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巽風 凪(しろつこ なぎ) 幼い頃からその容姿の為に苦労したタイプ。母親に望んでないのに勝手に着せ替え人形にされたり「貴方は美しいんだから」と型にはめられて見られていた。母親に言われるがままに髪を伸ばし、一定の長さ以下に切ることも許されない。美しくない振る舞いをすれば体罰が飛んでくる。 日本人の母親とデンマーク人の父親のハーフ。3歳の頃に両親は離婚。そのまま母親に引き取られる。16の頃に別の男と母親が再婚したものの、17の時に再婚相手に強姦されかける。なんとかなったものの、それ以来心に深い傷跡が残る事に。 大学に入って一人暮らしをし始める。 必要以上に他人に関わらないように過ごすも、その容姿故に寄ってくる者はいる訳で。それに対する手段として取ったのが「喋らない」事。 プラチナブロンドの長い髪、どこか憂いを帯びた青い眼、そして喋れない事が重なり大学内では「人魚姫」と噂されている。 本当はずっと、幼い頃から公園を駆け回ってみたかった、友達とたくさん笑って遊んでみたかった。転けて擦り傷を作って、泣きそうになってしまうけどそんな痛みを経験してみたかった。こんな邪魔な長い髪を切り落として、「美しい」なんて言われてる服を脱ぎ捨てて、ただ本当の自分でいたかった。 でも、今更そんな事なんて出来ない。 もう私はこんな生き方しか出来ないのだから。 大学を卒業すれば、母親に実家に戻れと言われている。本当は逃げ出してしまいたいけれど逆らう勇気なんて無かった。 だから別の道を選ぼうとしている。深く暗い死を。 でも、きっと、この世よりはマシなのだろうと信じて。 「人魚姫」だなんて言われてはいるけれど、そんなの童話の彼女に申し訳がたたない。あの主人公は自らの意思で王子様を助け、王子様の元に行く。そして叶わない想いを胸に抱いたままそっと海の泡となって消えた。 私はきっと彼女のようにはなれやしない。 でも、ほんの少しだけ憧れた。 健気なままで王子様への想いを貫いた人魚姫。彼女のようにはなれないけれど、せめて。 そう想ううちに一つの想いが芽生えた。 泡になってしまいたい、と。 気付けば夢にまで見るほどに、その体を深い青に投げ出す事を望んでいた。 泡になってしまいたい。 海に、還りたい。 碌でもなかった人生のうちで、唯一その想いだけが微かな光のように感じた。 それでも、自らの住む東京の海はどうにもはばかられてしまって。いつか、静かで優しい海の中で息絶える事を凪は夢見ている。

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