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永い後日談のネクロニカ PC作成ツール
ゼクスウントアハツィヒ
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ゼクスウントアハツィヒ
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きぐるいジャンク
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武装
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ジャンク
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ゴシック
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バロック
ロマネスク
サイケデリック
サブクラス:
-
ステーシー
タナトス
ゴシック
レクイエム
バロック
ロマネスク
サイケデリック
ボーナス:
寵愛による修正
総計
武装
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めだま
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頭
腕
胴
足
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全基本パーツ
頭を全部
腕を全部
胴を全部
足を全部
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めだま
あご
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せぼね
はらわた
ほね
あし
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テ
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○マニューバ
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友情
保護
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愛憎
悔恨
軽蔑
憤怒
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憎悪
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嫉妬
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憐憫
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悔恨
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保護
尊敬
信頼
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嫌悪
独占
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恋心
対抗
友情
保護
憧憬
信頼
恐怖
隷属
不安
憐憫
愛憎
悔恨
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憤怒
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憎悪
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嫉妬
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憐憫
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悔恨
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軽蔑
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5
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パーソナルデータ
キャラクター名
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享年
初期配置
煉獄
花園
楽園
身長
体重
暗示
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
名前の意味→86 性別:女 暗示:希望。大いなる情報を知っていたはずだ。それは世界にとって致命的なもの。その記憶を取り戻せばあるいは。 生前: 対死体の戦闘への対策。それを生み出すための研究材料。 薄暗い地下牢に監禁され、怖い人たちによくわからない薬を飲まされ、時に殴られ嬲られ慰み者にされた。 わたしが特別だったわけではない。たくさんの少女がいた。 たくさんの少女は私と同じように使われ、動かなくなるとどこかに連れていかれた。 辛くなかったといえば嘘になる。それでも耐えられたのはトモダチがいたからだ。 そのトモダチと一緒に読んだ本は今も持っている。 世界観メモ: 死んだときの外見のままドールになっている。 2161年人類存続不可能。~2182年滅亡 黄泉がえりは2200年代。 ━━━━━━━━━━━━━━━【死人工場】捏造リプレイ━━━━━━━━━━━━━━━ ◆目覚めと出会いと 思い出すのは朧げな記憶。 誰かに殴られたこと。 誰かに辱められたこと。 誰かに壊されたこと。 誰かに抱きしめられたこと。 誰かと一緒に本を読んだこと。 それから私の名前。大嫌いなこの名前。 口の中に苦いものを感じながら、薄暗い部屋で私は目を覚ました。 かちゃかちゃと軋み音を立てる体を感じて、ペタペタと自分の体に触ってみて、ようやく私は理解する。死んでるのに生きてる事を。ん? 生きてるのに死んでる、のかな? どっちだろ? どこか肩に違和感を感じると思ったら、左の肩からもう一本腕が生えていた。ゴツゴツしててなんか不気味だけど。 周囲に目を向ければ他にも人がいることに気が付く。 一人は、整った顔立ちの眉間にしわを寄せた女の子。 一人は、綺麗な顔をした落ち着いた様子の女の子。 私たちは互いを見つめたままじっと動かない。 此処はどこだ、お前は誰だ。 全員が全員、その答えが誰かから出るのを待っていた。 「咲」 やがて根負けしたかのように整った顔立ちの女の子が口を開く。 「名前。おまえたちは?」 この子は咲ちゃんというらしい。ちっちゃな二つの銃に手をかけ構えながら、でっかい銃を背負っている。 「シー……」 ぽつりと、でもよく通る声でシーちゃんが呟く。シーちゃんは片腕がおっきな機械になっていて、体を揺らすとカチャカチャと小さな音がする。 二人とも綺麗だなぁと黙って見ていると、私に視線が集まる。次は私の番という事だろう。うぅ、いやだなぁ…… 「ぜ、ゼクスウントアハツィヒ……」 私は渋々と自分の名前を言う。この名前は嫌いだ。何故だか分からないけど。 「長い、ゼクスでいいな」 咲ちゃんにバッサリ切られた。シーちゃんもそれにうんうんと頷いている。これはもしかしてあだ名、いや愛称……! つまりはもう私たちは友達って事だよね。うへへ。友達は大事。うん、ダイジにしないといけないね。 自己紹介をしあったものの二人は私から距離を取って……違う、全員を牽制するようにジリジリと壁際を移動している。そういう遊びかな? それじゃあ私もと、部屋の隅に移動して体を丸める。すみっこは落ち着くね…… そのままゆーらゆーらと体を動かしていると突然話しかけられた。。 「おい、ゼクス」 「なぁに……ひぃ!?」 咲ちゃんの方を見れば、私にちっちゃな銃を付きつけていた。 「扉」 短い一言。その一言を言われて、後ろの感触がごつごつした石ではなくざらついた金属に変わっている事に気が付いた。どうやらいつの間にか扉に一番近い位置に移動してたらしい。 無機質な銃口に恐怖を覚える。混乱した私は頭の中に手を突っ込んで中のものを掻き出したくなる衝動をぐっとこらえて、私は体をガサガサと弄る。体の継ぎ目をなぞり、ハラワタを掻き回す。するとどこかで見た錠剤の形をした何かが手に引っ付いてきた。 あ、これ知ってる。おくすりだ。痛くなくなるごほうび。 どうしてここにあるのかはわからないけど勢いよく飲み込む。 ……ぁあ、さっきまで薄暗かったセカイが全部キラキラしテる。ココロがぽかぽかする。つぎはぎだらけの体が火照りだす。きもちいい、キモチイイ、楽しい、タのシイ、たノしい、たのしい。うへ、うへへへ…… 「……おい」 カチャリ。 再び銃を向けられはっと我に返る。そっか、扉開けなきゃ。 さっきよりも若干怯えているような気のする咲ちゃん(何でだろ? でも可愛い)を背に、 肩から伸びた歪な腕で扉の取手を握る。思った以上に、この腕は結構自由に動かせるらしい。 かちゃり。 実は開かないなんてこともなく、静かに開く扉の音。もちろん急に何か飛び出してくることもなかった。 開けたけど? と後ろを振り返れば咲ちゃんは私に銃を突きつけたまま、あごをクイっとしゃくる。 どうやら先に行け、ってことみたい。 そうして私たち三人組は小さな部屋を出て、薄暗い廊下をゆっくりと歩き始める。 そうだ、せっかく二人と友達になったんだからプレゼントとかしたら喜んでくれるかも。 そんなことを思った私は二人に対して笑顔で言うのだ。 「おくすり、飲む?」 二人から無言で武器を構えられた。なんで? ◆探索と想いと 薄暗い部屋を出て、薄暗い廊下を歩く。 時折見つける扉の向こうを覗いてみても、さっきまでいた部屋と同じように薄汚くて何もない空間でしかなかった。 一本道の廊下を三人で歩く。こつこつと歩く私の後ろにかちゃかちゃと歩くシーちゃんと咲ちゃんが続く。 これなら何か飛んできたときに全部私に当たるから、ベストな体制と言える。 そう。痩せぎすで何も持たない私と違って二人はとっても頼もしい。 重装備なシーちゃんと、銃装備な咲ちゃん。 もしシーちゃんがいなくなれば私たち三人はきっとすぐに壊されてしまう。 それにしても重装備と銃装備……じゅうじゅう。うへへ。 暫くまっすぐ歩いていると、奥から何か音が聞こえるのに気が付いた。 立ち止まり、耳を澄まして音を聞く。 なんだろう。だれかの声のような……それにしては妙に機械的な…… 良く聞き取ろうと意識を集中させる。そこに混じるとくん、とくん、という弱弱しい音。私の胸の奥から聞こえる心臓の音。これのせいでいまいち集中できない。 うーん、邪魔だなぁ。 私は思い切って胸の奥にずぶずぶと手を突っ込む。痛みは無い。いや、あるのかもしれないけど気にならない程度でしかない。 一応潰さないように気をつけて……お、とれた。取り出した心臓は廊下の端にそっと置いて、改めて音に耳を傾ける。 今度はよく聞こえた。 喧々とした歌。どこかの国の軍歌だ。そして怒鳴るようなひび割れた声と混じるノイズ。同じ言葉の繰り返し……うん、録音テープを再生し続けているみたい。 後ろに振り返ると、シーちゃんが無言でこくりと頷く。 シーちゃんもこれが何の音なのか、ちゃんとわかったらしい。 咲ちゃんはというと、何か信じられないものでも見たような驚いた顔で、私のことを見つめている。いやぁ、照れるなぁ。 「お前、それ……いやいい。それより、急に止まってどうした。この音は何なんだ」 動揺したのか気が散ったせいなのか、咲ちゃんは音の正体が分からなかったみたいで、私の頭に突き付けた銃をごつごつと打ち付ける。 咲ちゃんの向ける銃口はやっぱり僅かに震えて……あれ、違う? 私の視界が揺れてる?もしかしてさっき怯えてるように見えたのも勘違いかな? 壊れたら殴ればなおるんだって誰かが言ってた。でも誰だったっけ? とにかく、人間も死人も人形もそれはたぶん一緒だろう。 私は自身のこぶしをぐっと握ると頭をコツコツと叩く。右に三回、左に二回。角度は四五度。えぐり込むようにうつべし。 そうしてはっきりした視界の向こうは、やっぱりちょっぴり震える銃口を向ける咲ちゃん。うん、変わらず初めて抱いたの印象通りの可愛い女の子だった。 「んー、大丈夫大丈夫。進もう」 もう少し可愛い姿を見ていたくなった私はあえて問いには答えずに先へ進み始める。 するとシーちゃんが置き忘れた心臓を持って来てくれた。そういえばそんなのあったな。 「ゼクスちゃん……あの、これ……」 「あ、忘れてた! ありがとうー!」 私は自分の心臓を受け取ると両の手で胸元に押し込む。それから空いてる手で頭を撫でようとした……んだけどまだちょっと警戒されてるのか、心臓を渡すとさっと距離を取られちゃった。残念。 そのまま三人で仲良く、さらに進んでいくと目の前に鉄の扉が見えてきた。どうやらここが突き当たりらしい。 そして横に扉がもう一つ。『工場長』と書かれたプレートのついたぼろぼろの扉。無理矢理たてつけたかのような木の扉は部屋の内側から叩かれたように歪んでいた。 よくよく床を見れば黒い染みがあちこちに散っている。これは、血痕だ。 「うぇぇ……」 踏んづけた足をあげたときに感じるねちゃりとした感触。 その醜悪なものに気分が悪くなってきた私は、体の中をごそごそと掻き回しておくすりを取り出す。 うへへ、これだよこれ……さっきまで騒音だった録音音声は天井の音楽のように薄汚れた廊下は宮殿のように血痕は煌びやかな芸術に二人の吐息は神の息吹のようにああ世界はこんなにも美しい! 「……入ろう」 そう言ったのはどちらだったか。 「ゼクス、開けろ」 咲ちゃんに銃で頭を小突かれる。何度目かのやり取り。 「おっけーおっけー!」 気分の上がってきた私はケタケタと笑いながら思い切り扉を叩いて叩いて叩いて叩く。 ノックしてもっしもーし! ガンガンと強く叩きすぎたのか、扉はぼろぼろに砕けながら部屋の内側に倒れていく。 そして目の前に広がるのは、かつてそれなりに豪華だったであろう部屋だ。 床一面に広がる立派な装飾の絨毯、大きな執務机、応接用の机、それから大きなソファー。 「そふぁー!」 私は濁った目を輝かせて人が一人寝転べそうな大きなソファーに向かって走り出す。 「うっ……」 部屋に入ってからで黒い染みの正体に気が付いたのか、シーちゃんが片手で口元を抑えるのが見えた。 咲ちゃんは床に落ちていた銃に興味津々みたいで、拾い上げてからいろいろいじくりまわして調べている。 「だーいぶ……ぐえ!」 ソファーに思いっきり飛び込むと、お腹のあたりに何か固いものが突き刺さった。これは白い小さな……骨、いや、歯かな? それともう一つ。干からびた……指。 衝撃を与えたソファーからころころと何かが転げ落ちる。拾い上げてよく見れば、それは小さな銃弾だった。 「それ、ちょっと見せてもらっていいか」 調べていた小さな銃を片手に持った咲ちゃんが私に銃弾を渡すように促す。特に興味もない私はそれをおとなしく渡してあげた。 咲ちゃんは銃から取り出した弾と私の弾を見比べて何やらふんふんと頷いている。そのまま腰のベルトに引っ掛けるように銃をしまった。……銃、好きなのかな? 自分のお腹の中に入れておいた方が無くさないから便利だと思うけどなぁ。あとで教えてあげよっと。 「二人とも、ちょっと来て……」 執務机を調べていたらしいシーちゃんが、私と咲ちゃんを手招きする。 何だろうと思って近づいてみると、机の上にある分厚い本を指さす。 「日記、みたいだけど……」 読むよね? と小さく首を傾げる。 「絵本じゃないのかー」 それになんだか難しそうだなぁ。 とはいえ見ないまま仲間外れにされるのも嫌だ。そう思いながら二人と一緒に分厚い日記に目を通していく。 戦争。集団自決。勝利への妄執。永遠に続く兵器の開発。 死してなお尽きない醜悪な願い。ぐずぐずに腐りきった脳髄がぼろぼろの思い出を掻き回す。何かが引っかかる。それでも私は何も思い出せない。吐き気がする。頭を叩いて吐き気を追い出す。追い出せない。 とにかくだ。ゴライアス。それがここで造られている兵器の名前らしい。 吐き気を堪える様に手元の本ごと、体をぎゅっと抱きかかえた。 調べつくした工場長の部屋を出て、今度はもう一つの扉を開ける。 すっかり扉開け係になった私の目の前。真っ先に映ったのは巨大な人形。そして今いるところの更に下。そこに、人形を組み立てるアンデッドたちが見えた。 そっかぁ、あれがゴライアスかぁ。 ぐちゃぐちゃに組み上げられた歪な人形。組み上げながら時折殴りつける様なアンデッドを見ていると、なんだか無性にイライラする。 ゴライアスに向けて、咲ちゃんが持っていた銃を構える。 珍しくぎょっとした表情のシーちゃんがそれを手で押さえて阻止する。 そして私はそんな二人を横目に、イライラを解消しようとゴライアスにドロップキックをおみまいするために目の前の手擦りを飛び越え……ようとした時。あたりに警報が鳴り響いた。 じりっ、じりりりり! あまりの音の大きさに手擦りの前で尻もちをつく。 警報の音に反応したのか、アンデッドたちが一斉にこちらに視線を向ける。 地鳴りのような音を轟かせてゴライアスが動き出す。 私たちの戦いが始まろうとしていた。 ◆戦いと祈りと ぞろぞろと集まってくるアンデッド達。銃を持った奴らもいる。その周りには大きな犬のような何かが三匹。 「来るね……援護を」 そういうが早いが真っ先にアンデッドの群れに飛び込むシーちゃん。それに続く私。 シーちゃんはかちゃかちゃと綺麗な音を立てて手近な犬へ肉薄すると、機械仕掛けの右手で殴りつける。もろに喰らった犬はそのまま手から飛び出した杭と一緒にアンデッドたちの方向へ勢いよく吹っ飛んでいく。 追いついた私はそのまま追い打ちをかけるように犬の頭をブーツで踏みつける。犬はぐちゃり、ばきばきという変な音を立てて砕け散り、そのまま動かなくなった。 再びシーちゃんから放たれる鋼鉄の一撃。犬を狙ったはずの攻撃はにひょいと躱され、近くにいた私の目の前をかすめていった。あぶなっ! 「……ちっ」 その舌打ちは犬に当たらなかったからだよね……そうだよね!? そうして雑魚を散らしている間にもゆっくりと、でもその巨体故ゴライアスは一気に近づいてくる。あいつが動き出す前に、少しでも数を減らさないと。 「二人とも動くなよ!」 今度は何、と思う間もなく私とシーちゃんの間をすり抜けるように銃弾が通り過ぎていく。次の瞬間、後ろで起こる大爆発。 放たれる轟音は隊列を組んで銃を構えていたアンデッドたちの真ん中で爆発したらしい。振り向けばアンデッドたちが木っ端微塵に吹き飛んだ焼け跡だけが残っていた。 あれ? もしかしてこれ私戦わなくても大丈夫かな? 目の前に二匹残った犬は、さっきの爆発に怯えたのか動こうとしない。 よく見たらこの子たち可愛いかも……友達ちゃんす。 「ほらこっちこっち、怖くないよー」 ちちち、ちちちと囀ってみる。大丈夫大丈夫、動物とは分かり合える。 近づいてきた犬に下あごを思い切り食いちぎられた。ついでに衝撃で目玉がぼとりと落ちる。 よし、畜生はだめだ。やっぱこいつら壊そう。 光を失い色褪せた世界。その中で私は目の前の犬たちに一発蹴りをかまそうと立ち上がる。その時、ぽっかりと空いた眼球の奥から喉に直接何かが入ったのを感じた。 そっか。おくすり、ここにあったんだ。 甘く蕩ける感覚。胸の奥から広がるのは安らぎ。恐怖は幸福に絶望は快感に願いは信仰に祈りは興奮に私はまわるクルクルマワルこれは試練ではなく救済破壊は神様からの贈り物壊して壊されての今この瞬間私は確かに生きている。 逃げ出した犬達はあとで壊すとしてまずは近くにいたアンデッドたちに蹴りかかる。距離を見誤ったのか足は見当違いの場所で空を切った。 必殺の一撃を外したことで私は冷静さを取り戻す。同時に思考が鈍るのを感じる。どうやら戦闘中のおくすりは切れるのも早いらしい。 そんななか、群がる大量のアンデッドを腕のガントレットで受け流し、飛び掛かる犬に鉄杭を打ち込むシーちゃん。達人って感じだ。 感心して見入っていると私の方にもアンデッドが群がってきた。シーちゃんの真似をしようとするも見事に失敗し、足と胴に一発貰ってしまう。 大きな駆動音を立てるゴライアスは、さっきの爆発を恐れたのかその巨大な手を咲ちゃんに向けて振り回すのが見えたけど、咲ちゃんは綺麗に横へ跳んで攻撃をかわしていた。ほっと一安心。 それにしてもやつらの数が一向に減ってる気がしない。一体一体相手にしてるとキリがないね。 「シー、ゼクス、走れ!」 大きな銃を構えながら咲ちゃんが叫ぶ。さっきの爆発弾をもう一度、今度はこのあたりに撃ち込むつもりらしい。 意図を察したらしいシーちゃんと一緒に私は咲ちゃんの方へ向かって全力で走る。 だというのに何もわかってないだろうアンデッドたちはただ私たちに襲い掛かろうと行く手を阻む。 あーもう、じゃま! 揉みくちゃにされる最中、一匹の犬がシーちゃんに襲い掛かりその綺麗なあごを食い破っていく。衝撃で飛んでいく宝石のような目玉。私とお揃いだ、なんて喜んでもいられない。 あごを砕かれながら、咲ちゃんに向かってシーちゃんが叫ぶ。 「撃って……!」 「シー!?」「シーちゃん!?」 「いいから撃って!」 「……恨むなよ!」 覚悟を決めたのか、咲ちゃんは素早い動作で大きな銃を構える。 私はシーちゃんへ行く衝撃を少しでも和らげようと目の前に駆け出す。 そしてアンデッド殺しの魔弾が打ち出される瞬間、シーちゃんの機械仕掛けの腕から飛び出したワイヤーが私に絡まり、咲ちゃんの方向へ思いっきり投げ飛ばした。 「シーちゃん!」 思わず伸ばした手はむなしく空を切る。瞬間、目の前に広がる煉獄の炎と爆発。 私は間一髪、シーちゃんのおかげで爆発を逃れる。そして私の真横。そこへ、がしゃんと大きな音を立ててシーちゃんが吹き飛ばされてくる。 「シーちゃんごめん、大丈夫!?」 「シー、無事か!」 「平気、まだ戦える。でもちょっと疲れた……」 お腹にぽっかりと大穴を空けて、見るからに大丈夫じゃない様子なのにそんなことを言うシーちゃん。でもまだ完全に壊れてはないみたい。良かった…… 爆発の跡を見ればあれだけの一撃だ。ゴライアスもただでは済まないだろう。 そう思ったのに。 あの攻撃を受けてなお、ゴライアスは傷一つ付いていなかった。 「そんな……」 勝てないのか。そんな諦めの気持ちが私たちを包む。 その時肉片の山から生き残っていた犬が飛び出し咲ちゃんへ飛び掛かる。 「こいつっ!」 肩をえぐられながら犬に向かって銃撃する。足を撃ち抜かれ弱り切った犬が逃げ出そうと咲ちゃんから離れる。 そうだ、私たちはまだ壊されるわけにはいかない。友達はサイゴまでダイジにしなくちゃ。 私はそいつを捕まえて羽交い締めにすると、そこへ正確無比な銃弾が眉間を打ち抜いた。 動かなくなった犬を放り捨てれば、周りに襲いかかってくるアンデッドの姿はもはや無い。あとは、あいつだけだ。 シーちゃんと二人、ゴライアスへ向かって駆けだす。ゴライアスは私に向かって腕を伸ばし……そのまま通り過ぎていく。外した? いや違う、そうじゃない。 こいつの狙いは! 間に合うかわからないけど、その辺に転がっていた肉片をゴライアスの腕に向かって蹴り上げる。でも当然のようにそんなもので巨体の腕が止まるわけもなく、進路を変えることなくそのままに振り下ろされる。 「咲ちゃん!」 だめだ、間に合わない。 轟音とともに巻き上がる土煙。それが晴れたとき、咲ちゃんの膝から下がごっそりと失われていた。 「はっ……スナイパーらしくなった、な!」 足を失ってなお、構え続けていた銃から撃ち出される破壊のエネルギー。ゴライアスはその頑強な筋肉で銃弾を受け止める。ダメージが入った様には見えないけど、隙ができた。 私は銃弾でマーキングされたそこを、ブーツで思いっきり蹴りつける。弾丸がめり込み、ブーツに仕込まれた刃が肉を裂いていく。 ゴリゴリ、ぶちぶちと音を立ててゴライアスの体が千切れひび割れていく。私はゴライアスを足場に上へ跳び、動き出す時間を与える前にそのままの勢いでもう一度踏みつけ、跳躍する。更に亀裂の深まる肉体。ゴァァァというゴライアスの叫び声。 「シーちゃん、トドメお願い!」 「任せて……!」 体勢の崩れたゴライアスの懐に踏み込んだシーちゃんが気合と共に叫ぶ。 「消し……飛べ……!」 衝撃と轟音。放たれた必滅の一撃。やつの命運はそれで決まった。 六メートルはあった巨体が千切れ飛び、おそらく頭部であろう場所から伸びた腕を滅茶苦茶に振り回すだけになったゴライアス。 やった!……って、あれ? 人は跳べば落ちる。そんな当たり前な世界の法則に従って、私の体はやつの大きな腕の中へ落ちてばらばらに……ならなかった。 シーちゃんの腕から伸びたワイヤーがゴライアスに絡みつくと、そのまま遠くへ放り投げたからだ。 そして私はぽすり、とシーちゃんの腕の中に収まる。 「お疲れ様……」 にっこりと笑うシーちゃん――勿論幻覚だ。今の私に目はないし。でも真実だ――がするお姫様抱っこ。 絵本で見た事のある展開。戦闘の時よりよっぽどドキドキするこの感覚は……まさか恋? いやでも私には心に決めた人が……うへ、うへへへへ…… 「おーい、終わったんならこっちきてくれー。動けないんだー」 銃をカツカツと地面に打ちつけながら声を上げる咲ちゃん。 それを見たシーちゃんは私を丁寧に地面へ下ろすと、とてとてと向こうへ歩いていく、そして今度は咲ちゃんをひょいっと持ち上げた。……今度私もやってみたいなぁ、あれ。 その間にも、うぞうぞと蠢くゴライアス、その成れの果て。発声器官すら残っていないはずなのにコロシテ……コロシテ……と、そう懇願している様に見えてくる。うーん、ちょっとかわいそうかも。 「ねぇ、やっぱりあの子おうちで飼えないかな」 ちゃんとエサもあげるし散歩もするから、ね? ね? 「あのなぁ……いいか、ゼクス」 カチャリ。 シーちゃんに抱き抱えられた咲ちゃんがため息とともに二丁の銃を構える。 「うちにそんな余裕は、無い」 発砲。無慈悲な二度撃ち。 今度こそ、本当にそれが最後になった。完全に動きを静止させるゴライアス。 私たちは勝った。戦いが終わったんだ。 「おうち……? どこ……?」 静寂の中、首を傾げてぽつりと呟くシーちゃんの声が工場に響いた。 ◆終わりとこれからと 「よし、こんなもんか……二人も、もういいか?」 とん、とん。 咲ちゃんが新しく付け足した足の具合を確かめるように爪先で地面を軽く叩く。 「私も大丈夫……」 ぐっぱーぐっぱーと手を開いたり閉じたりしているシーちゃん。その顔には綺麗な両眼がしっかりくっついている。 「おっけーだよー」 戦いの後、私たちはアンデッドの残骸からまだ使えそうな部分を適当に引っ剥がして自分たちのものにしていた。初めはちょっとだけ抵抗があったけど、一度くっつけてみれば驚くほど良く馴染む。私の目も元通りだ。 お帰り。色のついた世界。 まだちょっと欠けているけど、足りないものはしょうがないね。 戦った空間は工場の極一角でしかなかったようで、再び工場内を探索すればあちこちにアンデッドの姿が見えた。 私たちのことが見えてないみたいに相手をする様子もなく、黙々と肉塊を積み上げる肉塊。 あいつらからも予備をもらっていくかと銃を構える咲ちゃんを、これ以上戦闘が増えると消耗が激しいと止めるシーちゃん。ペットを飼いたいと犬を探すも全力で二人に止められる私。先行する二人の背中を見て私はけらけらと笑いながら、ずるずるとゴライアスの付けていたマスクを引きずって後に続く。 ペットは飼えないけどテントかハンモックくらいにはなるよね、たぶん。 いくつかの階段を昇る。 いくつかの廊下を歩く。 いくつかの扉を開く。 やがて鉄でも木でもない、ひび割れ濁ったガラスの扉の前へたどり着く。カタカタと風の音が聞こえる。 この先は外だ。憧れの外だ。 手に持ったゴライアスのマスクを捨てて私は駆け出す。 そして目の前に広がる一面の景色は荒野だった。 岩山に囲まれ、寄り添うように立つのは私たちがいた工場。 草木は無く、虫の死骸すらない死んだ大地。 薄暗い霧と太陽の光を遮る分厚い雲の奥で、血のように赤く染まった空が日暮れを知らせている。 あまりの光景にショックで呆けていると後ろでばさりと、紙が空を切る音がする。何かと思いそちらを見ると、シーちゃんが座り込んで泣き出していた。 「ひぅ……ぅう……ぐぅ……うぇぇ……」 まるで幼児の様に泣き出すシーちゃんに戸惑う私。 おおおおちつけわたしこういうときこそくーるにれいせいにしーちゃんとおちかづきになるちゃんすをのがすないまだおせおせべーぜはめのまえに……はっ! いけない、いけない。あまりの光景に頭からとぷとぷとおくすりが流れ出てしまった。 どうしたものかと困って咲ちゃんの方を見ると、彼女は無言で腰のベルトから小さな銃を取り出し……地面に向けて発砲した。 ……は? ぱすんぱすん。乾いた音を立てて、地面が抉れる。 「この光景を見て泣き出す暇があるのか?」 「ちょっと咲ちゃん!?」 え、なに、何してるの!? 「何って……ショック療法」 何言ってんだこいつみたいな顔をして、しれっとした顔で言われればこっちはもう何も返せなくなる。 あらやだ。この子、もしかして残念……? 可愛いから全て許せるけど。 と、たとえ私が許してもシーちゃんは許さない。銃声に怯え勢いを増して泣き出す。 ええっと、こんな時はどうすれば…… 困った私は耳の穴から指を突っ込み、腐り切った脳髄を掻き回して答えを探す。記憶、きおく、キオクを。 おぼろげな記憶には引っかかるようなものは何もない。それでも何とかしなくてはと私はシーちゃんへ近づく。そして感情のまま、私よりもずっと大きな体を両手でしっかり抱きしめながら、頭を優しく、壊さないようにそっと撫でる。 腕が三本あってよかったと、初めて心から思えた。 暫くそうしていると、ぎゅっと温かい感覚が私の体を包んだ。 見上げたシーちゃんの涙はもう止まっていた。 「もう……大丈夫だから」 自分の足で立ち上がるシーちゃんに対して最後にもう一度だけ、頭をぽんぽんと軽く触って離れる。 「さて、これからどうする?」 くるくると手元の銃を回しながら、工場にちらりと目線を向ける。 「そもそも私たちはなんだ? 何のために、なぜここにいる?」 「わからない……」 「うーん、なんだろうねー」 あの工場の中でゴライアスみたいに作られたんだろうか。でもそれなら私もこんなちんまい姿でなく六メートルの巨人になってていいと思う。だからきっと違うのだ。 もし私をこの体にした張本人に出会えたら、お礼を言いたいな…… そしたらきっと私たちは友達になれると、そう思うのだ。 「わからないけど……私は帰りたい……」 咲ちゃんと二人、考え込んでいるとシーちゃんがぽつりと呟く。 「どこにだ? そこの工場か?」 「違う……でもわからない……」 「どういう事だ? まあいい。どこに行くにしてもどうせ途中までは一緒だろう。行くぞ」 「私はどうしよっかなー……あっうそうそ待っておいてかないで」 三人が三人、寄る辺もなく、行く当てもなく、荒野を歩き出す。 数奇な運命はもう少しだけ私たちが一緒にいることを許してくれるらしい。 また、遊びましょう。 一陣の風に紛れてそんな声が聞こえた気がした。
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