タグ： 死中に生を求める

カメラマンの女性。 幼い頃はお父さんが大好きな女の子だった。天体観測が好きなお父さんは、織香をよくキャンプに連れて行ってくれた。当時小学生だった織香も、お父さんと一緒に天体観測に行くのがお休みの日の楽しみだった。 しかし小学5年生の冬、当時まだ41歳だった父親が突然倒れ、そのまま亡くなった。原因は心筋梗塞による心不全であり、遺伝性の病気だった。検査の結果、織香にも同じ病気があった。 大好きなお父さんを無くした織香は、声をあげて泣いた。お葬式でもお通夜でも彼女の鼻をすする音が絶えなかった。病気のことはよくわからなかったが大好きなお父さんを失ったことはそれだけで十分辛かった。そして夫を失い、娘の病気を知らされた母親は泣かなかった。少なくとも彼女の前では。 持病は、すぐに大事に至る病気ではないものの、他の人よりも生活習慣に気をつける必要があった。自分で管理できる必要があることと、母親がパートを増やし家に居られる時間が減ったこともあり、自分で料理をするようになる。 中学では部活に入らず、家の家事をしていた。母親には部活をしても良いと言われたが、断った。それは昼寝をするため。当時、夜中にこっそり天体観測をするのが彼女の楽しみだった。 高校では天文部に入り、友達や先生と星を見に行ったりもした。顧問の先生がカメラ好きで、誘われて行った写真の展示会で見た夜空の写真に一目惚れをしてカメラに興味を持った。一目惚れをした写真は、ポストカードにして売られていたのを買い、今でも部屋の写真立てに飾っている。高校を出た後は、総合大学に入学して写真部に入った。 （今回のシナリオに誘ってくれたのは、このサークルの人かも？） 　現在はカメラマンとして活動している。撮っていて一番楽しいのはやっぱり星空。仕事道具のカメラで質のいいものを揃えているのはもちろん、趣味の天体観測に使う望遠鏡も高いものを持っている。 　持病のことを知っているのは母親以外では医者のみ。友人には誰一人として話していない。 　社会人になった今でも彼女は実家で母親と暮らしている。それは、父親の仏壇に毎日手を合わせるためであり、「私より長く生きるのよ」と悲しそうに言う母親を少しでも安心されるためだ。

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