タグ： 終夜 愛咲陽

小さい頃から、母が大好きだった。仕事をしながら、私のことを1人で育ててくれた母。 朝日のような髪の色、瞳を「朝みたいで綺麗だね」と褒めてくれる母。「愛咲陽はゲームが上手だね」と慣れないゲームを見ながら褒めてくれる母。そんな母に褒めて欲しくて、ゲームは何よりも頑張った。好きだったし、不登校になっていた私の唯一の特技だったから。こんなに不甲斐ない私の全てを受け入れてくれる母が、大好きだった。 …でも、もう褒めてくれない。母はもういない。 病死だった。 受け入れられない。受け入れたくなかった。 鏡を見る度に思い出す。髪や瞳を見る度に褒めてくれたあの人のことを。狂いそうになる。この名前だってそうだ。瞳の色を見て、付くてくれた名前なんだから。 だから変えた。髪も。瞳も。終わりを感じさせるような夜の色。一人を感じるような夜の色。慣れない色だったが、不思議と嫌では無かった。 でも、これでもう誰も見てくれる人はいない。もう誰も褒めてくれる人はいない。友達なんて傍からいない。父親なんてどこにいるのかすら知らない。どうでもいい。 どうすればいい。今のこの、からっぽの私は何をしたらいい…。何をすればいい。 暗い部屋、液晶画面には 「You are Champion」 の文字。昔から、あの人が褒めてくれた、FPSゲームのリザルト画面だ。 …唯一残ってるもの。あった。 これを失ってしまったら、本当にあの人のことを忘れてしまいそうで…。 だったらせめて、これは、これだけは。 いずれ会えるあの人に、また褒めて貰えるように。 液晶画面越しに、また銃を構える。

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