タグ： 召しませ毒、召しませ薬

始まりは少し世界が色褪せてきたことだった。 小学校を卒業する頃にはすでに世界はモノクロになっており、色の認識ができない病気だと思っていた。 小さい頃から花が好きだった私はその色を楽しむことができなくなり、ひどく悲しんだのを覚えている。 なんとか元に戻らないかと医療系の本を読み漁り、その過程で本を読むのが趣味になった。 結局解決法などわからないまま成長し、今度は視力が落ちてきていることに気づく。色を失った視界が徐々に、徐々にぼやけてきている。眼鏡をしても補うことの難しくなってくる視界に怖くなり、これまで研究してきた文献の記憶を頼りになんとか薬を作り、ギリギリの視力で留めることはできた。 最近では呼吸をするのが苦しくなってきた。私は単なる色覚異常ではなかったのか。生まれつきのこの鱗の様なアザはなんなのだろうか。医者が言うにはあと1ヶ月らしい。呼吸ができず、視力の低下が激しい。まるで魚にでもなるような変化だった。 あと1ヶ月 私には最高で最強なパートナーがいる。 私の最後の1ヶ月。いままで自分の身体のために費やしてきた人生。 こんな私に付き合ってきてくれたあの子に尽くしても楽しいだろう。 最近遠ざけられている様な気もするが、どうせ1ヶ月。 そのさきに私がいないのなら、嫌がられても、逃げられても君の為に行動しようか！ 音を頼りに生きている。見えない情報は音が教えてくれる。 感覚を頼りに生きている。触診とは案外侮れないものである。 君を頼りに生きている。君は間違いなく私の光で、見えない世界を教えてくれる。 最後くらい華々しく、人のため、君のため、尽くそうじゃないか！

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