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ではみなさん、 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、 テンポ正しく、握手をしましょう。 ――中原中也『春日狂想』 水枝谷精神病院の若き院長。四年前、先代である父が亡くなったためその後釜につくこととなった。副院長である弟やその妻子との仲は良好。二歳になった姪に懐かれており、たまに一緒にアンパンマンを観る。独り身であることを理由に実家を譲ったが、交換条件として、学生時代から変わらない狭苦しいワンルームを退去し、もっといいマンションへ引っ越すよう説得された。ただのワンルームであればどこに住もうが水枝谷の勝手だが、衝動買いしたグランドピアノによって部屋のほとんどが占拠され、その下で寝ていることを以前から心配されていたのだから残当である。なお本人はねこふんじゃったしか弾けない。趣味は煙草と献血、特技は口笛。院長室に飾られている樒は造花だが、この水を換えるのが日課。昔から恋をするたびにその相手が死んでしまうので、そういう星のもとに生まれたのだと結婚は諦めている。長らく色恋とは縁遠かったため、もはや「好きになってしまったからその人は死んだのだ」と思うよりも「死んでしまったのならやはりその人のことが好きだったのだろう」と解釈するようになった。因果の真偽は誰にもわからない。 暴れた患者に対応することがあるため〔回避〕を、指定の治療を嫌がる患者のために〔説得〕を。 2021/01/05 深海

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