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口数が少なく、素直では決してないが、ひねくれているわけでも嘘つきでもなく、狡くも器用にもなりきれない、不器用で良くも悪くも年相応の高校二年生。吊り目がちで下がり口角の上にあまり笑わないので、愛想が悪く見られがち。不眠がちで、目の下に薄く隈がある。 十分な愛情を注がれてこなかったので、自己肯定感が低い。ありがとうよりもまず先にごめんなさいを言うことが口癖になっている。幼い頃から親の怒鳴り声や足音に常に怯えていたため耳がとても良く、顔色を窺っていたため人の感情の機微に非常に敏感。 物心着いたときから両親に自分の言葉に耳を傾けてもらった経験がなく、「どうせ私の話なんか聞いてもらえない」という諦めの気持ちから自分の思いや意見を口に出して伝えることが苦手。返事を急かされると俯いて黙りこくってしまう。 そのせいで昔から何かと雑事を押し付けられがち。何となく、自分がいじめの標的になった原因もそこにあるのかもしれないと思っている。 その分文章で伝える能力が高い。数少ない特技で、じっくりと自分の内面の言葉に耳を傾けて言葉を選ぶことが好き。小学校に上がりたての頃は宿題の日記を出すことすらできなかったが、一年生の頃の担任の先生が勇気を出して提出した日記の文章をとても褒めてくれたため、それ以来何とか自信が持てるようになった。作文コンクールで入賞したり、読書感想文が文集に選ばれたりもした。入賞するたび兄も褒めてくれるので密かに誇らしく思っている。 元々読書は好きだったが、いじめられるようになってからは以前にも増して教室から逃げるように図書室に籠るようになった。自分を傷付ける人たちは図書室まで来ないから。 長いパスワードのかかったスマホのメモ帳に、誰に公開するでもない、日記とも小説ともつかない文章を書き溜めては保存している。作文や読書感想文で書くような良い子の文章や、恋愛や友情、家族愛についての明るい話は一つもなく、日頃の鬱憤をぶちまけるような内容ばかりが書き連ねられている。 自分を虐げて抑え付ける全てのものに本当はとても反抗したい、傷付けたい、痛め付けたい、死んでしまえば良い。この衝動が、紙の上でなら認められると気付いてから、文筆業を志す。 両耳にピアスを開けている。嫌なことが重なってどうしても耐えきれなくなりそうだった日に勢いで買ってばちんと一思いに穴を開けた。 開けてしばらくは夜も眠れないほど痛んで開けたことを後悔したが、元々可愛いものと綺麗なものが好きなので、安定してからは慰めにバイト代の入った日に気に入ったピアスを買ってきて、部屋の中だけで付けたり眺めたりしている。 大学進学した、四つ年上の兄がいる。実家を出るときに「万葉が家を出たら一緒に住もう。うちにおいで」と言ってくれた言葉を支えに家でも一人で耐えていたが、兄に恋人ができたと知って黙って進学と一人暮らしのためのバイトを始め、普通二輪の免許を取った。通学路から一つ外れた通りにある古書店でバイトをしている。 進学したいが親に相談できず、奨学金の借り方と願書の出し方を担任に相談しようと思いながら二の足を踏んでいる。

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