タグ： くにひろ ますみ

IT分野企業の会議や商談に立ち会う通訳家をしている。 まだ年若い為要人アテンド、社内会議、レセプション通訳等の業務しか回されていないが、幅広い分野に知識を広げ貪欲に吸収する姿勢に会社内でも期待が持たれている。 得意とするのは通訳を必要とする1-2名のそばで、ささやくように通訳を行うウィスパリング。 何故か外国人相手の通訳時に限り、でかい体躯(185〜190cmオーバー)のクライアントと対峙してしまう。少し背伸びをしないといけないことを気にして外国人相手の仕事はシークレットブーツを仕込むようになった。 6つ年の離れた弟がおり、共働きの両親に代わり身の回りの世話をしていたのでなつかれている。 弟が健やかに育てるようにと勉学や習い事の弓道の傍ら家事などを行っていたので青春捧げ気味な学生時代だった。 そのため我慢することが多かったせいなのか感情が表に出辛くなってしまった。 身内以外の人間からはちょっと感情が抜け落ちがちな風貌と噂されているし本人も自覚有り。 無愛想という訳ではなく仕事もちゃんとこなすし将来の目標の話も聞いているので、職場の先輩や上司からはどうにかしてやらんとなぁと心配されている。 その配慮が斜め上をいって真澄の感情の起伏を大きくする為と評して度々ドッキリを仕掛けてくるので勘弁してほしいと思っている。 ■秘匿HO 祖父が弓道場の経営しており、真澄が生まれた時から道場を引き継いでほしいと思われていたらしく物心付かない頃から弓道を習わされていた。 始めは習い事感覚でこなしていたが中学に入った頃に祖父の魂胆に気付く。 弓道は嫌いじゃなかったが寂れた道場の経営状態を思うとどうしても簡単に後を引き継ぐと頷くことは出来なかった。 しかし自分が引き継がなければ今度は弟に頼み込むのだろう。 弟は真澄が半ば親代わりになって世話をしてきたことを引け目に感じていたのか、弓道を習わずに家で読書をするような子に育ってしまった。 そんな弟に今から弓道を学ばせて道場を経営させるなんて余りにも酷な話だった。 どうしたものかと考えた時、海外の外国人観光客に向けて弓道体験をさせる道場が増えていることを知った。 中学生の真澄はその時、これしかないと思った。 門下生が望めないなら裾野を広げて日本の伝統文化を好む外国人相手に商売をして少しでも利益を生んだ方がいいと考えたのだ。 それから外国人相手に話が出来るようにと英語を学び始め、大学も外国語大学に入って海外留学も経験、そして通訳家になるになれる程の語学力を身に着けた。 きっと祖父の望むのは流派を正統に引き継ぐ形の道場経営だろう。 しかし、これが真澄が見つけた時代に取り残された道場を守る方法だったのだ。 今はまだ通訳家として活動するが、自分がもう少し弓道の技術を磨いた後に引き継ぐのでどうか許してほしいと考えている。 ■■■ 一度だけ会っただけの少女のことが今でも離れないのは何故だろうか。 少女の名前は静と言った。 名前の通り大人しい子だったが花が綻ぶような笑顔をする少女で、その笑顔を見た時は思わず見惚れてしまったものだ。 その後彼女に会う等なかったのに、ふとした瞬間思い出してしまう。 これが恋煩いだとかそういった類の感情の名前をしていれば分かりやすかったのに、成人した今でもそれの正体が掴みかねていてる。 静、君は一体何者なんだ。 何故僕のこころにずっと住み着いているのか、その答えが未だに見つからないのだ。

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