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◆邪説　学校の怪談 HO5 立ち入り禁止の旧校舎 立ち入り禁止の旧校舎に、願いを叶えてくれる幽霊がでるんだって。 普段大きな南京錠と鎖で閉じられた玄関扉があるでしょう？ 資格を持つ子が現れた時、空が血みたいに赤い夕焼けの時に…するする鎖が解けるんだって。 そして、向こうから扉が開いて、白い手がこちらを手招きするんだ。 「おいで　おいで」 その手は女の子だったり、男の子だったり、それでも決まって古びた学生服を着ているらしい。 中に入った子がどうなるか？ 不思議とだれも話さないんだって。 話したら二度と会えなくなるからって。 でも、逢魔時に旧校舎の前を通ると笑い声が聞こえるんだって。 楽しそうに　くすくす　くすくすって。 どんな子が中に呼ばれるかって？ 噂だけど、ひとりぼっちの子らしいよ。 いじめられてたり、家に居場所がなかったり、周りに人はいるけど心を開ける人はいない子だったり。 そういえば、入った子はみんな決まってこう言うんだって。 ーーーこんな夢を見るって。 「赤い瞳の黒髪の子が、大人の男に藁人形みたいに大きな釘を体に打たれる夢を見る」 「毎日夢を見るたびに一本ずつ打たれていく」 「その子は血を流しながらわらいながらこう言うんだ」 『7日目に、願いが叶うよ』 ▼背景 昭和初期、まだ同性愛が認められていない時代。この学舎で少年に懸想する男性教員がいた。彼は自分の性的嗜好を憎悪し、否定し、少年に愛憎の気持ちを抱いた。 押さえつけた気持ちは昂るばかりで、次第に狂気の色を帯び始めた。 そうして、夏休みの誰も校舎に立ち入らない期間、彼は何の罪もない少年をこの旧校舎の教室で監禁し、セーラー服を着せ、まるで自らを断罪するかのように、決まって逢魔時に一本ずつ釘を打った。 藁人形の呪術のように、願いを叶えるために。 男性教員は普通の人間になりたいという願いを少年ごと儀式的に葬り去ることで叶えようとした。 だが、儀式を通じて叶ったのは少年の願いの方だった。 たった一人釘を打ちつけられたまま長時間死と戦い続けた彼の願いは、 「寂しい」 「一人になりたくない」 「死にたくない」 「誰か助けて」 だった。 少年は息絶え、教師はその死体を旧校舎の中庭に埋めた。 そのまま供養もされず、地縛霊としてこの場所に存在するようになる。残ったのは、彼の人間的な感情はすでになく、 誰かを助ける、一人になりたくない人の心の闇に滑り込み一緒にいる怪異へと変貌した。 どっちかというと半分藁人形の意識なのかもしれん　(藁人形の意識　とは 以降、少年の霊はひとりぼっちの寂しい子を呼び寄せるようになる。彼らの救いとなるために。 いつしか時が経ち、旧校舎は廃校処分となり、立ち入り禁止になった後も、それは続いている。 夢を七日間見せ、儀式を辿り、そして最終日に孤独な少年少女たちを招き、幸せな時間を過ごす。 そして、夜が来るまでに彼らに自分の体の釘を抜かせ、帰らせている。

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