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「母さんも、親父も、結局はあいつばっかり おかしいだろ？血を分けた同じ兄弟なのにさ」 「どこか遠くへ、誰も、俺の事知らない所へ」 「俺馬鹿だからさ、ちゃんと言ってくれないとわからないよ」 _____________________________________________ 蒼羽　朔海 (ｱｵﾊﾞ ｻｸﾐ) 21歳　大学生　男性 映像系の大学に通っている。主に一眼で写真を撮影している。 映画や、動画はあまり興味なくそれなりに作れるものの、特に作ろうと思わない。授業でやっただけ。 優秀な兄を持つ。最初こそは同じ双子だし競争心が働き努力はしてみるものの、どうあがいても平々凡々、一定以上はいかない、どれもそこそこ、特筆してできることもない。少し他人より足が速い程度だが、自分より足の速い人だなんてその辺に沢山いる。 中学3年生時代、兄と同じ高校に行こうとするも受験で失敗しそれからぽきりと折れる。 なぜ自分はこんなにも頑張っているのだろうか?同時に生まれたのになぜこんなにも違うのか、そもそも努力したところで兄以上にはなれない。 そこそこの弱小陸上部がある高校に行き、陸上部に入り、即レギュラー入りで少し自信を取り戻し県大会まではいくもののボロ負け。結局はそれまで。 「期待していたのに」と陸部顧問から言われ、何故か呆然としてしまい高2の夏の大会前に退部する。 それからふらふら友達と遊んだり、それなりに馬鹿して、彼女作って、高校生活を終える。 適当にへらへらしていれば、いざこざもないし、波風立てなくて済むし、めんどくさくないよね。 無駄に頑張ってどうするの?才能ゼロはどうあがいても1にはなれないじゃん。暑苦しい。 兄とはそこそこ。話すし、出かけるし。 側から見たら仲のいい双子。 幼い頃から兄ばかりに構う両親に なんで俺の方は見てくれないの？こっち見てよ。ほら、テストで初めて90点取れたんだよ、すごいでしょ。だからこっち見てよ。俺のこと、無視しないで、ちゃんとこっち見て、俺を見て。なんで泣いてるの？俺があいつと違って出来損ないだから?俺、頑張るからさ、もっといい点数取るしかけっこでも1番取るから。褒めてよ。こっち向いて。そっちばかり見ないでよ。 と思っていた。高校入ってからは無関心。諦めた。 人の温もりが欲しいがために彼女を作る。ずっと俺のことを見ていて欲しい。 兄はちゃんと好き。けれどやっぱり複雑。 お前がいたから、俺は色々諦めたんだ。お前が居なければ。と思ってしまう。 それなのになんで、優しく接するんだよ。おかしいだろ。お前もどっか行けよ。俺を置いていけばいいじゃないか。と思ってる。 置いていかれたくない。待ってて欲しい。と思っていたが諦めた。 赤いリボンは無性に外せない。兄を感じてしまうのに、外したいのに、やっぱり外せないや。 成長する過程で、諦め癖がついてしまった。できなければぽい。そこそこできるやつしかやらない。 カメラはそれなりに撮れば雰囲気がいい感じになるからやっているだけ。 将来の夢はそこそこ普通にサラリーマンとかでいいかな。たまに旅行できれば。 _____________________________________________ お前が居なければ、生まれたのが俺だけだったならどんなによかっただろうか。そんな考えもとうの昔に捨てた。考えたところであいつは居なくならないし。手を差し伸べて差を見せつけてお前も馬鹿にしてるんだろう？やめてくれ。変な希望を差し伸べないでくれ。期待してしまう。 親も学校の先生も友人も彼女にも期待するのはやめた。理想ばかり押し付けやがって、誰も俺のことをちゃんと見てくれない。 みんな嫌いだ。全員いなくなってしまえばいいのに。とふと思うけれど現実的にできるわけない。頭の片隅に追いやる。 あいつが空で、俺が海。皮肉だよな。あいつはどこまででもいける空。かたや俺はそんな空を映して真似をするだけ。どこにだっていけやしない。深く落ちるだけ。 空は好きだ。囚われない、自由で誰にでも平等に太陽はさすし、雨は降る。 海は嫌いだ。穏やかな時もあれば荒々しい。人を巻き込んで飲み込む。 こいつとのドライブが終わったら、どこか遠くへ行こう。誰も俺のことを知らない、比べない、ちゃんと見てくれる場所へ。

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