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餞 雀(はなむけ すずめ) 彼こそは「抵抗」であった。従順に傷つけられた羽は朽ち、故に地に落ち果つるを待つのみ。 良くも悪くも礼を重んじる性格。今となっては奔放な嘘吐き。自分勝手に生きたい。だが、自分とは何なのだろう？成績優秀品行方正才色兼備、しかし大人しかった彼はいつも誰かの駒であった。だから、齢二十三のある日、彼はツケを払うことにした。勤めていた会社は倒産してしまったそうだ、そこまでやるつもりではなかったのだが。今は無職。 あとは親だけだ。彼らが最も悲しむことは何か、自分が死ぬことだろう。そのような確信だけがあった。それに。この命にすらだって最早従いたくはない。これは美しいこの世界への、小さな小さな復讐だ。さて、思ったより人の生命力というものは厄介なもので、とはいえ身投げは人に迷惑をかけそう....いや、別にそれでも良いのだが。気づかれないように死ぬのもちょっと違う、それでは復讐にならない…………いいロケーションがないものか、と本を読み読み今日もぶらつく。文豪の言の葉は、木陰に差す日明かりのように束の間の慰みになるから、今は坂口安吾が好きらしい。 無職とはなったが、名家の産まれであったためある程度蓄えがありそれで生活している。座して貪れば山でも無くなるのは世の常だが....事故物件になるのはまずいので自宅での自殺は考えていない。 最近は砂で絵を描くのが趣味。自然の手触りはいいものだ、自らが溶け込んでいくような感覚がするから。自我の境目を曖昧にし、風の吹くように腕を、指を泳がせる。そうして無為に日々を浪費するのも、一度してみたかったことだから。ちなみによく出没するのは葛西臨海公園、お家に帰らず寝食をそこで行うことも屡々。深夜に綺麗なショタがふらふらしてるとあってそろそろ通報されそうだが.... 死ぬことは怖い。怖くないわけがない、そこまで狂えてはいない。それでも、だ。 好物は母親の唐揚げ、母親は嫌い イメソンはサカナの『アイデンティティ』 「……………俺に何か…あぁ、この絵か。別に、大したものではない。」 「勘弁してくれ…………もう誰にも従いたくはないんだ。…わかった、借りは返す。だから放っておいてくれ。」 「猫は好きだ。犬も鳥も、自然が好きなんだ。………いや、特段人間が嫌いというわけではない。僕等も自然の一部だろう？」 「正しく在ることが、正しく生きることとは限らない。」

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