タグ： DXろびん 1号

コードネーム：『ラムル』アラビア語で砂、『セト』エジプトの砂の神、保護と恵みの神、そして破壊の神でもある。 幼き時間を共に過ごした『友』の影を、いつまでも、いつまでもいつまでも、追いかけている。 忘れることの出来ぬ、あの笑顔を抱いて。 ホームから出て暫くして、とある人間の複製体であることを知ったが、何故自分がこの世に生を受けたのか、そんなものには興味がない。 今興味のあることは一つ、『彼』を殺したアイツを、殺すことだけだ。 ただ、オリジナルがどんな人間で、どんな生活を送っているのかは、少しだけ知りたくもある、ような気もする。 自分が苦しく悩んだ時期に、どれだけ楽で幸せな生活をしていたのか。 チルドレンとして保護される以前は、複製体と知らずに引き取った母親変わりの人間と三歳まで共に暮らす。 生まれたときより当然のごとく砂を扱えていたので、母親は軽い発狂状態になっていた。 肉体的虐待を受け頭部に大きな怪我を負い、保護当時右目の視力が極端に低く、それを庇うように生活していた。 また感情の起伏が少なく、肉体的年齢と精神的年齢の乖離があった。 それから同年代のチルドレン・大貫忠弘と交流していく中で感情が少しずつ芽生え始める。 視力の低い右側に常に立って自身の目の代わりになってくれていた『彼』に対し、信頼を寄せていた。 本当の兄弟のように育ち、自分こそ兄であると思っている『彼』に合わせ弟のように振る舞うが、本来は自分こそが兄だと思っていた。 当時流行っていた名前の付け合いを行い、『彼』に自身の名前を貰う。 『周囲を見渡しその広き視界で、人を助ける』。この名を非常に気に入っている。 二年前に訓練課程を修了、『彼』とは別れて、それぞれの任務をいくつかこなしていく。 所属は日本支部。日本各地や、場合によっては海外に派遣され、その守る力で仕事をしていた。 そしてとある任務で『彼』と再会。しかしその任務は失敗し、大切な者の命を喪うこととなる。 失敗の原因の一つ、ヨハンの手により二人は追い詰められる。 そして、『彼』が身を挺して中畑を逃がし、その任務で唯一の生き残りとなった。 本来は守るべき『彼』に守られ、護れなかったことをひどく後悔している。 死にたかった、一緒に死にたかったが、『彼』に守られたこの命を無下にするわけにも行かなかった。 それに、死のうとしたって、砂が勝手に動くのだ。僕を、殺させてくれよ。 『彼』のいない、この世界を、護り続ける必要があるのか？何夜も自問を続けた。 けれど『彼』はこの世界を守りたいと願っていた。存在すらしなかったことにされた家族を、守りたいと。ならば、僕が、代わりに。 なおこの任務が、中畑が『複製体』であることに関係し、中畑をおびき出す罠であったことは、本人は知らない。 右側を託せる仲間がいなくなったことをきっかけに、右目を義眼にすることを決意。 ブラックドッグのシンドロームがないので、ノイマンの処理能力で無理になじませている。 現在使用しているメガネは左目の視力の補強用で、自分の能力で作成したものを使用している。 独りになっても戦うことを覚えようとしない。砂を操る力を攻撃に使うのであれば戦うことなど容易であるにも関わらず。 戦うのは自分じゃなくて、隣にいる筈の『彼』。その彼を守るのが、自分の役割。広い視界を持って助けるのが、自分の役割。 普段は人当たりのいい笑顔を浮かべているが、それ故にどこか近づき難い雰囲気でもある。 最近はあからさまに無関心であるという表情も浮かべるようになったが、『仮面』はその二つしか持っていない。 任務がなければ人に近寄ることはまずない。基本的に他人に無関心。似た境遇だから何。 プライベートは特に何もしておらず、本を読んでいるのは、あくまで他人に話しかけられないようにするための手段。 だからそのタイミングで電話をかけてこないでくれ、リヴァイアサン。 名字やコードネームで呼ばれることはそこまで抵抗はないが、名前で呼ばれることに不快感を抱いている。 また義眼の右側に立たれるのも嫌がる。現在は視力が回復してはいるものの、右に立っていいのは『彼』だけ。 だが修正するのも、拒む理由を話すのも面倒なので、それを口にすることはない。ピクリと眉を動かして不快感を示しはするのだが。 僕の名前を口にしていいのは、『彼』だけ。着易く呼ばないでよ、耳が腐る。 今日もチルドレンとして与えられた任務をこなす。明日も、明後日も。 仕事は淡々とこなす。人と関わるのは正直面倒だ。 今は無環の監視と護衛が仕事。仕事だから守ってあげるよ、リヴァイアサンの命令だし。 正直なところ彼自身に興味はなく、むしろ賢者の石を使えば死者蘇生など容易なのではとすら考えている。 あわよくば自分がもらおう。たとえ怪物になっても、僕を殺せる奴がいるのかい。殺せるものなら殺してくれよ。 支部長の鷹司は適切な仕事を回さないので不満、ただし最終的に正しい選択をしているので多少認めてはいる。 自宅を貸してくれているけど、ただそれだけの関係。上司と部下、それ以上でも以下でもない。 月下はグミをくれる胡散臭い人、いつかサイコメトリーで腹の底を探ろうと思っている。 現在はK市支部に居候中。部屋には寝具と簡素な机くらいしかない。自分の生活用品は自分で創造しているため、私物は一切ない。 なおリヴァイアサンに従順な理由は、ヨハンが出たら真っ先に行くという『契約』をしているからである。 この手綱が切れたのなら、自分はUGNを去ろう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― プライメイトとなった白世の能力で、かつて死んだはずの友は帰ってきた。 死んだという記憶は彼にはなかったが、そんなことはどうでもいい。 彼のいない世界でなんて、やっていられるものか。 白世には菜月がついている。どこかへ消えたようだが、問題はないだろう。 今度K市で働くことがあれば、麗華や香さんにもうちょっとちゃんと挨拶しよう。きっと驚くんだろうなあ。 今日も、変わらず彼の隣で、任務をこなす。明日も、明後日も、その先も。 二人で為せないことなんて、何一つとしてないはずだ。

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