タグ： ソプスク HO3

保健室には、魔女がいる、なんて言われていた。 そんなのいるわけないのに。 私が魔女なんて言われるのは、銀色のボサボサの髪に、常に隈が浮かんでぎょろっとした朱い目。 本当に魔女で、魔法が使えたら良かったのに、いつも考えてしまう。 だから、保健室には基本みんな近づいてこない。 よっぽど変わった子だけ。 あとは、本当に用事がある子だけ。 保健室の先生になったのは、中学生のとき、クラスに馴染めなかったあの頃。 いつも保健室に逃げて寝てたのがバレて、ちゃんと教室に戻りなさいって言われるのかと思ったら 先生が内緒で奥のソファーで一緒にゆっくりしましょうと誘ってくれたことがきっかけだった。 もうその先生はその時すでに年だったし、引退してどこかで暮らしているんだろうけど、 私にとっては生きていくきっかけになった。 親に捨てられ一人で生きて行くんだと思って 夜の街に繰り出したこともある私が。 先生との出会いで、自分も同じように誰かを救えるような人になりたいと思った。 だから、勉強はすごくがんばった。 それまでは一人で家のことばかりしていたから、勉強は全然やっていなかったし 担任からも気にされなかったから自主的にやることなんてなかったから。 なんとかがんばって、１年遅れて免許を取ることができて 運良く今の学校で働くことができた。 だけど、本当に私を頼ってくれる子なんているんだろうか。 そんな悩みは尽きなかった。 なぜなら、誰も保健室に必要以上に近づこうとしないし、 なんなら、みんな私のことを避けるようにするから。 そして思い出す。 自分が醜い魔女の姿をしていたことに。 先生と同じになりたくて頑張ったあの頃、 周りのことなんてどうでもいいくらい頑張った。 だから忘れてた。 親も、親戚も、私に近寄らず、見向きもされなかったことに。 ただ、あの子は違った。 あの子だけは、私を見た目で判断しなかった。 あの子だけ。

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