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さや らきら 「こんなきらきらした名前つけてくれたのに愛してくれないの」 放置子、ネグレクト、家庭内暴力 両親は生まれてすぐに離婚している。 離婚というよりは、父親が蒸発してしまった、が正しい。籍を入れていたのか入れていなかったのかすらわからない。 きいたら母が不機嫌になるから。 母は独りで１２年間自分を育ててきた。いや、育ててきたと言えるかもわからない。 実際、新しい父親が出来てから、自分に関心などなくなった。 シングルマザーで、頼る相手もいなかった母はすぐに夜の店に働きに出た。 小学生に上がった頃から、母は疲れとストレスをラキラに向けるようになった。 或る時は、叩かれた。或る時は、蹴られた。或る時は、寒い外に放り出されて、締め出された。或る時は、ご飯も何も準備されなかった。 或る時は、鍵を閉めたまま、入れないまま、母の帰りを待たされた。 それでも、落ち着きを取り戻すたびに抱きしめてもらって、ごめんねと繰り返された。だから、ラキラは母が好きだった。 そのたびに泣いて、怯えて、謝られてまた泣いたけれど、その時の母は優しくて、だい好きだった。 けれど、１０歳にもなったころ、母親にカレシが出来た。 カレシが出来てから、母はラキラに優しくなくなってしまった。痛い想いをした後に抱きしめてくれることもなくなった。 そのころラキラの居場所は近所の公園だった。公園で時間をつぶして暮らしていた。 そこで出会ったお兄さんが、とてもやさしくしてくれた。 一緒に遊んでくれて、時にはおもちゃをくれて、お菓子をくれて、怪我をしたら撫でて慰めてくれた。 そのお兄さんは毎日疲れた顔をしていたけれど、それでも一緒にいるときは優しく笑ってくれて、ラキラはとてもうれしかった。 そんなお兄さんが或る日、自殺をした。 いつも遊んでいる公園の木で首を吊って死んでいた。 第一発見者はラキラだった。その場にあった遺書も、ラキラが一番に読んだ。 ずっと悩んでいたんだって。 ずっと辛かったんだって。 ずっと苦しかったんだって。 ラキラは一緒にいたのに、貰ってばかりでお兄さんを助けてあげられなかったんだ。 １１の冬、母親がカレシと再婚した。 お腹に赤ちゃんがいるらしい。女の子だ。 けれど、自分の妹にはならないらしい。 女の子が生まれたら、ラキラは要らない子になるらしい。 自殺って、どうやってするんだろう。 そう思って図書館のコンピューターでこっそりしらべていた。 自殺の方法を調べて、こわくなった。 お兄さんの最期を思い出して、こわくなった。 自殺したら、苦しいんだ。自殺したら、もう誰とも遊べないんだ。 自殺したら、悲しむ人もいるんだ（ラキラにはきっといないけど）。 自殺なんて、哀しくて、しちゃダメな事なんだ。 自殺しようかなと思いながら調べたが、自殺はだめな事なんだ…にシフトチェンジした。 ―‐‐‐ KP向情報 ‐‐‐― 自殺について調べているうちに、例のサイトを見つけてしまう。 彼はお兄さんの自殺がずっと脳裏に焼き付いていて、顔も知らない人たちが自殺してしまうのが怖かった。 お兄さんみたいに苦しいんだったら、助けてあげたい。 そうすれば自分も救われるかもしれない。 だから止めようと思ったし、助けたいと思った。 SAYAという名を使って書き込み、場所と日時を知り、あの日初めて彼は悪いことをした。 母の財布から金を抜き、バスに乗り電車に乗り、焦燥にかられながら、あの地へ向かった。 辛い思いもしているし、現状つらいんだけど、POWが１７もあるのでなんか強い。 生きて帰ったとしても、母親はすでに知らない土地で再婚相手とともに妹を出産して暮らしている。 退院する日、迎えに来たのは再婚相手の男だけ、それも迎えに来た、というわけではない。 ただ、回収して置きに来ただけ。 誰もいない、電気も水道もすでに止まったアパートの一室に置き去りにして、母親の再婚相手はいなくなる。 雪が降っているのが見える。吐く息は白く、食べ物もない。 今は冬休みで、学校の人がそれに気づくことも介入することもない。 寒さと飢えをしのぎたくて、あのときあのばしょで噛みついた場所に噛みついて血をすすって、 それでも寒いのもお腹も満たされることはない。 …大人になれるだろうか。 大人に、なれるのだろうか。

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