タグ： 夜明けのプレリュード

いつもニコニコと穏やかな笑みを浮かべている。 大人しそうに見えるが冗談を言ったり誰かを驚かせたりするのが好き。 父親が高名なピアニストで、母親は無名のピアニストだった。しかし家族の予定が合って3人で食事をする時は食事中に母がピアノを弾くのが習慣で、父がニコニコとして「母さんは料理も演奏も最高だな」と言って母がはにかむ時間が大好きだった。父親は奏夢と2人きりの時に「お前が将来何になろうと自由だが、何になったとしても母さんの演奏にこもっている気持ちを忘れてはいけない」と教えてくれたことをいまだによく覚えている。 しかし夫妻が離婚して奏夢が母に引き取られてから母はひとが変わったようにスパルタで奏夢にピアノを教え込むようになり、「絶対にお父さんよりも有名なピアニストになりなさい」と強要し、折檻するようになる。 奏夢の肩や背中など服で隠れて見えないところには折檻の跡が残っている。 最初のうちは母に笑ってほしいと必死に技術を磨いて答えようとしていた奏夢だが、次第に気持ちが疲弊し、また父ほどの才能はどうやらないようで、今ではピアノを弾くことが嫌いだと本人は思っている。 それなのに辛い時にはやはりピアノを弾きたくなるし、自分の演奏で友人たちが笑顔になるのは言葉で表せないほど嬉しくて、この矛盾した感情はなんなのだろうと不思議に思っている。 彼女が耐え難く思っているのはピアノを弾くことではなく、母の自尊心を満たすための演奏をすることなのだが、それにはまだ本人は気づいていない。 夢は、父ほどたくさんの人の心まで届けることはできなかったとしても、手の届く範囲、大切なひとたちの心を癒せるような喜びを分かち合えるような演奏をすること。 誕生日７月7日 ちづるくん ４月１０日

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