タグ： 獣の正義

記憶は、奪われた。 奪われたのは、自分のすべて。 失ったのは、感情の起伏。 気がつくと、目の前には満天の星空。 身につけているのは、元は上質であっただろうボロボロの衣服。 ここは、森のなかの小さな広場だろうか。 覚えているのは【自身についての記憶がナニカに奪われた】、【影だけとなった誰か】、【覚えていないお父様との大切な約束】 記憶を失った彼女が初めて持った強い意志は、生きねばならないということ。 そして彼女は歩き出した…生きて、奪われた記憶のすべてを取り戻すために－－－ 経験点37未使用 「……記憶…？…真っ黒な誰かの事がわかれば…後は…どうでもいい…かな……」 直感に従った結果彼女がたどり着いた場所にいたのは傷付きながらも健在な異形の怪物と、ソレに食われる寸前の哀れな人間だった。 突然の闖入者に時が止まったように静まり返るその場所で彼女は考えた。 生きていくにはお金が必要→しかし名前すら覚えていない自分に仕事ができるだろうか→目の前にピンチの大人→解決？ 記憶を奪われてなお本能に刻まれた力を行使し、隙だらけの怪物を穿つ。 音を立てて崩れ落ちる怪物には目もくれず助けた人間に感情のない声で自身の境遇を淡々と説明した彼女は、そうして保護と仕事と名前を手に入れた。 幸か不幸か、彼女が助けた人物の所属していたUGNドイツの某支部にはジャパニメーションの大ファンやグルメが多い支部だった。 感情の起伏とは、相応の刺激で蘇るものだったようで、メジャーなものからコアなものまで様々なアニメに触れた彼女が最初に得た感情は“萌え” さらに支部の構成員が行った検査により実年齢が判明したものの見た目の幼さから少ない女性職員に甘やかされ、食欲と睡眠欲も活性化したのであった。 その過保護な職員からのお願い(欲望)により、彼女は普段から外見を年相応に偽っていたり、輝く月の下で戦う姿に見惚れた職員から新しい名前ももらっていたりする。 「記憶なんか…対して重要じゃ…ない……大事なのは………美味しいご飯と！…あったかいお布団と！…アニメとゲームとマンガ……！！！」

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