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中学校の社会科教師 独身　 1Rのアパートで1人暮らし 日課はサボテンに水をやること 無表情で口数は少ないため、誤解されることも多いが、本人としては一つ一つの発言を大切にするように努めている。 授業中は淡々と内容を進め、余談等も特にしないが、提出物やテストなどの採点時には必ず一つはちょっとしたコメントや豆知識などを書き添えて生徒たちが社会科目に興味を持てるように工夫をしている。 担任をするのは今回が初めてにも関わらず、中学3年生の担当になってしまい荷が重いと感じている。 生徒には同調性ではなく、多様性・協調性を大切にすることをモットーに接している。 【過去】　 父親は教育委員会の幹部、母親は高校教師という家庭で育ち、厳格且つ少し過保護気味に育てられてきた。 元々あがり症で、言葉の初めが出にくい難発気味なところがあった。 小学生のとき、友達に些細なことで口早に攻められ、言葉がでなかったことが悲しくて泣きながら家に帰ったことがあった。 それを見た父親が「これはいじめだ」と大騒ぎして教育委員会を通して学校に厳重注意したり、その友人の家にまで行って謝罪させたりとかなり事を荒げてしまい、先生や友達から腫物を触るような扱いを受けるようになった。 「こんな大事にするつもりはなかった」と弁明しようにも口下手な柊は上手くそれを伝えることができずに卒業することとなり、人と話すことへの恐怖感がより一層増してしまった。 中学校に進学してからも相変わらず周りとの距離が測れず、クラスで浮いた存在となってしまった。 クラスでも何人かが気にかけて話しかけてくれる人はいたが、上手く返せず「ごにょごにょ」と口ごもってしまう。 その姿が面白おかしかったようで、クラスのお調子者たちがわざと数人で囲んで畳みかけるように話しかけ、さらに慌てふためく柊の反応を見て遊ぶようになった。 それだけでも充分いじめと言える状態だったが、「またこのことを誰かに言うと大事になってしまう」という思い込みから誰にもこのことを伝えることができなかった。 また真面目な教師の両親がいる手前、学校を休むことも憚られた。 何を言われても大した反論をしない柊を見て調子に乗ったいじめっ子達はお金を盗ったり、外から見てわからない箇所に暴力を振るったりといじめをエスカレートさせた。 仕舞いには「お前といるともごもご言うのがうつる」と「病原菌」扱いされるようになった。 心がすっかり折れ、話すことができなくなるほど衰弱して不登校になったところでようやく両親がいじめに気付き、転校させることとなった。 (小学校の時の騒動について「職権乱用だ。」と言われていたため、父親も前回と同じように学校側に強く出れなかった。) 転校後も言葉を発することが困難になっていたためすぐ教室に行くことはできず、しばらく特別教室で1対1の授業を受けていた。 その時一番真摯に接してくれたのが社会科の臨時教師だった。 大人しい先生で口数は少なかったが、言葉一つ一つを大切に発言しているということが見て取れた。 柊が口ごもっていても何も言わずにずっと待ってくれたし、話を上手に伝えることができなくても否定せずに聞いてくれた。 少しずつ時間をかけ、ゆっくりとであれば落ち着いて話せるようになったころ、教室に戻ることとなった。 最初はまた言葉が出にくいことを笑われるのではないかと不安に思っていたが、クラスメイト誰一人として笑うものはおらず、すぐに受け入れてくれた。 あとになってその臨時教師がクラスのみんなに 「柊さんは少し言葉の初めが出にくいけれど、それはおかしなことでも何でもないのよ。このクラスにも足が速い人、記憶力のいい人、みんなを笑わせることが得意な人とかがいるみたいに、個性の一つなの。」 と多様性を説いてくれたおかげだということを知ったが、その時にはその先生は別の学校へと転任していた。 その後は嘘のように楽しい中学生活を送ることができた。 高校・大学ともに問題なく進学し、少し悩んだが中学教師になる道を選んだ。 いじめられていた時のことを思い出すと今でも動悸がするが、自分のように悩んで苦しんでいる多感な中学生に寄り添ってあげたいと思った。 【自殺をした生徒に対する心情】 その女子生徒がいじめられていたのではないかと気にかけてはいたが、自身の経験から真実かどうか確認する前に事を大きくしては状況が悪化するのでないかと思い慎重になりすぎていたことを悔いている。 彼女が本当にいじめられていて、それが原因で死んだのだとしたら。 どうしてあの時「大丈夫です。」といった彼女にもっと寄り添ってあげることができなかったのか。 何もできなかったことが悔やんでも悔やみきれない。

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