タグ： 花冷え

造形芸術家。 大学の頃、作品に行き詰まりふらふらと女の子たちから逃げているときに化野にぶつかり転ばせてしまい資料のようなものをばら蒔いてしまった。 実はそれは自分と化野をテーマにした小説作品であったが、それを読んでうっかり感動してしまい、熱烈アプローチの末付き合ってもらった。(作品を見るにどう考えても両思いだと思ったのだが20回はフラれた。解せぬ。) 化野と付き合うようになってから、作品に向かう姿勢や文字を起こしている時の真剣な眼差しに影響を受け、化野の腕の中をイメージした石膏作品｢腕(かいな)｣を小さなコンペに出し受賞。そのままプロの道へ進む。見目が良いのでモデルにならないかと別の道を勧められることも多かったが、自分は化野の隣で、同じく芸術を学び続ける者として、この道一本で生きていきたいと思っていた。 集中していると腹が減るが、食事の時間も惜しいほど熱中してしまうときがあるので、いつもチュッパチャプスやいちごミルク飴をポケットにいくつか入れている。 今度、初めて大きめの箱を借り切って個展をする予定になっていた。目玉となる作品はまだ未完で名前もつけられてない。ペンを剣のように捧げ持つ上半身のみの、頭すらない中途半端な石膏像だ。早く化野に見せたい。彼ならきっと、意図したことに気付いてくれる。全身が完成した暁にはきっと驚いてくれるだろう。 胸を弾ませ帰路につく途中、くらりと目眩がした。"あ、そういえば飴食べるの忘れてた"そんな間抜けなことを思った。それが、人生最期の思考だった。 ドンッと鈍い音がして、世界は天地が逆になり、唐突に暗闇が訪れ、全てが途切れた。 好きな物は化野の作るキッシュと、自分の顔にたじたじしてる時の化野の顔。(この顔に産んでくれてありがとう母……と初めて感謝した) 嫌いなものはノックの音。アトリエでも自室でも勝手に入ってきて構わないので集中力を途切れさせないで欲しいと化野には頼んでる 仕事柄常に泥臭いのでジャスミンのミストを携帯している。リラックス出来るのか、化野はこの香りがついていると寄ってくる。マタタビかな…… 瞳の色は不明瞭で、光の角度によって色彩をかえる。硝子玉のような瞳をしており、幼い頃は皆異形でも見るような目で見られた。稀に誘拐されそうになることも。おかげで人目につかないように隠れるのが上手くなった。大人になるにつれ綺麗だと言ってくれる人も増えたが、化野が小説内で自分の瞳を表現するのに使っていた言葉の美しさに惹かれて好きになった。

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