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＿カサクラ入道という男について 長身の顔色の悪い男は、常に子供用の傘を携帯している。 彼は雨が降ればそれを広げ、普段の猫背ぎみな姿勢を整えると、陰気で皮肉げな表情が少し柔らかくなる。 男は、不幸な人間だった。 男の両親は度々犯罪を行い、しまいには金のために人を殺した。男は幼い頃、両親から暴力を振るわれながらも、その犯罪行為を手伝っていた。 両親と共に強盗に入った夜、当時8歳だった男は家の前で周囲の警戒を任されていた。外は大雨が降っていた。 一人の男の子が傘を持って、家に近付いてくる。男の子はたったいま強盗が行われている家の子どもだった。 なにも知らない男の子は、濡れ鼠の男にその傘を渡した。 男は傘を受け取ると、男の子を見失った。雨音に混じり、家から悲鳴と銃声が聞こえた。 そこからの男の記憶は、厚い雲と地面を叩く雨の音、固いコンクリートの感触と誰かの温かな体温だけであった。 男は気が付くとUGNで保護されており、両親は亡くなったという報告を受けた。雨の中、泥だらけで発見されたらしい。 あの一家は全員、何者かによって殺害されており、警察関係者では男の両親が犯行の後に自殺したという見解で一致したそうだ。 現場には、名札のついていない小さな子供用の傘と、その傘に隠れるように男が倒れていたという。 その後、男は名前を変え、UGNチルドレンとして活動することとなった。 男が行く先では必ず雨が降った。 やがて成人を迎え、暫く任務に就いた後に、才能を霧谷雄吾に買われると男はUGN支部長となる。 「私の能力は大したことはありません。ただ、誰しも突然、予期せぬ雨が降ると、今日は運が悪いと思うでしょう。 少しずつ気分が落ちていく。靴が湿って足を動かすのが億劫になる。服が濡れていつもより動きにくくなる。 地面は滑りやすくなって、体温が下がり、知覚も鈍くなる。ちょっとした不幸は重なって、大きな不運を呼ぶ。 私の能力は、そのような不運を免れるためのものです。あるいは、少しばかり招き入れることもあります。 …私の両親に行ったように。」

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