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クトゥルフ PC作成ツール
Daniel Aquarius
ID:4866140
MD:445e4aa03eb658bd0cdfafcf198b32fb
Daniel Aquarius
タグ:
十二星座館殺人事件
水瓶座
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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初期
SAN
アイ
デア
幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
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初期値の技能を隠す
複数回成長モード
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通常表示
<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
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簡易表示
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<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
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通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
非表示
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<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
Daniel Aquarius (ダニエル・アクアリウス) 「愛されている僕が、子供たちのためにご奉仕します」 「僕達には、信じることしか出来ませんからね」 「イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン」 本名はDaniel Miller。 探偵業をする時はDaniel Aquariusを名乗っている。 職業:宗教家をもとに作成。 芸術「君の望む僕」は、成功すれば、相手がその時最も会いたいと思っている人間だと相手に錯覚させることが出来る。 ・現在SAN値 80 ・才能についてどう思っているか 神の意思なのかどうかは分からないが、紛れもなく自分に与えられているもの。与えられたからには、自分の目的(多くの人の魂を導き、解放すること)を果たすために最大限に利用する。それが牧師である自分の使命だと思っている。 ・才能をどのように使っているか 普段は、「使えるな」と直感でわかった時、身の回りの困っている人を助けたり、些細な苦難避けとして使っている。ただ、いつでも使える訳ではなく、「降りて来た」と感じた時にしか能力は発揮できない。そのタイミングはランダムである。 【キャラクター設定】 ・プロテスタント教会のNPO法人が運営する孤児院「Little Garden Home」の院長であり、牧師であり、超一流の探偵である。 ・ダニエルの謎解きの特徴は、「超人的な閃き」である。状況証拠がどうというよりも、その場の状況や人間関係、感情の所在などを並外れた人心掌握能力で即座に察知し、それらを状況証拠と共に練り上げることで(意識的にやっている訳では無い)、ダニエルに閃きが降りてくる。その閃きによって事件が解決される。 ・非常に美しい容姿をしている。 ・右足の内ももに「Daniel is mine」、左脇に「MINE」というタトゥーが入っている。 ・手先が不器用で、走るのも遅い。仕事に関わる部分は努力でなんとかした。よく躓いてこけそうになる。 ・そこまで体力がある方では無い。睡眠時間は7〜8時間。 ・その卓越した容姿から特別扱いや特別視をされる機会が多く、さらに特殊能力まで備わっていたため、「自分は神にも時にも愛されている」という自負があり、だからこそ自分が迷える子羊たちを愛し、救い、その魂を解放したいと思っている。 ・童貞処女。愛する個人が出来れば一緒になって良いかとは思っているが、そんな人間に出会ったことがない。恋愛感情も抱いたことがない。 ・奉仕の精神があるが、多少無理をしたとしても、過度に身を削る奉仕をするつもりはない。自身がある程度健康で、安定している姿を孤児院の子どもたちに見せることが重要だと考えていることと、身を削る愛はやがて精神を蝕むということを幼少期の経験(後に詳述)などから間近で見ていることから。 【シナリオ通過後】 特徴表:暗黒の祖先 タウィル・アト=ウムル 【キャラシ要約】 裕福な家庭に生まれる →ワンオペ育児に疲れた精神的に不安定な母親に不憫な扱い(精神的な虐待)を受ける この時、ダニエルは母親に対する恨みなどは全くなく、むしろ「自分が愛したい」「救いたい」という感情を抱く →幼少期通っていたカトリック教会で神父に性被害を受ける(貞操を犯されることはなかった) この時も、ダニエルの中に恨みなどはなく、「愛が暴走して欲望を飼い慣らせないその魂が気の毒。救いたい」と思う →性被害のことがバレてショックを受けた母親との間に溝が生まれる →2人組の連続強盗殺人犯が起こした銀行強盗にたまたま家族と共に居合わせ、運悪く人質となる この時、時を戻して行動をやり直す能力が使えると直感したが、母親は自分がいなくなった方が幸せになれるのかもしれないなどと脳裏を過ったために能力を使わなかった。すると、ダニエルはその美しさを買われて2人組に誘拐され、銀行は爆破されて両親は死んだ →犯罪カップルのゾーイとウィルと共に逃避行生活を送る この日々はダニエルにとって居心地のいいものだった。出来ればずっと続けたいと思っていた。2人にとって、絶世の美しさを持つダニエルは「たまたま運良くさらえたとびきりの宝物」であり、この2人によってタトゥーを入れられた。3人の間には不思議な絆があった。 →警察に追い詰められ、ゾーイとウィルが射殺される。 この時、元の運命では警察の誤射によってダニエルが撃たれ、絶命寸前だった。ゾーイとウィルに懸命に死ぬなと言われたことで「時を戻して行動をやり直す能力」を用いて撃たれるのを回避したが、代わりにゾーイとウィルが射殺されてしまった。今度は祈っても能力は使えなかった。 →孤児院「Little Garden Home」に保護される。 穏やかな日々を過ごしつつ、カトリックからプロテスタントに改宗。院長のアラン牧師を尊敬し、自分も人々を導く牧師になりたいと思うようになる。また、この時期に並外れた人心掌握能力から「君の望む僕」の能力が開花し、この力を使って人々の魂を救う活動を個人的に密やかに行うようになる。また、探偵の仕事も少しずつこなすようになる。 →孤児院を出て、神学校に通い、牧師になる 牧師の仕事とともに、「事件に関わった人々の魂を解放する」という目的のもと探偵の仕事をこなすうちに評判が広まり、名実ともに超一流へ。 →しばらく別の場所で牧師をしていたが、アラン牧師が死亡したことを機に、「Little Garden Home」の院長の座を継ぐ →Seekersから手紙が届く ダニエルはもっと孤児院の子供たちを守り続け、良い方向へ導くという牧師の仕事をして行きたいため、「未来」のために依頼を引き受けることを決心。今度の依頼でも「時を戻す能力」を使うことになるだろうと何となく察しているが、自分の未来を勝ち取るために最適な使い方を自分の意志で選びたいと思っている。神の計画に自分の末路や生き様についてまで組み込まれているのかどうかは知る由もないが、たとえ神に決められた筋書きをなぞるだけだとしても、神の計画は最終的にすべてが良い方向へ収束するように積み上げられていると信じていることと、「神に祈ることで救われる」という考えを信仰していることから、ダニエルは「生きて帰れますように」と祈っている。 【キャラシ本文】 カリフォルニア州のそこそこ裕福な家庭に生まれる。 父親は大手のテック会社に勤めており、母親は専業主婦。勤めていた店でレジ打ちをしていた母親に父親が連絡先を渡したことが交際の始まりで、つまり母親にとっては上昇婚だった。母親は既に両親と絶縁しており、独り身だった。父母共に整った容姿をしているが、母親は特に美しい。 ダニエルは小さな頃からとてつもなく容姿が美しく、見る者を感嘆させた。ダニエルの容姿は卓抜していたが、どちらかと言うと母親似だった。母親は、ダニエルがごく小さな頃は可愛がり、よく世話をし、綺麗な服で着飾らせた。 しかし、成長してくるにつれて、ダニエルの要領の悪さや、立ち上がる遅さ、発話の遅さに不安や疑問、そして少々の煩わしさを覚えるようになった。ダニエルは基本的には大人しい乳幼児だったが、何かの拍子に突然泣き出したり、かと思えばすぐにけろっと元に戻ったりした。そんなダニエルの世話をする母親の苦労とは裏腹に、ダニエルを一歩外へ連れ出せば、誰もがその容姿を褒め称え、ダニエルを可愛がった。自分の家事や言動の一つひとつに何かと小言を言う姑・舅も、ダニエルに対しては甘く、ダニエルの発話の遅さなどは母親の教育のせいではないかと暗に嫌味を言われることもあった。そんな日々を過ごしているうち、母親は自分が受け取るはずだった苦労の対価や幸福をダニエルに奪われているような気分になり、何となくダニエルを煩わしく思うようになった。 ダニエルが言葉を話せるようになると、乳児期の発話や立ち上がりの遅さが嘘のように、とてつもなく知能が高いことが分かった。もちろん姑や舅、父親はそのことを喜んだが、人間離れした容姿と知能を持つダニエルのことが、母親にとっては煩わしいような、恐ろしいような感じがした。自分の逐一の感情を先回りするかのように、気遣いの言動をするダニエルのことが、見透かされているようで末恐ろしかった。 ダニエルは、物心着いた時から両親のことを健全に愛していた。母親の心の機微を読み、母親のためになるような行動をするようにした。しかし、自分が母親のために何かをしようとすればするほど、母親が負担を感じていることにも気がついており、常に母親の最も喜ぶ方法は何だろうかと探っていた。 母親は、次第にダニエルにさり気ない負荷や、小さな罰を与えることで鬱憤を晴らすようになった。不器用なダニエルは、よく服にご飯や飲み物を零したが、それをした日にはダニエルの分の食事は捨てられた。なみなみに水を入れたコップをキッチンからダイニングへ運ぶように指示し、床に零してしまった水は後から雑巾で拭き取らせる、靴の向きやタオルの掛け方などを間違えると半日ダニエルを無視するなど、小さな虐待をし続けた。身体的な暴力をはたらくことはなく、ただただダニエルに負荷を与えた。ダニエルが言われた通りに物事をこなし、自分の裁量ひとつで理不尽な罰を与えられる様を見ることで、ダニエルを掌握できたように感じて安心した。それは、ともすると自分が父親や父親の両親に支配されていることの鬱憤晴らしだったのかもしれない。 対するダニエルはというと、自分に負荷を掛けることで母親が安寧を得ていることに気づいていたため、それが母親の満足に繋がるのならと考えて言うことすべてに従っていた。母親は精神が不安定で、ダニエルに対して憎しみのこもった視線や言葉を痛烈に投げつけて来る日もあれば、ごめんねと言って抱きしめて泣いて詫びる日もあった。ダニエルは、愛情の正しい使い方を知らない母親を可哀想に感じたし、そんな母親のことを愛していた。さまざまな雑念や環境に邪魔をされて、自分自身を上手く愛する方法も、自分の息子を上手く愛する方法も分からず、不器用な形に表出してしまう母親を愛しており、その愛の表明として、母親が泣いて謝る日にはただ黙って母親を抱き締め返していた。父親や祖父母の前では、ごく普通の母子の姿を演じていた。 また、母親は敬虔なカトリック教徒で、教会を信仰し、戒律は必ず守ってミサに通った。ダニエルは幼いうちにカトリックの洗礼を受けさせられた。ダニエルは母親に対して否定するようなことを言うことはなかったが、ダニエルにとって過度に教会や神父を崇めることや、戒律の重要性はよく分からなかった。母親は我に返ると、いつも息子への仕打ちを神に対して懺悔し、懺悔室へ通うこともしばしばあったほか、「善行によって救われる」というカトリックの信仰のもと、ボランティア活動に参加したり寄付をしたりしていた。しかし、ダニエルには母親がポジティブな動機でそれらの行動に出ているようにはとうてい見えず、「自らわざわざ縛られに行き、苦しい思いを自らに課している」ように見えていた。だが、一方でその信仰が母親を支えていることも理解していたため、ダニエルは母親に付き合ってカトリックのクリスチャンであるふりをした。ただ、そうしながらも、ダニエルは絢爛豪華な教会や神父を崇める意義が見いだせず、神は本当にこんなことを求めているのだろうか、と懐疑の念を抱いていた。 その感覚は、この頃のダニエルが「少し時間を戻して、行動をやり直す」能力が自分にあることに気づいていたことにも起因している。「能力」が使える瞬間や使い所は、直感で分かった。いつでも出来るわけではない。ただ、使えると感じた時にはその能力を使って、母親を助けたり、道端の知らない人や犬を助けたりしていた。小さい頃から多くの老若男女に愛でられてきたダニエルは、漠然と「時に愛されている」という感覚を持っていた。この超人的な感覚があったからこそ、「神」のことを崇め奉るような信仰を持てなかったし、どちらかと言うと「神はなぜ、自分を特別扱いするのか?(並外れた容姿を与え、時ですら操る能力をも授けたのか)」という疑問を感じていた。教会でのミサの最中、ダニエルはイエスの像を眺めながら、心の中で「なぜあなたは僕を愛するのですか」と問うていた。 そんなダニエルと母親に転機が訪れたのは、母親が神父に向かって自らの罪(ダニエルへの虐待)を告解したことだった。教会の神父は母親に深い理解を示し、しばらく休むように言った。そしてダニエルの方には、心身の療養のために自分の家に通うように言った。母親は、自分の罪が許されたと感じて安堵し、ダニエルが神父の家に通うことにも賛成した。しかし、ダニエルは神父が自分に対する邪な欲望からそれらの発言をしていることに気づいていた。気づいていながら、神父の家へ通うようになった。 思った通り、神父はダニエルへの身体的接触を徐々に増やしていき、やがては性的な接触を求めるようになった。ダニエルは、その興奮した瞳を見て、自分の中の暴走する愛を、ともすれば自分も他人も傷つけてしまうその強大すぎる愛を、上手く飼い慣らせない神父に対して可哀想だと感じた。神父をそんなふうにしてしまうのは、ひとつには妻帯禁止のカトリックの教えが原因ではないかとも考え、構造の犠牲者となった神父に同情した。ダニエルは、巧みに神父を諭し、貞操自体は守り抜いたほか、神父から自分に性的な接触をさせないまま満足させることができた。その方法は、「こんなことは本当はしちゃいけませんよ」と神父を抱きしめながら諭すことと、口淫によってその愛を示すことだった。ダニエルにとって、カトリックの教えについてはどうでもよかった。ただ、神父に対する愛を表明できればそれでよかった。 しかし、そんな日々は唐突に終わった。過去に神父からの性被害を受けた少年とその親によって神父が告発され、逮捕されることとなった。足繁く神父の家へ通っていたダニエルは、当然ながら警察の取り調べを受けることとなった。ダニエルは「何もされていません」の一点張りで押し通した。自分からしたことしかしていないのだから、ダニエルにとってはそれは真実だった。少年とその家族の心が救われることと、神父が身を滅ぼす愛から開放されることを願いながらダニエルは帰宅した。 母親は、神父の逮捕にかなりのショックを受けているようだった。そして、自分がダニエルを神父の元へ通わせてしまったことに大変な罪の意識を持っていたようで、それが更に母親の神経症を加速させた。父親は母親のことを気遣ったが、そもそも神父の提案は母親によるダニエルの虐待が無ければ無かったということも、余計に母親の罪悪感を増幅させた。祖父母から母親に対する態度はあからさまに冷徹なものとなっていた。 それから母親は、ダニエルのことをあからさまに避けるようになった。怯えたような目でダニエルを見る日もあれば、「穢らわしい」などと暴言をぶつける日もあり、そんな言葉をぶつけた自分をひどく悔いているような目をする日もあった。以前のように、泣きながらダニエルに懺悔したり、抱き縋ることはなくなり、母親とダニエルの間に明確な溝ができた。ダニエルは、母親のことを抱き締めてあげられなくなったことを申し訳なく思っていた。それらの諸問題は、ダニエルの「時間をちょっと戻す」能力ではとうてい解決ができなかった。 そんな日々を過ごしていたある日、父親と母親に連れられて街の大銀行へ行くと、運悪く銀行強盗に遭遇してしまう。拳銃を振りかざして銀行員や客を脅す男女二人組は、絶賛指名手配中の有名な連続強盗殺人犯だった。そしてダニエルは、運悪く人質に取られ、頭に銃口を突き付けられた。ダニエルは、このままだと自分は人質としてこの強盗犯が逃げ切るのに利用され、逃げ切った後には身代金の要求に利用されて呆気なく殺害されるのだろうと考えた。 その時、ダニエルは自分の「能力」が今使用出来る時にあると直感した。少し時間を戻して、少し行動を変えれば、別の人間を人質に取らせることも可能だろうとダニエルは思案した。 しかし、ダニエルはどうしても能力の行使に踏み切れなかった。理由はわからない。いっそ死んでしまった方が楽になると感じたからなのか、あるいは自分がいなくなった方が母親も幸せになれると感じたからなのか。ダニエルは、少なくとも当時辛いと感じてはいなかった。ただ、母親を抱きしめられなくて申し訳ないという思いがあることを自覚していただけで、その思いは後から振り返っても変わらない。しかし、なぜだかその時、ダニエルは能力の行使に踏み切ることが出来ず、頭に銃口を突き付けられたままでいた。 案の定、ダニエルは頭に銃口を突き付けられたまま二人組に連れ出された。父親や母親と、何度か目が合った。父親は困惑していたし、母親は悲痛な表情をしていた。ダニエルは、何となくこれが今生の別れであるような感じがしたが、やはり何も出来なかった。視線でそっと、別れを告げた。 二人組は、外に出た後にすぐに車に飛び乗ると、やって来ていた警察や銀行に向かって爆薬を投げ付けた。すぐに背後は火の海に包まれ、ダニエルを挟んだ二人組は高笑いし、二人組の協力者は運転席で車を飛ばした。ダニエルは、遠ざかっていく火の海を眺めながら、母親や父親、そこに居た人々の魂の解放を願った。そして自分がまだ生きていることに、どこか運命じみたものを感じていた。 ふいに、女の方が「あんた、めちゃくちゃ美人だね」とダニエルへ話し掛けた。「あんまり綺麗だからつい攫ってきちゃったよ」と女が笑うと、男も「どうせそんなことだろうと思った」と言って笑った。女は「今日からあんたはうちの子にする。いい?」と言って、笑顔のままダニエルを見た。ダニエルには、拒否権も、その他の選択肢もなかった。ダニエルが「僕は今日からあなたたちのものだよ」と言うと、女は「綺麗な奴はたいていヘンだ」と言って笑った。そうして、三人での共同生活が始まった。 女はゾーイと名乗り、男はウィルと名乗った。二人はどうやら各州、各地域に仲間が居るようで、犯罪を犯しては警察の追っ手から雑に逃げながら、時折仲間の手を借りたり逆に手を貸したりしつつ、空き家に見せかけた共同のアジトを点々とする日々が続いた。「クソみたいな家と、クソみたいな町に嫌気が差した」と口を揃えるゾーイとウィルは、恐らく夢も希望もない灰色の貧困地域の貧困家庭で育ったのだということが垣間見えた。ゾーイとウィルは激昂しやすく、野蛮だった。ゾーイは気に入らないことがあるとすぐに酒瓶を壁に投げて部屋中を酒まみれにしたし、ウィルはゾーイを平気でぶった。しかし、ウィルはゾーイに致命的な傷を与えて屈服させることはなかったし、ゾーイは酒瓶をウィルに命中させることはなかった。さらに、ウィルとゾーイは激しい喧嘩の応酬の後、急にその激しい情動を甘く粘度の高いものへと豹変させ、情事に雪崩込むことが常だった。それらは全て、ダニエルの目の前で行われた。ダニエルの両親は、そうした性の匂いを徹底的に排除し、ダニエルの目に付かないように配慮していた(そして、そのことにダニエルも気づいていた)ため、ダニエルは何か新しい生き物を見たかのように感じた。彼らは愛し合っている、それと同時に認め合っているとダニエルは感じた。二人がダニエルに危害を加えることは無かったし、情事に混ざることを強制されることもなかったが、気分上々のゾーイに徐に腕を引かれ、裸の二人に挟まれて寝ることがしばしばあった。湿って熱い二人の肌を直に感じながらダニエルは眠った。三人でくっついて眠っていると次第に呼吸のリズムが揃っていき、やがてひとつの生き物のような一体感が生まれる。その感覚に、ダニエルは永遠を感じていた。 ゾーイは「あんたは私の天使だ」とよくダニエルに言った。「俺のでもある」とウィル。「そうだった」とゾーイ。「綺麗で綺麗で、こんなに綺麗な宝物は生まれてから一度だって手に入ったことがない。絶対にあんたを手放さないよ。他にいいことなんてなかったんだから」とゾーイは高らかに笑った。ゾーイは自己中心的で、短絡的だった。気に入ったものがあればすぐに盗みを働いて自分のものにしてしまったし、たまに盗みがバレて咎められれば逆上して殺してしまったりした。ウィルはゾーイほど短絡的ではなかったが、その代わりにゾーイよりもずっと他者や外の世界を突き放し、諦めているように見えた。だからこそ、ゾーイの短絡的な窃盗や殺しを咎めることはなく、まるで自分と自分の身内以外の他者を断罪するかのような無慈悲さで犯罪の片棒を担ぎ、証拠を隠滅した。ダニエルは、その様子をただ眺めていた。ゾーイもウィルも、「天使」であり「宝物」であるダニエルになにか仕事をさせようとしたことは無く、無償で寝床や衣服や食事を与えた。それらは、元の家で与えられていたものと比べれば何段階も粗末なものだったが、ゾーイもウィルも食べてみて美味だったものは「もっと食べろ」とダニエルの皿にこんもりと盛り付けたし、寝床はダニエルに特等席を与えた。不器用なダニエルがものを零したり、倒したり、壊したりしても、二人は豪快に笑って許した。ダニエルにとって、それは紛れもなく愛だった。 ダニエルが二人の犯行を手伝うようになったのは、ゾーイが致命的なへまをしたことだった。ダニエルは「能力」を使ってゾーイとウィルに行動を指示し、さらに逃走経路を確保することで二人を助けた。ダニエルは、三人の共同体という「永遠」をずっと紡いでいきたいと漠然と感じていた。誰も歳を取らず、永久にその日暮らしの生活を続けていきたいと感じていた。その日を機に、ダニエルは二人の強盗の計画に関与するようになった。 ゾーイとウィルは、主に銀行や裕福な民家などでの強盗・殺人によって生計を立てていた。ダニエルは、出来るだけ人を死なせることがなく、かつ効率の良い計画を立てた。ゾーイもウィルも、快楽目的で殺人をしていた訳では無いため、嬉々としてそれに従った。ダニエルが協力に踏み切ったのは、新聞やテレビを見ていて、人質にされたまま連れ去られた自分とゾーイ・ウィルが警察によって捜索されており、その手が少しずつ近くまで迫ってきていることを感じていたからだった。 ダニエルが犯行を手伝うようになってから、三人の逃避行は今までよりもスムーズに進むようになった。急に手口がクレバーになり、かつ死人も少なくなったことに世間はざわめいているようだった。ゾーイは大層喜んで、「やっぱりあんたは私の天使だ」と言った。ウィルは騒ぎ立てなかったが、安堵していることがダニエルには感じられた。 ある日、窓の外の星空を眺めながら水瓶座を見つけたゾーイが、「ダニーみたいだねえ」と言った。ダニエルが「そんなに綺麗?」と言うと、「違う違う」と笑って、水瓶座の由来になった絶世の美少年ガニメデの話を語って聞かせてくれた。ウィルが「今度は俺たちからダニーを奪う奴がいるかもな。こんなに綺麗なんだから」と言うと、ゾーイは「それは困る」と言って針と墨を用意し始めた。 「私はウィルと一緒に知り合いにタトゥーの彫り方を教わったことがあってね」「あんたにも彫ってあげる」と言って、ダニエルを椅子に座らせた。全身を上から下まで眺めたゾーイは、「見える所じゃダニーの美しさの邪魔になる」と言って、ダニエルの右足の内ももに狙いを定めたようだった。ダニエルは終始されるがままになっていた。彫られている間は痛かったが、その痛みがゾーイから向けられた愛であるかのように感じた。入れられた文字は、「Daniel is mine」だった。mineじゃ結局誰のものかわからずにいかようにでも解釈できてしまうが、その隙が逆説的にゾーイからの純度の高い想いを表しているようで、ダニエルは気に入った。 完成したタトゥーを見たウィルは、「お前だけのじゃないんだからmineじゃダメだろ」と言った。「じゃああんたも入れればいい」とゾーイに言われたウィルは、流石に悪いと思ったのかダニエルへ伺うような視線を向けた。ダニエルは「僕はウィルのものだよ」と言って笑った。ウィルはそれを聞いて高らかに笑うと、ダニエルの左脇に「MINE」というタトゥーを彫った。「これでもう盗まれる心配は無いね」と言ってゾーイは笑い、その日の晩も普段通り三人でくっついて眠った。ダニエルは、「この日々が、この愛が、神の気まぐれで奪われることがありませんように」と、二人の寝息と呼吸のリズムを感じながら祈った。その時ばかりは、自分の美しさに免じて神が依怙贔屓してくれることを祈った。何故だか、元の母親と父親の顔が脳裏に浮かんだ。ダニエルは、ゾーイとウィルと暮らしていながら、両親が出てくる夢を繰り返し見ていた。夢の中の両親はいつも、困ったような、怯えたような、困惑しているかのような表情で、少し遠いところからダニエルを見つめていた。ダニエルが手を伸ばそうとしても、不思議と四肢は動かなかった。ただ両親との間に横たわっている一定の溝が断絶を生み、ダニエルは自分には何もなすすべがないと感じざるを得なかった。両親に愛を与えることが出来ないことを実感しながら、埋まらない溝を見つめているうちに目が覚め、すぐ両隣で眠っているゾーイとウィルの体温に満たされ、同化し、言い知れぬ安寧を得るのだった。 だが、どんなにダニエルの知能が高かろうと、警察の積み上げられたノウハウと経験という名の智恵の前に、永久に逃げおおせることはできなかった。もともとゾーイとウィルの犯行はずさんなもので、州境を超えてしまうことで罪状を有耶無耶にし、かつ警察の動きを鈍らせるという方法を取っていたが、これまでに残した痕跡が積み上がり、三人は少しずつ追い詰められていった。仲間も警察によって射殺されたり逮捕されたりする者が増え、日に日にゾーイとウィルには余裕がなくなっていき、二人は常にいらいらするようになった。ダニエルに当たったり文句を言ったりすることはなかったが、ダニエルは「ここの愛と幸せと日々は自分に掛かっている」と感じて頭を絞って計画を立てた。しかし、齢二桁にも満たないダニエルの計画にも限界があった。ゾーイとウィルが「もしもの時」のために、殺傷能力の高い武器を大量に用意するのを目撃する頻度が増えた。 そして、ついに三人にとっての悲劇の日が訪れた。三人が田舎の公道を走っているとどこからともなく銃撃され、あっという間に警察との銃弾戦になった。警察は「ダニエルくん、そこに居るのなら伏せていなさい」と言いながら慎重にゾーイとウィルを追い詰めていった。ダニエルは、警察はここでゾーイとウィルを射殺してしまっても構わないというつもりでここまでやって来ていることを察していた。何とかして状況を切り抜ける策を見つけなければと思ったが、ずっと車の足場に蹲っていたため、外の様子がどうなっているのか全くわからなかった。一瞬でも外の様子を見られれば何かしらの打開策が見つけられるはずだと考えて、すっと上体を起こした時、それがゾーイかウィルであると空見した一人の警官によって、ダニエルは胸のあたりを撃ち抜かれた。 ゾーイとウィルは絶叫してダニエルの方を振り返り、ゾーイは腕任せに警官の方へ銃を乱射した。後部座席で血まみれになっているダニエルへ、前方にいた二人は懸命に死ぬなと叫んだ。あんたは私の俺の天使で宝物で、絶対に死なれたら困るんだ。その切実な叫び声を聞いていたダニエルは、今なら「能力」が使えると直感した。 ダニエルは少し時間を戻して、自分の行動をやり直した。つまり、後部座席から身体を持ち上げず、ずっと蹲ったままでいた。しかし、能力を使う前に一瞬だけ垣間見た警察の布陣をダニエルは覚えていた。蹲っているために視界が暗く閉ざされている中、さあどうしようかと考えを巡らせていると、一際大きな銃声と共に、前方の座席が揺れるのを感じた。ウィルの叫び声が聞こえた。嫌な予感がした。そしてもう何発か、銃声が聞こえた。座席が揺れた。ウィルの声は聞こえなくなったが、微かにゾーイの呻き声が聞こえるのをダニエルの耳は捉えた。「ゾーイ? ウィル?」と、ダニエルは蹲ったまま問い掛けた。また上体を起こして同じ失敗を繰り返す訳にはいかなかった。苦しげな呻き声を上げ続けているゾーイは「ああ……暗い……」と言ったきり、何も喋らなくなった。 間髪入れずに、車のドアが開けられる気配がした。「Daniel Millerと思われる少年の生存を確認」という声に顔を上げると、何人かの警官たちが車の中を覗き込んでいた。はっとして前方の席に目を向けると、ぐったりと力の抜けているゾーイのウィルの後ろ姿が目に入り、警官の「二名の死亡確認」という声が聞こえた。ダニエルは真っ先に、時間を戻して、行動をやり直すことを願った。しかし、どれだけ願っても、叶えられる気配はなかった。ダニエルが願っているうちに二人の死体が運ばれて行ってしまったため、ダニエルは警官達に「待ってください。せめて最後に二人を抱きしめさせてください」と懇願した。警官たちは驚いた様子だったが、ダニエルのあまりにも美しい容貌の効力もあり、願いは聞き入れられた。ダニエルは二人の死体へ駆け寄ってその姿を眺めた時、以前のような生命力がまったく感じられないことから、もう眠ってしまったのだと理解した。ダニエルは、二人まとめて抱きしめた。思えば、これまでにダニエルから二人を抱きしめたことがないことに思い至った。二人からの愛を受け取っており、そして自分も二人を愛していたのにも関わらず、愛の表明を一度もしなかったことに後悔の念が沸いた。ゾーイの「暗い」という最期の言葉が耳に残って離れなかった。せめて、ゾーイとウィルの魂を安らかに解放してやることすらできなかった自分自身の無力を感じた。自分が実の両親に安らぎを与えられなかったことと同じく、またしても何も出来なかった、愛を与えられなかったことを悔いた。もう二度と、三人で並んで眠ることができないことを寂しく感じた。愛が自分の手の中からすり抜けてどこかへ行ってしまったように感じたし、神はなぜここまでして自分だけを愛して生かすのだろう、という気持ちにもなった。 保護されたダニエルは取り調べやカウンセリングの結果、ストックホルム症候群とPTSDだと診断された。毎日カウンセリングを受け、しばらく精神病院のような保護施設で暮らすことになった。カウンセラーは親身で優しく、確かに世の中で言うところの普遍的で健全な愛があると感じたし、保護された後にダニエルを取り巻く大人たちはダニエルへ健全な愛を向けて気にかける者ばかりだったが、ダニエルはその「健全性」にはあまり興味を持てなかった。元から健全な者は、生きていくことに差し支えがないのだから、そのまま愛したいものを正しく愛しながら幸せに生きていけばいいと思った。そういった人間の人生は、自分とは関係の無いものだという意識があった。ダニエルにとっての関心事は、「愛の暴走や愛の渇望、或いは愛の行使の仕方が間違っている者の人生を健全で幸せなものにすること」だった。ダニエルは、実の両親も、かつての神父も、ゾーイやウィルも、愛の行使の仕方を誤っていたり、あるいは愛の使い道を知らなかったりで、横道に逸れてしまった人達だと感じていた。ダニエルは、そんな人間たちをこそ愛したかった。 それに、ダニエルにとっては「ストックホルム症候群」という病名が、ある愛の形に病気のレッテルを貼っているだけに思えていまいち納得がいかなかった。健全だろうが不健全だろうが、愛は愛だと感じた。その愛は「間違っている」と評価されるいわれはないと感じた。しかし、周囲で自分の回復を願っている健全な大人たちの健全な愛に応えるため、ダニエルはカウンセリングでは求められているのであろう健全な言動を繰り返し、周囲の大人を早く安心させられるように努めた。 ダニエルの両親は、やはりゾーイとウィルの爆薬によって死亡していた。母方の祖父母は、絶縁した子供の子供を養育するつもりなどさらさら無く、父方の祖母は、実の息子が突如死に、これまで鬱憤をぶつける相手だった息子の嫁も死んだことで頭がおかしくなり、あれだけ可愛がっていたダニエルが目の前に現れた時に「あんたのせいでうちの子は死んだ、悪魔の子」と半狂乱になった。祖父は正気だったが、祖父母の家はとうていダニエルを養育できる家庭環境ではなかった。ダニエルは、自らの行き場のない愛がゆがめられておかしくなってしまった祖母を気の毒に思い、その魂の解放を願った。ともかくそういった経緯で、ダニエルはプロテスタントの教会に併設された孤児院「Little Garden Home」に入ることとなった。(教会のNPO法人が運営) 孤児院の雰囲気は明るく和やかだった。一般家庭で育つような子供に比べれば、当然癖のある子供が多かったが、NPO法人の立ち上げ人で、孤児院の院長を勤めていたアラン牧師の人徳によって院内の平和は保たれ、子供たちの精神もおおむね健全に育っていった。アラン牧師は背が高くて体格が良く、それでいていつでも穏やかで優しかった。どんな子供のことも深い懐で受け入れた。ダニエルは、これまで生きてきて特別扱いされなかったことがほとんどなく(たとえ相手が態度に出さず形ではダニエルを他の者と同等に扱ったとしても、心が伴っていないことを感じ取っていた)、孤児院へやって来てからもそのあまりの美しさに他の子供やシスターから物珍しげな視線を向けられていることをダニエルは感じていたが、ことアラン牧師はあまねく子供たちへ平等な愛を注ぎ、信仰と希望と愛を説く良き「羊飼い」であった(牧師とは羊飼いという意味です)。ダニエルにとって、階級制度によって聖職者が格付けられ、善行の必要性に駆られるカトリックよりも、牧師と信者を同等の存在として見なし、各々が聖書に学んで神を信仰すれば救われるというプロテスタントの方が肌に合った。アラン牧師のもと、孤児院で暮らしているうちに、ダニエルは将来は牧師になって子供たちに愛を与え、幸せへ導きたいと考えるようになった。カトリックからプロテスタントに改宗し、再洗礼を受けた。 ダニエルは、孤児院で暮らすようになってからも、就寝する際には両隣をゾーイとウィルに挟まれ、呼吸をひとつにしながら眠った日々を思い起こした。そして、夢の中では暗い溝に阻まれて近づけない実の両親との乖離を経験したり、あるいは祖母の「悪魔の子」という誹りを受けたりした。ダニエルは、少なくとも自己認識としては傷ついていた自覚はなく、彼らの魂を救えなかったことにただ申し訳なさを感じていた。しかし、ダニエルの胸が最も痛切に痛むのは、ゾーイの「暗い」という声を思い起こす瞬間だった。そうして目を覚ますと、ダニエルの両隣には当然誰もおらず、明るい日差しがダニエルの輪郭を縁どっているのだった。 孤児院で過ごす日々は良好だった。相変わらず時を少し戻したりする能力で他の孤児や学校の同級生、街の人などを助けたりしていたし、少しずつ新たな特技に目覚めつつあった。それは、自分が相手の望む人の姿をしているかのように相手に思わせる能力だった。ダニエルは、心の状態が不安定になっており、かつ会いたい相手が明確な人間に対しては、積極的にこの特技を用いた。ダニエルは、相手の心の機微をつぶさに読み取り、そこから相手の望む人間の姿を現出させることができた。理屈はダニエルにも説明出来ないが、本人はどこか遠くから力を借りているかのような感覚を漠然と覚えていた。かつて救えなかった(とダニエルが感じている)魂たちへ贖罪をするかのように、ダニエルはさまざまな者へ救いと愛を与えようとした。そこには純粋な慈愛の精神があった。時と神に愛された自分こそ、人々の魂を解放するべきなのだと感じたし、それは義務というよりは生きる意味だった。少なくとも、ダニエル自身は誇大妄想や肥大化した自己意識、超人感といった病理は潜んでいなかったと認識している。そこには純粋な善意があった。 また、その並外れた知能の高さと人心掌握能力を生かして、街で少しずつ探偵のような仕事をするようになった。どんなに証拠が少なくとも、ダニエルは人々の心の機微を呼んで状況証拠と縫い合わせることで、超人的な閃きを呼び寄せ、真相へとたどり着くことができた。ダニエルにとっては、謎を閃きによって解きほぐす探偵稼業も性に合っていた。暗く陰った場所を光で照らして明るみにし、被害を被った者には魂の救いを、そして道を踏み外した者には罪からの救い、そして魂の救いを与えられるやりがいがあった。ダニエルは、被害者と同じく加害者にも慈悲深く(加害者が明確に存在する案件の場合は)、抱きしめたり特技を使ったりして愛を注いだ。ダニエルは、「良き羊飼い」であることと、探偵であることは、自身の天職だと感じるようになった。 ダニエルは、探偵稼業で金銭を得ようとはせず、申し出られても断っていたが、ダニエルに依頼が入る事件の規模や深刻さが重くなっていくにつれ、金銭を与えないわけにはいかないという依頼者が増えて行った。ダニエルは仕方なくそれを受け取り、教会への寄付としてアラン牧師に渡していた。ダニエルはさまざまな場所へ出向き、事件の真相を明るみにしては、関わった者全員の魂の解放を願った。そうした活動をしていると、ますます孤児院や学校の中でもどこか異質な存在として見られて行った。迫害されていた訳では無い。他の孤児や児童と形としては同じように扱われ、孤児院の子供たちとはある種の連帯感があったが、日常会話を交わしていても、「ダニーは特別だ」と誰もが思っている雰囲気があった。しかし、ダニエルは特別扱いをされることに人生を通じて慣れ切っていた。今まで生きてきて最も存在を近くに感じたゾーイとウィルでさえ、ダニエルに対して「たまたま運良く手に入った綺麗な子ども」というような目を向けていたのだから。ダニエルは別にそれでも良かった。自分は十分すぎる程に恵まれ、時や運、神に愛されてしまっているのだから、自分が生きる限り出来るだけ多くの人間に愛を与え、その魂を救い解放するのが当然だと感じていた。 周囲の子供たちは次々と里親に引き取られていき、容姿が美しく頭も良かったダニエルは引く手数多だったが、ダニエルには里親に申請する余裕があるような人間は視界に入っていなかったし、そういった家庭で暮らしたいともあまり思わなかった。どことなく、「自分は普通の人間とは違う」という感覚がダニエルにはあり、「世間一般の幸せ」を求める感情が希薄だった。だが、実の母親のことを抱きしめることが出来た時の記憶や、ゾーイやウィルとくっついて過ごしていた日々は、ぼんやりとした幸せな記憶として頭をかすめることもあった。それでも、ダニエルは「時は戻らない、あの頃は帰ってこない」と感じており、謎を解いたり力を使ったりして人を救うことの方に強い興味を持っていった。 ダニエルは、17歳で高校を卒業すると共に、孤児院を出て神学校へ通うための学費を稼ごうと考えた。そんなダニエルに、学費を全額支給したのがアラン牧師だった。ダニエルが渡していた探偵業の報酬を、アラン牧師はずっと貯めていたのだった。アラン牧師は、「きみの人生が幸せであることを、イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。」と言った。ダニエルは、アラン牧師が「美しいが故に多くのものに翻弄され、自らの幸せを追い求めるという発想が無くなってしまっている」自分に対して、憐れみと慈愛の目を向けていることを感じた。ダニエル自身は、見ようによっては自分がそう見えるだろうことは充分理解していた。しかしそれでもなお、ダニエルは何よりも他者の救済を求めた。アラン牧師のことは「良き羊飼い」として尊敬していた。 その後、4年間神学校に通い、ダニエルは牧師になった。聖書について学ぶのは楽しかった。神の計画が、書き手の意図を超えて聖書全体に散り散りにちりばめられていることを実感し、「自分は神の歯車の一部」という感覚をいっそう強めた。自分がこの先どうなるかはおそらく神の計画の中にあるのだろうと感じたが、「時に愛されている」という一面に関しては、神の意図のうちなのか、はたまたその外にあるのかがダニエル自身にもわからなかった。神にすら操縦不能な力を与えることが逆説的に神の意図なのだろうかと思ったりもした。ダニエルは、あくまでも「良き羊飼い」として多くの人の魂を解放できるよう、自分の意志で動こうと思った。自分の意志だと思っている意志が実は神の意志だったとしても構わなかった。また、一見理不尽と思えるような状況が現実にもたらされても、それらには神の意図が組み込まれており、最終的には全てが良い方向へ収束するはずだと考えている。 牧師の仕事と並行して、探偵の仕事も続けていた。普段は本名を名乗っていたが、探偵の仕事をする際には「Daniel Aquarius」を名乗っており、自己紹介でもそう話した。かつて、ゾーイに「水瓶座のガニメデみたい」と言われたことから、この名を名乗るようになった。ダニエルの身体に刻まれたままの「MINE」というタトゥーや、Aquariusという姓に、亡き犯罪者2人との繋がりと、被所有の安心感を覚えていた。事件を解決すれば解決するほどダニエルへの注目度は高まり、その卓越した容姿と牧師であるというキャッチーさに地元新聞などの取材が舞い込んだ。ダニエルは奉仕の精神で、実務が疎かにならない限りは取材に応じた。ダニエルが事件を解決すると倍倍ゲームで依頼は増えて行った。もちろん全ての依頼を受けることはできず、ダニエルは手紙や依頼書を読んだ感じのフィーリングで依頼を受けるかどうかを決めていた。直感で、「この事件に自分が必要か否か」を判断することができた。ダニエルは依頼を引き受けた場所に出向くと、やはりその超越的な人心掌握能力による「天才的な閃き」により、事件は解決された。ダニエルが「時を戻して行動をやり直す」能力を使うまでもなかった。いつしか、ダニエルは超一流と呼ばれる立ち位置にまでやって来ており、ダニエル自身もその評判を受け止め、超一流と言われるからには自分の責務を果たす気でいた。 牧師と探偵の二足のわらじで生活を続けていたある日、アラン牧師が病に倒れたという知らせを聞きつける。ダニエルが駆け付けると、病は末期だったようで、アラン牧師の意識は朦朧としていたが、ダニエルの姿をみとめると、昔孤児院で暮らしていた時と同じように穏やかな笑みと声で「ダニーじゃないか」と歓迎した。ぽつぽつと話しているうち、アラン牧師はぽつりと「妻に会いたい……」と漏らした。妻とはだいぶ前に死に別れていたのだった。ダニエルは、会ったことも写真を見た事もないアラン牧師の妻の姿を見せた。するとそれは上手く行ったようで、アラン牧師はダニエルがこれまでに一度も見たことのなかったほどの満ち足りた表情で微笑んだ。そのまま安心して眠ったアラン牧師を見届け、その場を去ろうとした時、アラン牧師は「ありがとう」と言った。それがダニエルに向けた言葉だったのか、妻の幻覚に向けた言葉だったのか、人心を察することに関しては超越的な能力を持つダニエルにも、判別がつかなかった。その3日程後、アラン牧師は逝去した。 アラン牧師の葬式には多くの恩人が参列したが、親族はいなかった。アラン牧師も孤児であり、妻との間に子供はもうけていなかったのだった。アラン牧師が臥せっている間に代理で院長をしていた牧師が葬式を主導しており、ダニエルを見つけると「アラン牧師から手紙を預かっています」と言って封筒を手渡された。 そこには、「きみがもし、きみ自身の幸せをまだ見つけていないのなら、この孤児院の後を頼みたい。私がいなくなったあとのことを考えると、不思議ときみの姿が浮かんで離れなかった。きみの心が諾うのなら、この依頼を引き受けて欲しい。」と書かれていた。ダニエルは、その手紙を読んだ瞬間に、院長の仕事を引き継ぐことに決めた。 それから、ダニエルはリトルガーデンホーム孤児院で、子供たちに奉仕するつもりで牧師の仕事をしながら、同時に探偵の仕事もこなしている。Seekersからの手紙を受け取った時、「未来と引き換え」と書かれていたことで、明確に生きるか死ぬかの瀬戸際であることを感じ、幼い頃に銀行強盗に遭遇した時や、ゾーイとウィルと共に銃弾線に巻き込まれた時のことが蘇った。いずれも生命の危機であったが、ダニエルは一人だけ、幸運にも生き延びた。しかも、一度目は「能力を使わないという選択」によって生き延び、二度目は「能力を使うという選択」によって生き延びた。今度も、「時を戻して行動をやり直す」能力を使う機会が訪れるのではないかと何となく感じている。これは神の意志なのか、はたまた試練なのか。神の計画書においは、もう自分の末路は決定されているのか否か。すべてがダニエルにとっては未知だったが、それでもダニエルは「生きて帰れますように」と神に祈る。人は祈ることで救われるのだから。そして、ダニエルはまだ子供たちやその他の人々を導き、魂を解放する「良き羊飼い」でいなければならない。アメリカに残してきた孤児院の子供たちに引き続き奉仕するためにも、ダニエルは生きて帰るために自分の意志で最大限の努力をするつもりでいる。普段は国外の依頼はほぼ引き受けないが、今回は特別である。ダニエルの留守中は、NPO法人に属するほかの牧師や、長年在籍するシスターなどに守ってもらっている。
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