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どこかで買われて来たらしい羊。番犬であり、スケープゴートであり、人間山脈でもある。守るべき主人とは年が近く、物心ついた頃からずっと一緒だった。 顔の傷はかなり昔に主人を守って出来た物。普通の人間であれば脳と頭蓋への損傷が大きすぎて死んでいたような怪我だったが、契約のおかげで今は問題なく快癒している。失った右の眼球とケロイド化した皮膚以外は、継がれた骨も脳も普通の状態と変わりない。怪我をした当時の記憶は曖昧だが、主人を守った事、守られた側の主人がすごい顔をしていた事だけはなんとなく記憶にある。 物心付いた頃からずっとこのような状態であったため、自分の現状についてこれよりも良い物があるという風に考えた事が無い。いや、内心のどこかでは気が付いている。自分たちの関係性は特殊で異様すぎるという事に。だがそんな事を直視して何になるというのだろうか？　ここには手元に配られたカードしかない。自分はこのやり方しか知らない。ならばそんなことは「知らない」のと同じだ。賢い番犬は無意識の内に頭に蓋をして、従順な仔羊として自分の心臓を守っている。 主人以外の人間にあまり興味が無いように見える。自分の容貌にも、他人の容貌にも頓着が無い。傷跡でビビられようが、身長で舐められようが、主人以外の人間は敵か無害かのざっくりとした枠組みでしか捉えられていないようだ。 あえて趣味らしき物を挙げるならば自己研鑽。数年前のマイブームは投げナイフであり、ある程度満足の行く所まで仕上がったらしい。今は身体的な隠蔽術を修練している。とは言え殆どの時間を主人と共に在る事に費やしており、余暇の時間はあってないような物かもしれない。 色白で、スラブ系の血を引いているように見える。中華マフィアの闇マーケットで叩き売られていたため、出自は不明。労働奴隷の枠で売られるくらいには健康な幼児ではあったらしい。

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