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武士の家系に生まれた彼には、剣の才能がなかった。 「それでもいい、お前の護りたいと思う者のために、己の中の刃を振るえるようになれ」 祖父の言葉が今でも染み付いている。 祖父や父とは違う道を歩む、自らが得たオーヴァードの力は他の親類にはない、剣の才がない己がやっと見つけた道だった。 夜の闇に紛れ、刀の代わりに弩を持つ。 そんなある日、FHに協力している企業の重役の暗殺任務が彼に言い渡された。 目標のボディガードはただ1人、自身の暗殺スキルならばターゲットとボディガードの2人を確実に処理する事など造作もない事。 重役に向けて矢を放つ、いつも通り倒れたターゲット、矢の回収のためにも目撃者であるボディガードには消えてもらわねば。 続けて一矢、ボディガードも倒れた。 矢の回収のために死体へと近づく、重役から矢を引き抜いた。 そしてボディガードへと手を伸ばし、ふと、手が止まった。 祖父だ、ボディガードは祖父だった。 震える手で矢を引き抜いた。 「お前の護りたいと思う者のために、己の中の刃を振るえるようになれ」 俺が護りたかったのは……。

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