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「面倒くさい」が口癖の腰の重いぼんやりした男。ゴーイング=マイウェイ・マイペース。根はいいやつなのだが、職業を誤魔化したり何度も引っ越しを繰り返しているあたり、どうにも胡散臭い男である。 （以下蛇足） 楽して生きたかったから勉強だけはちゃんとした。ちゃんと勉強して医者になる　はずだった。 医師免許を取得できる程度の知識はあるが、闇医者は極度の面倒くさがりが災いした結果である。その後、低予算で適当な業者に頼み欠陥のありまくる個人院を開設する。自分と助手、兼看護師、兼経理事務担当の女と二人で自由気ままに活動している（もっとも自由気ままなのは柿崎本人だけだが）。 理想であった「医者という高収入ポストに落ち着き楽して生きる」、その一歩手前で楽な方をとってしまったため、世間一般でいうところの「闇医者」になってしまった。 結果としてこちらのほうが面倒くさそうな気がするが、それを考える事自体、そんな事すらも面倒くさいため、なるようになるさ精神で常に生きている。 （本人は気付いていないが）彼には不運がついて回っている。今現在はとあるマンションの一室で何とか安定してやっているも「え、なんでこんなところから？」というところからタレコミされて摘発されそうになったことがこれまでに何件もある。本人はのらりくらりと笑いながらそれらを回避しているが、助手から「次ヘマしたら埋めますよ」と圧がかかっている。 仕事上避けられぬ事なのだが、彼はいかんせん医者のくせにグロテスクが苦手である。それ故、あまり患部を見ないように処置を行う。手術においては医療ミスも頻繁に起き、クレーム（恨まれ命を狙われること）が多い。 面倒くさがりな彼が、事務所を定期的に転々とするのも、このためである。 そんな彼はなぜ医者になったのか、それは彼が遠い昔、大切な人を病気で亡くした、というありきたりな理由だ。あの時の絶望から、少しでも誰かを掬ってやれたなら、という強い想いが彼の根底にある。根はいいやつ。 試験に行かなかったのも実はわざとだったりする。表舞台の医者というのはゴマンといる。でもそいつらの手を持ってしても手の尽くしようのない患者、無戸籍児で満足に医療を受けられずに死にゆく子供。 そんな患者のために、希望の光を失った人間のために、彼は手を差し伸べたいと思っている。自分の大切な人がそうであったように。 根はいい奴といっても、普段はまるでプータローの駄目人間である。 彼のいいところといえば、ドイツ語とラテン語ができるところ（日常会話程度）や、闇医者のくせに話す言葉に妙な説得力があるところ、はたまた人の嘘をあっさり見抜いたりもする。そんなところくらいだ。

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