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かつて孤児や捨て子を対象としたとある実験の末に『失敗作』として”裏九龍城”に棄てられた男。 幼少期は血と闘争の臭いで満ちる修羅道で過ごした。自分と似たような子どもを集めて生きていた。 ひどくシンプルな世界だった。『強さ』がすべての基準とされる世界だった。 負けなければ、倒されなければ、誰にも指図はされないし誰にも馬鹿にされることはなかった。 だから戦った、戦って戦って戦って戦って、己の中で荒れ狂う闘争本能に従い続けた。 ──そんなある日仲間が殺された。 自分を逆恨みする者たちの犯行だった。それは一度ではなく二度起こり、それだけでは止まらず三度四度と続いた。 相手を始末しても始末しても終わらず、やがて己は裏九龍城を追われた。 『お前がいると人が死ぬ』。『お前は死神だ』。『お前はここにいてはいけない』。 仲間たちのことは愛していた。しかし、彼らは己を愛さなかった。 それが悲しくて、ひどく虚しかった。 それからは傭兵として各地を転々としながら暮らしていた。 戯れに紛争に首を突っ込んでは適当に情勢をかき回したし、たまにFHに雇われてはUGNの職員を相手取って派手に暴れた。 もちろんUGNに雇われることもあったし、それ以外の組織に雇われることもあった。 己はどこまで中立であり続けようとした。 もう二度と誰にも追放されないようにと必死だったのかもしれない。 "ガーディアン"に配属されたのは、そんな日々に慣れきったある日だった。 これまで何かを壊したり、殺したりしてきた自分でも誰かを守ることができるのならば──。 あるいは、やり直すことができるのかもしれない。 そんな淡い期待と共に"ガーディアン"の配属を受け入れた。 "ガーディアン"の仲間たちとの日々はかつて見た夢の焼き直しのようだった。いつしか大切な存在になっていって、そうして。 また、死んだ。 また、殺された。 けれどまだ己は此処にいる。此処にいることができている。 ならばせめて仇を討つべきなのだと決めた。 ”ルイン”と名乗る彼を、炭も残さず焼き尽くす。 己は仲間を奪われたが、今回はまだすべてではない。まだ取り返しがつく。 斯くして、男は復讐を決意した。

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