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ろくたに　ほおずき 秘匿ネタバレ注意 消し去ってしまいたい、不出来な自分なんて。 いつか失敗してしまうことが恐ろしい。今までの強迫観念により積み上がった周囲の期待は、一つの失敗でどれだけ崩れてしまうのだろうか。ハリボテであることが分かってしまったら、どれだけ失望を買うことになるのだろうか。 ならば、誰にも期待なんてされない、誰もが今日を自分のためだけに生きる海の底に行きたい。そうして人の目に触れることなく悠々と泳ぐ深海魚になりたい。 鹿谷鬼燈はスイマーであった。 水泳の才能だけではなく、教養や美しさに恵まれた彼女は、大いに将来を期待されていた。 しかしその重圧は若い芽を押しつぶすこととなった。 他者からの過剰な期待を恐れた彼女は、自分を追い込み、誰もが自分を否定する妄想にふけるようになった。そうすることで自分だけは自分をどうしようもない存在だと認識できると思ったからだ。 簡潔に述べると、「過度な期待から逃れるために必要以上に自己卑下を行うことで精神の平安を保っている」状態になった。 もちろん彼女はこの間も良い選手であろうという努力をしていなかったわけではない、しかし努力すればするほど転落を恐れるようになることには気づいていながらやめられなかった。 そうしていると今度は彼女自身が彼女を否定し始めるようになった。（これも彼女が意識的にやっていることなので、いわゆる「狂気」ではないとしたい。） 次第に選手生命にも影響が出るようになった。自己卑下によるストレスから体が思うように動かせなくなったのだ。 そうして本当に「どうしようもない」存在になったと思い込んだ彼女は、本来なら溺れるはずのない海に、泳ぐどころかもがくこともせず身を委ねた。 自分が知らない場所、自分を知らない人。 そこでなら彼女は「望まれる自分」として振る舞うことはない、朗らかで少しお転婆な、しかしどこか気品のある人としていられるだろう。 しかし忘れてはいけない、彼女を「監視」しているのは他でもない彼女自身であることを。 髪は元々黒色であった。ストレスの影響により白くなったが、もちろん一夜にして白くなるのは迷信だ。まばらに白髪が混じるのが見栄えが悪いと感じた彼女が、真っ白に染めたのだ。 ホオズキの花言葉「心の平安」「偽り」「私を誘って」

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