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推理小説家の男性。 健康だが身体の使い方が下手。口が悪い。 自分の事をよく「おっさん」と言う。 未だ捕まっていないが、連続殺人事件の犯人。 自分の考えたトリックが完全犯罪を成し得るのか試している。 見た事のある、懐かしい場所。そこは学校だ。 生徒達が揃っている中で、自分の姿を発見する。今よりずっと幼い、小学生の頃の自分。 周りは静かに教壇の方をみたり、或いは寝たりしているが場は静かだ。教壇ではいつか世話になった教師が本の読み聞かせをしている。 その中にいる自分は物語の世界にぐっと引き込まれていて、少しだけ落ち着かない様子だった。 もう細かくは覚えていないが、ミステリー小説だったと思う。とても難解と思われた謎の数々は、探偵によって鮮やかに解かれてゆくのだ。中盤までのモヤモヤした気持ちから一転、ラストの盛り上がりには感銘を受けて、その後は自分でも様々な小説を読んだものだ。 そのうちに探偵側ではなく犯人側、その謎の作り方や動機、思考、アリバイ工作諸々…そちらに 興味をもった。推理に参加する側から提示する側…ミステリーは人工の美学と呼ばれるように、その美学にひとかたならず魅了された。 そうだ、今の自分のルーツはここにあったのだ。 KP - 今日 22:00 自分の姿をまた見つけた。場所は大学だろう。 どこか落ち着かない若い自分だ。 この頃は確か自分の小説が賞をもらった時ではないだろうか。大学卒業を目前にして、必死に書いたものが認められたのだ。 トリックから登場人物、シチュエーション、自分の持てる力で書いた作品。それが人の注目を浴びて、受賞に至った。 こうして見ると昔の話だが昔のようには感じない。ついこの間のような感覚。 兎にも角にも、自分はこの時、作家としての一歩を踏み出したのだ。 KP - 今日 22:01 景色の中の自分は注射器を持っている。 その前には証拠の隠滅された、今はいつも通りの空間。 人を殺した。 ああそうだ、一目惚れしたその人だ。 どうして殺してしまったんだろう。 けど、これは完全犯罪だ。完璧なトリックだ。 景色の中の自分は、人を殺めてしまった焦燥だけではない感情が内側から込み上げてきている。 絶対にバレない。 いや、まだわからない。ここからなんだ。ここから警察との駆け引き。 いや、そもそも警察に気づかれるだろうか。 金田一やコナンのような名探偵など、現実の日本にいないのに。 自分が犯人側から、"犯人"になった瞬間だった。

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