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風越 翔(カザコシ ショウ)
ID:2263168
MD:2396e7d4768a2db0646e8715cd39fee3
風越 翔(カザコシ ショウ)
タグ:
ykzkn
頸城探偵事務所
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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初期
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アイ
デア
幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
表示
初期値の技能を隠す
複数回成長モード
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<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
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<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
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<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
◇プロフィール 本名:ショー・マルティネス・風越 職業:探偵 年齢:32 性別:男 平均年収:600万 財産3000万 アメリカ生まれ、日本育ちのスペイン系アメリカ人の母と日本人の父を持つハーフの帰国子女。ミドルネームは母の親友から貰ったものらしい。見た目は父の血を濃く継いでおり容姿は日本人寄りであるため、面倒を嫌って普段は風越翔と名乗っている。強いてハーフらしい点を挙げるとするなら目鼻立ちとシエスタをこよなく愛していることくらいである。長男であるが家督は姉が継いだため、一人東京で自由に生活しているが家族との関係は良好である。 風越 樹(父)59 東京の大手興信所で働いていたエリート。息子が探偵業を始めたのと同時期に退職。実績・経験・人脈共に高水準であった探偵の早すぎる引退を惜しまれた。この退職の経緯は大っぴらに語られてはいないが、他事務所に息子が勤め始めたということで、自社の内部監査委員会に利敵行為を疑われるのを嫌ったためである。以降は専業主夫として家に入っている。趣味は庭いじり。基本的には寡黙で思慮深い方であり生真面目なタイプ。自頭の知識と経験則からゴリゴリの理詰めタイプなので、家庭の中で一番心霊現象耐性がない究極のビビり。静かに目を閉じて気を失うタイプ。非科学的な力を信じている妻とは度々レスバを繰り広げている。余談だが、舵船の勤めている興信所の先輩。 ルディシア・ディスカラー・風越(母)57 ディスカラーは旧姓。スペインに本店のある宝飾品店に勤めている。NY支店のオープンスタッフとして渡米していた時に樹と出会う。彼の帰国と同時に一度辞職していたが、近年日本支店が開店することに伴い、現役復帰。現在は一家の稼ぎを娘と共に担っている。副業で宝石言葉や星占などを嗜んでおり、接客の傍らにそういった話題を盛り込み個人抱えの顧客を獲得している。家庭内では唯一非科学的な存在や力を信じており、彼女のふとした言動で時折家庭内裁判が発生する。息子のおおらかさ(適当さ)と娘の交友関係(の作り方の下手さ)は母親譲り。 ラーニァ・シンヴィディウム・風越(姉)33 そこそこ名の売れた推理作家。弟に対しては姉という絶対権力を持っている。性格が悪い。家庭内では心霊耐性がない派閥だが、父や弟程ムキにはならない。家庭内裁判では傍観姿勢を崩さないように立ち回っている。 ・性格 よく言えばおおらか、悪く言えばてきとう。口調は誰とでも変わらない陽気な性格。適当な相槌をしている時は何か考え事をしているときだが、日常でもほどほどに適当なので大した差はない。人当たりも良い為、顧客の評判は悪くはないのだが、親しくなればなるほどざっぱな性格が露呈し人間的評価はあまりよくない。とはいえふらりふらりと仕事はそつなくこなす為、渋々ではあるが頼られることは少なくはない。 ・職業 東京に本拠点を置く頸城探偵事務所の中堅社員として働いる。上司にも買われており実力派メンバーの中では比較的若い探偵。探偵になった経緯は父親が探偵だったからである。基本的なことは探偵学校へ通い習得した。(目星・言いくるめ)並行して父親にも特訓をして貰っていたため、町でうまく情報を集めるための実践的な技術(聞き耳・図書館・信用)も学生ながらに習得していた。探偵業が好きで、仕事を選べないわけではないのだがあえて選ばない【来る依頼拒まず】なスタイル。なのにスケジュール管理が絶望的に苦手である為、よく締め切りに追われているが、実力がある故の多忙である。と本人は語る。大学のOBとして英語の授業の手伝いに行ったことがきっかけで現在、同事務所所属の日義と知り合う。そこで紆余曲折あったのだが、結果、日義に探偵としての才能を見出しスカウトという形で事務所に引き入れ、新米探偵として働かせている。指導役の一人でもある。 ・趣味 トレイルランニングと城下巡り。トレイルランは大学時代にハマって以来、一か月に一回は高い山へ一人走りに行っている。普通に走るジョギングとは異なり速いわけではないが、筋力トレーニングもしているため脚力には結構自身がある。(回避・キック)また、昔から歴史の授業が得意で、とりわけ日本・海外問わず城が好きだった為、城跡や街並みの残る地域の散策をするのが好きで、遠くの地へ行くと必ずどこかによって帰ろうとする。ミーハーを自称しているが記憶力は悪いほうではない為、普通の人よりは詳しい(歴史)。 ◇神話的事象に対して いろんな物事に頓着がなさそうに見えるが案外論理主義な為、理由がわからないと解明したがる節がある。持ち前の柔軟(適当)な発想で可能性の一部として位置づけることで受け入れる。無宗教。アメリカンホラーは耐性があるがジャパニーズホラー(心霊現象系)はてんで駄目である。最近人形が怖くなった。 ◇参加シナリオ ①めど様作 【三日後の予定】 2019.01.24. ②抹茶大福様作 【恋してパラサイト】 2019.01.30. ③八重樫アキノ様作 【デッドエンドトリートシック】 2019.01.31. KPレス ④きっさ様作 【思考される日常に宛てて】 2019.02.01. KPレス ⑤D猫様作 【ヒトリカクレンボ】 2019.02.01. ⑥にこいち様作 【T高のU子さん】 2019.02.02. ⑦藻様作 【たのしい自給自足生活】 2019. ⑧香月悠様作 【白鴉の城】 2019.04.21. ➈うどん屋で撃たれる(NPC) ⑧~⑨…5か月くらいセッション出禁 ⑩氷穴で犯人になりかける(再度) ⑪タクシー ⑫春をしらず ⑬酒浸りSAN58+8→66、心理学+2 ⑭探偵陽桐茨の解答SAN66-3+6→69、アイデア+8 ⑮S校のU子ちゃん ⑯S&W(後で書くこと)(後で書くこと) ⑰ディアマイフレンド(海外!) !!!!!!以降クリア済シナリオネタバレ注意!!!!!!!! ◇クリア済シナリオの報酬 ◇クリア済みシナリオ感想 ◇時系列まとめ等 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか風越さん。その腕時計、一度修理に出されてはどうですかね?」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、日義君。」 少し神経質でキレキレな見習いに小言を言われるいつも通りの朝。 そう、いつも通り。そんな時、つけっぱなしの古いラジオからこんな話題が流れてくる。 『近頃、『三日後に世界が滅びる』という噂がSNSで話題になっているのですが、皆さんはご存知ですか………』 「よくある終末論だなぁ。にしてもこんな突拍子のないものだったかな?」 「1999年に~とか、なんかの予言の日~とかそういう類のならもっと前から噂になったりするしな~」 デスク仕事を片手間に、同僚たちがそんな会話をしている。そういえば、今朝家から来る途中にそんな話をしている近所の大学生たちがいたような…?チラリと隣の日義君に目をやると、予想通りに目を輝かせてラジオに食いついていた。オカルトや超常現象が大好きな彼にしてみれば世界の崩壊で自分が死ぬことの心配なんて二の次三の次かもしれない。 一応訪ねてみるか。 「はァ?世界が崩壊するなら俺も死ななきゃダメでしょう?人間が生き残った、なんて生ぬるい世界崩壊があってたまるもんですか。」 「なるほど、君らしい答えだ。」 「そういうあなたはどうなんです?せっかくの【終末】だから寝て過ごしますか?」 「おっ、それはいいアイデアだね!」 そんなやり取りをしていると、少し離れた席から同僚の一人が会話に参加してきた。 「え~?ショーはプリッパーとかじゃないの?アメリカだと結構いるらしいじゃん」 「それは最近のことでしょ?…それに人間は死亡率100%なんだよ?いつか死ぬべき時が来たら受け入れて死ねばいいさ。」 「ふ~ん。そういうもんなの?」 「そういうもんだよ。僕にとってはね。」 そんな会話が繰り広げられるなんだか浮ついた雰囲気の職場だったが、所長室のドアが開く音でいつものキリリとした空気が一瞬で戻ってくる。それにしてもさっき話しかけてきたのは誰だったのだろう。聞き覚えのない声だったけど、筒井さん当たりが風邪でも拗らせたのだろう。お大事に。 さぁて、所長に怒られる前にさっさとパソコンつけて、今日ものんびり業務をこなすかな。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 --------- 妙な感覚で目覚めたあの朝。あれから一か月もたっただろうか。 僕は張り込みが必要な仕事であの噂を耳にした日から東京から離れていた。 久々に戻ってきて何となくそんな話もあったなと思い出し、仕事募集のポスターを作っている見習いに尋ねると 「今回のはただのデマだったみたいです。」 と少し拗ねた子供のような表情でいうものだから、なんだか可笑しくて小さく笑ってしまう。 デスクの前を通るときに飛んできた拳による鳩尾の痛みは確かに現実であった。 慣れたものなのだけど今日は少し涙が目に浮かんだ。いてて。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 一瞬だけだが驚いた表情を浮かべた彼だったが、直ぐに普段の表情に戻る。 「今日も遅刻ですか、風越さん。時差ボケですか?いい加減日本暮らしも長いんですからそのくらい自分で管理したらどうです」 「今日もいつも通り遅刻じゃないし、時差ボケはさすがにないよ?おはよう、日義君。」 少し神経質でキレキレな見習いに小言を言われるいつも通りの朝…ではないようだ。 デスクに座ると肩を怒らせ目元に濃い隈を浮かべた同僚たちがそこかしこから群がってきた。 なんだなんだ…? 「こんなたっぷり有給使って行った旅行はさぞ楽しかったよなぁ???」 「結婚だろ!?結婚式なんだろ!!?私は探偵だ!!わかるぞ!!さあ、土産をよこせ!ハワイの砂!!」 「仕事しこたま溜め込んで突然今日からしばらく有給で休む~だもんなぁ???」 …話が全く見えてこない。しかし、カレンダーを見れば驚愕。僕が今日だと思っていた日付は一週間前のものとなっていた。 口々に皆が話しかけてくる内容をよくよく聞いてみれば、僕は一週間前大量の業務を放り投げて突然海外に行ってくると有給を取り休んでいて今日ようやく出勤した。僕のここ一週間内が期限だった数多の業務達は所長の指示で全員に割り振られ、それはそれは修羅場のような毎日だった。…要約すると僕は自分の知らないうちに凄いヘイトを事務所内で稼いでしまった、ということらしい。 その休んだとされる一週間分の記憶がないと説明しようにも、確かに僕のタイムカードは一週間前で止まっていて覚えているカレンダーの日からはちょうど一週間とんでいて、反論の余地がない。んー。これは説明しようとすれば余計に自分の首を締めかねないな…。よし、諦めよう。 「い…いや~ホント急に休んでごめんね!実はヨーロッパの親戚が病気で~」 「「「嘘だな!!!!」」」 …そういえばここは探偵事務所だったな。嘘の説明をする作戦は失策だった。しかしそれと同時に始業のチャイムが鳴った為、同僚は散り散りに自分のデスクへ戻っていった。 仕事が始まってからも目が合うと怨念のこもった眼でにらまれる。 どうしたら皆に分かってもらえるんだろう。逡巡。この手の話題は不思議大好きな頼れる助手に聞くのが手っ取り早いか。 「はァ?ここ一週間の記憶がない…??」 「そうなんだよね…。海外なんて行った覚えがないのにパスポートの利用記録はあるし、確かに記憶してる日から今日までのちょうど一週間分の記憶が…ちょっと、日義君…??」 僕の説明を半分も聞かずに何やらブツブツ考え事を始めてしまった。少し聞き耳を立てれば、UMAだの宇宙人だの聞こえてくるが…口元が少し緩んでいて目元もニヤけてちょっと気持ちわ……そんなに真剣に考えてくれるなんて、頼りになるなぁ…。 財布の中身を確認して一息。今日はお詫びの品でも買って帰ろう。 そしてゆるりとは言い難いが風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか、風越さん。あ、忘れてました。トリックオアトリートー…ならぬ、トリックオアワークで…え、ちょっと風越さん?か、風越さん!?」 --------- 「…あ、目が覚めたみたいだね。」 軽い頭痛ともに意識が覚醒する。診てくれた同僚によると朝出勤した直後に倒れたらしい。 身体に異変はなく単純に寝不足だろうと判断されて今まで休憩室で寝かされていたようだ。 …だが、はっきりとしてきた自身の記憶を遡った結果、寝不足で倒れたわけじゃないだろうな、と自己診断し同時に、情けなさと恥ずかしさとで少し涙目になった。 悪気はないとはいえ日義君の言葉で昨日の出来事を思い出して、恐怖のあまり気絶した…なんて死んでも言えないな。 特にオカルト・古武術・下剋上で構成された見習いの耳に入った日には…考えるのはやめよう。日義君はそんな子じゃない。…といいな。 「…昨日タバコを初めて吸ったせいかもしれないや」 「え?翔、タバコはじめたの?」 「いや、やんごとなき事情ってやつでね。」 恐らく今後僕の人生においてタバコを吸うことはないだろう。 健康上の理由もあるが、あの香りを灰に取り込んだら思い出し恐怖でまた気絶しかねない。 記憶に鍵をかけ、心の奥底にしまい込む。忘れることによるケアは人間という生き物の特権だ。大いに利用させてもらう。 「さ、起きたら仕事いってきな。あと日義が心配してたから、戻ったら声かけてあげてね。」 急に上司が目の前で倒れたんだからね~、と同僚が笑い、自分の不甲斐なさに頭痛を覚え眉間に指をあててしまう。 探偵見習いになんて声をかけたもんかと寝起きの頭を高速回転させ、同僚に見送られながら休憩室を後にした。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか、風越さん。歴代最年少チーフの優秀な脳みそでも、昨日みたく走ってくるって発想には至らないんですか?」 「今日はいつも通りの時間だけど遅刻じゃないよ?おはよう、日義君。」 「帆津辻区は今年も雪が降らないんですかね…」 窓の外の青空を眺めながら呟かれる。 いつも通りキレキレな見習い曰く、うちの区の雪は僕の出勤時間にかかっているらしい。いやはやなんとも責任重大だ。 …そういえばいつからだろう。毎朝日義君にこんな小言を言われるようになったのは。 そもそも、彼と僕はどうして毎日同じ会話をしているんだろう…。まるで様式美のような。 嫌悪感を覚える。これ以上考えたくない。 二日連続で朝から嫌な気分になるのは願い下げだ。さて、昨日の非論理的な出来事と一緒に心の奥底にしまい込む。 いつもと変わらない毎日がある。僕にはそれだけで十分だ。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 しかし、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いはいなかった。 見回すとどうやらデスクに届いた段ボ―ルを開けているようだった。しかし僕がつけている鈴の音で気が付いたようで眼だけ動かし挨拶してくれる。 「今日も遅刻ですか、風越さん。強風、俺の家からは向い風でしたので風越さんの家からなら追い風になると思うんですけど違いましたかね」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、日義君。」 気が付いていないかもしれないがその強風で髪の毛がぐしゃぐしゃになっている。そんな見習いの横を通り過ぎる時、手元が嫌でも目に入ってしまった。 「ヒッ…」 そこには白いフクロウのぬいぐるみがいた。そう、とても愛くるしぬいぐるみだ。うん、確かシロフクロウだったかな。うん、かわいい。真新しくて、白色の布はとても柔らかそうだ。黄色い目もぱっちりして可愛い。うん、大丈夫だ。だから落ち着けショー・マルティネス・風越。 「…?」 自分でも気が付かない時間不自然に日義君の横で固まっていたようで、訝しげな顔を向けられる。…平静を装ってデスクに座る。大丈夫。僕は探偵だから、バレないバレない。 「膝めちゃくちゃ震えてますけど、肩の傷でも痛みますか?」 …流石は僕の助手。バレていたようだ。顔を確認するまでもなくきっと二やリと笑っているのだろう。声が些か弾んでいる。 ――――― この間の仕事で使った事務所共有の新しい隠れ家で起きた凄惨な事件… あの翌日、怪我の事もあって仕事の方は同案件を担当していた先輩に預け、僕は事務所へ出勤した。会社の仕事中の事故や怪我はよほどのことがない限り、事務所の医療に長けた同僚が担当することとなっている。一聞非合法な話だと思うかもしれないがそういう契約なのだ。 軽く包帯を巻いてもらってから、始業のチャイムを聞き所長室へ向かい、今日1日義君と外回りに行ってきてもいいかの確認。難なく許可を得てそのままデスクにいる日義君を捕まえ外へ連れ出すし、意味が分からないと文句を言う彼に深々と頭を下げる。 「はァ?ここら辺の人形供養の寺か神社についてきてほしい、ですか…?」 なんでまた?と心底めんどくさそうな表情で質問されるが、隠しきれない好奇心が駄々洩れであった。 かくかくしかじか、怖すぎる昨日の出来事を事細かに説明し、持ってきた紙袋の中身を見せる。実際に刺された包丁をそっと紙袋に戻し顔を上げた見習いは眩しいまでの笑顔だった。今まで見たことない破顔に少しうれしくなりかけてしまう。騙されてはいけない…。 かくしてその日は、人形供養の寺へ案内してもらう代償に、思い出したくない記憶を引きずり出され隠れ家まで行って再現させられ散々だったわけだが、正式な手順によりあの人形をとおさらばできたことの方が嬉しかったから良いとしたい。 ――――― そんなことがあって、僕の心霊現象耐性が0であることが見習いに露見した、だけならよかったのだが、あの日供養寺でたくさんの人形を見て以来、少し…本当に少し、人形が怖い。 「じゃあ、このぬいぐるみはリハビリのために、しばらく風越さんのデスクに置いておきましょう。」 そういって彼は立ち上がり僕のデスクに件のフクロウのぬいぐるみを置くと、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みに行ってしまった。 「…いやいや、君に届いたものでしょ」 なんて言ったら怖いんですか?なんて言われるだろうしなぁ。ここは大人の余裕ってやつだ。 フクロウの白い頭を一撫でしてデスクに戻す。うん、可愛い。 しかしその柔らかく温かい感触とは別に、手にはまだ潰れる臓物の感触が残っていた。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 「風越、ひどい顔だぞ」 突っ伏したデスクから顔を上げ、伸びをしていると事務所の暗がりから声をかけられる。時計を確認しようとすれば朝の4時だと教えてくれた。 「いつから寝てたんですかね…?」 「大体昨日の18時くらいに事務所に戻ってきてそのままだ」 ざっと10時間くらいか。長時間寝るにふさわしくない姿勢をとっていたせいか、体中が軋む様に痛い。 ――理由はそれだけじゃないだろう?という自身の声は無視する。 「酷く魘されていたが、殴ってでも起こしたほうがよかったか?」 「ハハ…あなたの攻撃を食らったらお腹に穴が開いちゃうんじゃないですかね」 「ほう、元気もよさそうだし試してみるか?」 「ご遠慮願います。」 ――自分はやろうとしてた癖に。という自身の声は再度無視する。 「…風越。」 「なんです?」 「今日は帰って家でもう一日寝とけ」 暗がりから再度投げかけられる。この人が僕を労わってくれるなんて…。そんなにひどい顔をしているのだろうか。確かに昨日は締め切りの業務が二件もあって、日義君や手すきの同僚を巻き込んで――原因は別にあるだろう? 瞬間、無機質な電子音と少女の笑い声、確信していた死… 心の奥底にしまい込みきれなかった映像・音・臭いが鮮明に戻ってくる。 あまりの情報の重さと激しい眩暈に耐えられず、僕はその場に膝をついた。 「…送るぞ」 そう言われ、なされるがまま車まで引きずられる。 見る人が見たら通報されそうだな、という感想が普段なら漏れていたかもしれない。 「鍵よこしとけ。」 どうせ車に乗ったら寝るだろう。と苦笑された。 確かに。腰袋をあさり手渡すと同時に意識がまどろむ。 そしてゆるりと風越翔の一日は幕を閉じた。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか風越さん。病院生活では遅刻は治して貰えなかったみたいですね。」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、それにただいま、日義君。」 少し神経質でキレキレな見習いに小言を言われるいつも通りの朝。 あの悪夢のような時間は何だったのだろう。目が覚めた時には病院で手足も目も全部元通り…夢、にしてはやけにリアルで、それでも痛みはどこにもなくて。理解が及ばない話は忘れるに限る、そう思って深く考えるのはやめることにした。…したのだけれど…。 「……。」 デスクに座り仕事をしようと鞄を広げればそれはやはりそこにいた。 あまり可愛くはないそのぬいぐるみはいつの間にか僕の病室にあって、そしてどこに出かけるにもついてくる。夢であったという自己防衛的思い込みはさせてはもらえないらしい。 あの夢以来、少し上がった料理の腕とは無関係だと思いたいな。 そう願いつつ諦めと共に小さくため息をつきデスクに積みあがった業務へと向き合う。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか風越さん。立て続けの病院生活で鈍ったままみたいですね。お元気そうで何よりです」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、それにただいま、日義君。」 少し神経質でキレキレな見習いに小言を言われるいつも通りの朝。 そういうと僕はデスクには着かず日義君のいた厨房に入り、お見舞いに貰ったを果物を何個か持ってきていたので剥く。 そんな僕を見て日義君は自分が代るかと提案してくれたけれど、僕も今は仕事がないからと笑って丁重に断った。 「…風越さん、なんか呪われてるんじゃないんですか?」 ズバっと臆することなく踏み込んでくる見習いの頼もしさに少年記者の顔が想起されて小さな苦笑が漏れた。訝し気に、でも奥底に好奇心が隠せないじとーとしたいつもの顔で見つめられる。 「ハハハ…怖いこと言わないでよね…。まあ否定はできない気がしてきたけど…」 振り返れば少し悲しくなってきた。この一年碌なことがない気がする。いやいや、しかし何事も気から。うん、弱気になっちゃだめだ。 そう鼓舞して気合を入れなおせば、力みすぎたのか塞がったはずの腹部の銃創がズキリと痛み、思わずしゃがみ込む。 大丈夫ですか?と駆け寄る日義君に思わず 「や、優しい…」 と呟いたのが聞かれ足を踏まれた。痛いよ、痛い。 あの洋館の奇妙な事件から一か月。殺人事件の裁判はまだ続いていたけど、件の銃撃事件に巻き込まれたお陰で出廷できない時期があったため、弁護士さんからは予定より期間は伸びそうで、8月くらいまでは仕事はほぼできない、と言われていた。 その間はお給料は下がるけど、それでも事務所に籍を置いたままにしてくれて、お手伝いだけなら裁判の合間に仕事もさせてもらえる。そりゃ事務所の信用にも関わってくるからしばらくは低い月給のままだとは思うけど、働けることには変わりない。痛みにうずくまりながら 「所長には感謝だなぁ…」 としみじみ零せば、僕の状態を聞いて顔を出しに来た医療担当の同僚が無表情で 「当たり前だ」 と小突いてくる。皆、僕は現被告人だけど、重症の怪我人でもあったんだよ…?わかるかな? 自分で剥いた【病院に届いた差出人不明の果物】を食べたかったな、と見つめながら二人に医務室へと連行される。 あーあ。早く治さなきゃ。で、裁判もさっさと済ませて早く普通の探偵の仕事したい…。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか風越さん。冤罪裁判に、銃撃。それに遭難、と。疫病神か何かに憑りつかれてますよね?」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、日義君。い、いやぁ…その節はご迷惑をおかけしました…」 非難、心配を通り越して、最早哀れみの目を向けられる朝。 今回は完全にプライベートでの1人キャンプで起きた事故だった為、弁明の余地がないのが僕の心を重くする。 事務所に伝えられている事実は一言一句何も事実と相違はないし、晴れて無罪放免。寧ろ被害者として扱われることとなった今回の遭難中に起きた事故。 橋が焼け落ち、外部からの侵入が不可能となったとある山で起きた死亡事故。 その場に偶然居合わせて、死体と共に目覚めた僕。ミステリ小説でいえば密室が完成したあの山の麓で発見されたのは頭を強打し死んだ死体と健康な僕の二人だけで…。 なんというデジャビュなんだろう…。 僕自身、いや日義君も事務所の皆もわかっていた。僕の探偵人生を続けるためには【次はない】ということを。 不幸中の幸いだけど、前回とは違い自分の無罪の証明は簡単にできた。ただ、彼の死亡理由、真犯人が誰かなのか…僕にはついぞ証明ができなかった。 無理なものは無理とわかっていても、二度も…(ここでは二度、ということにしよう。)こう理不尽な目に合ったことで、恐怖以上に少しやるせない気分になる。 誰にも等しく生きる権利があり、死ぬ権利がある。 人間による事故や人間による無差別的な犯行ではなく、人知を超えた理不尽な存在の介入的犯行。 それを証明することは、人間には不可能なのだと痛感させられる。 …。 …あーもう、やーめたやめた。 だって、どうやったって無理だったんだから。 僕は不運だったのだ、と。言い聞かせ、頭の隅に湧いたこの何とも言い難い感情を忘れる為に脳の端へ追いやる。 そうひとりかぶりを振る様子を不審そうに見てくる後輩は置いておくとして…。 久々に帰ってきた自室のゴミをまとめる時に、袋内に滑り込ませた鱗のことを思い返しながら、席へと着いた。 さて、と目線を自分のデスクに戻す。 無慈悲にも拘束期間中に溜まった書類を見て深いため息が零れたけど、同時に喜びを噛み占めた。 少なくとも、今この瞬間は自分の不幸を恨まなくて済むのだから。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の風越翔の場合。(タクシー) 今日も始業ギリギリに事務所に着いた。 既に外仕事に行っている人もいれば、書類をまとめる人もいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくる人もいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みが終わり厨房から戻ってきた目つきの鋭い見習いもいた。 「今日も遅刻ですか風越さん。うわ、なんですかその死ぬほど情けない顔は…。え、ちょっと、やめr、やめてください。おい、離れろ。」 「今日もいつも通り遅刻じゃないよ?おはよう、日義君……にちよしくん~~~~~;;」 昨日のことは全て忘れたことにして、出勤したつもりだったのだけど、正直怖くて一睡もできなかったこともあってか、いつもの変わらない後輩の可愛らしいあいさつを受けて、涙腺が崩壊してしまったようだった。 後輩が困っているだろうと剥がしに来る同僚のしわくちゃな白衣にすら安堵して僕は泣きつく先を変える。 が、この同僚はとてつもなく鋭いくせに鈍いため、僕の心境を知ってか知らないでかそのまま所長室に連行される。そりゃあね、詳細がよくわからない潜入業務1日目で目に濃いクマ、全身に擦り傷を作って戻ってきたかわけだからね…。うん、仕方がない…。 しかし、昨晩の一連の事を素直に話すべきなのだろうか…。 「所長が出勤するまでに軽く診ておく。」 と告げられ、所長室のソファで車から転がり落ちた際にできた擦り傷の手当てを受けながら、ようやく落ち着いた涙の後をぬぐい思案する。 潜入したタクシー会社の所在もつかめなくなってしまった今回の依頼は、結局のところ悪質な嫌がらせ依頼だったと処理されたうえ僕は無事怪我によるお休み手当を半日もらった。 白衣の同僚曰く、骨をやったりはしていないようで、軽い打ち身と擦り傷程度だったみたい。 うんうん。僕の身体もこう言ってることだし、昨日の事は忘れよう。 …とりあえず、元々タクシー利用はあまりしない方だったけど、もう金輪際乗りたくないな。 事務所からの帰り道、走るタクシーを横目にため息が出た。 そしてゆるりと風越翔の一日は流れる。 *ある日の筒井涼の場合。(酒浸り) 今日も始業30分前に事務所に着く。 既に外仕事に行っているヤツもいれば、書類をまとめるヤツもいたり、所長室からゲッソリした顔で出てくるヤツもいる。 そして、一杯10円のドリップコーヒーの仕込みをするために厨房へ向かう目つきの鋭い見習いもいた。 「おはようございます筒井さん。コーヒー淹れておきましたよ。」 「よっ、おはようさん。ん、ありがとよ。」 駅前で買った朝刊を小脇に抱えなおし、個別に入れるタイプのドリップコーヒーが注がれたマグカップを受け取る。 …しかし、この見習い。心なしかいつもに増して眉間の皺が深いような気がする。 「ど~した日義?なんだ、今月の更科部屋掃除そんなキツかったのか?」 茶化しながらコーヒーを近場のデスクに置き方をたたく。 一瞬心底めんどくさい、という表情をした真意を追求するのはやめてやるとして、にっこりと返答を待つ。 「ハァ…いいえ、更科さんの部屋はいつものことなので…。」 そういうと鬱陶し気に肩をすくめて俺の腕から逃げつつ距離を取られる。 まあ、これも日義に限らず良くされる事なので特に気にしない。なんだよ、気さくなおじさんだってのに。 「…そうでしたね。筒井さん昨日まで外仕事なさってたからご存じなかいのも無理在りませんか。」 そう独り言ちると心底気味の悪い物を見るかのように、日義はある方向を指さす。 目線でたどればそこには何も物が置いていない綺麗なデスクがあった。 「…?…あ!もしかして新人が来るのか!やったじゃねぇか、お前も晴れてセンp」 「その机、風越さんのです。」 …しばしの沈黙。んー、俺の記憶だと風越翔って男は常に複数の案件に追われ、デスクに書類とファイルで築いた城に埋もれていて… 「…今度はなんだ!?入院か!?遭難か!?もしかしてとうとう…死ん、じまった……のか?」 流石に死んだとは思ってないが、ここ数ヶ月のアイツの不幸っぷりを見ているとありえなくないのが悲しいところだ。 (…うどん屋は、まあ……ノーカンだ。あれ以来、風越の昼めし用の菓子パン置き場に人知れず追加している妖精さんやってるしな。…運命、だったってこった…。) そんな俺のリアクションを見て、このやり取り何回目だろうか…と言いたげな見習いに深いため息をつかれる。 「悲しいことにご存命です。ですが、ここ数日…仕事を残さずきちっと終えて帰るようになったんですよ。…定時に。」 …風越が、残業せず、仕事を終えて、定時…?? 俺の混乱を理解してかしないでか、日義はこう続ける。 「俺も他の先輩方も、気味が悪すぎて色々きいたんですけど更に気持ち悪い顔をして「ふふふっ秘密だよ(^_-)-☆」とか言ってきて…。」 おいおい、マジか。無意識に額に手をやろうと動いたせいで、小脇に抱えた新聞を落としそうになる。 「おい、誰も風越の尾行しなかったのかよ?」 新聞をすんでのところで抱えなおし、余りの気味悪さに俺は仕事に来ているヤツらにあたるように質問する。 「風越さん、探偵としては尊敬できる人なので…事務所に残っていたメンバーでは尾行成功できなかったんですよ…チッ」 憎々しげな表情で、代表して返答をする日義。 まあ、かくいう日義は他の下賤な連中と違い、風越のプライバシーを知りたい云々よりは単純に尾行を撒かれたことに憤慨しているのだろうが。 しかし、なるほど。そいつぁ確かに不安になる。…が、風越も浮いた話の1つや2つあってもいいだろう。 ここは表立って詮索しないってのが、優しい先輩ってもんじゃねぇか? 「ようし、俺に任せなさい。この気持ち悪いデスクの真実を暴いてやるよっ」 そんなこんなでその場を治め、コーヒーを持ち自分のオフィスに入る。 話題の的が出勤するまであと3分。朝刊は昼休みに読むとするか。 なおその日、風越が定時上がりすることはなかった。 その代わりに、退社時、風越を居酒屋へ誘ったら珍しく断られてショックを受けた男がいるとか、いないとか。 そしてゆるりと筒井涼の一日は終わる。 *ある日の風越翔の思考 仮屋君のあの発言は、一体なんだったのだろうか。 僕は一人、風呂上りの身体が冷える前にエアコンをつけたリビングのソファへ腰かけて、少年との一日の最後を回顧する。 ――― うーん…いや、想像はできるんだよ。 恐らくこう罪悪感の様なものを抱かないでください、っていうニュアンス…だったと思うんだ。 でも、僕はそんなにできた人間なんかじゃない。彼が僕を気遣ってくれていたことは分かる。ただ、彼の目には僕がそんな善性の塊の様な人間に見えるのだろうか…。 正直な話。実は、仮屋君の発言自体の意味がよくわからなかったから反応が遅れてしまったのだけれども。 それでも、気にかけてくれたことは嬉しかったから素直に感謝の気持ちを伝えてみた。 …彼女に対しての罪悪感は、本当に微塵も存在していなかった。 今でもそれは変わらないし、これから変わることもないと思う。 あの謝罪はあくまでも「陽桐茨」の夢を破壊したことに対するお母さんへの謝罪。 いうならば、うーん…。野球を広場でやっていて、近隣住民の窓ガラスを割ってしまったから大家さんに謝った。それぐらいの感覚だった。 …いや、正確には少し違う…かな。 僕は窓ガラスを割る前に大家さんからその家を借りている家主に「この窓ガラスを割るけどいいか?」と確認したうえで割ったから、偶然飛んで行き窓ガラスを割ったボールとは違う。うん。 まあ、兎角。本当にその程度の気持ちだった。家まで届けたのも、ごく一般的な善意…のつもり。 盲目の人間が、遠い地からひとりで家に帰ることができるとは思えなかったし、その人の家を知っているなら送り届ける。くらいは…普通の感覚、だよね? ――― ホットミルクがあったまったことを告げるブザーが電子レンジから響き、僕は一度思考を止めて席を立つ。 よし、今日は角砂糖を一つ入れよう。 ソファへと戻り思考を再開する。 ――― …僕は彼女にかけてあげられる言葉を全てかけてあげられたと思う。 それに、提案できることは全て提案したつもり。 彼女は自分のやっていることは間違っている、といった。 そしてその意見に僕は賛成だった。 でも、彼女はその間違いを自分で正すことができないといった。 自分が行っている行為は間違いだと理解できていたのに。 誰にも他の人の主張を否定する権利はない、と僕は考えている。 十人十色に考えは存在し、解釈も無限に存在するのだから。 でも、間違っているとわかっている道を歩き続け、自分の意思では止まることができないというのなら。 彼女の行く道に分かれ道を設けて、もう一度道を選びなさせてあげることはきっと間違いじゃない。 しかしそれは僕の善意なのか…と聞かれると答えに困ってしまう。 僕は、きっと何とも思っていなかったのだ。 ただ、彼女に質問されたから。答えを求められたから。 探偵志望の彼女自身でその解答を導けた方がいいだろうな、と思っていたし、何より僕たち…いや僕にはウィークポイントになりえる過去があったから、半ば脅されていたのかもしれないけれど。 自分で見つけて、自分で歩かなければ、それは自分の考えとは言えない。 誰かの考えに賛同する、というのとはまた少し違う。誰かの意思に賛同するということを決めたのは当人だから。それはその人の意思だ。 …それでも。それでも自分の意思で道を選ぶことができない、と彼女は言った。 僕は彼女はとてもやさしい子なのだろうと心底思った。だから父を否定できなかったのだ。 …だから、こう解釈することで自分の行動を正当化した。 彼女は実の父親に命を懸けて呪われてしまったのだ、と。 新たな道へ。その一歩を踏み出すことすらできないほど、彼女は追い詰められてしまったのだ、と。 それなら仕方ない。彼女は壊れてしまっていたんだ。あの廃校舎の幽霊のように。 探偵を探偵たらしめる物は何か。彼女はそれを「事件」と答えた。 だけど僕は探偵を探偵たらしめる物は「思考すること」だと思っている。 恐らく、事件と答えたのは、そも、依頼が来なければ仕事ができない。という父親の背を見て思った故か…いや、若しくは父親から常日頃言われていたのかもしれないけれど。 探偵に憧れを抱いていた彼女ほど御し易いものは無い…きっと、草二さんにとって、彼女程従順な自分の身代わりは居なかったのだろう。 同時に、彼の憧れとする探偵という職を彼は理解することはきっとできなかった。 僕は自分の価値観を押し付けそれを正義とし、絶対とするタイプの人が苦手…嫌いだった。 それはきっとその行為が理解できないからだと思う。 人間というものは本能的に、自分の理解できない物に対して、恐怖を覚え、嫌悪し、排除しようとするらしい。 ――― 行儀が悪いとわかっているけど、自分の性格を再認識し、ぶくぶくとマグカップの残り半分になったミルクを泡立てる。 ――― ふ、と家族写真が飾られている写真立てが目に留まる。 確かに、僕もスタートは…父に憧れたのが始まりだった。 帰りも遅くて、数年に一度は怪我もして、どんな仕事をしているのかさえ話してくれない人だったけど僕は父の人間性がとても大好きで、尊敬していた。皮肉なことに彼女と何一つ変わらないんだけどね。 ただ、僕の父は僕に強要なんてしなかったし、寧ろとても渋い顔をされたことを覚えている。それでも父は僕の選ぶ道を止めたりはしなかった。 僕自身止められると思っていなかった。 ――― 季節外れの雨音が深夜の都会に響く。 もう季節は真冬だというのに、雨のおかげで妙に生暖かい。空になったマグカップを洗うためにソファからゆっくりと立ち上がる。 ――― もし、彼女が自分の行っている行為が間違っていないと思っていたなら…僕はどうしていたんだろうか…。 いや、そうなった場合は今回よりもっと簡単だ。突き詰めれば必ず彼女の主張には矛盾が生じてしまうだろうから…。 何故なら彼女がタンテイを名乗り続けて行っていた行為は、「探偵」がすべき事ではなかったから。 自分で考える事を放棄してしまったら、いや、そもそも自分で考えて動かない人間は探偵にはなれない。 でも、ただ自分で考え選択することが苦手、というだけなら訓練すれば改善は可能だと僕は思う。 彼女の道を否定するしかないと、提言はしたものの。 やはり僕は最後まで彼女を否定することはしたくなかった。彼女が僕らを貶めようと手を動かすその瞬間まで。 だから、僕はきっと彼女が僕を…いや、仮屋君を操ろうとし、真実の創作を行おうとした時。 僕は仮屋君と自分を護る為、という大義名分を与えられたことで、ようやく彼女の行動を否定する決心がついた。 そこに感情はなく、ただ安堵があっただけだった。自分の手でエゴという引き金を引かずに済んだことに。 なんて未熟で臆病者なのだろう。いや、きっとこれはただ怠惰なだけなんだ。 自分に深く干渉されるの事が得意じゃない以上に人に深く干渉することが苦手なんだ。苦手…というと不得意というニュアンスになっちゃうかな。まあ、とどのつまり、めんどくさいんだろう…たぶん。 行儀が悪いとわかっているけど、自分の怠惰さを再認識し、口を注ぐために注いだ水を泡立てる。 これは彼女の選んだ道なのだ、と。 それは見知りもしない僕らの事件の真実の創作。 それでも、ここには証拠があった。彼女を否定する証拠。 彼女は間違えてしまったのだ。 警察と同じく僕が犯人というシナリオを作れば矛盾は生まれなかった。 でも、僕は分かっていた。仮屋君が絶対犯行を起こせなかったという事実を。 僕という証人が存在する限り、その虚構…いや虚言を真実と認めることは、探偵である僕にはできない。 だから、彼女の創作した物がどんな結末を迎えようと、僕は否定するし、僕たちだけが否定できる。 そして僕は部屋の天井を不満げに睨んだ。 === 徐々に動作描写と彼の思考が交錯し、ノイズまみれになる。 プツリ、とどこかで音がした。 瞬間、先程まで垂れ流されていた思考は、テレビの画面を消すのと同じように途切れて繋がらなくなった。 === *追悼文 僕が日義君をこの探偵の世界に勧誘したのは本当にただの『気まぐれ』だった。別段、特別な事情があったわけでもない。 彼が帆津辻大学三年生の春、知り合いの推薦で英語の臨時教師として大学にお邪魔していた時、『偶然』出会った。 そしてとある大学内の事件を一緒に解決した時に、僕が『何の気なし』に 「ねぇ日義君、キミ探偵って職業に興味はないかい?」 と彼に語り掛けた。ただ『それだけ』だった。 確かに彼には才能があった。探偵としての才能が。だけど、僕はそれだけの理由で勧誘するような人間じゃない。 でも事実として、僕は彼を勧誘して新米探偵としてうちの事務所で働かせ、彼の指導役の一人だった。 いや、やめよう。この話は深く考えない。そう決めた。僕はこの思考を放棄して、再び心の奥底の箱に押し込めて、なかったことにする。 ――――『とある探偵の日常』 彼の今まで歩んできた人生を、僕は知らない。 どうして彼がその発言に対して二つ返事で承諾したのか、その理由も知らない。 親御さんをどうやって説得したのか、大学をどうやって辞めたのか、完全な素人なのにどうして所長が雇うことを決めたのか。やはり僕は何も知らない。 思い返してみれば、年明けから少し様子が可笑しかった。 そのあと、1月中に2週間ほどの休暇を経て復帰した後は何か吹っ切れたような顔をしていたが、容体は悪化の一途をたどっていた。 おそらく事務所内の数人は気がついていたんじゃないかな。 この間に何かがあったのだろう、と今想像することはできる。そういえば、丁度僕が外仕事で事務所を離れていた時に、腹部に怪我を負ったとか…。 しかし、だからと言って特別心配されることはこの事務所においてはない。 誰かが声をかけてくれる、話を聞いてくれる。そういったことは無い。 グレーゾーンだが、仕事中『不慮な事故』に巻き込まれることはよくあることで、そのために医療班がいるわけで。 そもそも、この事務所で探偵が『原因不明』の怪我を負う事も、精神疲弊の末に『転職』する事も『度々ある』話だった。 だから、今、所長に呼び出されて、日義君がとある調査業務中に失踪した話を聞いても、僕は何とも思わなかった。 静かに今回の依頼内容について語った後、後処理は更科に任せてあると告げ手元の書類に目を落とした所長に対して、僕は一言。 「あはは、やっぱりそうですか。」とだけ返して、所長室を後にした。 自分のデスクに戻る際、この春入る新入社員の為に空っぽに片づけられた彼のデスクが目に入る。 まぁ、日義君は元々奇麗に使っていたけれど。 非情…なのだろうか。 そんなことはない。僕は僕なりに悲しんでいる。 彼の淹れるコーヒーはおいしかったし、朝のちょっとしたやり取りも楽しかった。 それに……いや、やめよう。これ以上思考するのは。 でも、僕は日義君の全てを知っているわけじゃないから、理解もできない。だから仕方がない。 日義君がどんな出来事に巻き込まれたか…そんなことは僕には分かりようがない。 知る必要はなかった。興味を持つ必要がなかった。それは依頼された仕事じゃないから。 薄々勘づいてはいた事だったのもあってすんなりと受け入る。 失踪したという話を聞いても『そうなんだ』という感想しか出てこなかった。 それだけだった。 そういえば、この手の話は普段、内々で所長が処理をしていたはずなのに、今回に限って、何故僕だけに日義君失踪の件を話したんだろう。 しかしこれもまた、僕には関係ない話だ。 === 風越は特別人と深くかかわるのが嫌いとか、そういった理由がある訳ではない。 だが、彼は何かに対して深く興味を持つことをしてこなかった。 その理由は漠然としたもので、誰もわからないという事にしたいから。 誰も風越についてわからない、という事は風越自身も自身についてわからない必要がある。 だから彼は自身の中に事細かな決まり事や、ルーティーン、信条、矜持、プライド、拘り、そういったものを作らない。 かといって、それらに縛られるのが嫌だ、というわけでもない。 その考えはつまり、『縛られることが嫌だ』という拘りに『縛られている』ことになるから。 だから彼は思考を放棄する。その場の流れとその瞬間瞬間の彼の中にだけある直勘に頼る。 以上の事から彼は高い自己防衛本能を有している、といえる。 そして同時に『そういう星の元に生まれてしまった』事に気がついている節が見られる。 また、頸城としての適性も日義の勧誘を無意識で自主的に行った事から高いことが推察される。 それらは一種の素質だ。 ただ穏やかに昼寝がしたいだけ。 今日も依然変わりなく、彼は探偵風越翔で居続ける。 3代目所長 頸城柾の手記より ===
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