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ユーグ・トリシアティ モチーフ：ホトトギス　誕生日：1月2日 俺の家はフランスの片田舎に小さな農園を構える葡萄農家だった。 父さん、母さん、そして兄さんは俺にワイン作りを教えてくれたが、彼らがワインを飲んでいるところは見たことがなかった。いや、嗜好品に触れているところを見たことがない、と言った方が正しいだろう。 俺は兄さんが着古した服を着たし、兄さんは父さんの服を着た。母さんのエプロンはボロボロで、ほつれを補修することもなかったが、兄はその生活に疑問を抱いたことはないようだった。聞く限りでは、祖父母も、曽祖父母も同じような生活をしていたという。トリシアティの血のものはみんなそうしているのだと。貧しい家と、血の連鎖。 のろいのようだ。飛び出しそうになった本音を喉の奥で噛み殺すと、それは胸のうちへ飲みくだされ、時を重ねるごとに大きくなり、俺の心を染めていった。 そんな俺にも毎週の楽しみというものがあった。日曜の朝に教会へ行くことだ。 通うには少し距離があるし、聖書に書かれたありがたいお言葉には微塵も興味はなかったが、神父が教会へ来た子供達に菓子を配っていたから。 いや、理由はもう一つある。讃美歌を口ずさむのが楽しかった。歌を通して他の子供たちとも仲良くなった。 神父は俺の歌を褒めてくれた。友人たちと共に歌いながら、手を取って踊った。帰らず彼らと戯れたい、明日も教会へ来て歌いたい。 だがそんな選択肢はハナから用意されちゃいなかった。帰らなけりゃいけないのだ、あの荒れた土地へ。払いきれない税金に責め苛まれるあの家へ。 樽に入れた葡萄を裸足で踏みつけながらひとりで歌を口ずさむ。ピアノとは程遠い水音を伴奏に、手を広げて歌い踊る。そうして自分を誤魔化して、ワイン作りに勤しんだ。 そんなある日、先週と同じように教会へ行くと、別の国から来た神父と出会った。何を言ってるかはいまいちわからなかったが、どうも俺の歌がいたくお気に召したようだった。それで、サンタ・アンジェリ少年聖歌隊に入らないかと誘われた。それはとても名誉なことらしく、いつもの神父はとても喜んだ。友人たちも俺を称賛した。 そんなに素晴らしいことなのかと話を聞くと、死ぬことが最終目的なんて恐ろしい話をさも名誉であるかのように言う。信仰心とやらが備わっていたら、俺にも魅力的に思えたのだろうか。一蹴できなかったのは、ここでこの誘いに乗らなければ俺はあの先のない家を兄と共に支え継ぐ未来から逃れられないという現実があったからだ。加えて、俺が入団すれば、家族にはある程度の援助金が入るらしかった。 果たして死が約束されているような場所へ行くことを喜ぶのだろうか、なんて懸念は、一瞬明るくなった両親の表情を見てすぐに吹き飛んだ。俺はその日のうちに支度をし、笑顔で家を後にした。 そうして俺は今ここにいる。売られたのだ。帰れない。 だが未練はない。綺麗な服が着られ、美味しいものを食べられ、友がおり、歌が歌える。訓練は厳しいがそれももうすぐ終わるだろう。俺は死んで天使になる。そうすればきっと、この血の呪縛から逃れられる。 葡萄を素足で踏み潰す、あの水音から、逃げるのだ。 ＝＝＝＝＝ 『ヴェルネの天使は死を歌う』 　GM：あめさん 　同伴：ニーコ・カプレット/カニさん、東雲雲母/まやさん、ジョヴァンニ・ヴァルチェピーナ/塩さん 「お前ならそう言うと思った」 ＝＝＝以下ネタバレ＝＝＝ 取得呪文 ・アザトースの招来(ミサ・ジ・レクイエム・ペル・シュジャイ) ・精神的従属（天使の子守唄） ・精神力吸引（魂救済の歌） ・アザトースの退散

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