タグ： 少女庭園

「紫花はいい子だからね。」 「紫花は賢い子だからね。」 「紫花は器用な子だからね。」 「はい、お父さん、お母さん。」 父母に可愛がられ、多くの期待を背負いながら成長した箱入りの娘。 能力が低いわけではなかったので、苦と感じることもなかったが、父母の指示がないと動けない子に育った。 自我底辺人形のような子。幼馴染の日葵がいろんなところに連れて行ってくれる子でなければ、今だ世間知らずの一風変わった子であったかもしれない。 そんな紫花にも、最近唯一自分の意志で追いかけたい人が出来た。 鈴音の存在である。それは初恋に似た、憧憬に似た、羨望に似た感情。この人のようになりたい、近づきたいと強く思う。 でも彼女は自分で動いたことがない。自分の好きなものも分からない。同じ行動を、同じように、言われたとおりにするだけ。それは今までの自分と何の変化があるのだろうか。そうして少しずつ、春に芽吹く蕾のように首を擡げた自我は一層執着を強くさせた。 「うん、ひぃちゃんが行きたいところに行こう。」 「楽しかったよ、ありがとう。」 「私、あなたになりたい。貴女みたいに……じゃ、足りないから……。貴女になりたいの。」 「貴女がするなら、私も。」 椋の花言葉：「素直」、「穏やか」 梨の花言葉：「和やかな愛情」、「情愛」、「なぐさめ」

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