タグ： 泣き coc 初恋性ストックホルム症候群

元々は親の経営している薬品会社を継ぐ予定であった、一流企業の長男。 幼い頃から英才教育を施されていた為、恋人は疎か、友達もあまりいない。出来の良い弟といつも比べられていた。要領があまりよろしく無い。 しかし認めてもらおうと努力した結果、第一志望の大学に合格。両親が望んだ出世街道を歩むことが約束された筈だった。 2年にあがり、3年への進級を間近に控えた一月。奇しくもその日は成人式であった。久々に自分を笑って祝って見送ってくれた両親。しかしそれが自分が見る最後の姿とは思わなかった。家に帰ると自宅は間抜けの殻。弟もいない。その内に役人が駆けつけてきて家を差し押さえられた。 この時初めて会社が潰れ自分を置いて家族が蒸発した事実を知る。両親は彼にだけは何一つ話していなかったのだ。 大学を中退しようと思ったが奨学金や恩師の工面で2年制の卒業が認められた。 そのまま駆け込みで就職するも、残されていたのはブラック企業の営業職。 休む暇も十分に確保できず徒労する日々を1〜2年続けた頃、我に返り初めて自分を見つめ直した。 今まで何をやっていたのだろう。親の敷いたレールを辿り、結局脱線させられて、自分が本当にやりたかったことはなんだろうか。 昔から本を読むのが好きだった。それを人に話すことも好きだった。人から話を聞くのも好きだった。そうだ。自分みたいな人間を減らしたい。少しでも人の話を聞いてその負担を減らしてあげたい。カウンセラーになりたい。 空いてる時間をなるべく有効に使い、資格の勉強を始めた。営業の成績も伸び、これから全てうまく行くのだと、そう思っていた。 資格の勉強が大分様になって来た頃、住んでいたアパートに突然金貸しを名乗る屈強な男が数名訪ねてきた。 なんでも、両親が会社を経営していた時多額の借金をしていたのだという。 何故今更と思ったが、彼ら曰く数日前までちゃんと連絡は取れていたにも関わらず、ここ最近再び失踪したらしい。探したけれど足は辿れず、最終的に長男だった自分のところへやってきたのだという。 3年越しに寄越された置き土産は相当な額でとても現在の自分に払えるものでは無かった。 とりあえず数日の猶予をもらい、その日は帰ってもらった。 それから一週間後、上司から呼び出しを受けた。 その時、解雇通告を提示された。 流石に借金持ちは雇えないらしい。面倒ごめん被りたいと言わんばかりにこちらの話を真剣に取り合わず一方的にクビを宣告されてしまった。 その日の帰り道、全てがどうでも良くて仕方がない。 そうだ、いっそのこと自分も死んで仕舞えば良いのだ。 思い立ったが吉日。その日の内に死んでしまおうと眺めの良い高台へ向かおうとした。 自身の意識が失ったのはその時だった。

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