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冷泉葵（れいせん あおい） ひょろ長い印象の冴えない男。高校を卒業後就職に失敗、そのままコンビニのパートをダラダラ続けている。 以下秘匿バレ 　空き巣に手を染めたのは二十歳の頃だった。コンビニのパートタイムだけでは稼ぎが心もとなく、貯金は貯まるどころか減るばかり、遊ぶ金も足りず、その不安定さからつい魔が差したのだ。 　最初のターゲットは近所に住む老夫婦の家だった。人のいい夫婦で、ご近所付き合いという意識の薄れた現代でもなお、葵や葵の弟によくしてくれていた。その中で、老夫婦が旅行で家を空けることを知ったのだ。幸い、彼らの防犯意識はあまり高くなく、ネットで調べた知識を使えば侵入は容易だった。犯行がバレることはなかった。知った家だったから、荒らさず最低限のものだけを頂戴したので、夫婦も気付かなかったか、気づいたとしても気のせいと片づけたのだろう。 　次はまったく知らない隣町の家。この頃には既に、ダークウェブの情報交換掲示板に張り付いて上手いやり方を調べるようになっていた。空き巣のスリルは、冴えない人生を送る葵にとってはギャンブル性の麻薬に違いなかった。この時も上手くいった。ニュースにもならない、小さな悪戯のような、幼稚でくだらない犯罪だった。 　そうして葵はこのギャンブルの虜になった。当初の目的であった金銭はもはや二の次で、今はもう、人生を賭けた大きな勝負に病みつきになっていた。この下賤な趣味は今もなお続き、そうして空き巣からも、つまらない人生からも抜け出せないでいる。 　家族を失ったのはそんな折だった。この件については、正直まったくと言って良いほどに記憶がない。母も父も弟も、誰も彼もが悲惨な死を遂げたのだと聞いた。聞いたと言っても第一発見者は自分らしいが、しかし本当に記憶がないのだから、聞いたと言うしかなかった。もしや空き巣がバレて報復に遭ったのだろうか？　それならなぜ自分ではなく家族を殺したのだろうか。わからないが、もしそうなのであれば、自分の身もきっと危ないだろう。本当に報復なのか、だとしたら何者の仕業なのか……自らが次の凄惨な死体となる前に、突き止めなければならないかもしれない。

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