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緋山 悠介（ひやま ゆうすけ） シンドローム：ピュアブラックドッグ 17歳 迷迭香(まんねんろう)という旅館でバイトをしており、将来はその旅館を継ぐことになっている。 義理の兄弟がおり、家族関係は良好。 霧谷雄吾のことを主人のように慕っている。 自分は戦闘用人格を持っているせいか、少々忘れっぽいところもあるが、今まではそれでどうにかなっていたようだ。 現在は一人暮らしをしている。 …というのがカバーストーリーだ。 出自が複雑な彼は、UGNとしてもかなりの問題児だと言えるだろう。 まず、彼のことを語るのならば、覚醒した時の話をしなくてはならない。 彼の父親はUGNに所属する、レネゲイドの研究者であった。 優秀な研究者だったのだが、彼はそんな表の顔とは別に、極秘裡実験を行っていた。 その実験の内容とは、 双子の精神を交叉することにより、ストレス耐久を付け、人工的に戦闘用人格を生み出す、というものだった。 その結果生まれたのが今の悠介だ。 その事実に気づいたUGNが研究所に突入した頃には既に彼は逃亡しており、研究所も壊滅状態だった。これは彼が8歳の時の出来事である。 さて研究所から逃げ出した悠介、もとい戦闘用人格陽介は加虐の限りを繰り返していた。UGN、FH関係なく襲い、楽しげに施設を破壊する彼、だったのだが、その時、彼は運命的な出会いをする。 それは、任侠「火野組」の菅野正義（当時24歳）との出会いだ。 丁度組からの依頼で潰そうとしていた研究施設を陽介が壊滅させているところに出くわした菅野は、襲いかかってくる陽介を鎮圧し、殺そうとするのだが、そのタイミングで人格が悠介に戻った。混乱する悠介。 その様子を見て、戦闘用人格の存在を知っていた彼は「家まで送ろう」といったが、悠介が家の場所を実験の副作用で生まれた忘却癖によって忘れてしまっており、最終的に菅野とその兄弟分の暮らす家で暮らすことになる。 そこで彼を育ててくれることになるのは、先ほど出てきた、菅野正義ともう一人、その兄弟分である鈴木獅子牡（当時20歳）だ。彼らは悠介（時に陽介）を育てていく。そして悠介は菅野に、陽介は鈴木に似ていくようになるのだが、彼らは任侠だ。彼らの道には危険が付き纏う。時には大怪我をして帰ってきたり、時には悠介が捕まってみたり、時には、時には…。 そうしてる間に、彼らは歳を重ねていく。 悠介が彼らの元に来て6年経ったとき、菅野は悠介に対してUGNに行くように伝える。 最初は拒否した悠介だったが…。 「お前は同業になってはいけない」 「同業になれば、俺はお前の背を守らない。同業になれば侠(おとこ)としてお前は自分の道を自分で選ばなきゃならねぇ、そこに俺は口出しすることもしねぇし、お前を導いてやることもしない」 「もしFHにいくならば、俺はお前の心臓を狙わないといけない。…俺を守りたいというのなら、俺の望まないことをしないでくれ」 「もう一度聞く。それでもお前は俺についてくるのか？」 その問いに悠介は頷けなかった。 そして彼はUGNに入ることを決めた。菅野からUGNへのコンタクトを取ってもらい、UGNのエージェントになることになった。 その時悠介は、菅野と鈴木との共同生活を続けさせて欲しいと懇願する。 彼らの立場、そしてUGNとして、カバーストーリーを用意することになったのは言うまでもないだろう。 これが彼がUGNに入った経緯であり、彼の経験だ。 忘却癖について。 彼が患っているもの、それは忘却癖だ。 自分に都合の悪いこと、自分が望まないことに対して、彼は自然と"忘れてしまう"、"蓋をしてしまう"質にある。 それは勿論、自分が陽介になって暴れていたことが主になるだろう。 向き合わなくなる。自分がどうしようもない窮地に立たされたとき、誰かがいなくなってしまったとき、その時彼は記憶を、辛いことを全てなかったことにするのだ。 そうして自分の心を守っている。 脆い心を守るための手段が記憶の削除であるのだ。 故に彼は人に大方興味を持たぬようにしている。 別れという事象に自ら立ち向かうことができない精神状態だからこそ、"大切な人"を作らないようにしている。 学校では鈴木からの教えもあり、明るく、誰とでも接することができるようにしているが、その実他人に興味はない。 自分が興味があるのは、菅野と鈴木のことだけにとどめているのだ。 だから、おそらく、その片方、もしくは双方を失えば彼は……。 任侠である彼らを失う日はそう遠くもない、もしかすると明日になるのかもしれない。 菅野はそのことをずっと危惧している。 今度こそ壊れてしまうであろう彼の扱いに対して、霧谷に手紙を残したり、もし一人になっても暮らしていけるように、資産を残したり、手回し自体はしているのだが、実際起きてみないとどうなるかはわからない。 そうならないことを願うばかりだ。 両足について。 両足は以前捕まった時に足かせが邪魔だったため、自身で片足を切り落とし、逃走を謀った。 無理に切り落とした部分を走らせていた影響や片足への負荷でどうしても、両足を切り落とさなくてはならなくなってしまったため、義足を使用している。 義足にすることで菅野達の身長に近づけたことを本人は喜んでいたとかいないとか…。 料理について。 言わずもがな、男二人暮らしだった菅野と鈴木だ。彼らのためにできることを探していた悠介が見つけたのは料理だった。 初めて作ったのは野菜炒めだったのだが、指を切るわ、野菜は焦げるわ不味いわで散々だった。 だが、それでも、二人は笑って食べてくれた。だからこそ、彼は練習を続け、今ではましに作れるレベルにはなったのだ。 料理は唯一、二人に勝てるものとして、悠介は誇りに思っている。

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