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新宗教である「花還教(はなまたきょう)」の宗祖 幼少期、死んだ猫の体から花が咲く光景を目にした際、天啓を受けて開宗した。 教義は“生けるものは死によって肉体から遊離され、浄化された後、甦る”といった普遍的なものだが、強い思想のうちの1つに、正しく浄化を行う為には花に宿る精霊の力が必須としており、花を慈しみ尊ぶことに重きをおいている。 埋葬方法は独特で、死者の遺体に花の苗を植えて地に埋め、蕾が花開くことで正しく浄化された証となる、というもの。死者は天啓の場にちなんで「猫」と呼ばれている。 咲いた花は宗祖が剪定することで現世のしがらみから解放される。 また年に一度、忌日が制定されている。 その日花を穢した者には霊からの制裁を受けるとされ、早急に体と魂を浄化する為、全身に花を植えて生命を捧げ、地に埋める必要がある。 常に穏やかな笑顔を浮かべている人あたりの良い青年 自らの教義は揺るぎがないものと考えており、心を乱されることはない。 日常的に身体を清める名目で有毒の花を服用している為体は強くない 常に持ち歩いている大切なもの:はじめの猫から剪定した花の押し花(金装飾のついたガラス製のフレームに入れてある) 【⠀殺した女性について 】 ①無関係、彼女の為を思った奉仕活動 ②毒で意識を奪った後、五体を脳を切り開き花の苗を植える ③忌日に彼女が大切な花を捨てたor踏んでしまった為 殺害直後の感情は安堵、そして儀式(埋葬)を完遂させる為に花を剪定する機会を伺ってる ファタールモルガナ　黒田鮫一/こういちさん 年に一度の忌日だった。 貴方はいつも通り、町行く人と挨拶を交わし、花壇に咲く花々を慈しんでいた。場所を分け合って咲く花は、日々の愛に応えるように咲き誇っている。 これも、生けるものを正しく浄化するためだ。花を慈しめば、浄化は正しく為されるはずだ。 「花ケ崎さん、おはようございます」 そっと、花を見つめるあなたに声がかかった。 顔を上げると、女性が立っている。彼女とあなたは、いつもこうして会うたびに挨拶と少しの言葉を交わしていた。 「今日も、お花がきれいですね。」 挨拶を返す貴方に彼女はそう笑って、花をのぞき込もうと花壇に近づいた。ひとつ、ふたつ。そうして、わずかな段差に足をもつれさせた。 きゃっと高い声を上げた彼女は、花壇のすぐ近くによろめき、思わぬところに足をついた。しなだれるようにして花壇からこぼれていた、一つの花の上だ。つい、彼女よりも先に花へと視線をやれば、それは花弁を散らして、地面と彼女の間ですり下ろされたようになってしまっていた。 「ご、ごめんなさい、私…」 慌てふためく彼女を、貴方は心から憐れむだろう。このままでは、彼女は”制裁”を受けることになる。早く、彼女を浄化しなければならない。猫を埋めなければならない。 手当をしましょうと、気づけば口から出ていた。 ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ 申し訳なさそうにする彼女を家に招き、落ち着くようにと茶をだした。眉を下げた彼女に、やさしく声をかける。大丈夫、貴方の体と魂は、責任を持って浄化する。いくつかやり取りを交わしているうち、彼女は強く当惑した表情を浮かべ、貴方から逃れようとした。不幸にも、彼女は忌日に花を害した。 もしかすると、もうすでに制裁は始まっているかもしれない。急がなければならない。気がせくような思いを抱えていれば、慌てて席を立とうとした彼女がかくんと膝を折り、その場にまたへたりこむ。 良かった。これで儀式を行うことができる。 彼女はやがて座ることもままならないといった様子で倒れ、意識を失った。 脳みそがもがくままに痙攣する彼女を見下ろす。早くこの体と肉体を救わなくてはならない。 ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ 花壇となる体が崩れないように、丁寧に切り開く。包丁が肉を割く感覚はあまりにあっけない。脳は案外堅い頭蓋に守られていて、砕くのに手こずった。紫色の内蔵、灰色の脳、黄色い脂肪を苗床にして、美しい花々の根を植える。やがてこの猫は花々の家となり、開花とともに浄化される。どうか彼女が救われますように。根、芽、茎、葉、花を通じて、哀れな彼女の魂が還りますように。 願いをこめて最後の一つを植えれば、儀式の準備は完了する。 気づけば日は沈んでいた。汗をぬぐい、貴方は彼女を柔く抱きかかえた。 ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ 猫に土をかけ、やわらかく踏み固める。これできっと魂と体は還るべき場所へと戻っていくことになるだろう。深く強い安堵があなたの全身を包む。苗が肉体に根を張り、土を押しのけて天に花弁を咲かすところを思い浮かべる。 そうなれば、自分が花を剪定してやろう。それが花還教の宗祖としての役割だ。いつか、すべての人を救うための礎だ。 ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ

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