タグ： 縁あれば千里

　芸術を愛するウリエル寮の新入生。少々変わり者だが、基本的には友好的で社交的な性格。 一人称：ボク 二人称：キミ 1d100 胃の容量 (1D100) ＞ 92 5b100 甘塩辛酸苦 (5B100) ＞ 24,85,5,75,23 好きな食べ物：七面鳥の丸焼き 1D100 じっとり系ホラー苦手度 (1D100) ＞ 69 1D100 びっくり系ホラー苦手度 (1D100) ＞ 80 1D100 悲鳴のでかさ (1D100) ＞ 44 以下ネタバレ SAN減少 1d12→2　2d3→2　2減少 　ネリネは西の国の、それなりに裕福な商家で育った。父は船で各国を巡っては貿易を行い、母は愛情深く兄とネリネを育ててくれた。 　父を港まで迎えに行くと、彼はよく「内緒だぞ」とネリネを船に乗せて、黄金に輝く海を見せてくれた。煌めく水面と燃える夕陽。父の腕の中から眺める景色はとても美しく、ネリネはその時間が大好きだった。 　ネリネは父に買ってもらった道具で、それを絵に起こすことにした。そうすれば、父が仕事に行っている間も彼のことを思い出すことができると思ったのだ。 　出来上がったのは拙い絵だったけれど、母も兄もたくさん褒めてくれた。帰ってきた父はいたく感激してネリネを抱き締め、お前は自慢の娘だと言ってネリネに頬ずりをした。 　ネリネはそれ以来絵を描くことが大好きになった。日常の中で見つけた美しいものを片っ端からスケッチして回り、あらゆるものに芸術を見出した。とても楽しくて、心躍る毎日だった。 　ある日の真夜中。こっそり夜更かしをして美しい星月夜をキャンバスに描き留めていたとき、ネリネは黄金の招待状を受け取った。 　家族はそれを大変喜び、お前は私たちの誇りだとネリネを称賛した。そうしてネリネは、家族の期待を一身に受けながら招待状の封を開けたのだ。 IF-最悪の結末　享年15歳　イギリス・ロンドン 　幼い頃は幸せだった。裕福な暮らし。厳格だが優しい父、絵が得意な母、仲のいい兄。とてもとても素晴らしい家族。 　それが崩れたのは唐突だった。 　母が病床に伏した。不治の病だった。父はそれに大きなショックを受けて、全財産を注ぎ込んでありとあらゆる医療を試したけれど、結局彼女の体はもたなかった。母は悲しみに暮れる父と、まだ幼い兄とネリネを残してこの世を去った。 　父は全ての財産を母の治療に費やしてしまった。会社の経営すら儘ならなくなったようで、ほどなくして父の会社は倒産した。ウェストエンドの大きな家も引き払って、イーストエンドの古い安アパートに身を寄せた。裕福で穏やかだった暮らしは一変して、その日を生き延びるための生活が始まる。 　父は絶望を誤魔化すために酒に溺れた。最低限の食事は与えられていたが、それも菓子パンやカップ麺ばかりで、幼い兄妹には十分とは言えない。 　娯楽もない中、ネリネは母に教わった絵を描くことだけが心の救いだった。けれどある日、父がスケッチブックを見つけてしまったのだ。 　父は荒れ狂い、スケッチブックを破ってゴミ箱に捨てた。立ち尽くすネリネに父が告げたのは『彼女を思い出させるな』という要求だった。幼いネリネの心はまだ母を求めている。母との唯一の繋がりを奪われたネリネは、しばらくその場を動けずにいた。使いに出されていた兄が帰ってきてから、ようやく泣くことができたのだった。 　その日以来父の酒の量は増す一方で、生活はだんだんと崩れていく。兄は嫌気が差したのか、よそで泊まってくることが増えた。父は兄が帰ってくるなりしきりに小言を言ったが、兄はもはやそれに答えることはしない。崩壊していく家庭を、ネリネはただ見ていることしかできなかった。 　父は日に日にネリネに辛く当たるようになった。初めはその理由がわからなかったが、後に理解した。成長するにつれネリネはどんどん母にそっくりになっていたのだ。 　そのうち父は酔うとネリネを母と間違えるようになった。初めは否定したが、すると父は激昂して言葉にもならない声で怒鳴るので、いつしかネリネは黙ってやり過ごすことを覚えた。深夜に起こされては母の名で呼ばれ、どうして置いていったのだと泣き縋る父を慰めた。酷く虚しかった。 　そんな日々にも慣れ始めたある日。また父に夜に起こされる。しかしその日はどこか様子がおかしかった。父は布団を剥ぎ取ると、ネリネの服に手をかけた。 　父はもうネリネのことを受け入れてはくれなかった。必死で抵抗するネリネに父は激昂し、拒絶する度にネリネを殴った。自分は母ではない、貴方の娘だと何度も訴えたが、怒声と殴打に掻き消された。『どうしてそんなことを言うんだ』『お前は――なのに』『なぜ俺を拒むんだ』責められる度にネリネの心は冷えていった。 　ネリネは朦朧とする意識の中何度も兄に助けを求めたが、兄が帰ることはなかった。きっと今日も友人の家に泊まってくるのだろう。 　ネリネは深い絶望の底で、かつて温かかったはずの家族を想った。 「助けて、おかあさん……」 　その声が誰かに届くことはなかった。もはや、ネリネ自身の耳にさえ。

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