タグ： Pノ介

歌が下手な男ルイス。 漠然と死ぬのが怖かった。 霧が視界を遮り、先の見えない薄暗い路地で1人でいると強い不安感に煽られる。 盗んだパンを片手に滲んだ汗が頬を伝う。 走って走って逃げ延びた先がこの路地だった。 先ほどまで熱かった皮膚が急速に温度を下げ、冷たく濡れた感触を覚えた。 その冷たさが脈打つ鼓動にまで辿り着けば、きっと自分はこの暗闇から抜け出せないのだろう。 孤独で、寂しくて、誰もいない。永遠と独りぼっち。 死んだこともないのに、ルイズは死とはそういうものだと理解したのだ。 死にたくない。だからこそ、自分は生きなければならない。 どれだけ辛くとも、死ぬよりは随分とマシだと思えたのだ。 より一層、生きるための手段を択ばなくなった。 だが、その考えは変わった。 画家ブグローの絵画「天使の歌」を目にしたときに思ったのだ。 生は等しく祝福されるべきであり、死は生があるからこそ生じるものである。 死は万人に等しく訪れ、生の終わり以外のなにものでもない。 自分は、誰にも愛されずに死ぬことが怖かったのだ。 けれど、生が祝福されるべきものであれば、きっと自分もそうに違いない。 だから、死は恐れるものではない。 いずれ来る死を待つその時まで、死を恐れて生きるのはあまりにも惜しいことだと思えたのだ。 そして、感銘を受けた。 たった1枚の絵が自身の心を大きく変えたことに。 だから、願ったのだ。 「自分も画家になりたい」「自分もこんな絵を描いてみたい」 死なないことばかり考えていた自分にとって、それは考えられない夢だった。 だからこそ、今もなおルイズは夢の欠片に縋っている。 『本物』の絵画を描ける日を心から望んでいるのだ。

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ