タイトル:バプテスマ=サン キャラクター名: 年齢: 性別: 髪の色: / 瞳の色: / 肌の色: 身長: 体重: キャラクターレベル:8 Lv メインクラス :ウォーリア サポートクラス:ニンジャ (1レベル時:ニンジャ) 称号クラス: 種族:ヒューリン ■ライフパス■ 出自:一般人/ベアアップを取得 境遇:天涯孤独/故郷は既に滅ぼされた。奴らの手によって。 目的:復讐/ハイクを詠め。カイシャクしてやる。 ■能力値■ HP:83 MP:63 フェイト:10     筋力 器用 敏捷 知力 感知 精神 幸運 種族    9   9   8   8   8   8   9 作成時   1   2   2   0   0   0   0 →合計 5点/5点 特徴 成長等   1   4   5      6   4   1 →合計 21点/LvUp分21点 =基本値= 11  15  15   8  14  12  10 ボーナス   3   5   5   2   4   4   3 メインクラス   1   1   1   0   0   0   0 サポートクラス  0   1   1   1   0   0   0 他修正 =合計=   4   7   7   3   4   4   3 ■戦闘■ [キャラシート版]      能力 装備右/左 スキル  他  合計右/左(ダイス数) 命中判定   7   0/  0        7/  (2D) 攻撃力  --  14/ 14        14/  (2D) 回避判定   7    0          7   (2D) 物理防御 --    2          2 魔法防御   4    0          4 行動値   11   -2          9 移動力    9    0          9m ■戦闘■ [全項目版]    物理 魔法     命中 攻撃 回避 防御 防御 行動 移動 射程 種別  Lv  冊子 右手    0  14   0   0   0  -2   0 至近  槍   6 左手 腕 頭部             2             防具   1 胴部 補助 装身 =小計=右  0  14   0   2   0  -2   0    左 能力値   7 --   7 --   4  11   9 スキル その他 =合計=右  7  14   7   2   4   9   9    左 ダイス  2D  2D  2D ■装備■    価格  重量 名称 [クラス制限] 備考 右手 1500  13  ミスリルスピア [] 左手         [] 腕          [] =合計=1500 13 / 重量上限16 頭部 1400 1 メディテーションマスク [] メジャーアクション。装備者の【MP】を[2D]点回復する。1シナリオに1回使用可能。 胴部      [] 補助      [] 装身      [] =合計=1400 1 /重量上限16 ■所持品■ 名称 価格 重量 備考 =所持品合計=     0 G (重量 0/上限11) =装備合計=     2900 G = 価格総計 =    2900 G 所持金      G 預金・借金    G ■特殊な判定■     能力値  スキル  他  合計 (ダイス数) 罠探知    4         4 (2D) 罠解除    7         7 (2D) 危険感知   4         4 (2D) 敵識別    3         3 (2D) 物品鑑定   3         3 (2D) 魔術               (D) 呪歌               (D) 錬金術              (D) ■スキル■ 《スキル名》         SL/タイミング    /判定/対象/射程/コスト/制限  /効果など 《プロビデンス》      ★ /パッシヴ     /-  /-  /-  /-   /    /作成時にフェイト+1 《バッシュ》        4 /メジャー     /命中/単体/武器/4   /    /武器攻撃を行う。ダメージロールに+[SLd] 《アームズマスタリー(槍)》1 /パッシブ      /-  /-  /-  /-   /-    /槍を装備してるなら命中判定に+1D 《インビジブルアタック》  1 /マイナー       /-  /自身/-  /3   /-    /白兵攻撃の命中判定に+1D 《シークレットアーツ》   5 /命中判定直後   /-  /自身/-  /5   /シナリオSL回/命中判定で振ったダイスの内3個までを振りなおす 《Lv2》           1 /         /  /  /  /   /    / 《マーダースキル》     5 /パッシブ      /-  /自身/-  /-   /-    /攻撃の命中判定でクリティカルしたらダメージのダイスにクリティカルに加えて[(SL+1)D]する 《Lv3》           1 /         /  /  /  /   /    / 《Lv4》           1 /         /  /  /  /   /    / 《ダイアナザーデイ》    1 /セットアップ      /-  /自身/-  /-   /シナリオ1回 /vvvvvHPを[CL*10]回復し、バッドステータスを全て回復する 《Lv5》           1 /         /  /  /  /   /    / 《ネバーギブアップ》    1 /セットアップ      /-  /自身/-  /10  /シナリオ1回 /HPを最大まで回復する 《ミラーアタック》     1 /判定直後     /-  /自身/-  /-   /-    /攻撃の命中判定直後に使用。フェイトを3点消費して一つのダイスの目を6にする。 《Lv6》           1 /         /  /  /  /   /    / 《デスブロウ》       9 /ダメージロール直前/-  /自身/-  /5   /シーン1回 /攻撃の命中判定でクリティカルが出ていたら、そのダメージに[SL*10]する。 《Lv7》           1 /         /  /  /  /   /    / 《》            1 /         /  /  /  /   /    / 《》            1 /         /  /  /  /   /    / 《一般スキル》     SL/タイミング     /判定/対象/射程/コスト/制限   /効果など 《ベアアップ》    1 /パッシブ      /-  /自身/-  /-   /-     /スキルに対する精神のリアクション判定に+1D 《スピードアタッカー》1 /セットアッププロセス/-  /自身/-  /-   /ウォーリア/フェイトを1点消費。行動値と移動力に+5 《インサイト》    1 /パッシブ      /-  /自身/-  /-   /-     /ハッタリや嘘を見抜く精神判定に+1D 《イクイップリミット》1 /パッシブ      /-  /自身/-  /-   /-     /アイテムの重量制限に+5 《ヒストリー》    1 /パッシブ      /-  /自身/-  /-   /-     /国や街の概要、歴史に関する知力判定に+1D ■コネクション■ 名前 / 関係    /    / ■その他■ 使用成長点:295点 (レベル:280点、一般スキル:15点、ゲッシュ:0点) レベルアップ記録:サポートクラス / 上昇した能力基本値 / 取得スキル Lv1→2: / 器用、感知、精神 / 2*シークレットアーツ、マーダースキル、 Lv2→3: / 器用、敏捷、感知 / 2*マーダースキル、シークレットアーツ、 Lv3→4: / 敏捷、感知、精神 / 2*シークレットアーツ、ダイアナザーデイ、 Lv4→5: / 筋力、感知、精神 / ネバーギブアップ、ミラーアタック、フェイト1点 Lv5→6: / 敏捷、精神、幸運 / 2*バッシュ、フェイト1点、 Lv6→7: / 器用、敏捷、感知 / 2*デスブロウ、フェイト1点、 Lv7→8: / 器用、敏捷、感知 / デスブロウ、バッシュ、フェイト1点 メモ: 初期装備 武器:ミスリルスピア 頭:メディテーションマスク 胴:忍衣 捕:ガントレット 装身具:忍具 ※この項目を読む前に漫画版ニンジャスレイヤー、もしくはニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨンを視聴することを強くお勧めします ・エリンディル東方のとある島国の村の住人。その村には伝説があった。 ・古き大戦の英雄、歴史の陰に消された悪逆の徒、或いは外の世界から流れ着いた漂流者。強大な力を持った大いなる魂。その魂が死を迎えた者に取り憑くという伝説だ。 ・バプテスマとなる前、彼はこの村に住むごく普通の青年であった。 ・ある日彼の村は妖魔に襲撃された。 ・為す術もなく殺される人々。燃え盛る家屋。嗤う妖魔の声。おお、アマテルよ!寝ているのですか!? ・青年も懸命に抗う。しかし妖魔からすれば所詮モータルである彼の抵抗など無意味。ベイビー・サブミッションが如く打ち払われる。 ・目の前で家族も恋人も殺された。青年も囲んで棒で叩かれネギトロめいた姿になっていた。 ・死を迎える寸前に青年は見た。愛した村が赤と黒に染まるツキジめいた光景を。 ・青年の内にあったのは強い憎悪。そして殺意。青年の命はここで終幕を迎えるはずであった。 ・しかし。死を迎え今まさに静止しようとする彼の脳内ニューロンに話しかける者が現れた。 ・その者の名はゴルゴダ・ニンジャ。かつて別の世界、別の時代であらゆる敵、そして仲間を処刑したアーチ級ニンジャ。そのニンジャソウルだ。 ・ゴルゴダ・ニンジャは問うた。オヌシの村を滅ぼした者たち。ヤツらを殺したいか? ・青年は答えた。殺したい。その為なら何でもする。 ・ゴルゴダ・ニンジャは応えた。あい分かった。オヌシはこれよりバプテスマだ。洗礼の元に人の身と心を捨てた処刑人となるのだ。 ・青年は力を得た。そして名を失い、人の身を捨てた。彼の者の名はバプテスマ。あらゆる悪逆を滅ぼす処刑人。 ・彼の歩みは止まらない。故郷を滅ぼした妖魔を殺すまで。 ・使用するカラテは槍を扱うロンギヌス・カラテ。だが、その他にもスリケンやアイキドー、チャドーなど、彼の扱うカラテは多岐に渡る。 フットステップス フロム エグゼキューショナー オブ レッドブラック エリンディル大陸西方に広がる無限の砂漠。そして砂漠を横断するように伸びる砂漠の道。 砂。岩。少し首を上に向ければ空。それ以外は何も見えぬ砂漠の道をバプテスマは歩いていた。 (そろそろ村が見えてくるはずだが) 砂漠の道にはジャールート、コンディード、ミースといった都市があり、バプテスマはジャールートとコンディードの間にいた。その道中には幾つかの小さな村があり、その村の一つであるミチノエキ・ビレッジに向かっていた。 歩くこと数分。視界の奥に小さな建造物が映る。あれがミチノエキ・ビレッジであろうか。 (様子がおかしい) ミチノエキ・ビレッジはオアシスの周りに作られた村で、ジャールートとコンディードの中継地点となる重要な村だ。ジャールートなどの都市ほどではないが、旅人で賑わっていると聞いていた。 しかし、村の入口まで来ても人の気配はない。村の奥へと続く道にも人影は無い。周囲の家屋の窓は固く閉ざされていた。 その時である。 「ザッケンナコラー!」 村の奥から聞こえてきたのは妖魔スラングだ!コワイ! (なるほど) バプテスマさんの脳内ニューロンは0.2秒で状況を理解し、村の奥に向かう。 「アイエエエ!お、お許しを」 「モチが足りてねぇぞ!?これは我等に対する不敬だな!?」 恐らくこの村の村人だろう、特徴的な青い模様の入った服を来た二十人程度の集団。そしてその村人達に向かって罵詈雑言を浴びせる六体の妖魔がそこには居た。 (緑肌のサンシタ・妖魔が五体、赤い角の妖魔が一体。赤い方がリーダー格か) 妖魔の前でボロボロの服を来た男性が必死にドゲザをしている。 「ふ、不敬などある筈がございません。ですが村人達はみな連日働いております。これ以上は……」 「クチゴタエスルナー!どうやらザゼンが足りてないようだな!」 なんということか、妖魔の後ろに控えているサンシタ・妖魔たちが男性を囲んで棒で叩き始めた! 「ザゼン!」 「ザゼン!」 「アイエエエ…!お許しを」 トータスが如くうずくまりながら許しを請う男性。それを笑いながら棒で叩き続ける妖魔たち。なんたるマッポーめいた光景か! 「罰として追加で女を上納してもらおうか。そこの女!お前だ!」 「アイエッ!?ど……どうかお待ち下さい!」 「お、お父様!」 必死に縋り付く男性。だがそれも虚しく女は連れて行かれる。 その時である! 「おい」 いつの間にか赤い角の妖魔の後ろに回り込んでいたバプテスマ。彼のニンジャ身体能力を以てすればこの程度造作もないことだ。 「あん?」 妖魔の振り向いた顔面に向かって右ストレートが叩き込まれる! 「グワーッ!?キサマ何者だ!?」 「ドーモ。バプテスマです。ただの通りすがりだ。イヤーッ!」 続いて左ストレートが炸裂! 「アバーッ!?」 吹き飛ばされた妖魔はしめやかに爆発四散! 「なんだ貴様は!?」 「ス、スッゾコラー!」 動揺しながらも戦闘態勢に入るサンシタ・妖魔たち。しかし、彼らが武器を持ち、あるいは構えるまでにバプテスマは行動を終えていた。 「イヤーッ!」 「グワーッ!」 右ストレート。左ストレート。キック。カタパルト・スロー。そして右ストレート。五体のサンシタ・妖魔全てにカラテを叩き込むのに要したのは僅か一秒にも満たない。ゴウランガ!なんたるワザマエか! サンシタ・妖魔達は赤い角の妖魔と同じように爆発四散! バプテスマは暴行を受けていた男の元に歩み寄る。ボロボロではあるが幸い重傷ではないようだ。 「無事か?」 「む、娘は……」 「安心しろ、大丈夫だ」 「良かった……」 男はそのまま意識を失った。村人達が駆け寄って介抱をする。 「あの……」 女に声を掛けられる。先程連れて行かれそうになった女だ。 「ありがとうございました。ですが、あなたは一体……?」 「ただの通りすがりだ……本当に。だが少し話を聞いてもよいか」 先程の騒動から数刻後。バプテスマは女と酒場に居た。 「今しがた父が目を覚ましました、今は問題なく喋れています」 「そうか、良かった」 「申し遅れました、私はサオリと言います。改めて……先程はありがとうございました」 「ドーモ。サオリ=サン。バプテスマです。連中は何者だ?一体何があった?」 「ザイバツ・ヴェイン・シンジケート。彼らはそう名乗っていました」 そうして女は村に起こった事を語り始めた。 今から一ヶ月前。妖魔の集団が突然村を襲ってきた。街にはジャールートから派遣された衛士や旅の冒険者なども居たが、まるで刃が立たなかった。抵抗も空しく村はあっという間に妖魔に支配された。 降伏した後、村人達は村の中心に集められた。 そこにいたのは、村を焼き払った頭領と思しき男。その隣に控えるギラギラと光沢を放ち下品な装飾で身を固めた男。そして赤い角の妖魔。 頭領の横に控えた男が頭領へと話しかける。 「どうしますか?ネクロポリズム=サン」 「シンゲン・モチがあればいい。細かい所は任せるよ」 そう答えると頭領の男は何処からか運ばれてきた椅子に座り退屈そうに頬杖をついた。 「よく聞け!」 下品な服の男が威圧的に声を張り上げる。 「我等は侵略者に非ず。秩序をもたらす為にここへ来たのだ。我等はザイバツ・ヴェイン・シンジケート。そしてこの御方は幹部であるネクロポリズム=サンだ」 ザイバツ・ヴェイン・シンジケート。その名前を知るものは少ない。 「喜ぶがいい。これより我等が貴様たちを支配しよう。より良く貴様らを使ってやる。光栄に思え」 なんたる欺瞞!しかし怯える村人達は受け入れるしかない。反抗すれば道端に転がっている冒険者や衛士達と同じく首と胴だけになるだろう。 「我等はキサマらに秩序を与える。即ち安全と労働、そして法だ。この村で作られる良き土産があるだろう。そうだ、シンゲン・モチだ。それを毎月200kg納めよ」 シンゲン・モチとはミチノエキ・ビレッジの特産品だ。オアシスの付近でのみ採れる植物から精製されるモチ・パウダーに砂糖とウォーターキャンディーを混ぜてモチを成形。そこへ砂漠の砂からごく僅かに採取できるキナコと砂漠周辺の村にのみ伝わる秘伝のブラックシロップをかけることで作られる。 材料の希少性と工程の複雑さから、作業は全て手作業で行われる。この村で作られる量は月に100kg程度。200kgなど不可能だ。 「待って下さいそんな量は無茶です!」 村長である男が恐れながらも声を上げた。しかし、彼等もそんなことは百も承知。 「クチゴタエスルナー!」 ネクロポリズムの脇に控えた赤い角の妖魔が威圧的に叫ぶ!上級妖魔スラングだ!コワイ! 「言っただろう。キサマらに秩序を与えると。安心しろ、倒れた者はこのストラスが直々にザゼンをしてやる。キサマらはこれからは毎日15時間は働さるようになる。そうすれば簡単だろう?」 下卑た面でストラスは話し続ける。 「それと。一人でいい、女を寄越せ。別の仕事を与えてやる。立派な仕事だ」 仕事とは何なのか。この下卑た男のやらせる仕事など想像に難くない。 「もし上納するシンゲン・モチが足りなければ追加で女を寄越せ。そいつにも仕事をしてもらう。ワタシは優しいからな。ミスをカバーする方法も用意してやる」 舐め回すような汚い視線を向け、その視線が一人の女の前で止まる。 「そこの女。まずは貴様だ」 ネクロポリズムが指を刺したのは村長の隣にいる彼の娘であった。 背が高く、その瞳には凛とした強い意志が宿っている。いかにも正義感の強そうな女。こういう女を凌辱して弄ぶのがストラスの楽しみであった。 「待って下さい!どうか娘は!」 「クチゴタエスルナー!」 村長が足に縋り付いて許しを請うも、ネクロポリズムの脇に控えた赤い角の妖魔がその背を蹴とばす。 「やめなさい!」 村長の娘は気丈にも叫ぶ。しかし、その手は震えていた。 「私が行けばよいのでしょう」 それでも表情に陰りはない。その目には強い覚悟が宿っていた。 女は隣にいた少しだけ背の低い、顔の似た娘を見やる。その顔に怯えはない。いつも通りの優しくて力強い笑顔だ。 「大丈夫。すぐに帰ってくるから」 いつも通りの姉の声色。しかし娘……サオリは気づいていた。彼女の手が震えていることに。 そう言い残すと彼女と妖魔たちは砦へと向かっていったのだった。 「それが姉と話した最後の言葉でした」 サオリは努めて冷静に話した。しかし拳は固く握られ、目には漆黒の憎悪が宿っていた。 なんと声をかけるべきか。バプテスマは逡巡した。だが、 「……そうか」 ただ相槌を打つに留めた。 奪われた者に掛けられる慰めなど、ある筈がないのだ。その目に燃ゆる炎はどうあっても消えるものではない。ただ一つ、復讐以外には。 「一つ確認したい。本当にネクロポリズムと名乗ったヤツがいたのか?」 「ええ……あの、何か?」 ネクロポリズム。忘れられる筈もない名前だ。この身となった今でも。いや、この身となった今だからこそ。 「こちらの話だ。気にしなくていい」 バプテスマは感じていた。己の中に薄暗い殺意が沈殿していくのを。 席を立ちあがり店の外に出る。 「話してくれて助かった」 街から南に延びる大通り。人通りはない。閉じられた村の出口。その先に砦が見える。あそこに探し続けていた仇の一人であるネクロポリズムがいるのだ。 (グラン・フェルデンであれば故郷を滅ぼした連中の情報が入ると思ってはいたが) まさかその道中にて仇の一人を見つけるとは。なんたるボタモチか。 「これより砦に向かう。そろそろ村に寄越した連中が戻ってこないことに砦の妖魔が気づく頃だろう。本格的に奴らが動き出す前に砦を叩く」 「そんな……危険です!」 「どのみち妖魔を殺したことは気づかれる。そうなれば連中は私だけでなくオヌシ達にも危害を加えるだろう。私なりのケジメだ」 時刻は既にウシミツアワー。月明かりが砦までの道を照らしている。 それはアマテルの祝福か、それとも地獄へとマネキ・キャットが誘っているのか。これからの戦いを暗喩するウキヨエめいた光景であった。 「安心しろ」 バプテスマは砦を見据えながら、担いでいた背中の棒に巻かれた布を解く。 布の内から現れたのは漆黒の光沢を放つ長槍であった。 「奴らは必ず殺す」 誰も覚えていないほど遠くのいつか。 まだバプテスマではない誰か。 今はもう誰も居ないどこか。 そしてこれはバプテスマとなった男の内に燻る何か。 今にも停止しようとする脳内ニューロン。 その中で男に話しかける者がいた。 「我が名はゴルゴダ・ニンジャ」 ゴルゴダ・ニンジャ。かつて別の世界と別の時代であらゆる敵、そして仲間を処刑したアーチ級ニンジャ。そのニンジャソウルだ。 「オヌシの村を滅ぼした者たち。ヤツらを殺したいか?」 男は答える。 「殺したい」 「なぜ?」 なぜ?なぜだと? 「決まっている。ヤツらが悪だからだ」 「確かにヤツらは死すべき悪だ。しかし、ハリケーンの川の流れはサハギンすらも傷つける。死には規律が必要だ」 感情に流されては傷つけてはいけない者まで傷つけてしまう。火の時代に活躍した伝説的剣豪にして哲学者、ミヤモト・マサシの言葉だ。 ゴルゴダ・ニンジャは再度問う。 「力を求めるならば与えよう。しかしオヌシはもう戻れなくなるぞ」 「構わぬ。もう戻る場所はない」 沈黙し瞑目するゴルゴダ・ニンジャ。幾多の死を与え続けた彼が何を思うたのか。我らには分かるはずもない。 「あい分かった」 ゴルゴダ・ニンジャが青年に手をかざす。 「オヌシはこれよりバプテスマだ。洗礼の元に人の身と心を捨てた処刑人だ」 雲はなく月がよく見える夜だった。月明かりが砦までの道を照らしている。この辺りには森はおろか殆ど草木も生えていない。 草木も眠るウシミツアワー。砦の門の前に二体の妖魔が居た。一人は村に来たサンシタ・妖魔と似た緑肌の妖魔。もう一人はサハギンのような青肌を持つ妖魔だ。 「レッドホーン=サン遅いな」 「どうせ村の女でファックでもしてるんだろ」 「羨ましい限りだぜ。ネクロポリズム=サンはなんで止めないのかね」 「平時ならケジメ案件だろうがな。もうじきこの村からはオサラバらしい。多少のヤンチャも大目に見るということだろうさ」 「ああ羨ましいな。俺達も村に行かないか?今なら誰も気付かないだろうぜ」 「止めておけ。もしバレたらザゼンじゃ済まないぞ」 遠くから歩いてくる人影。背には長槍を背負っており、顔はメンポで覆われている。 正面から小さな足音が聞こえてくる。 人影は赤と黒の衣をはためかせる。バプテスマは門の前に立ち、妖魔たちと相対した。 「ドーモ。バプテスマです」 バプテスマは両の掌を合わせ深く礼をする。いかに憎き敵と言えど、ニンジャのイクサにおいてアイサツは絶対の礼儀だ。古事記にもそう書かれている。 「なんだぁお前?そりゃアイサツか?」 緑肌の妖魔は侮蔑の表情を返す。現代の妖魔はアイサツの文化を軽視する者も多い。それがサンシタ・妖魔であるならば尚更だ。 「衛士の生き残りか?またネクロポリズム=サンのフクワライが増えちまうな」 青肌の妖魔が嘲笑を浮かべる。 バプテスマがアイサツを終えた0.2秒後。 彼は背負った槍を右に振り抜いた。 向かって右。緑肌の妖魔が槍を振り抜いたことを認識するよりも早くその妖魔の首は宙を舞っていた。 「アレレ?」 視界に映るのは腰に剣を差した緑肌の肉体。つまり自分の体だ。何故自分は自分の体を見ているのか?そのことを理解する前に妖魔の首は地に落ちる。 何が起こった?もう一人の門番、青肌の妖魔が腰の剣を抜いた。 「ザ、ザッケンナコラー!」 理解できない。仲間の首が吹き飛んだ。こいつは何をした?何をしに来たのだ。 カチコミ。カチコミに来たのだ。 我等に対して。我等ザイバツ・ヴェイン・シンジケートに対して。正気か?この者は!? 「スッゾコラー!」 青肌の妖魔が斬り掛かる。その前に彼の胸には穴が空いていた。いつ槍を振るったのか?サンシタ・妖魔の動体視力では何が起きたかを理解することは出来ない。 「サ…サヨナラ!」 門番の妖魔達は爆発四散! バプテスマは改めて砦へと向き直る。 目の前には人の身長の倍ほどはあろうかという木製の門。この中にネクロポリズムが居るのだ。故郷を滅ぼした憎き敵が。 バプテスマが門を蹴破り中へと侵入する。 扉の先は大広間には妖魔の群れ。人とは思えぬ肌。頭から覗く角。 バプテスマは槍を構えた。 メンポには魔・殺の二文字。殺戮者のエントリーだ! 「ドーモ。バプテスマです」 アイサツをしながらバプテスマは周囲へと目を走らせる。 突然の出来事に動揺する妖魔たちの中、巨大なソファに座りながらワインを飲む妖魔がいた。 「ドーモ。バプテスマ=サン。ストラスです。ブルースキン=サンは何をしているのだ?このような者を砦に入れるなど」 「門の前の妖魔なら殺した」 ギラギラと光沢を放つ服。両手の中で下品に光る指輪。出で立ちから察するにヤツがこの中で一番偉いらしい。 「キサマは自分が何をしているのか理解しているのか?我等ザイバツにカチコミなど!」 「理解している。ワタシはキサマらを殺しに来たのだ」 周囲の妖魔達が構え始める。ある者は剣を。ある者は弓を。それだけでない。槍、短剣、あるいは鞭。そんなものに目もくれずバプテスマはストラスへ問いかける。 「二つ聞きたい。キサマらのボスであるネクロポリズム=サンは何処だ?攫った女達は何処にいる?」 下卑た嗤いを上げるストラス。 「答えると思っているのか?これから行く地獄でアマテルにでも聞くんだな!」 ストラスが言うと同時に腕を振るう。それが合図となって妖魔達がバプテスマへ一斉に突撃した! 無数の攻撃がバプテスマへと襲い掛かる!前後左右から迫りくる妖魔!バプテスマは_____ いない!?妖魔たちが攻撃した先にバプテスマの姿はない!どこへ消えたのか? 「イヤーッ!」 天井だ!重力に従って落下しながらバプテスマは妖魔の一体に、いや続けざま三体に槍を突き刺す! 「グワーッ!?」 妖魔達は血飛沫を上げて吹き飛んだ! バプテスマは止まらない!着地と同時、剣を振り上げ攻撃しようとした妖魔の胴体を槍で撃ち抜く、更に貫いた妖魔を盾に他の妖魔へと猛進! 貫く!貫く!貫く!貫く!数体の妖魔がヤキトリめいて槍に突き刺さった! 「アバーッ!?」 迸る絶叫! バプテスマが槍を水平に降り抜いて妖魔達は地面へと払い落とされる。 「アイエェェェェ!」 「こんなのテストに出ないよぉ………!」 周囲を囲んでいたサンシタ・妖魔達は完全に戦意を喪失していた。武器は構えている。しかしそれだけ。向かうでもなく逃げるでもなく立ち尽くすことしかできなかった。 「イヤーッ!」 未だバプテスマは止まらない。 恐れをなして逃げ出す者、ヤバレカバレに向かってくる者。屠殺場の機械めいた動きでバプテスマはそれらを刈り取ってゆく。 吹き飛ぶ首、漏れ出る臓物、溢れ出た血が床を彩っていく。砦の一室はさながらツキジか、はたまたトヨスめいた光景となっていた。 「バカな………!」 奥のソファに座る一体を残して妖魔達は爆発四散! 「もう一度聞くぞ」 槍に着いた血を払いながらバプテスマはストラスの前へ立つ。 メンポに刻まれた魔・殺の二文字。眼光に射すくめられたストラスは身じろぎすらできなかった。 「貴様らのボスであるネクロポリズム=サンは何処だ?」 「な………何が望みだ?女か!?金か!?」 「質問に答えろ」 「グワーッ!?」 ストラスの顔面に右ストレートが叩き込まれる! 「ネクロポリズム=サンは何処だ?」 続いて左ストレートが叩き込まれる! 「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレートが叩き込まれる!「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレートが叩き込まれる! 「し………知らない」 「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレートが叩き込まれる!「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレートが叩き込まれる! 「ま……待て……」 「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレートが叩き込まれる!「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレートが叩き込まれる! 「か、隠し階段があるのだ。塔に続く……」 「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」右ストレートが叩き込まれる!「何階ですか?イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレートが叩き込まれる! 「こ………この砦には塔がある。ボスと捕らえた女達はそこにいる」 ストラスが指し示したのは窓から見える砦の中心。 「塔……あそこか」 「そうだ……塔の壁にタニシと書かれたスイッチがある。それを押せば階段が出てくる」 「なるほど」 「お願いだ……助け」 ストラスが話し終わるよりも前にバプテスマの最後の一撃が叩き込まれる。ストラスは吹き飛ばされて壁のシミとなった。 「サ………サヨナラ!!」 ストラスは爆発四散!これで部屋に残る敵はいなくなった。 バプテスマは砦の中心、塔の元へと向かう。 ぐるりと塔の周囲を見たが、塔には入口がないように見えた。 しかしよく見ると塔の側面の石ブロックの一つが不自然に窪んでいた。覗き込んでみると中にはタニシと刻まれていた。窪んだ部分を押すと壁の一部分が横にスライドして階段が現れた。 バプテスマは階段を上る。 気づかぬ内に手に力が入る。感じるのだ。この先の存在が放つ強烈な邪気を。 塔の頂上。 半ばから折れた柱。倒れたテーブル。天井は殆どが崩れており月が見えていた。 「元々この塔はもっと高かったんだ」 月明りが部屋の中を照らしている。白髪を後ろに束ねた男がそこにはいた。 「昔の戦争で頂上が吹き飛んでしまったらしくてね。私は月が見えるから好きなんだが」 その男は白髪を後ろで束ね、白いスーツを身に纏っていた。 その姿。血の匂い。何よりもその男の纏う邪気。 間違いないあの男だ。忘れたことはない。この時を待っていた。 バプテスマは両手を合わせ深く礼をする。 「ドーモ。ネクロポリズム=サン。バプテスマです」 「ドーモ。バプテスマ=サン。ネクロポリズムです。私の部下はどうした?ここに来るまでに会わなかったか?」 「全員殺した。キサマも殺す」 アイサツを終えると同時。バプテスマは槍を構えてチャージする! 「イヤーッ!」 対してネクロポリズムも腰に差していた二振りの刀を抜く。両手に刀を携えて戦うデュアル・イアイドーだ! 交差させた一対の刀がバプテスマの槍を受け止める! ネクロポリズムはバプテスマの猛突を受け流した勢いそのままにバプテスマへと斬り掛かる! バプテスマは槍の柄でこれを受ける! 鍔迫り合いのゴジュッポヒャッポ。否、力比べであればバプテスマが若干有利か。 「ほう」 思わず感嘆し声を揚げるネクロポリズム。しかし、その構えには一分の隙もない。 「失礼。もう一度名前を聞いても?」 「バプテスマだ。よく覚えておけ。地獄でキサマの神に伝える名だ」 「これ程のカラテは久々だよ。ストラス達では無理だろうなぁ」 膂力で上回るバプテスマは攻勢を強めるがネクロポリズムを崩せない。この密接した距離ではバプテスマの長槍の方が不利だ。バプテスマは膂力に任せてネクロポリズムを弾き飛ばし、もう一度チャージの姿勢を取る。 「そうだろうな」 ネクロポリズムもその隙を見逃さない。剣を構えたまま両腕を眼前に構える。右腕と左腕に魔力が込められ、魔法陣が形成される。 「君はそうするしかない」 ネクロポリズムが腕を振るうと同時、溶岩がバプテスマの足元から吹き上がる!ネクロポリズムの得意とする魔術の一つ、これはメイジのエラプション・ジツだ! 「ヌゥッ……!」 バプテスマは紙一重でこれを回避! 再度バプテスマはネクロポリズムへと迫る!距離をとっては敵の思う壺。付かず離れず。ここは近付きながら槍のリーチを活かして戦うべきだ。 剣の間合いの外からバプテスマは突きを幾度も放つ! 二本の剣でもってネクロポリズムは槍を受け流す。しかし力で劣るネクロポリズムは受けるのが精一杯。 攻勢に転じることもできず防戦一方のネクロポリズム。 その顔には。 焦りではなく下卑た笑みが貼り付いていた。 バプテスマの背後、ネクロポリズムの視線の先には何者かの影。部屋の隅、柱の裏で動くその影がバプテスマへと弓を放った! 「クッ!?」 不意打ちではあったが、ニンジャ動体視力を持つバプテスマにとってこの程度の攻撃への対応は容易であった。射線上のバプテスマは眼前のネクロポリズムを弾き飛ばしながらバックブリッジからの後方宙返りで回避! 更にその最中、懐のスリケンを柱の裏の影に向かって放つ! スリケンに額を貫かれた影は―――を纏いながらも、目が腐り落ち腹に空いた穴からカビの生えたその者は、眠るように後ろへと倒れ込んだ。 バプテスマからすればこの程度造作もない。しかし。 「残念、君くらいのレベルでは当たらないよな」 「この者達は……」 先程自分がスリケンを放った相手を見る。一見するとよくいるタイプのゾンビだ。しかしあの柄は。あの青い模様はミチノエキ・ビレッジで見た村人とよく似た装束だ。 「村の人間だよ。あと冒険者とか」 事も無げにネクロポリズムは答える。 「キサマ……何人殺した?何人アンデッドにした?」 柱の影、倒れたテーブルの裏。部屋の至る所から、ぐちゃりと何かが潰れるような、あるいは腐った木が軋むような音。一体何体いるのか見当もつかない。 「アンデッドという表現は正確じゃないな」 ネクロポリズムは先程バプテスマがスリケンを放ったゾンビの元へ歩き、ぶちぶちと音を立てながらその腕を拾い上げて枝のように弄ぶ。その腕は時折痙攣したかのように跳ねる。 「通常のアンデッドは完全に魂が抜け切った死体を用いるんだ。だがそのやり方は非効率だと最近の研究で分かってね」 神経の構造と魔力の性質上どうしてもね、と喋りながら手に持った腕を指でなぞる。 「ここにいるのは傷口や腐敗した箇所から魂が抜けないように栓をしてある」 月下に響き渡る数多の呻き声。いや、声と言うにはあまりにも悍ましく、そして人の声からかけ離れた音の数々。 「つまり厳密には死んでいないよ」 ネクロポリズムの背後に一体のゾンビが居た。喉の奥から漏れ出る声は苦しみからか。それともこれは声ですらない物理現象に過ぎないのか。 そのどちらなのかバプテスマには分からなかった。 「下衆め」 「勿体ないだろう?折角なら使わないと」 そして起き上がったゾンビやスケルトン達が一斉に弓を構え、バプテスマに向かって矢を放つ! 一つや二つであればバプテスマも容易に回避できただろう。しかしそれが複数、しかも視界の外からとなると常に周囲に気を配らなければならない。バプテスマは前後左右へとステップを刻んで回避する。 「そら、よそ見している場合か?」 バプテスマが周囲のアンデッドへと意識を割いた瞬間をネクロポリズムは見逃さない。魔力を込め、バプテスマへとエラプションを放つ! バプテスマは横に跳んでこれを回避。しかし避けた先へと次なる矢が放たれる!これもバプテスマは回避するが、次々と放たれる矢を避ける内にネクロポリズムとの距離が離れ、そして再度ネクロポリズムはエラプションを放つ! (厄介だな) 弓と炎の波状攻撃を回避しながらバプテスマは考える。 四方八方から襲い来る弓矢で距離を取らされ、攻勢に転じようと足を止めればエラプション・ジツ。どうにか強引に槍を構えて攻撃するも、デュアル・イアイドーに阻まれる。そしてデュアル・イアイドーに足を止めれば弓矢が放たれる。なんと練り上げられたフーリンカザンか! 追い詰められるバプテスマ。しかしそんなことはどうでもよかった。彼にはそんなことよりも気になることがあった。 「一つ聞きたい」 「どうぞ?」 「ワタシの村の人間もこうしたのか」 「村?」 「エリンディル東方、ムサシの村だ」 ずっと気になっていた。 バプテスマとして蘇った翌日。村を出る前に死んだ者の弔いをしようとしたが、村に居た筈の人達の数に比べて死体の数が明らかに少なかったのだ。 何処かへ逃げた者達がいるのか。それとも野山の中で殺されたせいで見つからないのではないか。 考えないようにしていた。 だが。もし。もしも。 「そうか、君はあの村の!」 ネクロポリズムは攻撃の手を緩めずに嬉々として話した。 「あの村に行ったのは偶然だったんだがね、探し物のついでだったんだが」 偶然。ついで。 この男はそう言ったのか?大した理由もなくワタシの村を滅ぼしたと言ったのか? 「丁度兵隊が足りなくてねぇ、彼らはいい材料になってくれた!あの後別の村を襲ったんだが随分と役に立ってくれたよ」 材料。別の村。襲った。 バプテスマの脳内でニューロンが繋がらない。初めてだった。脳が理解を拒んでいるような、こんな感覚は。 村の人達を殺すだけでなく、あまつさえ。あのような事を他にも? 気づかぬ内に深く息を吐いていた。 最早バプテスマの心には怒りなど無かった。 殺す。この者を。この者達を。コヤツらは生きていてはいけない。 殺す。絶対に。 バプテスマはネクロポリズム達の猛攻の中で一瞬足を止め、深く腰を落として構えをとった。 一瞬とはいえ、その隙を見逃すネクロポリズムではない。ゾンビ達の矢がバプテスマに向かって放たれる。 右肩と左脚に矢が刺さる。構わぬ。 バプテスマの猛チャージがネクロポリズムへと放たれた! しかし。 まるで予知していたかのように。ネクロポリズムはその攻撃をマタドールめいて回避! バプテスマの槍を受け流し、ネクロポリズムのカタナがバプテスマの脇腹を刺し貫いた。さらに動きを止めたバプテスマに無数の矢が降りかかる! 溢れ出た血がバプテスマの身体を赤く染めていた。全身に矢を受けて尚崩れないその姿はいっそ誕生日のショートケーキめいて見えた。 「矢には毒が塗ってある。一滴でマグロが十匹は死んでしまうような代物だ。辛いだろう」 ネクロポリズムはコーヒーを掻き混ぜるかのように突き刺した剣を弄り回す。 「君のような人間は故郷の話をするといつもこうだね。どうしようかな。いつも通りゾンビにしてもいいが少し気になることもあるし……」 バプテスマの身体から力が失われていく。持っていた槍が乾いた音を立てて地面に落ちた。 イクサは終わった。哀れにもバプテスマは復讐の道半ばで天に召され、彼の命はここで終わってしまったのだ。 一人の復讐者の幕が閉じた。 これからもザイバツ・ヴェイン・シンジケートは、ネクロポリズムは彼の村にしたように暴虐の限りを尽くすのだろう。 決着。バプテスマは負けた。 誰もがそう思ったその瞬間。 腕を掴んだ。 ネクロポリズムの腕が掴まれていた。バプテスマの右腕がネクロポリズムの左腕を掴んだのだ。 バカな。 ネクロポリズムは驚愕した。眼前の満身創痍の男がネクロポリズムの腕を掴んだのだ。爪を食い込ませ、骨を砕かんとする万力で。 腕が動かせない。何という力だ。脇腹を刺して出血多量、バイオ・スモトリが1ダースは死ぬだけの毒を打ち込んだのに? バプテスマは動かない。 いや、呼吸音が聞こえる。普通の呼吸ではない。深い呼吸。 「スゥーッ!ハァーッ!」 一呼吸の度にバプテスマの傷が塞がっていく。毒が回り青白かった肌に極上のオーガニック・マグロめいて血が巡っていく。 ネクロポリズムは再度驚愕し、同時に目前の未知の現象に歓喜した。 「その呼吸法は・・・チャドーの呼吸か!」 チャドーとは礼儀作法であり、暗殺拳であり、カラテを生み出す循環の摂理。 その独自の呼吸法は、自らの肉体あるいはニューロンを門としてオヒガンからエテルの力を獲得し、内なるカラテへと変換することで肉体をを回復する。 歴史の闇に葬られた伝説の暗殺拳チャドー。この奥義はニンジャの中でも一部の者にのみ伝えられ、存在を知る者は限られていた。 そして今ではチャドーの一部がダイアナザーデイ、またはネバーギブアップと名前を変えてニンジャの技術に取り込まれている。 「おかしいと思ったんだ生き残りがいたなんて。そうか……!あの村の伝承は本当だったか……!」 しかしチャドーには致命的な弱点があった。 それは使用すると体力と精神力を大きく失うことだった。 しかし問題はない。動けなくなるより先に相手を殺せばいいだけの事。 バプテスマの眼光が再び漆黒に輝く。 「イヤーッ!」 バプテスマは右腕でネクロポリズムを掴んだまま弓引くように左腕を後ろへ引き絞る。放たれる直前のバリスタめいた姿勢から、全身のバネをしならせ、前へ踏み込み、神速のパンチを繰り出す!あれはチャドーの奥義、ジキ・ツキの構え! 「グオォッ……!?」 渾身のジキ・ツキがネクロポリズムへと炸裂! 吹き飛ばされたネクロポリズムはなんとか体勢を立て直す。 「ここまでは計算通りか!?随分と冷静じゃないか、君の怒りはその程度の物だったのか!?」 「今は怒りすら厭わしい。キサマらを殺すまでは」 バプテスマは床に落ちた槍を拾う。 再度構え直したその姿はチャドーの呼吸により先程よりも強い気に満ちている。カタナが刺さっていた脇腹からも既に血は流れていない。しかしチャドーによって失われた体力と精神力もバカにはできないだろう。 ネクロポリズムも再度デュアル・イアイドーの構えを取る。 先程の戦闘の中では大きな傷を負わなかったネクロポリズム。しかしバプテスマの猛攻を完璧に捌けた訳ではない。加えてエラプション・ジツやゾンビ達の操作によって消費した魔力も少なくない。そしてたった今バプテスマより受けた全力のジキ・ツキ。 決着の時は近い。両者は共にそう感じていた。 「イヤーッ!」 先に動いたのはバプテスマ。 先程よりも苛烈な突きのラッシュ。スコールめいた攻撃の雨を浴びせる。 ネクロポリズムもデュアル・イアイドーで応戦する。攻勢に転じることはしない。この嵐を前に彼はただ耐える。 その間にも周囲のゾンビ達は矢を射続ける。しかしバプテスマにはかすりもしない。 一見するとネクロポリズムの方が不利に見えるこの状況。 しかしそれでもネクロポリズムは嗤う。彼は己が敗北することなど微塵も考えていない。何故なら。 こちらも君を崩せないが、そちらもワタシを崩せないだろう? ネクロポリズムは考える。チャドーの呼吸で回復したとはいえ、あれは奥の手。消耗の度合いは互いにそこまで変わらない。そして互いに消耗したこの状況ならばゾンビ達という手札のあるこちらが有利。この状況が続けばバプテスマはジリー・プアー(徐々に不利)。どこかで足が止まるはず。その瞬間が彼の最後だ。 攻めるバプテスマ。耐えるネクロポリズム。 両刀で防御しきれなかった槍が肩を、脚を裂いていく。構わない。このまま行けば勝つのはこちらだ。 だが。 おかしい。 一向に緩む気配の無い攻撃の中でネクロポリズムは違和感に気づいた。 おかしい。放たれる矢の数が減っている。 何だ?何が起きた?ネクロポリズムはバプテスマの猛攻を捌きながら周囲に目を配る。 違和感の正体。部屋にいた何体かのゾンビ達が倒れている。ゾンビ達の眉間にはスリケンが突き刺さっていた。 何ということだ。まさか彼がやったのか?この猛攻の最中に? ネクロポリズムはバプテスマを注視した。そして気づく。バプテスマの指の間に挟まれたスリケン。それが現れては消えていく。その度にゾンビ達は倒されていく。一つ。二つ。四つ。八つ。 バプテスマが強烈な突きを見舞う!弾き飛ばされながらもネクロポリズムは見た。最後のゾンビの額にスリケンが突き刺さるところを。 「あとはオヌシだけだ」 バプテスマは構える。先ほどまでの満身創痍の状態とは違う、本来の彼の全力。バプテスマが突きを放った! 弾丸と化したバプテスマ。対してネクロポリズムは____何も構えていない。 「これ程とはね」 ひとり呟くネクロポリズム。彼は勝負を諦めたのだろうか? バプテスマの突きが命中するその瞬間。 ネクロポリズムの姿が消える。バプテスマの槍は空を切った。 前後?左右?否!上だ!ネクロポリズムは空を飛んでいた!なんということか!ネクロポリズムの背に翼が生えている! 月を背に空中へと飛翔するネクロポリズム。如何なバプテスマの長槍でもこれでは手出しできない! 「本当に残念だ!君の肉体を残せないなんて!」 ネクロポリズムの右手に巨大な火球が作られる!先程までとは比べ物にならない程の魔力量だ! 「先刻までのジツとは違う!骨すら残らず灰になるだろうが、こうでもしないと君は死なないだろう!?」 火球は既に空を覆いつくさんとする程の大きさとなっていた!あれを食らえば如何なバプテスマと言えどビンチョウタンと化してしまう! バプテスマはどうするのか!? 「イヤーッ!」 ネクロポリズムの言葉にバプテスマはカラテ・シャウトで応じる!なんということか!バプテスマは持っていた槍をネクロポリズムへ向けて投擲した! 槍は風切音を放ちながらネクロポリズムへ迫る!ヤバイ級メイジのウォータースピアにすら匹敵する速度!回避は不可能だ! 「ヌウッ!」 しかし槍はネクロポリズムの眼前で停止!ネクロポリズムは投擲された槍を空中でキャッチしていた。何たる動体視力、何たるワザマエか! 「愚かなり!勝負を焦ったか!?自分から武器を捨てるとは!」 だがバプテスマは止まらない!両足をバネの如く曲げ、地を蹴って飛び立つ! 「Wasshoi!」 素手となったバプテスマが空中のネクロポリズムに向けてジャッカルめいて跳躍! そのままネクロポリズムの掴んだ槍を押し込む!ニンジャソウルによって得た常人の三倍の脚力がこれを可能にした! 「バ……バカな……!」 「イヤーッ!」 足場のない空中では踏ん張ることができない!バプテスマの跳躍のエネルギーを止め切れず槍はネクロポリズムの胸を刺しつらぬいた! 「ガハッ……!」 炸裂せんと膨張を続けた火球は少しずつ輪郭が揺らいでいき、ハナビめいて雲散霧消していく。 ネクロポリズムの背で開かれた翼から徐々に力が失われる。彼は撃ち落されたハクチョウめいて地面に落下した。 「こんなものか……」 「ハイクを詠め。カイシャクしてやる」 胸に空いた穴から漏れ出た血が放射状に広がって砦の床を濡らす。その様は地獄へと開かれた門のようであった。 「律儀だな………一つ教えておいてあげよう」 口から血を吐き出しながらネクロポリズムは語りだす。 我らのボスは何処にでもいて何処にもいない。 このエリンディルの大地の全てに根を張り全てを支配せんとする御方だ。 探さずともいずれ巡り合うだろう。 ネクロポリズムは嗤う。彼は知っているのだ。今までザイバツ・ヴェイン・シンジケートに逆らった人間がどのような末路を辿ったのか。 「先に地獄で待っているよバプテスマ=サン」 ネクロポリズムは右手に握られた剣を高く高く真上へと掲げた。その刃に月光が反射して薄く室内を照らす。 「ボス…バンザイ……インガ…オホー…」 ハイクを残しネクロポリズムはしめやかに爆発四散!後には血溜まりと焦げ跡が残った。 天井から覗いた月明かりがバプテスマを包んでいる。 (地獄か) 構わない。死ぬまでに一人でも多くの仇を殺す。元よりその為の旅だ。 地に突き刺さっていた槍を引き抜いたその時。カラン、と乾いた音が響く。 己の愛槍であるクシヤキが半ばから折れてしまっていた。 元々は家の倉庫に眠っていただけの物だ。決して名のある槍ではない。 だがこの槍はバプテスマとなった時より己のカラテを支え、今に至るまで共に戦ってくれた友だ。 (今までよく戦ってくれた………いや) バプテスマは自嘲めいた笑みを浮かべる。 (もうワタシには付き合えないということか?) 折れた半分を布で巻き直し、部屋の奥を見る。そこにはネクロポリズムに捕らえられた女達がいた。 「あ………大丈夫か?」 声を掛けるも女達はショックを受けているのか腰を抜かしたまま震えるばかり。 「アイエエ……」 怪我はないだろうか。近づこうと思ったが、足を止めた。 窓ガラスを見る。外はウシミツの暗闇、反射された光は鏡のように室内の様子を映す。 そこには赤と黒に塗れ、底のない暗闇を湛えた眼を持つ化物がいた。 そうだ。傍から見ればワタシはもう奴らと同じなのだ。 怯えた女達に自分が入ってきた扉を指し示す。 「そこの扉を出たら階段を降りろ。砦の入り口に出られる」 バプテスマは背を向けて歩き出す。 「あ……あの!」 部屋から出る直前、女達の内の一人が声を上げた。 見覚えのある少し癖のある黒髪。凛とした力強い瞳。 そうか。サオリ=サンの姉か。 「ありがとうございました!オタッシャデー!」 少しだけ思い出してしまった。 遠い記憶の中、幸せだったあの日々のことを。 そして妻となる筈だった、守らなくてはいけなかった女性の事を。 「……オタッシャデー」 届いたか分からない程の小さな声で、それでも確かにバプテスマは呟いた。 止めた足をもう一度動かす。バプテスマはもう一度歩き出す。 空に浮かぶ月が歩む道を照らしていた。 アマテルの祝福なのか。邪神の手招きか。 何であろうと彼は向かうのだ。どこまでも広がる闇の中へ。 フットステップス フロム エグゼキューショナー オブ レッドブラック 完