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「今日が最高の日になればいい」 そう呟くのは何度目だろう。最初に願ったのはいつだったか、そんなのはとっくに忘れてしまった。死ねず、老いることさえ許されない身体を持った私が生きるためには、とにかく今日を乗り切ること、発狂しそうな頭を押さえつけながら呪文のように唱え続ける。 そして今日も何も変わらないこの世界を練り歩く。 何百年、何万年経ったこの地に残っている歴史などたかが知れている。それでも新しいものがあればと、微かな期待を頼りにまた一歩を踏みしめる。 歴史を学ぶには本や資料などが適している。道端や家だったものに落ちている本は雨風に晒され、劣化し読めないものが大抵だ。そんな中、図書館や倉庫など頑丈な施設では少量ではあるが読めるものもある。特にマンガや図鑑と呼ばれていたものは私の心を癒してくれる。写真、イラスト…それを見ると自分の容姿と同じ人達がいる。人類がかつて存在していたんだと私に証明してくれる。 今日も読み切れていないマンガに手をつけてみる、ここももう少しで読み切ってしまいそうだな…。そう思いながらまた1ページめくる。その先で私は一瞬で目を奪われた。 ーーそこには、明るく笑う少女がいた。どうやらかつてこの地球には常に明るい思考で笑顔を絶やさず過ごす少女たちがいたらしい。前向きなことだけを考え悲観的なことはあまり考えない、常に毎日を楽しんでいるようだ。 私は彼女の笑顔が頭から離れず、しばらく毎日同じシーンばかりを読んでいた。そしていつからか考えた。この身体で後ろ向きに過ごしていても自分が損をするだけだ、死ぬことが叶わぬならせめて自分が楽になるよう生きていこう。 その日からかもしれない、私が今の姿になったのは。 「今日こそ最高の日になるよ、私ちゃん。がんばろーねっ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46億年の時が経った、この日が来た。私が何よりも待ち望んだ大切な日。 日の当たる暖かなゴートウッズの木々、その木漏れ日の中。膝の上に彼の頭を乗せる。 言いたかったこの言葉。 口を開く。 「おはよう、そして誕生日おめでとうやまちゃん。今日はこれまでで最高の日だよ。」 私は彼の隣を歩く。これからもずっと。

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