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軽薄な雰囲気の男性。年齢の割には若く見えるのは、容姿のせいか落ち着きのない雰囲気のせいか。 誰と付き合うにも広く浅く、あまり深入りせずに表面だけの付き合いが多く、その関係性の構築も軽薄さに拍車をかけている。 誰にでも笑顔を浮かべて接する様は、人によっては親しみやすく、人によっては真剣みにかけると捉えられるタイプ。 容姿も悪い訳でもなく愛想も良いことから、そこそこモテる。高校生くらいから恋人の居なかった期間の方が少ない。 が、どれにも真剣になることが出来ず、どれも長続しない。いくら相手の容姿が良かろうが、素敵な性格だろうが、そんなことは関係が無いのだ。 都会の大学を卒業後、地元に帰ってしがない営業職のサラリーマンを続けている。 そのテキトーな性格と付き合い方から苦労することも多いが、のらりくらりと仕事も変えずにここまで来ている。 就職してからもあまり性格は変わらず、相変わらずフラフラと遊び歩くことも多い。夜遊びも決して少なくない。 広く浅くの人間関係からあまり深い付き合いの友人も居ないのだが、唯一友人関係が長続きしているのが、幼馴染の女の子だ。 元々両親の仲が良かったことから、産まれた時から幼小中高とずっと同じクラスで過ごしてきた。 大学になってようやく別々の所に行ったものの、いざ就職するとまた同じ地元に戻ってきたため、ずっと関係性は続いている。 ただ、一度も恋愛関係になったことはなく、発展する雰囲気すら出したことが無い。 幼馴染の女の子、鹿嶋千暁とは、自分と真逆にとてもしっかりとした子で、周囲からは凸凹だの、よくお前愛想つかされないなだの、勿体なさ過ぎるだの散々な評価である。 フラフラしている陽大は叱られつつも、お互いに何でも悩みをぶつけられたり相談できるような間柄。高校以降はお互いの恋愛相談が多くなっていった。 この空気は年を経てもあまり変わらず、今となっては定期的に安居酒屋で管を巻いている。 お互いに腐れ縁と言いつつも、陽大の側はこの関係性を非常に心地よく感じている。幼馴染側の感じ方は、意図的に気にしないようにしている。 とは言え、いつの頃からかテキトーに雑談を楽しみつつも、恋愛の話になると主に彼女の愚痴や相談を聞くことに終始するようになった。 自分の話は極力しない。　誤解されたくないから。何を？こんなことをやってきて、今更何を誤解されるというのだろう。 ―――――どうでもいい設定の話―――――― 人と深い付き合いが出来ないのは、彼の体質にある。 『エンパス』一般にそう分類される特徴は、共感能力の異常な高さにある。特に、痛みに対する共感能力が人並外れているのだ。 誰かが傷つけば同等の痛みを感じ、心無い暴言を吐かれた相手には同じように胸を押さえる。なんとも不便な力である。 コレがあるせいで、人と付き合いを深めることが難しく、どうしても広く浅くになってしまう。 他人と深くかかわることで、自分が傷つく、イタイことが怖いのだ。 それでも、きちんと関係性を構築しようと思っている相手には、痛みを覚悟してでも仲良くしようと思える程覚悟して向かっていく。 痛みを抱えてでも向かっていけるのはかなり稀であり、人生でも殆どいなかったとかなんとか。 ―――――――どうでもいい昔と今の話―――――――― 高校生の時の話である。 千暁との友人関係はずっとこのまま続くだろうな、とぼんやり考えていたある日、彼女から持ち掛けられた相談は、同じ部活の先輩が気になっている、協力してくれないか、という内容だった。 もちろん笑顔で協力すると、いつもの調子で快諾した。　いつもの薄っぺらな笑顔で。 この時、彼は初めて、誰とも共感できない、自分だけの痛みを味わった。 既に浅い関係構築を克服しようと、深く付き合って生ける相手を探して何度も彼女をとっかえひっかえしていたのだが、この頃から恋人関係の成立から解消までのスパンが短くなりつつある。 まるで、自分から痛みを求めているような、どこか自罰的にすら見える在り方は、残念ながら内情を知らない人たちには単に軽薄なだけにしか映らないのだ。 遊び歩いていたせいで万年金欠だったが、最近ようやく貯金を始めた。 そろそろ給料丸3カ月の貯まりそうな通帳を眺めては、 ｢重すぎて、流石にキモいな｣と自重気に一人笑うのである。

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