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楠嶺大牙(14)、男 学生探索者のため、技能初期値に変動のあるところに関してはその他から処理。 【過去】 年の離れた姉がいた。心優しい姉は、他人の困り事、相談事を放っておけず、親身に寄り添う人だった。そんな彼女は中学生の頃、死んだ。理由はいじめだった。 いじめのターゲットになっていたクラスメイトを助けようと手を差し伸べたのがきっかけ。いじめっ子の反感を買った彼女は新たなターゲットとなり、エスカレートしていくいじめの末に学校内で階段から落ちて頭を強くぶつけてしまう。血まみれの彼女は一度病院に運ばれるが処置が間に合わず、そのまま生を閉じた。 姉の死に対して、学校側は「生徒同士で遊んでいた際の不幸な事故」として公表し、メディアもそのように報じた。これに納得しなかったのが父親である。学校、警察、メディアへ猛抗議の末、【不幸な交通事故】により彼も亡くなることになる。なんでも、いじめに関わっていた中に権力者の身内がいたとか……？真偽はもみ消されているため不明。 姉と父親の死を機に、母親は狂ってしまうことになる。このとき、母親は既に大牙を身篭っていた。 【喜との出会い】 小学生の頃、一度帰路についた大牙は忘れ物に気が付く。取りに戻った先で、喜は誰かと話しをしていた。それが誰かは覚えていないが。 喜の家庭環境、複雑な話をしていたのを、ぼんやりと覚えている。巻き込まれ彼女の話を聞き、適当に相槌を打つだけの自分を、彼女は何やら気に入ったらしい。それから、喜の話をただ聞いている。 【現代】 生まれてから今まで、「面倒事に関わるな」と母親から強く言われ、躾されてきた。父親、姉の死は、いじめや権力に刃向かったせいだと母親は感じているため、そういった物事から大牙を遠ざけたかった。大牙に生きて欲しいための躾だった。そして、大牙には医者になる道を、優秀な医者になる道を歩ませることになる。姉の死は、医療さえ間に合えば免れたと思っているのだ。たらればの話をしても、仕方がないというのに。 心優しい父親の子、心優しい姉と同じ両親から生まれている大牙も、根はとても優しい子だった。故に、本当は面倒事にだって寄り添いたかった。でも、その優しさのために母親の言いつけを破ることもできなかった。そうして選んだのは、話を聞くだけに留めること。手は出さない、解決もしない。ただ、話は聞く。医者を目指すことは、母親の言う通りに従って生きてきた。自分の想いと母親の愛情の妥協点を大牙なりに考えた結果だった。 友人と呼べる人がいなかったわけじゃない。学校で声をかけてくれる人がいなかったわけでもない。ただ、周りとの関わりを最低限にしているうちに、自然と人は離れていくものだ。当然だ、親身になって寄り添ってくれる人と居た方が、みんな心地がいいに決まっている。 それでも自分から離れていかなかった男がいる。親友、とも呼べるだろう彼はもうこの世に居ない。強く明るく夢を追いかける彼を密かに応援していた。そんな彼が自信を喪失し荒れていく姿を隣で見ていた。どうにかしてあげたいと願っても、母親からの言いつけを破れずに、なにもできないまま彼は自殺を選んだ。 母親は「面倒事に関わると父や姉のように死んでしまうんだ」と言った。でも、「関わらなかったせい」で親友は死んだ。どっちが正しいんだ。わからない。言いつけと現実が綯い交ぜになって、思考を止めた。 仮に疑問を覚えたって、今更生き方は変えられない。他人に踏み込む勇気もない。もしかしたら、今踏み込めば喜のことは救えるのかもしれない。本当は、ずっと救いたかった。話を聞くだけじゃゃなくて、彼女がこのままいじめに屈する前に、自分は……。できない。隣にはいられない。変わらず話を聞くしかない。だって、寄り添うって、踏み込むって、なんだ。どうしたらいい。母親の言いつけを破るのか、母親がどんなに悲しむことか。 救いたい人が目の前にいる。その人を救うことは、大切な母親を傷つけ、母親の言いつけに背くことになる。中学生の大牙が抱えるには大きく、重すぎる難題に、やり場のない怒りを抱えることも、あるのかもしれない。 《セリフサンプル》 「楠嶺大牙。よろしくしなくていい、必要以上に関わるつもりはない」 「悩み相談？……あー、愚痴なら聞いてやる。相談ってのは、受けたら解決しないとダメだろ。でも愚痴なら聞くだけでいい。面倒事には巻き込まれたくないんだ」 「いじめは、見て見ぬふりしてる奴がいちばん悪いって、道徳の授業とかでもよく言うよな。ンなことわかってんだよ。でも……あー、くそっ！オレだって、助けてやれるなら……」

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