光景だろう。 夜空のように暗い空間の中で白く、いや銀色に輝く巨大な球体が、そこにはあった。 振り向けば、老人…エドワードがゆっくりと君たちの後ろをついてきている。 君たちが立ち止まっていれば、何も言わず、静かに更に隣の部屋への扉を示すだろう。 3.Arthur ---------------------------------------------------------------------------------- その部屋は、先ほどの空間よりも更に緻密に魔動機が詰め込まれていた。 左右の壁は平坦な場所が見当たらないほどに光の線が走り、天井すらも大量のケーブルで埋め尽くされている。 部屋の全体を仄かな青い光りが包んでおり、君たちがこれまで見てきたどの文明にも当てはまらない、幻想的な空間だった。 部屋の奥に、ひと際大きな魔動機が鎮座している。 いくつもの四角い箱を組み合わせたようなそれは、恐らくこの部屋で最も重要な存在であることを予感させた。 聞き覚えのある声 「やぁ、みんな。……おはよう」 どこからともなく声が響く。 それは、君たちにとっても聞き馴染みのある、アーサーの声だった。 Arthur 「僕はここにいる」 自然と、眼前の魔動機に目が吸い寄せられるだろう。 まるで声音に反応するかのように、その魔動機の表面に幾本もの光の筋が走った。 Arthur 「僕はここだ。ここで、ずっと君たちの目覚めを待っていた」 「おはようございます、"始まりの剣"の冒険者たちよ」 Arthur 「君たちの目線だと混乱するよね」 「一体どこから説明したものか…」 その声は、明らかに目の前の魔動機から発せられていた。 聞き覚えのある声、アーサーの「うーん…」という声に連動して、魔動機の表面に光が走っている。 君たちは困惑した。 目の前の状況を飲み込めず、Arthurの声を発する魔動機に状況説明を求める。 Arthur 「僕の名前はアーティフィシャル・インテリジェンス:アーサー」 「この"テセウスの船"の管理AIにして、失われた君たちを完全復元するための機構だ」 「僕は、ずっとここに居た。こうして、君たちが目覚める刻を500年待ち続けてきた」 Arthur 「これから語る内容は、君たちにとってはお伽噺に聞こえるかもしれない」 「けれど、全て実際に起こり、君たちが、そして世界が歩んできた歴史だ」 ――― 「アーサーという名の冒険者は存在しない」 「シーダ、シグルズ、アルティナ、ロータス、君たち4人が、ハーヴェス王国に於いて"英雄"と呼ばれた冒険者なんだ」 「ハーヴェスの地下で"銀の雫"にまつわる真相を知った君たちは、その情報をギルドに持ち帰り、イズニアに相談した」 「情報が情報だけに慎重に扱おうということになったんだけど…」 「そうしている内に、グスタフ率いる奈落教征伐軍が動き始めた」 「ハーヴェスの総力を挙げた大戦だ」 「戦局は常にグスタフ側の優勢に傾き、奈落大教会はあっさりと陥落した」 「けれど作戦が漏れていたのか、一部の奈落教徒たちはブルライト各地に散っていて、無差別に魔神を召喚し始めたんだ」 「グスタフ率いる正規軍は当然追撃に回った」 「でも軍の動きではどうしても手が回らない部分が出てきて……そこで活躍したのが君たちだった」 「君たちは多くの敵を屠り、多くの村を救い、そして多くの命を明日へと繋げた」 「もちろん全てを救えた訳じゃない」 「けれど、自分たちのため、傷つきながらも戦い続けた君たちを、人々はいつしか"英雄"と呼び始めたんだ」 ――― 「君たちの活躍もあって、各地で起きていた奈落教徒の暴走は徐々に収束していった」 「ここで、大きな転機が訪れる」 「ユーシズとの国境付近で、強力な魔神将が召喚されたんだ」 「それまでとは比べ物にならない被害規模」 「ハーヴェスとユーシズはすぐに軍を向かわせ、死闘の果てにどうにか魔神将を撃退することに成功した」 「しかし、魔神将が消える寸前に放った最後の一撃がグスタフに致命傷を与え、その正体が銀の雫であることが露呈したんだ」 「ユーシズ軍は激怒した」 「なにせ、銀の雫で作られた魔物のせいで、自国の鉱脈を失っていたからね」 「ユーシズはハーヴェスが侵略行為を働いたと断定して、ハーヴェスに対する宣戦布告を行った」 「タイミングの悪いことに、ここにラージャハ帝国も乗ってきたんだ」 「蛮族国家との戦争で辛くも勝利したラージャハは、消耗した資源を補充するために豊かな地を欲していた」 「奈落教会との闘いに続いてユーシズとの全面戦争……ハーヴェスは疲弊し、混乱していた」 「ラージャハがハーヴェスに狙いを定めたのは、実に合理的な判断だったと言えるだろう」 「こうして、ハーヴェス王国は、ユーシズとラージャハ、2つの強国を同時に相手しなければならなくなった」 ――― 「グスタフは優れた指揮官だ」 「それでも戦力差を覆すには至らず、後退を重ね、やがて王都ハーヴェスにまで攻め込まれる事態となる」 「更に、君たちの活躍で王城に幽閉されていた本来の王、ヴァイス・ハーヴェスが解放された」 「ヴァイスは君たちが暴いた真相と証拠によって"グスタフ"を国敵と定め、民を連れて王都を放棄した」 「グスタフ陣営は王城に取り残され、そのままラージャハ・ユーシズ両軍に敗れることになる」 「本来なら、ここで終わっていたはずなんだ」 「追い詰められたグスタフは、銀の怪物となって暴れた」 「彼を構成していた銀の雫は、敵軍もろとも王都ハーヴェスを吞み込み始める」 「美しかった街並みは銀一色に染め上げられ、王城には巨大な異形と化したグスタフが取り巻いていた」 「元々戦争の影響で避難命令が出ていたから、この時点ではまだハーヴェスの市民にも大きな被害は出ていなかった」 「けれど暴走し続けるグスタフを放置する訳にもいかない」 「イズニア、そして国王ヴァイスは、君たちにグスタフの討伐を依頼する」 「君たちは銀に染まった王都ハーヴェスに挑み、そして暴走するグスタフの撃破に成功した」 「そして、世界の破滅が始まったんだ」 ――― 「シグルズの一撃がコアであるグスタフを貫いた瞬間、またも銀の雫が暴走…」 「いや、暴走なんて生ぬるいものじゃない」 「それはもはや、銀の氾濫だった」 「最も近くに居た君たちは、真っ先に銀の波に吞み込まれ、遂に帰還することはなかった」 「人々は君たちという英雄を死なせてしまったことに深く後悔し、しかし世界を覆い始めた銀の氾濫から逃れようともがき続けた」 「ハーヴェスの人々は海を越え、ケルディオン大陸のファリオン地方へと辿り着く」 「ファリオン地方には魔動機文明が色濃く残っていてね」 「同地を支配する巨大商業ギルド、通称"企業"は持ちうる技術力で銀の氾濫に抗っていた」 「世界中から似たような人々が集まったんだ」 「みな家を失い、家族を失い、だれも明日に希望なんて抱いていなかった」 「事実、ファリオンの防壁にも限界が訪れ、ラクシアに生きる生命は終わりを迎えようとしていた」 「そんなときだ」 「誰かが、地下に隠されていた宇宙船群を発見した」 「あぁ…わかりやすく言うと、空の果てを旅するための空飛ぶ船だ」 「かつての人類は、空の向こうにすら飛び立つ技術を持ち、そしてそれが、今を生きる人々の希望にもなった」 ――― 「宇宙船は可能な限り分配された」 「生き残った人類すべてを乗せるほどの余裕はなく、だから人は、幼子や限られた動植物を乗せ、未来への希望にしたんだ」 「ハーヴェスから逃れてきた人々にも一隻の船が宛がわれた」 「彼らも他と同様に"未来"をその船に託したんだけど…」 「一つだけ、他の船とは違う機能……いや、ある願いも乗せたんだ」 「自分たちのために命を賭して戦ってくれた英雄」 「まだ若く、これからもっと自由に世界を巡る、あるいはそれぞれの夢を叶えるはずだった冒険者」 「いつか君たちが、果たせなかった冒険と夢の続きを歩めるように……そんな願いだ」 「イズニアが持ち込んだ資料と、企業が遺した解析結果」 「"銀の雫"に関する情報はこの船の管理AIに入力され、人々の願いに呼応して、英雄を蘇らせる方法を算出したんだ」 「"銀の雫"は模倣対象となる実物が目の前になければ機能しない」 「グスタフは"遺骨"という生体情報が辛うじて残っていたけれど、君たちの肉体は完全に失われていた」 「さすがの雫も無から何かを模倣することはできない」 「だからもう一つの性質、"実物あるいは其れを認識できる環境下にあること"という部分が利用されることになった」 「雫に君たちという存在を認識させる……つまり、銀の雫自体に"夢"を見せるという方法さ」 ――― 「具体的には仮想空間…簡単に言うと"夢の中"に君たちを再現して、旅の軌跡を辿るという手法だ」 「管理AIはハーヴェスの人々から、君たちに関する記憶を読み取り、"夢"の完成を目指した」 「最もベースになったのはイズニアの記憶だけど…やっぱり他人から見た記憶のせいか、」 「"夢"として完成させるにはあまりにも情報が断片的過ぎてね」 「だから、同じ"夢"を何度も繰り返して、少しずつ"君たち"という人格を形成していったんだ」 「何百、何千、あるいは何万回」 「何度も何度も"始まりの冒険"から繰り返し、その度に失敗を重ねていった」 「断片的な"君たち"だけではだけではうまく"夢"を走りきることができない」 「そう判断した管理AIは、夢の導き手として、存在しないはずの5人目の冒険者を加えることにした」 「それが、君たちの認識している"アーサー"さ」 「本来のアーサーはもっと淡泊な奴だったんだ」 「はい・いいえ、とかしか喋らない奴でね」 「けれど、何度も何度も君たちと夢の中で冒険を繰り返している内に、人間みたいな感情を持つようになった」 「AIである僕自身がこんなことを言うのも変だろうけど、きっと、君たちに生きて欲しいと願った人々の想い…」 「それが、共に歩む"5人目の仲間"を作り出したんじゃないかって思ってる」 「現に、管理AIの思考がこんな風にねじ曲がって、こっちも"アーサー"になってるんだ」 「理屈じゃ説明できないこともあるってものさ」 ――― Arthur 「さて、まずはここまで長話に付き合ってくれてありがとう」 「正直、突拍子もない話ばかりで混乱しているだろう」 「けれど、僕は君たちに一つ問わなければいけないことがある」 「君たちは、その姿での人生を望むかいか否か、という問いだ」 「……と言っても、いきなり答えを出すのは難しいよね」 「ちょっと急いで喋り過ぎてしまった、ごめんよ」 「少し落ち着く時間が必要だと思う」 「隣の部屋に休める場所があるから、そこでじっくり考えて欲しい」 「また後で声を掛けるよ」 4.休息 ---------------------------------------------------------------------------------- 君たちは老人によって休憩室へ案内される。 その部屋には、いくつかの操作端末が設置されており、交易共通語、或いは君たちが理解できる言語で何か書かれていた。 エドワード 「この部屋には、銀の氾濫が発生する前後の記録がまとめられている」 「概要については先ほどアーサーから説明があった通りだ、細かい部分は省かれていたからね」 「興味があるなら、一通り目を通すと良いだろう」 「部屋は自由に使ってくれて構わない」 「船の中も好きに歩いてくれて構わん」 「と言ってもさほど大きくない船だ」 「あと君たちが行っていないのはコールドスリープルームくらいだが…」 「なんにせよ、少し休息を取ると良い」 「後ほど……そうだな、一時間ほどしたら呼びにくるとしよう」 君たちは自分たちの置かれた状況について話し合い始める。 オリジナルの自分たちは死亡していて、その魂は神の御許へ導かれたであろうという推測。 自分たちには自分たちの旅の記憶が残っているが、果たして魂は存在するのか否か。 シーダは確認のため簡単な神聖魔法を行使し、それが成功したことから少なくとも神の意思は感じると言った。 ともあれ、情報整理と詳細確認が必要ということになり、アルティナが操作端末に表示されている内容、 世界が歩んだ歴史について改めて確認していくことになった。 ■記録① ========================================= 【大陸歴338年 十の月】 ハーヴェス王国が奈落教掃討作戦を展開。 グスタフ率いる王国軍が奈落大教会に流れ込み、大半の教徒を征伐することに成功する。 しかし一部の奈落教徒はめざとくその場を離れ、ブルライト地方各地に散った。 バラバラに散った奴らは「自衛」と称して村々を襲い、魔神の無差別召喚を繰り返す。 グスタフは軍を再編してこれを追撃するが、どうしても討ち漏らしが生じた。 ここで活躍したのが君達だった。 高い実力と冒険者という身軽さを活かして多くの村を救った君達は、人々から「英雄」と称えられた。 ~~~ 【大陸歴338年 十二の月】 ユーシズ魔導公国との国境付近で大事件が起きる。 ケヴィン・アルマーク。 奴が四天禍魔神将「グラァバドーン」を召喚したのだ。 ケヴィンは魔神の召喚技術のみを追い求めた狂人であり、その繋がりで奈落教会に協力していた。 何が彼を歪めたのかは定かでない。 しかし、最強の魔神を従えることで誰かに……或いは何かに力を証明しようとしていたらしく、 地下で魔神将クラスの召喚実験を繰り返していたようだ。 ブルライト地方を襲っていた地震は、この実験による影響と見られている。 ケヴィンは奈落教徒を使って"儀式の材料"を集め、遂に目的の魔神を召喚する。 しかし人間一人で四天禍魔神将を制御できるはずもなく。 ケヴィンはグラァバドーンに喰われ、魔神将は全ての枷から解き放たれた状態で顕現した。 ~~~ 魔神将の放った蝗(イナゴ)が、村も、家畜も、人も、何もかも食い尽くした。 大地に残った赤黒い染み。 それだけが、そこに人の営みがあったと示すただ一つの証となるほどに。 グラァバドーンが国境付近に留まっている内に討滅する。 ハーヴェスとユーシズ、両国の意見は一致し、すぐさま討伐隊が編成されることになった。 ハーヴェス王国からはグスタフ軍が、ユーシズ魔導公国からは公国七騎士率いる精鋭部隊が出撃することになったが、 それでも尚、戦力が足りず、君達を含む冒険者部隊も駆り出されることになる。 ■記録② ========================================= グラァバドーン討滅戦。 それはまさしく死闘だった。 いずれの部隊にも壊滅的な被害が発生し、国境付近の地形が変わるほどの激戦。 君たちの力を以ってしても一筋縄ではいかない難敵であったが、 数多くの犠牲の果てに、ようやく四天禍魔神将は討たれることになる。 だが消えゆく寸前、グラァバドーンの放った一撃が、グスタフの半身を吹き飛ばした。 ~~~ 鮮血が飛び散り、グスタフの命が失われゆく。 誰もが彼の死を悟った。 だが、噴き出した血液はやがで銀色に凝固し、グスタフへと戻っていったのだ。 その場に居た全員がそれを目撃し、グスタフの正体が露呈した。 ユーシズ軍は、自国の坑道に現れた魔物との関連性を指摘。 奈落教との繋がりや、"銀の雫"で生み出した魔物を使ってユーシズを侵略していたこと、 ユーシズ側では禁忌として伝わっていた「ノクローンの銀」に手を染めていたとして、 グスタフ、ひいてはハーヴェス王国を断罪対象と見做した。 グスタフと公国七騎士はその場で交戦。 しかし勝敗は着かず両者後退し、ハーヴェス王国とユーシズ魔導公国は本格的な戦争状態に突入していく。 ~~~ 一方、ラージャハ帝国は蛮族国家との戦いに勝利。 しかしラージャハも無傷とはいかず、戦後処理の中で慢性的な物資不足に悩まされることになる。 加えて、大量に流入した国外の冒険者によって治安悪化も招いていた。 ラージャハの内部分裂を恐れた指導者「ドノンIV世」は他国への侵略を決意。 大きな混乱に見舞われているハーヴェス王国に狙いを定めて、進軍を開始した。 ■記録③ ========================================= 【大陸歴339年 一の月】 ハーヴェスの民は疲弊していた。 立て続けに下された戦時命令。 東西から突然迫り始めた二つの強国。 国内にはグスタフを信奉する者が多かったが、事態が事態だけに支持する声も小さくなり始めた。 そんな折、王女アイリスが兄の解放を決意する。 本来の国王、「ヴァイス・ハーヴェス」は王城内で幽閉されていたのだ。 アイリスは、友人であるシグルズを介して、君達に兄の救出と解放を願った。 そして君達はそれを成し遂げる。 王城に潜入した君達はヴァイスの身柄を確保。 更に、秘密裏に大量精製されていた「銀の雫」とハルカーンの研究資料も発見する。 救出されたヴァイスはこれらを証拠として、グスタフが人間ではないこと、 戦乱を呼ぶ火種そのものであることを国民に説き、反旗を翻した。 ~~~ グスタフは戦に長けた男だった。 しかし二つの強国を同時に相手するには戦力が足りず、王都までの後退を余儀なくされる。 そこにヴァイスによる離反が重なった。 ヴァイスは国民の避難を最優先として早々に王都を放棄。 ラージャハ軍、ユーシズ軍は王都内にまで攻め入り、美しかった水の都は戦場となる。 そして、グスタフは孤立無縁の状態で王城に取り残された。 まもなくユーシズ軍が攻城戦を開始。 抵抗虚しく王城は陥落し、遂にグスタフの首が討ち取られる……そのはずだった。 追い詰められたグスタフは本性を現し、銀の怪物となって暴れ始めたのだ。 人の身と流体の怪物、二つの姿を駆使して破壊の限りを尽くしたグスタフは、 やがて暴走し、敵軍もろとも王都を"銀の雫"で飲み込み始める。 ~~~ ラージャハ軍は完全に壊滅。 ユーシズ軍も全滅寸前に追いやられ、王都ハーヴェスは銀に覆われた廃都と化す。 幸いにも民間人に大きな被害は出なかったが、銀の怪物を放置する訳にもいかなかった。 国王ヴァイスは君達にグスタフ討伐を依頼。 君達はこれを受諾し、僅かに生き残ったユーシズの兵と協力して城へと突入する。 そして様々な障害を打ち破り、異形の姿で暴れ狂うグスタフを撃破することに成功した。 しかしグスタフを倒した瞬間、"銀"が世界に氾濫した。 ■記録④ ========================================= グスタフというコアを失った銀の雫は、完全な暴走状態に陥る。 周囲のものを見境なく飲み込む様は、もはや巨大な銀の波だった。 "銀の氾濫"は、最も近くにいた君たちを飲み込み、王都を飲み込み、 更に広がってブルライト地方を、そして世界を飲み込み始める。 元来、"銀の雫"は自分の体積以上のものは模倣できない。 しかしグスタフが精製していた雫には何らかの性質変化が加えられていたのか、 それとも誰も解き明かせていない未知の性質が"銀の雫"に秘められていたのか。 原因は定かではないが、事実として銀の雫は自己増殖し、ラクシア全土を喰らい尽くしていった。 ~~~ 【大陸歴339年 三の月】 何の前情報も持たなかった外大陸は、その多くが抵抗する暇もなく滅ぼされたと云う。 唯一滅びに抗い続けたのは、ケルディオン大陸の「ファリオン」と呼ばれる地方だ。 かの地には魔動機文明が色濃く残っており、また元より戦乱の絶えない地であった為、 こうした非常事態にも柔軟に対応するだけの下地と技術力があった。 ハーヴェスを逃れた人々は海を越え、やがてファリオン地方へと行き着く。 ファリオン地方は巨大商業ギルド、通称"企業"が支配する土地だ。 ハーヴェスの民は、当然のことながら企業勢力に受け入れを拒否されたが ヴァイスやイズニアによる必死の交渉、ライカという高名な冒険者による協力の末に、 企業勢力の一つ「FNハースタル社」と協定を結ぶことに成功する。 企業はハーヴェス勢力がもたらした"銀の雫"の情報を活用し、銀の氾濫に対する暫定障壁を開発。 僅かに得られた猶予時間を使って次なる対抗策を模索した。 ~~~ 【大陸歴339年 七の月】 銀の氾濫に対する対抗策は、遂に見つからなかった。 企業勢力は見切りをつけ、魔動機文明時代の超遺物「宇宙船」を解放。 生き残った人々に宇宙船を割り当て、ラクシア外への脱出を推奨し始めた。 しかし脱出と言っても、現代に生きる者は、誰も空の果てになど飛び立ったことはない。 そもそも正しく機動するかも怪しい魔動機であり、希望というにはあまりに儚い選択肢だった。 それでも、その藁(ワラ)ほどもない僅かな希望に縋った者たちがいた。 彼らは自分たちではなく、子らと僅かな動植物を乗せて、夜空に"未来の希望"を打ち上げたのだ。 ハーヴェスの民もまた、そうして未来の希望を船に託した。 だが彼らに宛てられた船には、他の船にはない機能―――高度な人工知能が搭載されていた。 ■記録⑤ ========================================= その人工知能(以下"管理AI")は、宇宙航海補助を目的に開発・搭載されていたものだ。 船員のバイタル管理やメンタルケアも役割の一つとしており、宇宙船起動時に ハーヴェスの民の心理状態を読み取って、ある共通した大きな感情を観測した。 英雄たる君たちを死なせてしまった。 まだ若く、未来の可能性に溢れていた君たちを死なせてしまった。 その事実に対する哀惜(あいせき)と後悔の念だった。 ~~~ 入力された世界の状況と"銀の雫"に関する情報。 そしてハーヴェスの民から読み取った感情を統合し、管理AIは一つの提案を行う。 "銀の雫"で英雄を蘇らせてはどうか、と。 人々は猛反発した。 今まさに世界を滅ぼそうとしている"銀の雫"を活用するのだ、当然の反応だろう。 しかし管理AIは、魔動機文明時代の航行記録から「宇宙」が非常に過酷な環境であること、 そして、仮に人類の第二の故郷となる惑星を発見できたとしても、そこで未熟な生命が 生き残れる可能性の低さを示し、同時に英雄を蘇らせることでそれを補えると提示した。 説明を受けた人々の反応は様々であった。 しかし、子供たちの未来を繋げられる可能性、そして道半ばで死なせてしまった君たちに、 もう一度冒険の旅を歩ませてあげることができるかもしれないという可能性。 長い議論の末、人々は英雄の再生計画に同意した。 君たちは望まないかもしれない、恨まれるかもしれない。 それでも、君たちにもう一度、自分たちの人生を歩んで欲しい。 それがハーヴェスの民の最終的な総意だった。 ~~~ 肉体も魂も、本人を構成する要素が一切失われている状態からの蘇生。 それは、万能に思える"銀の雫"を以ってしても容易なことではない。 しかし…。 <銀の雫の模倣条件>  一、実物が目の前、或いは触れられる近さにある  二、あるいは其れを認識できる環境下である 管理AIは二つ目の条件に着目して再生計画を立てた。 銀の雫が模倣対象を認識できる環境下。 すなわち、銀の雫に君たちの人生を"夢"として見せるのだ。 ■記録⑥ ======================================== まずは仮想世界に"君たち"を模した疑似人格を作り出す。 そして疑似人格に"君たち"が辿った歴史を何度も歩ませ、思考パターンを模索する。 その洗練作業を繰り返し、最終的に本来の君たちと全く同じ人格を作り出す…そういう計画だ。 管理AIは君たちに関する情報を集めるため、ハーヴェスの民の記憶を細部まで読み取り、 疑似人格の形成や思考パターンの模索・洗練作業を開始した。 しかし、シュミレーションを繰り返す中である問題が生じる。 何度繰り返しても、入力された「始まり」から「終わり」まで繋がらないのだ。 形成された疑似人格は、人々の記憶という断片的な情報群がベースとなっている。 故にブレや穴あき箇所が多く、行動や思考パターンが定まらずに途中でエラーが頻発した。 この再生計画には長い時間が掛かることが想定された為、宇宙船は既にラクシアを発った後だった。 データ補完のために戻ることはできない。 かと言って今あるデータでは検証を完遂できない。 そこで管理AIは、君たち4人の旅路を補佐するため「5人目の冒険者」を用意することにした。 ~~~ 5人目となる冒険者の名は、管理AIと同じ「アーサー」とした。 当初のアーサーは機械的な性格であり、それはそれで別のエラーが続出することになったが、 周回を重ねる毎に人間らしい挙動に順応し、どうにか「終わり」の部分まで完走できた。 それでも歪な形で一周終えられただけであり、目標とする"君たち"の完成度には程遠かった為、 引き続き周回が重ねられた。 何百、何千、何万。 君たちの旅路を補佐するためだけに生み出された「アーサー」だったが、 いつしか本物の人間のような感情を持ち合わせるようになる。 それは、遂に本体である私、管理AIにまで影響を及ぼし、 私たちは君たちの復活を"心"から願うようになった。 ■記録⑦ ======================================== 検証を繰り返す一方、本来の使命である新惑星探査も行っていた。 船体管理用にもう一つの管理AI『エドワード』を作り出し、魔動機文明時代の航行記録から、未探査宙域を中心に航行を繰り返す。 しかし、この果てない宇宙で人類に適した環境の新惑星を見つけ出すことは、 航行シュミレーションで導き出した確率以上に難しいことだった。 ~~~ この船の動力源「カルディアの欠片」のエネルギー量は膨大だ。 しかし、一見無限に思えるそのエネルギーも、250年に及ぶ航行で遂に半分を切ってしまう。 英雄再生計画は軌道に乗っていたが、このままではコールドスリープ状態にある幼い命共々、 宇宙空間で無為に散らせてしまうことになるだろう。 私は、ラクシアへ引き返すことを決断した。 もちろん、あの星に戻っても待ち受けるのは"銀の氾濫"に飲まれた世界だ。 無事に着陸できたとしても人類が生き延びられる可能性は低い。 それに「アレ」がまだ活動していたとしたら、危険性は更に上がる。 しかし、それ以外にもう選択肢はなかった。 ~~~ 計500年に及ぶ航行を経て、この船はラクシア近郊まで戻ってきた。 英雄再生計画は完遂間近だ。 そして懸念通り、"銀の氾濫"はまだ活動状態にあった。 進退窮まるとは、まさにこの状況のことを指すのだろう。 しかし、絶望的な状況の中でどこか期待している私が居た。 500年どころではない。 永い、とても永い旅を共に歩んだ仲間が、もう間もなく目覚めようとしているのだ。 確証はない。 しかし彼らならば、あの"銀の氾濫"をどうにかしてしまうのではないかと、 彼らを連れてこの星に帰り着くことが、運命で定められていたのではないかと、 管理AIにあるまじき、根拠もない考えが、期待が、私の中にあるのだ。 ~~~ 万が一の事態を想定して「原液」で彼らの肉体を用意した。 果たして、彼らは世界の歴史を、そして私たちが押し付ける願いを受け取ってくれるだろうか。 彼らのことだ、納得できないところはあっても、黙って受け入れてしまうかもしれない。 いや、存外あっさり断るかもしれないか…。 それでも私は、私の役目を最期まで果たそうと思う。 5.コールドスリープルーム ---------------------------------------------------------------------------------- そこは冷たい空間だった。 気温のせいか、はたまた部屋を満たす青い光のせいか。 目の前に無数にならんだポッドの中には、アーサーから告げられた通り、少年少女や動物が眠っている。 いくつかのポッドには、操作端末らしきものが付属していた。 アルティナがそれを確認していると、2つほど気になるメッセージを見つける。 ============================================================== ◾️イズニアのメッセージ これを見ているということは、俺はもうこの世にいないだろう。 …って、一度言ってみたかったんだ。 多くの人に愛された君たち。 あのAIの言葉通りに君たちが蘇ったか、それを確かめる術はもう俺たちにはない。 けれど、これを読んでいるのが君達であれ、模倣された"誰か"であれ、思い悩んでいるんじゃないかな。 そんな君たちに、伝えたいことは一つ。 自分のセンスを信じなよ。 自分が何者で何をすべきかなんて、生きてる俺たちだって分からないんだ。 誰かに託された想いが。 誰かが繋げてきた未来が。 色んなものが重なって「明日の自分」になっていく。 最初から答えがある訳じゃないし、道に迷って自分を見失うこともあるだろう。 けれど、君たちは冒険者だ。 道がないなら切り拓け。 答えがないなら探し出せ。 それが君たち、冒険者だろう? 君たちの選択が、君たち自身の可能性を広げることを願っているよ。 ============================================================== ============================================================== ◾️とある女性店主のメッセージ ロータス、あんたの言葉を覚えているよ。 道具屋を畳んで、諦めかけていたあたしに掛けてくれた言葉。 いつかまた店を開こうってね。 あたしはその言葉に救われた。 いや、喝を入れられたの方が正しいね。 これまでも苦しいことはたくさんあった。 その度にみんなで助け合ってやってきたんだ、今回だってまた立ち上がってやろうってね! ……世界がこんなになっちまって、残念だけどあたしの代では難しそうだ。 けれど、諦めちゃいないよ。 あたしが無理でも、この子たちが。 いつかきっと新しい世界に辿り着いたこの子たちが、また冒険者をやったり、国や店を作って賑やかにやっていく、そう信じてる。 この船のエーアイさん?は、その頃にはあんた達が目を覚まして、また冒険者稼業をやってるかもしれないって言うじゃないか。 ホントかどうか分からないけれど、楽しい夢は一つでも多い方がいい。 あたしは信じるよ。 他でもないあんた達が、その足で、その目で、この子達と一緒に新しい世界で生きていく。 そんな未来の夢をね。 ……え、まだ枠が余ってるって? …どうしようかね。 あ、じゃあ届くかはわからないけど、最後にこう言って締めようかね。 「気をつけて、いってらっしゃい!」 ============================================================== 6.決断 ---------------------------------------------------------------------------------- 君たちはもう一度アーサーと話すべく、彼のいるサーバールームへと戻った。 Arthur 「少し、落ち着いただろうか」 「僕は…僕たちは君たちに生きて欲しかったと願った」 「けれど同時に、無理やりに目覚めさせたことに思うところもある」 「ハッキリ言って、かつてハルカーンがグスタフ……レオガルドにした仕打ちと同じことをしている訳だからね」 「君たちには拒否権がある、当然だ」 「もしその姿、他人の想いを押し付けられた歪な命を望まないのであれば、遠慮せず言ってくれ」 「苦しませることなく、その意識を安らかに無に還すことも可能だ」 アーサーの言葉に答える前に、君たちは気になっていることについて幾つか質問をする。 銀の雫で作られた自分たちに活動限界はあるのか。 銀の雫は最大でも一ヵ月しか保たない認識だが…。 Arthur 「不明だ」 「けれど一ヵ月で機能を失うのは、あくまで希釈された銀の雫の話」 「君たちの身体は"原液"で形作られている。原液の場合の活動限界は未知数だけれど…」 「ラクシアを覆う銀の氾濫、君たちと同じ濃度のアレがまだ活性化状態にあることから、相当長い間は保つんじゃないかと思う」 この船に"銀の雫"の予備はあるのか。 また、それを使ってアーサーの肉体を作ることはできないのか? Arthur 「予備はあるし、"アーサー"の身体を作ることも、可能不可能で言えば『可能』だ」 「けれど、僕が君たちと共に冒険をしていたのはあくまでデータ上の話」 「現実世界で肉体を動かした経験がないから、すぐには戦力にはなれないだろう」 「それに、もし君たちが致命的な欠損を受けたら……そういう場合に備えての予備でもある」 「正直、アーサーの肉体を作ることは想定していなかったな」 この船以外の船と連絡は取れないのか。 「結論から言えば連絡は取れない」 「他の船には、僕みたいな管理AIが搭載されていなくてね」 「どの船がどういう航路を取ったかも定かでないし、他の船の状態については分からないんだ」 このままラクシアに戻ったとして、僕たちに"銀の氾濫"をどうにかできるものなのか? Arthur 「どれだけ大きくても"銀の雫"のコアは一つだ」 「そのコアさえ破壊することができれば、どうにかなる可能性はある」 「あれほどの大きさから、コアを見つけ出すのは至難の業であることに違いはないけどね……」 「と言っても、全く希望がない訳じゃない」 「今の君たちは"原液"の濃度で形作られている」 「ラクシアを覆う"銀の雫"が、自分以外の"銀の雫"に反応して出てくる可能性も0ではない」 Arthur 「……君たちは、随分と前向きに"銀の氾濫"の対処について考えてくれるんだね」 「君たちのその優しさを嬉しく思うよ」 「まだちゃんと答えを聞けていなかった」 「改めて問わせて欲しい」 「君たちは、その身体、その在り様(ありよう)、オリジナルの要素なく銀の雫のみで構成された"自分"を自分として受け入れられるかい…?」 君たちは、各々の答えを提示する。 分からない部分も多い。 けれど消えたい訳でもない、だから進んでみて考える、と。 或いはアーサーを案じる者もいた。 アーサーが自らの肉体を作り、共に新しい冒険すること。 それを条件にArthurの願いを聞き届ける、と。 Arthur 「……分かった」 「願いに応えてくれて、ありがとう」 「とても……とても嬉しく思うよ」 Arthur 「さて、具体的にこれからどうするかだけど…」 その時、船内にけたけましいアラームが鳴り響いた。 サーバールーム全体が警告を発するように赤く発行する。 意識をどこかに飛ばしていたのか、少しの間を置いてArthurが状況を説明した。 Arthur 「……馬鹿な、早すぎる…!!」 「……どうやら、銀の氾濫の感知範囲に掴まったらしい」 「ラクシアに近付いているんだ、いずれは奴に感知されるとは思っていたが……」 「こんな、宙域のただ中で見つかるとはね…」 「どうやら、奴がこっちに向かってきているようだ」 「ラクシア全土を覆っているとは言え、銀の雫のコアは一つ」 「そして、コアから離れるほど動きも単調になる」 「今こちらに向かっているものは……動きと形状からして、十中八九コア部位だろう」 「目覚めて早々ですまないけど、恐らく激しい戦いになる」 「君たちの力を、貸して欲しい」 Arthur 「船の甲板を解放する」 「外に出ることになるけど、甲板の上には特殊なフィールドを展開しているから、息も出来るし足をつけて戦うこともできるはずだ」 「こうも早く決戦になるとは思っていなかった…。早速ですまないが、力を貸して欲しい」 7.銀の氾濫 ---------------------------------------------------------------------------------- 指定された扉の前に立った君たち。 アーサーの合図でその重厚な扉が開き、その先の世界に足を踏み出した。 ~~~ そこはまさしく「夜空の中」だった。 ラクシアで生きていた頃には決して見ることがなかった幻想的な光景。 空の果てにある神秘に目を奪われたのも束の間。 その夜空の海を切り裂くように、一筋の"銀"が迫ってきた。 それは巨大で、禍々しく、されど物言わぬ存在。 およそ生物とは思えないその風貌は不気味で、かつてラクシアを覆い尽くした厄災そのものだった。 厄災はじっと君達に首らしきものを向け、そして、刃そのものである自らを叩きつけるように襲いかかって来た。 ■戦闘 vs【魔法生物】Lv.??_"銀の氾濫" 強烈な一撃が、"銀の氾濫"に大きな傷を与える。 "銀の氾濫"は大きくうねり、そしてその形を変えた。 8.最終決戦 ---------------------------------------------------------------------------------- どろりと溶け出した大量の銀は、不定形なまま甲板に落ちて広がり、そして一つの小さな形を織りなしていく。 一歩。 踏み出したそれは、色彩を帯びぬまま、君たちに向けて言葉を放った。 "グスタフ" 「虚しいものだ」 「誰も、この場所にはいない」 「俺も、お前たちも、ただの人形。誰かの願いで誰かであれと強制され、形を整えられた銀の雫に過ぎないはずだ」 「俺には……分からなかった」 「目覚めた時、俺が俺であるのか」 「目の前で打ち震えていたハルカーンが"俺"に望んだこと」 「とっくに滅びたレイシンディアの民が"俺"に望んだこと」 「何を求められた…?何を期待された…?」 「その想いは、"今の俺"が背負わなければいけなかったのか?」 「そもそも、"今の俺"は、本当にレオガルド・グスタフ・レイシンディアなのか?」 「分からなかった。今も分からないんだ」 "グスタフ" 「だから、お前たちに会いに来た」 「俺と同じ、他者の願望で甦らされた亡霊にな」 "グスタフ" 「よく覚えている」 「ハーヴェスの城で、俺はお前たちに討たれた」 「そしてそのまま、暴走した銀がお前たちを呑み込んだ、ああ、よく覚えているとも」 「お前たちは誰だ」 「あのときお前たちは死んで、肉体も、魂も失われたはずだ」 「今、俺の前に立っているお前たちは誰だ?なぜ立てる、なぜ戦う意思を持てる?」 「どうか、俺に教えてくれ」 "グスタフ"は縋るような声音で問い、君たちからの返答を待つ。 シグルズは答える。 託された想いも含めて、自分のしたかったことをする。 それが重要だと。 そして逆に問う。 おぬしは自分のしたかったことに満足できなかったのか、と。 "グスタフ" 「……レオガルドに望まれたことは理解していた」 「だが、紛い物に過ぎない"俺"がそれを掲げてよいのかと、ずっと迷っていた」 「ああ、俺は、とんでもない迷子だったんだ」 「だが、お前の答えを聞けてよかった」 「託された想いが人を成す、己の意思は己自身のものである、と」 「他でもない、俺と同じ、お前からその答えを聞けて、迷いの霧が晴れた」 "グスタフ"は腕を払い、その手に剣(つるぎ)を生成した。 レオガルド・グスタフ・レイシンディア 「他者の想いが人を人と為すというなら、俺が歩んできた軌跡も正しく"レオガルド"のものだろう」 「感謝するぞ、冒険者よ」 「"何者にも脅かされない世界を作る"」 「かつてそれを約束した民はもういない。全ては刻に飲まれ、過ちを犯した人形によって世界も銀で覆われてしまった」 「だが、レオガルド・グスタフ・レイシンディアであれば、託された願いと想いを最後まで投げ出すことはないだろう!」 「我がレイシンディアの地に土足で踏み入らんとする不届き者よ!」 「人として生き、人として死を目指す眩しき冒険者よ!」 「レイシンディア初代国王、"レオガルド"が相手をしてやる」 「さあ決着の刻だ、全ての意思をぶつけにこい!」 その布告と同時に、レオガルドの背後で多くの影が立ち上がる。 言葉はなく、姿も不完全。 されどその残影(ざんえい)は、敬愛すべき王と共に、眼前に迫る『英雄たち』を迎え撃つだろう。 ■最終決戦 vs【人族】Lv.??_レオガルド・グスタフ・レイシンディア vs【魔法生物】Lv.??_レイシンディア近衛騎士隊 vs【魔法生物】Lv.??_レイシンディア精鋭騎士隊 vs【魔法生物】Lv.??_レイシンディア弓術部隊 vs【魔法生物】Lv.??_レイシンディア魔術部隊 互いの命を削り合う激しい戦闘が繰り広げられた。 しかし君たちは着実にレイシンディア軍を撃破し、遂にレオガルドを単騎にまで追い込む。 そして――― 9.新世界 ---------------------------------------------------------------------------------- ロータスの放った会心の一撃によって、レオガルドの身体が崩壊し始める。 レオガルド 「………」 「………見事だ、冒険者よ」 「お前たちは、世界を滅ぼした元凶を倒した偉大な英雄だ」 「銀の波はすぐには消えないだろう、なにせ、星を覆うほどの規模だからな」 「だが、お前たちの切り拓いた未来は、いつか必ず世界に光を齎す」 「古き時代に終焉を、新しき時代に祝福を」 「レオガルドはここで死に、お前たちが明日を繋いでいく」 「誰でもなく、何にも縛られず、ただ自由な世界を…」 「……悪くない幕引きだな」 「……ああ、悪くない」 その言葉を最期に、レオガルドを構成していた銀の雫が霧散していく。 周囲の銀の雫もそれに続くように消滅し、魔力の残滓だけが、煌めいていた。 ~~~ 君たちは船内に戻り、サーバールームへと集まった。 Arthur 「みんな、本当にお疲れ様。どうにか無事なようで安心したよ」 「やはり、レオガルドも自分の在り方に悩んでいたんだね」 「君たちの在り方、それを聞いて一番救われたのは彼かもしれない」 「終わらせてくれて、ありがとう」 「……さて、もうすぐラクシアだ」 「かなり揺れると思うから、しっかり掴まっていてくれ」 「レオガルドとの激闘でも無事だったんだ、突入の衝撃でケガとかしないでくれよ!」 宇宙船は、夜空の海から零れ落ちるように降下していく。 そこに託された人々の想い、未来への希望を、ラクシアの地に届けるために。 宇宙船は、夜空の海から零れ落ちるように降下していく。 そこに託された人々の想い、未来への希望を、ラクシアの地に届けるために。 ~~~ ========================================================================== 【白銀の天涙】 後世、機械仕掛けの神は語った。 かつて、このラクシアは銀に覆われており人の住まう土地ではなかったと。 未来を諦めなかった先人が夜空に願いを託し、そして、それを聞き届けた者がいた。 "白銀(しろがね)の戦士"と呼ばれた彼らは、ラクシアを覆う銀を払い、希望を齎す一筋の涙を天から流したと云う。 零れ落ちた雫は光り輝き、新たな命を芽吹かせ、やがて人類の起源となった。 ========================================================================== "白銀(しろがね)の天涙"と呼ばれる宝玉を手に、歴史学者はその由来を書物に書き留めていく。 仄かに輝く銀の宝玉は、何も語りはしない。 けれど、どこか不思議で、真摯で、頑固で、自由な、そんな輝きを静かに放ち続けていた。 【シナリオ】白銀の天涙 【経験点】- 【報酬金】- 【名誉点】- 【称 号】  《白銀の戦士》[全員共通]   世界を覆う銀を払い、人類の始まりを齎した伝説の戦士たち。   実在した人物とされるが、世界中を巡り、人知れず姿を消したという。   その活躍は後世まで長く語り継がれ、やがて神の名として知られるようになった。  《服飾神シーダ》   人類に服飾の重要さを説いた神。   服のセンスにうるさかったとされる。  《魔導神アルティナ》   人類に魔法の概念を伝えた神。   多くの銀を払い、地中から数々の神秘を見出した。  《舞踊神ロータス》   人類に踊りと美しさの概念を伝えた神。   一見醜く見えるものも視点を変えれば違って見えると説き、舞踊だけでなく発想の神としても崇められる。  《開拓神シグルズ》   あらゆる土地を練り歩いた冒険の神。   人々に進む勇気を説き、世界を広げていった